突発!乱の書き逃げ劇場   作:乱A

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独自設定ドラクエⅡ・実験投稿③

 

《ローレシア王女、ローラ姫》

 

その美しさは建国王アレフの妻、ローラ王妃の名を引き継ぐに相応しい物で、青みがかった髪は腰まで伸びている。

その反面、勇者であった建国王アレフの勇猛果敢な性格をも引き継いでおり、魔法呪文は扱えないでいるがその剣術は近衛隊長クラスにまで達している。

 

そのローラは今、激しいまでの怒りと決意を胸に秘め、邪神官ハーゴン討伐へと旅立とうとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

第二話「旅立ち」

 

 

 

 

「ハーゴン討伐など、そんな事許せる訳がないであろう!お前はこのローレシアの王女なのだぞ、ローラよ」

「そうです父上、私はこのローレシアの王女。そして…、”ロト”の血を引継ぎし者です」

「ロ、ローラ姫様…」

「しかしローラよ」

「遥かなる異世界より来たと言われる伝説のロトの勇者アレル、そして竜王を倒した私達の先祖勇者アレフ。共に魔王討伐に旅立ったのは私と同じ16才と聞いています。それにこれは誰かが成さねば成らぬ事、父上や爺達が何を言おうとも私は考えを改める気はありません」

 

ラルス六世、そしてメルナスは何とか押し止めようとするがローラのその目はしっかりと前を見据えており、その決意もまた覆りそうになかった。

 

「解った…。どうしても行くと言うのであればそれも良かろう、ただし条件がある。付いて来なさい」

「へ、陛下?」

「はい父上」

 

条件付で旅立ちを許すと言うラルス六世にメルナスは呆然とするが父の後に付いてローラが歩き出すと慌てて自分もその後を追って行く。

 

「お待ち下さい陛下!ど、どう言う事なのですか!?」

「もはや何を言ってもローラは聞きはせぬだろう。ならばここはロトに判断してもらおう」

「ロトに…、ですか父上?」

「そうじゃ。着いたぞ、此処で旅立つ資格があるかどうかはロトに聞くがよい」

 

彼等の眼前には煌びやかな扉がある。

ラルス六世は扉に手をやり、言葉を紡ぐ。

 

『ロトの血の盟約により今、此処に命ず。扉よ、開け』

 

この扉には鍵と言う物は掛かっていない。

扉自体に封印が掛けられており、ロトの血を受け継ぐ者、即ち王族だけがその封印を解いて扉を開く事が出来るのであった。

 

そして、扉が開かれた先に有るのは不死鳥ラーミアの姿を象(かたど)ったロトの紋章が刻まれた蒼く澄んだ輝きを放つ盾が飾られていた。

 

「ロトの盾…。父上、ロトに聞くと言うのはもしや」

 

王女であるローラですら滅多に見る事の出来ないローレシア王家の秘宝、ロトの盾であった。

 

 

《ロトの盾》

 

遥かな昔に勇者アレルと勇者アレフ、二人の勇者がその身に着けた装備の一つ。

盾の中でも最強の防御力を誇り、物理攻撃のみならず、炎や吹雪等といった魔法攻撃からのダメージを軽減する力がある。

 

 

アレフは三人の子供の内、三人目に生まれた娘が遠く離れたロンダルキア大陸のムーンブルク王家に嫁ぐ際にロトの鎧をムーンブルクに贈り、サマルトリアには兜を、そしてローレシアには盾を残したのだった。

 

 

 

 

 

「さあ、ローラよ。その盾を手に取ってみるが良い。もしそなたにその資格があるのなら盾は自らそなたを主と認めるであろう」

 

ロトの装備は誰にでも扱えると言う訳ではなく、ロトの血を受け継ぐ子孫、それも装備自体が認めた相手ではなくては身に着ける事は出来ない。

現にラルス六世も装備する事は出来なかった。

 

ラルス六世は盾に選ばれない事でローラに諦めてもらおうとする反面、見事に選ばれて立派に旅立ってもらいたいと思う気持ちもあったのである。

 

