死神様がサボる理由【完結】   作:船長は活動停止

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閻魔様です。特に何も言うことはないです。


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ではではどうぞ。



第五話

 

 

 

 

 

 机を挟んで反対側に座る慧音が先程少女に貫かれたところだろう箇所に包帯を巻いていく。

 

「で、傷の方はどうだい?」

「自身のことよりまずは他人なんだな」

「別にー、あたいは普通じゃないからね。他人を気にすることが出来るんだよ」

「では私も普通ではないな。この傷程度なら二日、三日あれば治る。普通の人間だったら致命傷レベルだがな」

「…………あの子がやったものだろ?それは」

「…………あぁそうだ」

「それにしても些か早すぎるんじゃないのかい?あんたはあの子が人間でいられるのは数週間、と言ったはずだ」

「あぁ言ったな。………それについては私もお手上げだ。普通なら忌み子というのは徐々にその心身共に妖力に蝕まれて最終的に全てを喰らい尽くされ完全な妖怪と成る。それが常識なはず、……だがあの子はいきなり完全な妖怪に近い存在と成った。今はまだ人間としての自我を持っているが……このままだと………そうだな……明日にでも成るかもしれない」

「そんな………」

「残念だが私の経験上ほぼその想定で確定だ………さっきの様子を見てな」

「完全な妖怪に成ったら………」

「博麗の巫女が動くだろうな」

「ッ!?」

 

 慧音がその名を出すと一気に冷や汗が流れてくる。

 

 

 

 

 

 

―――――博麗の巫女

 この幻想郷を覆う博麗大結界の管理を任されている人間ではない力を持つ人間。それと同時に幻想郷の害となる者の駆除を担い、均衡を保たせる者。そのため妖怪からは恐れられている存在。幻想郷を保つためのシステムそのもの、または人の形をした精密機械。その力は妖怪の賢者と同等と聞く。よく言えば幻想郷の守護者、悪く言えば幻想郷の支配者。この幻想郷の頂点に立っているであろう人間。

 

 

 

 

 

 

「彼女に目を付けられたら最後、肉一片も残らず消されるだろう」

「そういえばいたねそんな化け物」

「………人間であり人間でない存在だからな彼女は……」

「………それだとあの子が博麗の巫女に見付かったらマズい、みたく言ってるように聞こえるけど?」

「………鋭いな。あぁそうだ………私にも情というものがあってな、あの子にはそんな最期は迎えさせたくない」

「……何か策でも?」

「ない」

 

 即答だった。まるで小町の質問を予測していたかのように。

 

「……………あの子をどうするつもりだい」

「……最悪の場合私が殺る」

「――――ッ!」

 

 机を蹴りあげると慧音の胸ぐらを掴み上げる。

 

「あんた……!何が情がある、だ!ふざけるのも大概にしなよ!あの子でも人間の一人、里の人間なんだよ!?その子を里の、しかも守護者であるあんたが殺してどうなる!!」

「………守護者の私だからこそ、だ。それに仕方無いだろう。私が殺らなければいずれ博麗の巫女に殺される。だとしたら早めにその芽を摘むのが幻想郷のためでありあの子のためなんだから」

「…………ッゥ!」

 

 慧音の言葉に何も言い返せず奥歯がギリッと歯軋りをする。

 

「……………私はな、産まれたばかりに半獣という理由で殺されかけた。……私がここにいるのは半獣の力を抑え込み、そして自我を持っているからだ。そのおかげで私は殺されずに済んだ。……必ずしも忌み子が妖怪や妖獣になるとは限らない。あの子だってその可能性だってあるんだ。……だからせめて、せめてものの次あの子が妖怪化するまで待とう。……もしそうなったら私は全力を持ってあの子を殺しにかかる。だが妖怪化してもあの子が自我を保ってられたのなら、その時は考えよう」

「…………………納得がいかないね」

「どの点についてだ?」

「根元から。あんたは知ってるだろ?あの子が忌み子、という肩書きのせいであの子の両親が殺されたこと」

「……………そこまで知っていたのか」

「あの子から直接聞いたよ。相当なご身分なことだ守護者様は。今度は隠し事かい?何故だ?あんたの能力を使えばあの子の、この幻想郷の記憶からあの子の両親の記憶を消せばいいだけじゃないか。だがそれをしなかったのは?考えられることはひとつ。わざとあの子の記憶に自身のせいで両親が殺された、ということを植え付ける。そして精神的にあの子を追い込んで自然と自殺させるように仕向ける。ずっと変だと思っていたんだ。……あの子が苦もなく三途の川に辿り着けるわけないってね。……その間あんたは何をしていた?恐らくその子を喰らおうとする妖怪を止めていたんだろう。……死体を見るのが怖くてね。三途の川を渡ればそのまま実体は浄化され魂だけが彼岸に渡れる。そうすれば死体を見ずに済む。だからあんたは妖怪を止めていた。そうすれば苦もなく辿り着ける。どうだい?訂正があるなら聞くけど?」

 

 小町が立てた仮説を聞くと慧音は気まずそうに視線を逸らした。それだけで答えは伝わった。一気に顔がくっつきそうになる距離まで引き寄せる。慧音の瞳には普段の温厚そうな表情ではなく憤りで今にも自身を殺そうとしている小町の表情が映った。

 

「どうしてだ!どうしてそこまであの子を殺そうとする……!あの子は何も悪くないのに…………ただ忌み子、というだけで殺されなくちゃいけないんだ!!やっぱりあんたは里の馬鹿共と同じだ……!里の中でもあの子を理解してるのはあんただけだと思って小さな希望に縋り付いたあたいが馬鹿だったよ………!」

