インフィニット・フレームアームズ~俺アームズでブンドド~ 作:たちゅや
朝四時。
外はまだ暗く日の登りを待っていた。だが、この街には暗闇に乗じて行動している者がいた。
闇を疾走するのは四人の男性。手にはアサルトライフルを持ち、一台の車を追っていた。
対象の車は追われていることなど知らず、IS学園へと向けて走っていた。
荷台に載せているのはバーゼラルドの修理部品と完成したM.S.Gだ。
彼らが狙うのはこの荷物だ。
ただでさえ日本政府とブキヤはバーゼラルドの基本スペック以外は公表していない。少しでも情報が欲しい各国は龍也にも迫ったが、うまくあしらわれ引き出せずにいた。
そうとなれば多少は非合法な手段を取ってでも情報を得たい、と思うのは仕方がないのかもしれない。
彼らはそんな国から雇われた傭兵達だ。荷物を奪い、国へ渡す。得るのは多額の報酬金。
『そろそろ仕掛けるぞ』
リーダーの男がインカムでゴーサインを出した。
四人が立ち止まり、その内の二人が銃口を車のタイヤに向けた。
そして、リーダーが撃て、と指示を出そうとした時、戦場での勘が彼に違う指示を出させた。
『! 退避!!』
四人が今、いた位置から後ろに三歩ほど下がった。同時に、先ほどいた場所には弾痕が四つできていた。
音はしなかったのでサイレンサーが着いていたのだろう。
『敵襲だ。相手はこちらの位置を把握している』
そうリーダーが言った瞬間だった。
一陣の風が自分達の間をすり抜けていった。
生暖かい、どこか血の匂いのする風だった。
何だ?と思考するが、考えがまとまらない。それどころか気が遠くなっていく。このままではダメだ、と思うが為すがまま、倒れてしまった。
四人ともが同じように倒れたのだ。よく見ると、全員が首を斬られていた。とてもキレイで美しい切り口だった。
そんな彼らを眺めるのは一組の男女だった。
一人は刀を、もう一人は槍を持っていた。得物からは彼らの血を拭き取り、刀は鞘に納め、槍は背中に差した。
「……全く、どこの国かしらね」
「さぁね、金で雇われた傭兵達だからな。それよりも、コレを処分しないとな」
男はトランシーバーでどこかに連絡をした。
「あぁ、四人だった。後処理を頼む」
用件だけ告げて話を終えた。
なんせ、こんな日も登らないうちから仕事をさせられるのは嫌いだからだ。早く布団に入って寝たい。
だから、全てを無駄なく効率よくこなした。
ふぅ、と息を吐き女に帰るぞ、と声をかけその場を後にした。
●
朝七時。朝陽が眩しく部屋を照らしていた。
龍也は既に起きていたが、眠い目をこすりながら身支度を整えていた。
同室の刀奈も同じように制服に着替えており、時折、見る?という意味深な文字が書かれた扇子を見せてきたが、無視した。
二人とも用意ができ、朝食を食べに行く。
IS学園は様々な国の生徒が来ることから食事の内容も驚くほど整えられていた。
和洋折衷なんでもありだ。
さて、本日は何にしようか、と考えていると後ろから来ていた一夏から声をかけられた。
「おはよう、龍也!もう何を食べるのか決めたのか?」
「あぁ、おはよう一夏。そうだな、焼き鮭定食にするか」
刀奈はどうするか、と視線を動かすと彼女は既に他の者と食べ始めていた。
どうやら一夏に接触するタイミングは今、ではないようだった。
――今日に限らず、入学してからずっと刀奈は一夏と接触しないように動いていたのだ。
彼女にも色々な思惑があるようで、彼は何も言わずやりたいようにやらせていた。
食券を買い料理をもらい、空いてる席に座る。自然と隣に一夏が座り、食事を始めた。
さて、食事を始めたのはいいが、周りは女性だらけ。集まる視線に慣れてきたとはいえ、食べにくさを感じる。
最初の頃は一夏だけに集中していたのが、だんだんとこちらにも声がかかったり、視線を感じるようになって来たりで。
はぁ、全部一夏に集中してしまえよ……と悪態をつく。
「そういや、龍也。お前のISっていつ直るんだ?」
