インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~   作:たちゅや

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五十五話

 旅館の一室を作戦本部にし、千冬らは緊急事態への対応に追われていた。

 

 龍也が単独行動を取った事もそうだが、IS委員会が学園を通じてこちらに無茶な通達をしてきたのだ。

 内容は近海で軍用ISのテストがされていたのだが、テロリストに強奪。その機体の奪取を近くにおり、代表候補生もいるという理由で行うよう命令が下ったのだ。

 学園側も代表候補生がいるとはいえ、学生にそのような事をさせるつもりはなく、拒否をしたのだがIS委員会からは拒否する事を許さず、作戦を成功させるよう告げ連絡を絶たれる。

 

 旅館には教師陣もいるのだが、あるのは訓練用の打鉄のみ。申し訳ないが、これでは軍用ISと渡り合うのは厳しいと言える。

 例え織斑千冬とはいえ、一人でどうにかなるものではない。

 そのことは本人が十分に承知している。だから、生徒を実戦に行かせなければならない事に苦悩していた。

 

「……さて、お前達に問う。この作戦、正直に言えばやらせる気はない。参加したく無い者は出ていってくれていい」

 

 問う先には一夏、箒、鈴、セシリア、シャルロット、ラウラがいる。

 みんなの眼はやる気に満ちており、部屋から退室する者はいなかった。

 その表情を見て、千冬は目を伏せる。このような若者に託せねばならない自分自身の情けなさが胸を満たす。だが、事は待ってはくれない。

 ほんの数秒だが自分自身に折り合いをつけ、口を開く。

 

「分った。では、これから具体的な作戦を説明する。ただし、これから開示する情報は二か国の最重要軍事機密だ。漏洩した場合は相応の罰が下る事を覚えておいて欲しい」

 

 そうして明かされていく銀の福音のスペックだが、軍用ともあり基礎スペックが高いのは目に見えていた。だが、一夏達の実力も入学当初と比べて上がってきているので、対等に渡り合えるかもしれない。あくまで希望的観測ではある。

 ただ問題なのはテロリストが銀の福音を使ってくるのか。それとも……別の機体があるのか、という事だ。

 だから、一ついいですかとセシリアが挙手をし、千冬は話すよう促す。

 

「相手方の戦力は確認できないのでしょうか。強奪した、という事はそのテロリストはかなりの戦力を持っているのではないでしょうか ?」

 

 その問いに千冬は隣にいる山田先生に目配せをする。彼女はうなずき、映像を変える。

 

「今から流す映像が答えだ」

 

 映されたのは一機のIS。彼らは知らないがFA型ISのフレズヴェルク・レイジだ。周囲には米国・イスラエルの戦力であるラファールら十数機が展開され囲んでいるのだが、フレズヴェルク・レイジは余裕を見せるのか静かに周りを確認する。

一応の警告がされるが、フレズヴェルク・レイジは答えることなく背部からACS-14GPの砲口を一体に向け発射する。

無慈悲に放たれた光波はラファールを丸々飲み込んでいく。パイロットもコアすら跡形もなく消滅させてしまう。

 これがきっかけとなり、軍側の攻撃が始まるのだが強固なTCSを突破することが出来ない。彼女達は知る由もないだろう。自分達が扱う武装では絶対にTCSを突破しダメージを与えることなどできもしない、という事に。

 また、彼女らから見ればとんでもないスピードと機動でフレズヴェルク・レイジは試製三式破砕槌で敵を薙ぎ払っていく。

 一閃する毎にラファールの装甲が砕け散り、パイロットが肉の塊に変わっていく様を見て一夏達は凍りつく。

 この様は最後の一機を再起不能にするまで映像が続き、消える。

 

「これが敵の戦力だ」

 

 正直、聞かなければ良かったと思ってしまった。どこの世界にこんなとんでもない機体を携えた者がいようか。

 使う武装を見ても自分達の装備で防ぐ事はできない、と確信できてしまう。

そんな絶望が支配する空間を破る者がいた。

 

「安心しろ。そのテロリストの相手は龍也がしている」

 

 入口から聞き覚えの無い男の声がし、皆がそちらを向く。

 襖に背を預けているのは体格の良いアメリカ人男性だった。面識のない者の登場に千冬は警戒度を上げる。

 

 私に気配を感じさせず、か。何者だ ?

