死神様がサボる理由【完結】   作:船長は活動停止

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はい、今回は忌み子の少女を描いてみました。下手って言わないでください。重々承知してますから。


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ではではどうぞ。



第三話

 

 

 

 

 

 

 数日後

 

 

 

 小町はその日のノルマの数の霊達を彼岸へ渡らせたあと人里へ下りてきていた。

 もちろんその理由は忌み子である少女のもとへ行くためだ。

 

 コンコン、と戸を叩くと少女が恐る恐る戸を開けてきた。

 

「やぁ、元気だったかい?」

 

 軽く手を上げると少女は安堵しながら微笑んだ。

 

「死神さん……!」

 

 少女は小町に駆け寄ると服を掴む。

 

「はいはい、今日の仕事はもう終わったからゆっくりしていけるよ」

 

 実は早足で仕事をしていたためかなり疲れていたが少女に会うためなら何ともないと同じことだった。

 

 頭を撫でると少女は笑顔を小町に見せる。

 

 普通に笑えばただの可愛い人間の少女なのに、なのに忌み子という理由だけで里の馬鹿共から数多くの暴行を受けている。

 

「ッ………」

「………死神さん?」

 

 少女が小町の顔を覗き込んで来る。すぐに気を戻す。

 

「あぁすまないね、ちょっとした考え事さ」

「そうですか?……悩み事ですか?」

「あんたが気にすることじゃないさ。それよりお邪魔しても?」

「えぇ良いですよ」

「じゃあお邪魔するよ」

 

 家の中に入っていく少女に続いて家の中に足を踏み入れる。

 

 一言で言えば粗末だった。

 

 家の中ではなく建物全体が、だ。殆ど掘っ立て小屋に近い。

 

「あんた……この家」

「分かってますよ死神さん。……ボロすぎる、でしょう。それくらい分かりますよ」

 

 一歩一歩歩く度に床が軋む。さすがに気付くだろう。

 

「けどここは里の人達が唯一私に与えてくださったところなのです」

 

 その言葉に小町は片眉を上げる。

 

「唯一?………食料は?」

「慧音さんが毎朝にその一日分を持ってきてくれます」

「…………後は?」

「何もないですよ。………ですが充分です」

「ッ………けどあんたはそれでいいのかい?」

「………暴行が無ければ」

「……………やっぱり駄目じゃないか」

(あたいが引き取ってやりたいけど……生憎家という家がないからねぇ………)

 

 ある程度のところで足を止めると腰を下ろす。

 

「それで、晩御飯はどうするんだい?」

「……一応まだ今日の食べ物は残ってます」

 

 この幻想郷には長期間保存させられる方法がないためすぐに食べないと腐ってしまう。

 

 しかし食料を置いてあるところの戸を開けると………。

 

「…………………黴が生えてるじゃないか」

 

 ひとつの食料を手に取った小町は顔をしかめてため息をつく。

 

「里の馬鹿共は心がないのかねぇ。……待ってな」

 

 小町の姿が消える。

 数秒後、大きな風呂敷を抱えた小町が現れる。

 

「お待たせーっと」

「死神さん……?それは」

「あぁこれかい?ちょっとばかし盗ってきてやったよ」

 

そう言って風呂敷を広げると食料が。

 

「それはいけないんじゃ……」

「なぁに気にすることじゃないさ。バレる前にトンズラしてきたから」

 

 へへっ、と子供みたいな笑みを浮かべて鼻の下を擦る。それと同時に小町は異変を感じた。

 

「…………」

「ん、どうしたんだい?」

「………あ、いえすみません。何でもないです」

「……………そうかい」

(一瞬少女の瞳が妖しく輝いていたような気がするが………気のせいか)

 

 ふと笑みを消すと目を細めて少女を見る。が、特に変わった様子はない。

 

「あの………死神さん」

「………ッ、あぁいやすまないね。……あまりにあんたが可愛らしかったもんでね」

「へ……!?」

 

 悟られないようにすぐまた笑顔を作ると頭を撫でる。

 

「………さて、そろそろ食事にしようか」

「……はいッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小町が帰った後寝付く時腹が鳴った。

 

「………?」

(おかしいな……さっき)

 

「――――ご飯を食べたばかりなのに」

 

「ッ!?」

 

 不意に背後から声がして振り向く。

 しかしそこには誰もいなかった。

 

「あ、あれ………」

「自分でも分かっているのでしょう?徐々に、徐々にその身体が妖怪化していくことを。人を喰らう者になることを」

「何を……!?」

 

 さらに背後から声がした。

 

「誰ですか……!」

 

 振り向くと空間が裂けてその中に目玉が無数にあるもころから一人の女性が上半身を覗かせていた。

 

「はろー、忌み子さん。……あら、自己紹介がまだよね。私は八雲紫。妖怪の賢者です」

 

 

 

 ――――八雲紫

 

 