「バーゼラルドか?今日、修理部品が届くから、今日中には直せる予定だがどうかしたか?」
「いや、俺が上達するにはISの稼働時間を増やすしかないからさ。訓練に付き合ってほしくて」
それを聞いて龍也は、一夏なりに上達しようと考えてるんだな、と感心し少し考えた。
「そうだな。今日は修理に時間かかると思うから、明日から一緒に訓練しようか」
さぁ、今、一緒に訓練しよう、という言葉を聞いて反応した女生徒諸君。そわそわするな。私も一緒にできないかな!?とか言ってないで、声をかけにくればよかろうに。
などと、周囲がざわついているのにも気づかない一夏を見ながら、ふといつの間にか近くにいた篠ノ之とオルコットが話しかけてきた。
「ほ、放課後に練習するなら私も付き合うぞ、一夏」
「龍也さんの訓練でしたら気になりますわ、ご一緒させて頂いてもよろしいですか?」
「あぁ、いいぞ!な、龍也!」
構わない、と答えて、ちなみにと、先ほど一夏に伝えたことを彼女達にも話した。
「だから、やるなら明日からにしよう」
それに三人が賛成し、食事に戻った。
●
朝のHR。今日は昨日行われた、クラス代表決定戦で決まった代表の発表が行われた。
戦績は、龍也がオルコットに一敗しその後棄権。
オルコットは龍也と一夏に勝利し、二勝。
一夏はオルコットに一敗だ。龍也が一試合目以外参加できていないので、勝利数だけでは何とも言えないが、実力を加味するとオルコットが代表か、と考える面々もいたが、織斑先生は、
「一年一組の代表は、織斑一夏だ。せいぜい、精進し結果を残せよ?」
「一繋がりで良いですよね」
山田先生も笑顔でそう言うが、当の本人は驚き返答した。
「いやいや、俺は負けたんですけど!?」
それに対してはオルコットが返答する。
「わたくしが辞退したんですわ」
席から立ち、オルコットは一夏を見る。
「まずは一週間前の非礼をお詫びしますわ。熱くなりすぎて、自分を見失っていました。そして、一夏さん。あなたと戦って、あなたに可能性を感じましたわ。IS稼働時間が一時間にも満たないにも関わらず、代表候補生に喰らいついた動きは感心しましてよ。そして、クラス代表になれば戦闘経験も多く積めます。きっと、良い糧になりますわ」
などと申しておりますが、一夏本人は面倒な、という表情でオルコットを見ていた。
「ま、頑張れ一夏よ」
龍也が彼の肩を叩く。
「だったら、龍也がやってくれよ!」
「悪いね、俺は生徒会に入るつもりだから無理」
思わず語尾に(笑)とでもつけたいが、それはやめておいた。
「それに周りの反応を見るんだな」
「ふふ、織斑君が代表になって強くなれば、私達もおいしい思いができ、他のクラスにも情報を売れる。良いことづくめね」
「いやぁーセシリアは分ってるね~」
「やっぱり男性操縦者がいるんだから、この特権は使わざるおえないでしょう‼」
うん、龍也に言われて周りの反応を見たけど、俺は商品か!?
再び彼は一夏の肩を叩き、諦めて覚悟を決めろ、と呟くのだった。
こうしてこのクラスの代表は織斑一夏に決まった。
「静まれ!騒がしいぞ。オルコットもいい加減に座れ。……では、山田先生。HRの続きをお願いします」
一通り騒がせてから止める織斑先生。一夏はもっと早く止めてくれ、と思ったがパシン、と出席簿で叩かれていた。
とりあえず、一夏にとっての受難はこれからのようだ。
●
一日の授業が終わり、龍也は整備室でバーゼラルドを展開し修理をしていた。
破損、もしくは傷んでいる各関節パーツと交換用のパーツを入れ替えていく。自身で設計し開発にも携わっているため、バーゼラルド限定で言えば一人での修理は造作もないのだ。
小一時間で修理を終え、機体を磨く。ついでに、一緒に届けられたM.S.Gも確認し量子化させておく。
明日からの一夏の訓練で使うか。うん、そうしよう。
決めてしまえば、あとは訓練メニューを考えてしまうか。
「明日からは楽しみだな!」