朝の日差しがカーテンを照らし、目覚ましの小気味よい電子音が部屋に響く。
新学期の朝が来た、今日からボクは高校二年生だ。
顔を洗う為に部屋を出て洗面所に向かう、廊下で父親とすれ違う。
「おはよう」と軽く挨拶をすると父が何かニヤニヤしてたみたいだけど何だろう?
ボクの名前は
身長は145㎝、もっと欲しい所だ。
目の色は緑と蒼のオッドアイで髪の色は緑。
祖母と母が外国人でその影響らしい。
顔を洗って髪をブラッシングで整える、枝毛もなく腰まで伸びるストレートヘヤはボクの自慢だ。
目もすっかり覚めて着替える為に部屋に戻ると其処はさっきまでと違い全く別の部屋になっていた。
一言で言うなら其処は可愛らしさで溢れていた。
花柄のカーテン?違う、青いカーテンだった筈だ。
クマのヌイグルミ?違う、其処には小型の望遠鏡が飾ってあった筈だ。
ピンクの布団カバー?違う、緑色だった筈だ。
クローゼットを開くと其処には可愛いと評判の女子制服があった。
この制服が目当てで受験する女の子が殆んどだという位だ。
呆然としてると父親が部屋に入って来た。
父の名は「
「どうだい聖、この部屋は気に入ったかい?」
「き、気にいるも何も…何これ?」
ボクの名前は桜咲聖、身長は145㎝で体重は見た目通りちょっと軽め。
「実は我が桜咲家には『ある』家訓があってな」
「家訓?」
緑色で枝毛もなく腰まで伸びる髪はボクの自慢だ。
「うむ。聖よ、今日からお前には…」
「ボ、ボクには……」
そして、ボクは正真正銘の……
「女子として生活してもらう」
「何だってーーーー!!」
男だ!!
「期間限定・極上
第一章・「目覚めの朝、娘と書いて「こ」と読むらしい」
突然父親の口から飛び出した女の子宣言。
当然ボクは父親に詰め寄った。
「どういう事なんだよ、何でボクが女の子として生活しなけりゃならないのさ!」
「言っただろう。これは桜咲家の家訓なのだ」
「何でそんな家訓があるのさ?」
「…男としてだけではなく女としても生活する事でファッションデザイナーとしての幅を広げる為だという事だ」
「嫌だよ。ただでさえ女の子っぽいって言われてるのに……」
「いいじゃないか、きっと似合うぞ。何しろこの制服はお父さんの自信作だからな」
お父さんはそう言いながらクローゼットから取り出した制服をボクの体に合わせてみる。
そう、この制服はお父さんのデザインでありこれ以外にも服やスカート、バッグや靴などお父さんのデザインは女の子達に大人気なのだ。
そこに、一人の女の子が部屋に入って来る。
「わーー♪聖ちゃん似合ってる。可愛いーー♪」
「おお、
「もっちろん!!」
この子は
肩までの髪はツインテールにしていて、髪と目の色はボクと違い黒一色。
可愛い物好きでしょっちゅうボクに女装を迫って来る。今回の件は渡りに船なのだろう、スッゴクいい笑顔だ。
「今日からは同じ制服で姉妹一緒に登校できるのね。嬉しいーー♪」
「姉妹って何だよ。ボクは嫌だからね」
「嫌といってもこれは決定事項だ。我儘は許されない」
「でもでもーー!」
「贅沢を言うな、聖はそんなに可愛いのに何が不満なんだ?…お父さんなんか…お父さんなんかなぁ…」
「お父さん?……そ、そう言えば家訓って事はお父さんも…?」
四つん這いになって項垂れているお父さんに尋ねてみる。…あまり聞きたくないが……
「ああ、お父さんも高校二年生から卒業まで女生徒として過ごしたんだよ…」
「卒業まで!?じゃあボクも?」
「うむ、卒業するまでは女生徒だ」
「いーーやーーだーー!」
「ねえお父さん。拒否した場合はどうなるの?」
「……一族追放だ…」
「そんな!」
「聖ちゃん、仕方ないよ。私、聖ちゃんが家から追い出されるなんて嫌だよ」
「何とかならないの?」
「何とかなるならお父さんだって何とかしていたさ。何ともならないからお父さんだって泣く泣く女生徒として過ごしていたんだぞ」
お父さんは辛い過去を思い出しているのか目尻に涙を浮かべていた。
「お、お父さんの女生徒姿…うわぁ…可愛くなさそ…」
命、何気に酷いよそれは…