そしてローラがロトの盾に触れると盾は一瞬眩く輝き、本来なら大人4~5人がかりで漸く持ち上がるロトの盾をローラは軽々と持ち上げていた。

つまりこれはローラがロトの盾に認められたという事なのだ。

 

 

「父上!」

「解っておる。行くが良い、わが娘ローラよ」

「へ、陛下っ!何を…」

 

メルナスは責める様な目でラルス六世を見据えるが、彼は何かが吹っ切れたように微笑むとメルナスの言葉を手を差し伸べて遮る。

 

「仕方ないであろうメルナスよ、約束は約束じゃ」

「しかし、陛下!」

「それにな…、私は心の何処かでこうなる事を期待しておったのかもしれぬ。これもロトの血の定めなのじゃろうな」

「へ、陛下……、姫様ぁ…」

 

ラルス六世の瞳に強い決意の光を見たメルナスはそれでも諦め切れずにローラを押し止めようとするが、ローラの瞳にも同じ光が宿っていた。

 

「解って、爺。私はどうしても黙っていられないの。その代わり約束するわ、絶対にハーゴンを倒してこの城に帰って来るって」

「姫様…、姫様ぁ~~。ううう…うおお~~~ん」

 

目の前で泣き崩れるメルナスの肩を優しく抱きながらローラはそう誓った。

メルナスの泣き声はいっそう高くなり、一部始終を見守っていた兵士達、そして侍女達の瞳からも旅立とうとしている王女ローラを想い、熱い涙が流れていた。

 

 

 

 

 

―◇◆◇―

 

そして数日後、ローラの旅立ちの日がやって来た。

城門には父親であるラルス六世、そして城の重鎮達に城に仕える執事や侍女達、さらには街の住人達も彼女の旅立ちを見送る為に集まっていた。

 

「それでは父上、行って参ります」

「うむ。ローラよ、見事その使命を果たして来るが良い。我等はこのローレシアの地を護りつつ、そなたの凱旋を待っておるぞ」

「はっ!必ずや帰ってまいります。…だからいい加減泣き止んでよ爺」

「ううう、ろ~らひめぢゃまぁ~~」

 

メルナスは未だ諦め切れないのか、その顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながら泣き続け、そんな彼の肩をラルス六世は優しく叩いてやる。

涙を拭いながらローラを見上げるメルナスは彼女の熱い決意を秘めた笑顔を見るともはや止める手立ては何も無い事を漸く悟り、自分なりの精一杯の笑顔で彼女を見送る事にした。

 

「ローラ姫様、もはやこのメルナス何も申しません。ですから帰って来るというお約束、何とぞお守り下さいませ」

「ありがとう爺。絶対に守るわ」

「……、ひめぢゃまぁ~~~~~」

「もう、爺ったら。ごめんね、行って来ます、皆」

 

再び屈み込んで泣き出したメルナスをローラはしゃがみ込んでその背中を優しく擦ってやる。

そして立ち上がると旅立とうとする生まれ育った城を見上げ、マントを翻して見送ってくれる人々に笑顔を向ける。

 

その身を包むのは旅人の服と同じデザインの「ロトの服」。

嘗てアレフがローラ姫と共に旅立つ際に、「精霊神ルビス」の祝福を受けたとされ、その防御力もかなりの物を持っている。

頭には「旅人のサークレット」を被り、首にはゴーグルを引っ掛けている。

「ロトの盾」は鋼の剣と一緒に普段は背中に抱えるようになっている。

 

「じゃあ行こうか、プックル」

「ガオゥッ!」

 

「プックル」というローラの呼びかけに答えたのは一匹の獣、強靭な体に赤い鬣を持つキラーパンサーであった。

 

 

ローラが四歳の時、年に一度のロト祭がムーンブルクで行われた際にサマルトリアの王子カインとムーンブルクの王女アリアの三人で城を抜け出し、森の中で遊んでいるとか細い声と獰猛な叫び声が聞こえて来た。

何事かと三人が木陰から覗いて見ると其処には巨大な熊に襲われている一匹の小さな獣が居た。

傷だらけのその小さな獣(ベビーパンサー)に向けて熊がその手を振り下ろそうとするとローラは突如飛び出し抱え込んだ。

その際に熊の爪はローラの背中を切り裂き、カインとアリアの叫び声が辺りに響いた。

 

