インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~ 作:たちゅや
一夏は龍也とオルコットの戦いを管制室のモニターで見ていた。
隣には篠ノ之もいたが、彼女も同様に釘付けになっていた。
あれが、彼の戦い方なのか、と。
代表候補生からの正確な射撃を躱し続ける集中力。
機体に振り回されず、使いこなす操縦力。
とてもじゃないが、IS初心者とは思えなかった。
「……なぁ、箒。俺、龍也にも勝てる気がしないんだが」
この程度の障害、軽く乗り越えて……欲しいと彼女は思ってしまうが、口にすることは出来ないでいた。
一体、どれだけの訓練をしたらあの動きができるのか、想像が出来なかった。
連続で使用していた瞬時加速。そこからの抜刀、ブルー・ティアーズの破壊。
刀の構え方から何かしらの剣術をやっていたのであろう、と推測できたが流派までは判らなかった。
「と、ともかく!やるしかないのだ!男なら、全力でぶつかって来い!!」
「ハァ……そうだな、それしかないよな……」
がくっと俯いてしまうが、気持ちは切り替えなければならない。
その時、勝敗の決着が着いたのか、
『勝者!セシリア・オルコット!』
「は?」
アナウンスに二人同時に驚いてしまった。
「龍也は負けたのか?」
「……そのようだな。しかし、敗因は何だったんだ?」
モニターでは確かにバーゼラルドがブルー・ティアーズのミサイル型ビットの攻撃を防いでいたはずだった。
なのに、負けた。
どうしてなのか?
それは、戦っていたオルコットも気になったのか地上に降り、彼に尋ねていた。
龍也はバーゼラルドを待機状態にし、説明をした。
「ミサイルを防いだ防御フィールドは恐ろしく燃費が悪いんだよ。すっかりそのことが抜け落ちていたよ。それで、攻撃は防いだけど、エネルギーがゼロになって終了ってわけさ」
やれやれ、という仕草をし、彼は入場してきたハッチへと向かっていった。
「……まぁ、勝っても負けてもいいんだけどね」
ボソッと呟いた彼の言葉は誰にも聞こえていなかった。
彼がアリーナから去っていく姿をモニターで見ていた一夏に織斑先生が声をかけた。
「織斑、お前の機体が届いた。フォーマットとフィッティングは試合をしながら行え」
え?としか言いようがなかった。
通常、ISのフォーマットとフィッティングにはそれなりの時間が必要なのだ。それを実戦で行え、というのは彼にとっては無謀としか思えなかった。恐らく、彼と同じ立場になる者がいれば多くの者は同様の気持ちになるだろう。
だが、彼女は、
「アリーナを使える時間は限られている。早くいけ」
「ちょ、千冬姉、無理だって!」
「織斑先生、だ。――逝け」
出席簿で叩くのを忘れずに行い、一夏を急かした。
行け、と言われたが逝け、と聞こえ彼は内心、鬼め!と叫ぶのであった。
ピット搬入口にISがあった。
一夏の第一印象は白い鎧だった。全体的にシンプルな形状のそれを眺め、そっと触れた。同時に頭に膨大な情報が流れ込んでくる。情報処理が追いつかないが、本能が悟る。“コイツ”は俺の為に用意されたんだ、と。
――大丈夫。
そう聞こえたような気がした。だから、身をゆだねた。
無垢なる白を纏い一夏は己を確認する。
各種センサー正常、各部異常なし。視界の隅にはフォーマットとフィッティングにかかる時間が表示されていた。
三十分。短いと見るか、長いと見るかは人それぞれだが、まずはこの時間を耐えなければならない。
眼を閉じこの一週間の剣道の特訓を思い出す。怠けていた体はようやく武の動きを思い出した。だが、それだけ。かつて剣道をやっていた動きすら再現できない。
辛いな。
判っていたことだ。だったら、これから巻き返していくしかない。
まずは、ここから。
カッと眼を開き、織斑先生を見た。
「千冬姉、行ってくるぜ!」
「ああ、行ってこい」
おっと、思わず千冬姉と言ったが怒られなかった。心配してくれていたんだろうか。
そうなら頑張らないとな、と自分に言い聞かせ、アリーナへ向けて足を進めた。
●
オルコットは自機の補給を済ませ、既にアリーナにいた。
目を閉じ先ほどの戦闘を思考していた。自分に何ができていて、何ができていなかったのか。龍也の戦い方を参考にできることはあったのか、否か。
最初の感想はやられた、だ。バーゼラルドの武装は開示されていたので知っていた。対応もできたつもりだ。でも、BT兵器を簡単に避けられ破壊されたのは悔しかった。
この悔しさをバネに成長しなければならない。
もっと強くなりたい。
だから、わたくしはこの戦いでも手は抜きませんわ。
そう心に決めると、アリーナに誰かが入ってきた感じがした。
一夏が現れたか、と目を開き見据えた。
「……緊張なさっていますか?」
一夏は右手をあげ問題ないという仕草をしながら、
「ほどよくな。否、どっちかというと早く戦いたくて昂っているかもな?」
「そうですか。では、始めましょうか」
先ほどの試合で昂ったのは自分もそうだ、と彼女は呟き、ライフルの銃口を一夏に向け戦闘態勢をとった。。
対する彼はブレードを展開した。ここに来るまでに武装の確認をしたが、このブレード一本しか搭載されていなかったのだ。
「俺の唯一の武装だ。龍也のようにやれるか判らないが、やらせてもらうぜ!」
「一撃で終わらないでくださいましね!」
試合のゴングが鳴った。
次回、決着の六!