 幻想郷にいるものならば一度や二度は必ず耳にする名だ。境界を操る妖怪であり、外の世界にも好きに行けるらしい。

 ……特に行きたいと思ったことはないが。

 彼女は式神も有しているらしくあの九尾の狐が式神にいると聞く。さらにその式神が数年前に式神を使えさせたらしい。

 

 慌てて身構える少女を見て妖怪の賢者はクスリと嘲笑う。

 

「そう邪険にならないでくださいまし。何も貴方を取って食おうというわけじゃありません」

 

 扇子を広げて口元を隠す。

 

「……何のようですか」

 

 警戒心が自然と有頂天に達した。

 

「だからそんな邪険にならないでって言ってるでしょう?」

「……………」

 

 構えを崩さない少女に呆れたのか紫はため息を吐く。

 

「まったく………。まぁそう警戒するもの無理ないわ。貴方が信じられるものはせいぜいあの死神だけだものね」

「………………」

「それより貴方。さっきお腹鳴っていたでしょう?」

「………知りませんね」

「強がりは止しなさい。自らのためにならないわよ」

「私のことを何も知らないくせに」

「………人間と人間の間に産まれた忌み子。そのせいにより里の者から暴行を受ける羽目に。そして数日前三途の川に行くも死神である小野塚小町に止められ、さらに助けられて結局は戻ることに。そこからたまに死神が家に来ることに」

 

 合っていた。いや、合っていて当然か。

 

「………それで、貴方は私を完璧な妖怪になる前に殺そうと?」

 

 冷や汗が背を伝い、鼓動が早くなる。カラカラになる口を開かせる。しかし紫は首を横に振るだけだった。

 

「別に私は貴方をどうこうする気はないわ。……殺ろうと思えばいつでも殺れるもの」

 

 悠然と放たれる言葉により恐怖を感じる。

 

「ま、せいぜい頑張りなさい……残りの人としての人生をね」

 

 そう言うと紫はスキマの中へと消えていった。すると緊張が抜けたのか四肢から力が抜けて倒れる。

 

「ハァ……ッハァ……ッ」

 

 ガクガクと足が震えて機能を果たさない。

 

「なん、なの………」

 

 頭の中が混乱して何も考えられなくなる。だがそれでも口だけは開いた。

 

「死神さん………助け……て……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと小町が振り返る。

 

 しかしそこには何もいない。

 

 

「聞いているのですか小野塚小町ッ!!」

 

 

「ヒィィ!!」

 

 小町が目線を逸らした瞬間彼女の前に机を挟んで座る少女が背もたれにもたれる。

 彼女は死神である小町の上司、閻魔である四季映姫・ヤマザナドゥ。幻想郷の閻魔様だ。幻想郷で死んだ者は皆この人に生前の罪を裁かれて地獄へ行くか白玉楼と呼ばれる転生を待つ魂達が集うところへ送られる。

 

「すみません閻魔様!」

「まったく貴方は……私に報告だけしておいて後はほったらかしなんて、甚だしいにも程があります」

「はい………」

 

 萎れて情けない声が出る。

 

「それで、私の話を無視できるほど何かあるのですか?」

「へ?」

「へ?じゃないですよ。何か悩みごとやら何やらあるでは?」

「め、滅相もございません」

「……………」

 

 見定めるように小町を見つめた後映姫は呆れ顔で目線を背けた。

 

「そうですか。無いのなら結構。では引き続き霊達の渡し役頼みましたよ」

「…………はい、失礼します」

 

 頭を垂れるとその場から消える。

 

 映姫一人しかいなくなった部屋で大きくため息をついた。

 

「……悩みごとがあるのなら話してくれればいいですのに………。まぁ丸わかりですけどね」

 

 閻魔に嘘は通じない。

 

 古来から伝われている常識中の常識だ。閻魔の部下である死神が知らないはずない。だがそれを忘れているほど今の小町は何かに夢中、といっては変だが何かに取り憑かれている。

 いやそれすら分かってしまうのだが。

 

「………運命を定められた子供。忌み子ですか……」

 

 よく幼い子供の中に忌み子がいる。その殆どが里の者に殺されたり自ら命を断ったりしている。その者達は見るに絶えない。

 

「……ですが里の脅威になる前にその命は断たなければなりません」

 

 閻魔は常に公平でいなければならない。どちらに加担してはならない。たとえどんな理由があろうとも、だ。

 

「小町、貴方はもう少し周りを見なさい。貴方はひとつのことに囚われすぎている」

 

 ボソリと呟いた言葉は誰の耳にも届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霊達を乗せた槽を漕ぎながら小町は水面を眺めていた。

 

「…………」

 

 今自らはどうするべきか。恐らくあの子の味方は里の中では少なくとも一人もいない。

下手すれば幻想郷にすらいないのかもしれない。

 

「…………………ッ」

 

 そう考えると苛立ちが起こり、余計に里に怒りを覚える。

 

「どいつもこいつも脳みそが腐っていやがるな……!」

 

 幻想郷全土を睨み付ける瞳が真っ直ぐな鎌の刃に映った。

 

 





紫様初登場。

感想、評価お待ちしております。

では次回までバイバイです。
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