騒ぎを聞き、駆け付けて来た兵士によって熊は退治され、ローラは手当ての為に城へと運ばれた。

兵士は小さな獣(ベビーパンサー)を捨てて行こうとしたのだがローラは痛みに耐えながらも抱きかかえる手を緩めようとしない為、仕方無いとそのまま一緒に連れて行かれた。

 

ローラの傷が癒えた後も彼女にすっかりと懐き、プックルと名付けられて以来ずっと彼女と共に過ごして来た。

ローラの旅立ちにも当然付いて行く事になり、父親のラルス六世とメルナスもその事には安心していた。

何しろプックルの強さはかなりの物で、護衛役としては申し分なかったからだ。

装備としては頭にはロトの紋章をあしらった額当て、前足には鉄の爪、体には鉄の胸当てを装備している。

 

 

 

 

 

―◇◆◇―

 

 

「姫様、少しお待ちを」

 

プックルと歩き出そうとしたローラを呼び止める老人が居た。

彼はローレシアの街の商人達の長である。

 

「え、何?」

「どうぞ、これをお持ちになって下さい」

「何これ……、ええーーーっ!こ、これってゴゴゴ、ゴールドカードじゃない!」

 

 

《ゴールドカード》

 

世界中の武器屋や道具屋などで定価の4分の3で買い物をする事が出来るカード。

買い物をした際にもらえる”福引き券”でする福引きの賞品だが、滅多な事では当たる事はない。

 

 

「はい、我等商工会からの贈り物です」

「で、でも……、いいの?」

「勿論ですとも。旅先では何かと入用になるでしょう、我等に出来る事といえばこの様な事しかありませぬゆえ」

「ありがとう、無駄使いはしないで大事に使わせてもらうわ」

 

ローラはそう言い、ゴールドカードを袋の中へと仕舞い込む。

そして、もう一度城を見上げるとそのまま振り向いて歩き出した。

 

「皆、お見送り有り難う。ハーゴンを倒して絶対に帰って来るわ」

 

手を振り、歩きながらそう言うローラへと城に仕える者達や街の住人達は歓声を上げながら手を振り返す。

 

「姫様ーー、頑張って下さい!」

「絶対に無理はしないで下さい!逃げるのも戦略の内です!」

「帰って来て…、絶対に帰って来て下さい!約束ですよーー!」

「うう~~、ひめさまぁ~~!いっちゃやだぁ~~~!」

 

中にはそんな子供達の声もあるが……

 

 

「ひめじゃまぁぁぁ~~~~~~~~!」

 

 

……やはり、メルナスの声が一番大きく響き渡った。

 

 

「あはは・・・・」

 

ローラはそんな彼に一筋の大きな汗を流しながら手を振った。

 

「さてと、まず目指すのはリリザの町ね、それからサマルトリアに行ってロトの兜を借りなきゃ」

「ガオゥッ!」

「うん、頑張ろうねプックル。」

 

こうして、ローラとプックルの旅は始まった。

最初の目的地はローレシアの姉妹国サマルトリア、その中間に位置する街。

「リリザ」である。

 

 

=冒険の書に記録します=

 




(`・ω・)遂に始まったローラの冒険。
独自設定その2として、お供にキラーパンサーのプックルが登場しました。
えっ、Ⅱにはキラーパンサーは出てこない?
そいつは言いっこ無しですぜ、お客さん。

独自設定その3はゴールドカード。
王女が旅立つのに銅の剣と50ゴールドの資金ではちょっとおかしい。
しかし、何万ゴールドも持って旅をするのもおかしい。
そこで思い出したのがこのゴールドカード。
これがあれば大丈夫。

独自設定その4は其々の城にあるロトの装備。
これらが入れ替わっているのは後の物語の中で理由が明らかになります。
ちなみに、”旅人のサ-クレット”はⅢの勇者が頭に装備しているアレです。

(・ω・)ノシ<では、また次回。

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