俺たちの野良パーティーはその後も続き、無事にレア武器・ランベントライトをゲットした。
第1層の攻略会議が開かれたのは、このデスゲーム開始から1ケ月後のこと。その間におよそ2000人のプレイヤーが死んだ。
自称『ナイト』とほざくディアベルとかいうプレイヤーが音頭をとって行われた攻略会議。途中にキバオウなるプレイヤーがベータテスターを糾弾する発言をして一悶着あったが、エギルとかいうプレイヤーが鎮圧した。
ただその時、キリトはひとりそわそわしていた。呼吸する音が可聴域まで大きくなるという、普通では考えられない程の過剰な反応を見せた。それはなぜかと考えた時、答えは明白。彼がベータテスターであるからだ。
キバオウの言い分はメチャクチャなものだったが、だからといって何から何まで的はずれというわけではない。奴の言い分にも少なからず同意できるところはある。そのどれかが、キリトの過去の行動に当てはまったのだろう。
ーーと、ここまでが人づきあいが乏しい俺が頭を働かせて考え出した推論だ。俺はこれを深めるつもりはない。キリトの過去に何かがあったとして、それを俺が知ったところで価値はない。俺は過去を変えられないし、支えられるような人間でもない。頼られたって困る。
マチに言われるまでもなく、俺は手を出すつもりはなかった。いや、ホントだよ?
そんな俺たちは現在、迷宮区に入ってスイッチの練習をしていた。俺とマチ、ルルの連携は世界一ぃぃぃッ!!!なのだが、問題はアスナだった。なんと彼女、一度たりともパーティーを組んだことがないらしい。当然スイッチもできないーーというか、存在すら知らなかった。そのためこうして地道に練習しているわけだが……なんというか、雪ノ下を彷彿とさせる。髪色とか相違点は多々あるわけだが、圧倒的な才能に裏づけされた順応性は、雪ノ下だ。そういえばあいつ、どうしてるかなーー
「ハチくん、スイッチ!」
今や遠い存在となった現実世界にいる奉仕部の2人を思い浮かべていると、アスナの鋭い声が飛ぶ。交代の合図だ。
思考が明後日を向いていたことでいつもより遅れてしまった動きを、敏捷ステータスの力で速める。
それから数多のモンスターと剣を交え、俺たちは連携の確認に注力した。
その日の夜。
迷宮区に最も近い街に、俺たちは宿をとった。部屋割りは俺とキリト、女子は2人とひとりに分けられる。今日は確か、ルルがひとり部屋だったはずだ。俺には関係ないことだけどな。
正直、キリトとは別の部屋がよかった。リラックスする空間なのに、他人がいるとか八幡耐えられない。なんなら、このまま過労で死ぬまである。どこのブラック企業だよ。
ただキリトは妙に外出したがるため、寝る前まではひとりだったりする。日によっては寝るまで帰ってこないこもともあるのだ。いったい何をしているのやら……。
そのことはパーティーメンバーも知るところとなり、彼が何をしているのかという憶測が飛び交っている。それを話しに女子たちが俺たちの部屋に来ることもある。理由を訊くと『帰ってきたら尋問するため』らしい。これまでずっと根負けしてきたのだが。
そんなこともあって、この部屋の戸が叩かれることはなんら不思議はない。
ーーコンコン
今日も扉が叩かれる。またぞろ女性陣が訪ねてきたのだろう。騒がしい夜の幕開けに俺の気力はゴリゴリゴリゴリ。出たくないとも思うが、後が怖いので仕方なく扉を開けた。そしてそこにはーー
「ルル? どうした?」
リアルではまだまだ幼い現役js、こちらでは頼れるフェンサーのルルがいた。