ロトの三国の一つ、ムーンブルクを滅ぼした邪神官ハーゴン。
そしてローレシアの王女ローラはハーゴンを倒す為にキラーパンサーのプックルと共に旅立った。
第三話「決意、再び」
「あ~~、やっとリリザに着いたわ」
ローレシア城を旅立った翌日の夕暮れ、ようやくローラはサマルトリアとの中間に位置する街、リリザへと辿り着いた。
何度も訪れている街ではあるが、プックルが付いているとは言え初めての一人旅の為に結構手こずっていた。
途中、襲ってきた魔物達は以前ならばそれほど手強い相手では無かったのだが、ハーゴンが悪霊の神々を契約を交わした事によって魔界より禍々しい魔力が流れ込み、魔物達もその凶悪さを増して来たのだ。
スライムやドラキーなどの元々居た魔物に加え、更に新たな魔物も発生していた。
ねばねばしている軟体の身体で人に襲い掛かり、体内に取り込んだ相手を消化してしまう「大ナメクジ」。
蟻のような姿をしながら大人ほどの巨体を持ち、その強靭な牙で獲物を骨ごと噛み砕き、食ってしまう「アイアンアント」。
プックルが居なければとてもではないが野宿などは出来なかったであろう。
まあ、おかげと言っては何だが資金的に余裕が出来たのも確かだ。
と言うのも凶暴化した魔物達は体内で魔力が結晶化し、倒した後に残されるその結晶は宝石としてゴールドの代わりにも出来るからだ。
ゴールドカードを持っているとは言え、やはり無駄使いするのは気が引けるらしい。
「とりあえず、真っ直ぐ宿屋へ直行ね。お風呂入りた~い」
そう言いながら宿屋へと歩くローラではあったのだがそんな彼女を街の住人が見つけてしまった。
「ローラ姫様、ローラ姫様ではないですか!」
「え?」
「本当だ、ローラ姫様だ!」
「え?え?」
「ハーゴン打倒の為に旅立たれたと言うのは本当だったのですね!」
「あ、あの……」
「なんて、勇敢なお方だ!」
「だから私は早く休みたいから宿屋に…」
「姫様バンザーイ!ローラ姫様バンザーイ!」
「「「「バンザーーイ!」」」」
「うう、お風呂ぉ~~。プックル、助けてぇ~~」
「ぐるぅ~~」
助けを求められたプックルではあるが、ローラは人垣に囲まれた中心に居る為に何も出来ないで居た。
その後、漸くローラが解放されたのは小一時間ほど経ってからであった。
―◇◆◇―
「ふ~~、すっきりした」
風呂を済ませたローラはタオルで髪を拭きながらベッドへと座る。
そんな彼女をプックルは少し恨めしそうに「ぐるるぅ~」と唸りながら見つめる。
彼もリリザに付くまでの戦いで体が汚れていたので風呂で綺麗になりたかったのだ。
「そんな顔をしても駄目よ、プックル。助けてくれなかったんだから今日はお風呂はお預け」
「キュウ~~ン……」
そうは言うが、それは無理な相談である。
何しろ、人間には危害を加えてはいけないと言うのが主でもあるローラからの至上命令であるのだから。
リリザの街の住人達もそれを知っているのでプックルを恐れる者は一人も居なかった。
「さてと、明日は早く街を出るからご飯を食べて早く寝ましょ」
「ガウン」
プックルも何時まで拗ねていてもしょうがないので大人しく諦めて明日に備える事にした。
そして翌日、薬草などの常備品を買い揃えておこうと道具屋に来たローラに一人の少年が近づいて来た。
「ねえねえ、姫様!」
「ん、何?」
「姫様って強いの?」
「こ、こら!タロス、姫様に何て失礼な事を言うの!」
少年、タロスのそんな質問に慌てふためいたのはローラが買った薬草や毒消し草などを袋に詰めていた女性。
別のカウンターでは彼女の夫であろう男が青い顔をしていた。
「だって~~」
「だってじゃ無いだろう!」
「あはは。まあ、そんなに怒らないであげて。私は気にしてないから」
「す、すみません姫様」
「気にしないでいいってば。う~ん、そうね。私はまだそんなに強くは無いわ。でも、旅を続けながら強くなっていって絶対にハーゴンをやっつけてやるわ」
「ふ~~ん。でも大丈夫だよ、姫様。ボクのお父さんはムーンブルクの兵士でとっても強いんだ!きっと姫様よりも先にお父さんがハーゴンをやっつけちゃうよ!」
「 !! 」
瞬間、ローラは言葉を失った。
ムーンブルクは既に攻め滅ぼされている。
つまりこの少年、タロスの父親も。
だが、今それをタロスに悟られるわけには行かない。
たとえ何れは解る事とは言え、彼女にはこの笑顔を消す事は出来なかった。
「ふ、ふ~ん、そうなんだ。でも私も負けないよ」
「うん、姫様もがんばってね!」
「いい加減になさいっ!まったく…、仕事の邪魔だから外で遊んでおいで」
「ちぇっ、は~~い」
女性に嗜まれるとタロスは外へと走って行った。
「すみません、姫様」
「お子さんなの?」
「いいえ。タロスはあたしの弟の子供、甥っ子です。一週間ほど前に弟が突然やって来て暫く預かってくれって頼まれたんですよ」
「そうなん…、ですか…」
そう聞くと、ローラは力無く、俯いて応える。
そんなローラを見て、女性は何かに気付いたのか潤みだした瞳を身に付けていたエプロンで拭う。
「もしやとは思ったのですが…。姫様、ムーンブルクは…もう…」
「……、はい…」
ローラも誤魔化しは出来ないと思い、ムーンブルクがハーゴンの軍勢によって既に墜ちている事を教えた。
ドンッ!