「勝手な希望に縋るお前が悪い」

「―――ッ何処まであの子を虚仮にすれば気が済むんだ!」

「別にあの子を虚仮にする気はサラサラない、だからといって同情もしない。あの子のためにならないからな」

 

 胸ぐらを掴んでいる手を掴み返すと引きはがす。

 

「いつまで掴んでいるつもりだ。放してもらえるかな」

「……………」

 

 しかし小町はさらに力を加えて再び胸ぐらを掴む。さらに壁に叩き付けた。

 

「………何のつもりだ?」

「……………」

「放してくれるかな」

「…………け……な」

「……?」

「ふ……け……な………ふざけるな……ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!あんただけ高みの見物か!?アァ!?何があの子のためにならないだ!そんなのあんたの勝手な自己満足だろうが!同情だってなんだっていいからあの子を一人にさせないであげなよ!」

「…………だったらお前が一人にさせなければいい」

「ッ!自分の言葉には責任を持てよ里の守護者様よォ!あたいだけじゃ意味ないんだよ!あたいは三途の川と彼岸を結ぶ舟の番頭だ。そう易々と会いに行ける立場じゃないんだよ!だがあんたはどうだ、毎朝毎朝会ってるだろう!その時に何か声をかけてあげれたのかい!?」

「…………………………」

「次はおだんまりか。黙ってたって何も分からないよ。………口を開きな!!」

「…………里の滅亡か少女一人を犠牲にするか、お前だったらどちらを選ぶ?」

「ッ………そ、それは……………」

「………死神、お前はさっき私に自分の言葉には責任を持て、そう言ったよな。……その言葉、そっくりそのまま返させてもらう」

「何だと……ッ!」

「確かに私は無責任かもしれない。だがお前は大概だろう。自身の責任を他人に押し付けている。…………定められているんだよあの子の未来は」

「今あんたの未来を決めてやろうか………!」

「それは勘弁被りたい。……例えそう出来たとしてもお前は里を、幻想郷を敵に回すことになるぞ?」

「それは自分を守るためのものかい?」

「まさか、事実だ。………強いて言えば警告だな」

「へぇ……そんな程度であたいが挫くとでも?嘗められたもんだ」

「博麗の巫女を敵に回したいのか?それは感心しないな」

 

 哀れむように目を伏せて無理矢理手を解かせた。

 

「時間を取ってすまないな。……今日はもう帰ってくれるか」

「…………………チッ」

 

 舌打ちして慧音との距離を離すと一瞬で姿を消した。まるで逃げるかのように。

 

「……そうだな、確かに私は無責任かもしれない。………ただ気持ちだけで命ひとつ救えるのならこの幻想郷はもっと平和なはずだ。時に運命は喜劇になり悲劇になるんだからな………こればっかりはどうしようもない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃ……何だよあれ……!」

 

 里からかなり離れた場所に位置する森の中で腕は右腕がなく、左腕があらぬ方向に折られて、さらには顔面が半分削り取られていた。全身がグチャグチャに果てた妖怪が何かに脅えながら駆けていた。

 元々何匹かで里の近くで人間に襲っていたが、ある一人の人間によって壊滅に追い込まれていた。

 

「そこまでよ」

「ッ!!」

 

 冷たい一言と共に前方に人影が現れる。

 紅白の巫女服に刀を携え、手には対妖怪用の札が握られていた。

 

「まったく……そんなビビることないじゃない」

「な……何だよお前は!どうして俺達を狙う!?」

「あ?愚問ね。決まってるじゃない。あんた等が里の人間を襲おうとしていたからよ」

「……!この世界は楽園だと聞いた……!だが来てみれば里の人間は食うな、だと!?ふざけるにもほどがある!」

「馬鹿ねあんた。郷に入っては郷に従えって言葉を知らないのかしら?……だから新参者の妖怪の相手は嫌なのよ」

「何が楽園だ………!これじゃあただの監獄じゃないか!」

「そもそもの意味が分かってないみたいね。この幻想郷は人間と妖怪が共に手を取り合って初めて楽園と成る。今はその発展途上よ」

 

 そう言うと腰に差してある刀を引き抜いた。その際に何やらパラパラと粉みたいなものが落ちる。

 

「何が…………」

「あぁこれ?最近使ってないから昔の妖怪の血が固まったやつね。無駄に清めても逆効果だと思ってそのまま放置してたのよ」

「血塊……?」

「ま、そんなところよ」

 

 体勢を低くすると刀を真っ直ぐ構える。

 

「せいぜい後悔なさい。私の前に現れたことを、ね」

「う………く、そォォォォォ!!」

 

 最期の抵抗と吼えて博麗の巫女に駆け出す。

 

「…………夢想封印」

 

 刀が突き出されて妖怪を貫く。するとそこから陰陽玉が七つ出で、妖怪を周りを飛び回る。

 

「な、何だよこれ………」

「さようなら、妖怪さん」

 

 指を鳴らすと博麗の巫女が後ろに跳び、陰陽玉が七色に輝く。

 そのまま押し潰し、妖怪は血と絶叫を撒き散らす。そして絶叫が聞こえなくなるとそこに残っていたのは血痕だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、これで終わりかしら。………にしても困った奴等ね。ま、下級の妖怪だから仕方のない事だと思うのだけれど」

 

 刀を鞘に収めると陰陽玉も消えいく。

 

「少しは学習してほしいものね。………そういえば紫が里に忌み子が産まれたとかなんたら言ってたわね。……そっちも注意しておかないと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 博麗霊夢より二代前の巫女。

 他の巫女とは違い刀を主として妖怪退治を行っている。刀には陰陽玉の素材が仕組まれており、刀を突き刺して妖力に触れると陰陽玉が発生するという能力を持つ。

 

 

 

 






博麗の巫女初登場。

感想、評価お待ちしております。

では次回までバイバイです。
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