「う、ううん…」
パチリパチリと聞こえて来る薪の爆ぜる音、そして揺らぐ炎の明かりが目蓋越しに照らし青年の意識を覚醒させる。
一刀視点~
「何じゃ、ようやく目を覚ましたか」
「え?」
うつらうつらとした意識の中そんな声を聞き、目を開いてみると其処は寮の俺の部屋ではなく埃っぽくて石造りの床に焚き火が揺れている何と言うか廃墟っぽい場所だった。
「な、何だ此処?俺、自分の部屋で寝てた筈なのに」
「自分の部屋ぁ~?貴様は何処ぞの平野で寝っ転がっておった所をこれまた何処ぞのガキが拾うて来たらしいぞ」
そう言って来るのは右目に眼帯を着けた男、何かのコスプレなのか着崩した着物を身に纏っている。
薄汚れた格好ではあるが何と言うか妙な威圧感があり、それは彼の後ろの壁に掛けられた、たしか…木瓜紋だったかな、その旗でより一層増している。
「あ、あのこんな所で何をしているんですか?それにその格好と旗、織田家の武将のコスプレか何かですか?もしかして此処ってコスプレ会場か何かですか?」
「こすぷれ~?何ぞそれは?」
「コスプレを知らないんですか。アニメや漫画などの登場人物の格好を真似する事でその人物になり切る事ですかね」
「阿呆ぬかせっ!あにめとやらが何かは知らぬが俺は真似などしておらぬ。武将どころか俺が織田で織田とは俺よ!」
「…は?」
呆然とする俺を見ながら目の前の男は言葉を続ける。
「信長、織田右府信長である」
「…織田信長ってあの第六天魔王の?」
嘘だろうと思ってはみるが、先程から感じる威圧感が納得させる。
「何じゃ、知っておるではないか」
「いや、でもなぁ。う~ん」
「俺を知っておるんではないのか。何を迷う事がある?それよりも俺が名乗ったのだからそっちも名を明かせい!」
「あっ、はい」
とにかく今は話を合わせて見よう。
「俺の名は北郷、北郷一刀です」
「北郷?」
「貴方なら島津の分家と言った方が解りやすいでしょうね」
「島津~?ああ、あの九州のはじっこの方の、あのものすご~~いド田舎の」
「言っときますけど、俺の時代じゃ日本の南から北まで数時間…数刻もあれば移動出来ますよ」
「な、何じゃとぅ!…時代?」
「はい。俺は貴方より未来の」
「ふむ、お目覚めか。重畳重畳」
俺が答えようとした時、弓を持った男が部屋の中に入って来た。
「おお、戻ったか。こ奴がお主を拾って来た男よ」
「あ、そうなんですか。有難うございます、俺は北郷一刀といいます」
「何、たいした事はしておりませぬ。あなたを此処まで連れて来たのはまた別の者でありますれば。それより」
男は信長に狩って来た鳥を差し出す。
「羽をばむしり候へ」
「お、おう」
信長が受け取った鳥の羽を毟り出すと俺に向き直る。
「北郷殿も御手透きか」
「は、はい」
「むしり候へ」
結局三人共横並びで鳥の羽を毟っている。
「所で先程、妙な事を言いかけておったな。何やら未来とか」
「ええ、俺は貴方達が生きていた時代よりもおよそ400年ほど未来から来たようです」
「なるほどのう、400年か」
「未来の人間と聞いても余り驚かないんだな…いや、ですね」
「ククク、無理に畏まった言葉を使わずとも良い。なにやら妙にくすぐったいわ」
ニヤリと笑う信長、らしいと言えばらしいし正直ありがたい。
「それでやはり俺は本能寺で死んだのか?」
「ああ、明智光秀の謀反でな」
「くっそーーっ!やっぱりかーーっ!あの金柑頭がーーっ!」
そう聞くや否や叫びながら地団駄を踏み悔しがる。
悲壮感を感じさせないのは信長らしいという所なのだろうか。
「だとしたら天下はあの金柑頭のモンか?」
「いや、直ぐ後に秀吉に負けた。通称光秀の三日天下」
「ざまぁーーーっ!ざまあみされせ光秀のハゲーーっ!」
喜び勇んで踊り回る信長だが、ピタリと止まるとゆっくりと振り返り…
「秀吉?」
「ああ、それで秀吉が関白になって天下を取った」
「あ゛あ゛ぁ~~~~~っ!なぁ~~んであのハゲネズミが天下取ってんだよ゛ぉ~~~~~~っ!」
「喜んだり怒ったりめんどくせぇなあんたは!明智も柴田も滅ぼして秀吉が天下取ったんだよ、もうその頃には天下布武なんか誰も覚えてなかったよ!」
「な゛ぁに゛ぃ~~~~~っ!」
ひとしきり叫ぶと落ち着いたのか諦めたのか、大きく溜息を付くとゆっくりと座る。
「世はまさに無常でございますなぁ。私も信長殿から源家とかまくらの幕府が無くなったと聞かされた時、そう思いました」
「ん、源家?鎌倉幕府?…信長と一緒にいるから森乱丸かと思ったけど違うのか」
「だったら良かったんだけどネーー」
「ふふふ、私は与一。那須資隆与一でございます」
「那須与一?ああ、あの弓で有名な」
俺がそう言うと与一はortの格好で「ゆ、弓…弓でございますか」と打ちひしがれ、信長は腹を抱えて笑い転げていた。
(`・ω・)……こう来たか。