鈍い音が聞こえ、顔を向けると女性の夫であろう男がカウンターを叩きつけていてその瞳からはボロボロと涙が零れていた。
聞けば、女性の弟でありタロスの父親は彼の子供の頃からの親友であったとの事だ。
「弟は、あの子はそういう事に敏感な子でした。胸騒ぎがしたんでしょうね。せめてあの子だけでもと、きっとそう思ってあたしに預けに来たんだわ」
「姫様…、情けない野郎と思ってくださって結構です。俺じゃあハーゴンの野郎どころかその辺の魔物にすら敵わねえ。…お願いです、敵を…アイツの敵を取って下さい」
男はカウンターから飛び出てくるとそう叫びながら土下座をしてローラに頼み込む。
「頭を上げて。私はその為に旅に出たんだから」
ローラはそう言って男の肩に手を置く。
「姫様…」
「それに貴方の仕事はハーゴンと戦う事じゃないわ。奥さんとあの子を護る事よ」
「は…、はいっ!」
ローラのその言葉に男は涙を拭いて顔を上げる。
「じゃあ、私はそろそろ行くわ。二人共頑張ってね」
「はい!姫様こそどうぞご無事で」
「姫様、俺は…守ってみせます!コイツを、あの子を、そして皆でこの街を!」
「うん、信じているわ」
―◇◆◇―
そしてローラは店の前で見送る二人に手を振りながらプックルと街の出口へと歩いて行く。
その途中でタロスが一人の女の子に手を引かれていた。
「あれ?タロスくんじゃない」
「あっ、姫様」
タロスはローラに駆け寄ろうとしたのだが、その女の子は手を離そうとせず、逆にタロスを引き寄せながらローラを睨み付ける。
「姫様、いくら姫様といえども人の恋人に色目を付けるのは宜しくないと思います」
「い、色目?…」
「ガル?」
色目と言われて、ローラは目を丸くする。
「お、おい、変な事言うなよ!」
「変な事?…酷い!私を弄んだのね」
「何でそうなるんだよーー!」
明らかに泣き真似をする少女に、それと気付かないタロスは慌てふためく。
そんな二人を見つめるローラは呆れ返るしかなかった。
「あ、あはは……」
冷や汗を掻きながら乾いた笑いをするローラではあったが、その反面安心もしていた。
あの夫婦、そしてこの少女が居ればタロス少年も大丈夫だろうと。
「じゃあ、私は行くわね。タロス君、恋人は大切にしなきゃダメよ」
「まあ、姫様。私は貴女様を誤解していましたわ」
「違うってばーー!変な事言わないでよ、姫様!」
「あはは!じゃあ元気でね、二人共」
じゃれあう?二人に手を振りながらローラはプックルと共にリリザを後にし、旅立って行く。
今は笑顔のあの少年も何時かは真実を知り、その顔も悲しみに曇るのかもしれない。
しかし、生きている限り再び笑顔を取り戻すだろう。
彼にはあの夫婦とあの少女が傍に居るのだから。
「行こう、プックル。少しでも早くハーゴンを倒して、そして帰って来よう」
「ガルゥッ!」
「さっそくサマルトリアに行って『ロトの兜』を借りなきゃ。そう言えばカインに会うのも久しぶりね」
そう言いながらローラはプックルと共にサマルトリアへと進んで行く。
~一方、その頃~
「へ?ローラはもう既に旅立ってるんですか?」
「うむ。そろそろ、リリザに着いておる頃じゃと思うが」
=冒険の書の記録に失敗しました=
(`・ω・)で、ここでエタってしまった訳です。申し訳ない。