 

 警戒する彼女の視線を受けてか、男の方が話し始める。

 

「おっと、挨拶が先だったな。俺はブライアン・フィンチ。ブキヤ米国支部で開発主任をしている。篠ノ之博士から依頼を受けてやってきたんだが……。話が通ってないのか ?」

 

 おかしいなぁ、とぼやき束を探すがどうやらいないようだ。

 

「束が ? 全くアイツは勝手に話をややこしくしていく」

 

 面倒事ばかり起こしてくれる、と思いつつ先程の彼の言葉について尋ねる事にした。

 

「まぁいい。ブライアンと言ったな。秋野がテロリストと相対しているとはどういう事だ ?」

 

「そのままの意味だよ織斑教諭。テロリストの名は『秋野 竜也』。龍也と同等の力を持っている厄介な奴さ。彼がこの近くに現れたのを察知して、龍也が向かっていったんだ」

 

 なるほど、これでアイツが飛び出していった理由が分った。

 

「それで、現在は竜也が動かすISであるフレズヴェルク・レイジに銀の福音の二機を相手に奮戦中ってわけさ。あ、これは龍也のゼルフィカールからの情報ね ? いやぁ、IS自身から情報を教えてくれるなんて不思議な事もあるもんだねぇ」

 

 ん ? と思う事をサラっと言っているがそれよりも。

 

「銀の福音も投入されている……か」

 

 さらに面倒だ。出来れば龍也と通信をして向こう側の状況を聞きたいのだが。いや、これ以上はこちらの問題だ。束がいない以上、ブライアンをどうするべきか。

 千冬は頭を悩ませるが、ガタッと天井の板が外れ件の人物が降りてきた。スッと危なげなく着地し口を開く。

 

「よっと。あ、ブライアンくん ! 到着が早かったんだねぇ。うん ? この様子だとたっくんが戦闘中って事は伝わってる感じ ?」

 

「おお、篠ノ之博士。ナイスタイミングッ ! これで俺も作戦に関われるぜ」

 

「イエーイッ ! っていだだだだあああああっ」

 

 ハイタッチをする二人に千冬はすぅ、と音もなく近づき束にアイアンクローをかます。相当な力が入っているのか、痛い音が聞こえてくる。

 ブライアンはひきつった顔でそれを眺め、一夏らは耳と目を塞ぐのであった。

 割れる、割れると連呼する束を見据えながら千冬は話す。

 

「お前は勝手に事態に介入し、ややこしくしていくな」

 

「いだだだ、だ、だってちーちゃんさ、このまま、いっくん達を行かせたらただのお荷物だからねっ」

 

そう言い放ち、ディスプレイに龍也が二機のISと戦っている姿を映した。

 ゼルフィカールは自身に迫る福音を、BT兵装のような武装で牽制しつつ、先ほど映像で視たフレズヴェルク・レイジをコアにしたルシファーズウイングと近接戦闘を行っている。

 

 どちらも身の丈はあるだろう巨大な大剣を片手で振り回しながら、斬り合う姿は鬼気迫るものであった。

 ゼルフィカールが斬りかかれば、ルシファーズウイングは巨体に似つかわしくない俊敏さで片手に持つ剣で弾き、ウイングパーツに付属するクリスタルから光線を放ち逃げ場を限定させ、斬撃を放つ。

 対して、脚部パーツであるティマイオスとクリティアスによる時空間歪曲による反発力で逃げおおせるゼルフィカール。更には剣を振り、エネルギー波を生み出し攻撃も繰り出す。

 

「……ほう龍也も割と本気でやっているなぁ。あれじゃあ、織斑君達が無策で行けばお荷物確定だねぇ」

 

 ブライアンはハッキリ告げる。が、束はとびっきりの笑顔で一夏に話すのであった。

 

「でもね、いっくん達にもできる事はあるからねっ ‼」

 

 

 

 




えらく遅くなったけど、まぁすまない。

話の展開を二パターン考えててどっちにするか悩んでいたら一年くらいかかっていた。

次回は半年以内に……。

年内中にセカンドシフトさせたいなぁ。

(投稿していない間に、FA:Gの沼に二人ほど友達を引きずり込むことに成功する)

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