「可愛くないか…それはそうだろう。何しろそんな家訓があるなんて知らなかったお父さんはな…お父さんはな……『高校デビュー』しちゃったんだぞーー!」
ぞおー、ぞぉー、ぞぉー……
お父さんの魂からの叫びを聞いたボクと命は数秒間固まっていた。
「こ、高校デビューってもしかして…中学生までは一般人だったけど高校入学と同時に不良になっちゃうって言うあれ?」
「……そうだ………」
お父さんは絞り出すような声でそう言った。
「そ、それでどうなったの?」
命は不安そうに聞いた。
「…優しかった……」
『へ?』
「みんな、優しかったんだ。女生徒達は笑顔で受け入れてくれて男子生徒の中にも笑って馬鹿にする連中は居なかった」
「あはは…そ、それは…痛そうだねぇ……」
ボクと命の口からは乾いた笑いしか出てこなかった。
「痛いなんてもんじゃないぞ。お父さんは一年間で学校を掌握して他の地区のチームからも一目置かれる程だったんだ。しかし、二年になり女生徒として過ごさなくならなくなってからは喧嘩を仕掛けてくるチームは一つも無くなった。街中で出会っても笑顔で挨拶して来るんだ」
「「痛い!痛すぎる!」」
目の幅涙を流しながら優紀は聖に詰め寄る。
「だからこそお父さんは聖に可愛く育ってもらったんだ。この日が来てもお父さんの様な痛さを感じてもらわない様にと」
「お、お父さん…そうだったの?ボクの為に……ありがとう、お父さん!」
「聖ーー!」
二人は泣きながら抱き合う。一見感動的な場面だが…
(聖ちゃん、騙されてるよ…)
命は話の真相に気付いていた。
「さあ、この制服を着て可愛い姿を見せておくれ」
「うん。じゃあ着替えるね」
聖は着替える為にパジャマに手をかけると、
「あ、あの~、見られてると着替えられないんだけど」
「え~~、気にしなくていいのに」
「そうだぞ聖。家族じゃないか」
「とにかく、出て行って~~」
真っ赤な顔をした聖に二人は部屋から追い出されるが……
「悪どいですな、お代官様」
「何の何の」
「「フフフフフフフフフフ」」
二人は聊かカビの生えた小芝居をしながら笑っていた。
十数分後、着替えを終えた聖が部屋から出てきた。
「うわ~~。可愛い、聖ちゃんやっぱり可愛いよ~~!」
女子制服に着替えた聖に命は抱きついた。
「ちょっと、命~~!離れて~~」
「えへへ~、聖お姉ちゃん~~」
「お兄ちゃんだろ!」
「ほらほら、早く食事をして学校に行かないと遅刻だぞ」
「「は~~い」」
食堂へと走っていく二人を見ながら優紀は語りかける。
そこに、まるで影の中から抜け出る様に現われた一人のメイドが話しかけてくる。
「首尾は?」
「はっ、問題はありません。何時も通りにパネルにして隠し部屋に」
「ありがとう、神楽君」
「いえ。そ、それと……」
「解ってるよ。成功報酬として何枚かは君にあげよう」
「有り難うございます」
「何、いつもながら君の撮影は素晴らしいからね、当然の報酬だよ。之からも頼むよ」
「御意!」
何という事でしょう。
優紀はメイドの神楽さんに聖の写真を隠し撮りさせていたのです。
「「行ってきまーーす」」
「ああ、行ってらっしゃい」
そして二人は仲良く登校して行った。
「聖ちゃん、手を繋ご♪」
「いやだよ、恥ずかしい」
「ぶ~~、じゃあ腕を組む」
「もっと恥ずかしいだろ」
「も~~、聖ちゃんワガママ」
「どっちがだよ!」
そんな二人を優しげに見送った後、優紀は隠し部屋へと向かった。
其処には聖が赤ん坊だった頃からの写真がいくつも飾られていた。
そして新たに加わった写真は丁度、着替えが終わった瞬間の物だった。
「さすがは神楽君、ナイスチョイスΣd」
この男、高校時代の女装の弊害で無類の可愛い物好きになっていたのだ。
「やはり似合っているよ聖。何しろこの日の為にデザインした制服だからね。そしていずれは……」
そう言い目をやった先には純白のウエディングドレスがあった。
この親父、何とかしないと。
学園編に続く…
(`・ω・)と良いナア…
ちなみに友達に書いてもらった聖たんの絵は某所にあったりします。