「―――――――博麗の巫女!あんただアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!」
絶叫とも言えるほどの声をあげて社へと歩いていく憎い、憎い背に迫り、力任せに鎌を振り下ろした。
「……………………」
そんな鎌は巫女を裂く寸前に止められた。
「な………!?」
「軽すぎるわよ、そんな攻撃」
「…………ッ!」
慌ててバックステップして距離を取ろうとしたが無駄だった。巫女はすでに懐に潜り込んでいた。
「妖怪同士土でも舐めてなさい」
「―――――――!」
掌底で心窩を打ち上げられて血を吐きながら勢いよく地を転がる。
「…………ッ!カハ……ッ」
一撃くらっただけで意識が飛びそうになる。それほど今の一撃は身体に響いた。
「ッこんな程度で!!」
気力だけで立ち上がり、能力で巫女の背後に移動する。
(背後取った――――――)
いかに博麗の巫女といえどこれには反応出来な―――――――
次の瞬間巫女が振り向いてその瞳に小町を映す。
「え…………?」
「甘いのよ。考え方が、戦法が、全てが」
刀を抜いて小町に突き出す。何とか反応して身を捻って肩に突き刺さる。
「夢想封印」
「―――――――」
その言葉を発すると小町から力が抜けていく。そして刀から半透明の陰陽玉が出てくる。
「まさか……!妖力を吸収して……!?」
「大正解。ま、当てたことだけは褒めてあげるわよ」
「……………ッ!」
陰陽玉に囲まれて逃げ場を失う。だがそれでも刀を掴み、引き抜く。
「まだ………まだ終われないねぇ!!」
「終わりなさい」
その冷たい一言と共に放たれる陰陽玉。
「ク………ッ!」
すでに陰陽玉は避けられない位置にあった。小町の目の前に迫ると大爆発を起こした。
▼
「…………………」
境内に出来た小さいクレーターを見ながらやり過ぎたと少し後悔した。
「……こんな……程度かい……博麗の巫女は………」
「ッ!」
聞こえてきた蚊のような声に耳を疑った。そしてクレーターの中心に視点を当てるとそこには死神が膝を笑わせながらも立っていた。鎌は先程の爆発で波を打つように曲がっていた。
「………こんな程度……じゃあたいは倒せないよ…………」
息を乱しながらその言葉だけはハッキリと聞こえた。
「…………貴方、ここで死ぬ気?」
問い掛けると死神は無理矢理笑みを作る。
「あぁ……あんたとなら……死んでもいいかもね」
「…………馬鹿ね、どれほど向かってこようが貴方に私は殺さないわ。貴方が傷付くだけよ」
「ハッ……!どれほど傷つけられられても………あの子が受けてきた傷に比べれば……こんな程度………ないと同じさ!」
鎌を薙いで波打つ刃に博麗の巫女を映す。
「……ふん、分からず屋ね貴方。……一番私の嫌いな質よ」
「あんたの好き嫌いなんざ知らないね!」
全身の骨という骨が軋み、動く度に痛みが生じる。だがなんだ、殺すのをやめる理由にはならない。
「あたいが殺すと言ったんだ。……逃げようったって無駄だよ」
「……台詞そのまま返すわ」
再度刀を死にかけの死神に向ける。
「死になさい」
「ァ……………ッ」
殺気が小町を貫くが震える身体を押さえて鎌を後ろに引いた。
「遅いわよ」
その言葉と共に博麗の巫女が懐に潜っていた。
「―――――ッ!?」
「夢想封印 撃」
刀が小町の胸を貫く。
「カ………ッ!」
さらに急速に妖力が吸い取られていく。それも存在を維持するために必要不可欠な妖力までも、だ。
「は……な―――」
「吹っ飛びなさい」
その一言と共に先程とは比べ物にならないほどの爆撃が起こり、小町の四肢を打ち、吹き飛ばして地に叩き付けた。
「――――――――ァ」
まだ意識はあった。今にも落ちそうな意識を口の中の肉を食い千切って無理矢理覚醒させる。
口から大量の血が流れ出るが身体の方の出血に比べればまだ浅い方だ。
「あたいは……まだ死んじゃいないさ……」
「…………ッ」
その姿にさすがの博麗の巫女でも唾を飲み込む。確かに巫女として何千体超ものの妖怪を殺してきたがこれほど向かってくる者はいなかった。ましてや自らの為ではなく他人の為に、である。
「……………分からないわね。どうしてそこまであの忌み子に固執するかが」
「全てにおいて………中立の立場のあんたには…………分からないだろうね……いや、誰にも分かってたまるものか。…………この怒りはあたいだけのものだからね!!」
「――――そこまでにしておきなさい小野塚小町」
「――――ッ!」
反射的に動きを止めてしまった。恐る恐る振り返るとその視線の先には……
「閻魔様…………」
四季映姫・ヤマザナドゥが佇んでいた。
「………博麗の巫女に手出しすることは許しません」
「博麗の巫女………?冗談やめてください……あいつは………人を殺した人殺しですよ!?」
「黙りなさい」
冷酷な一言で小町の身体が竦み上がる。
「巫女が殺したのは一匹の妖怪の端くれ。それも人食いの。あのまま放置していたら多くの死人が出ていました」
「………ッ!」
言い返す言葉が無いのかギリッと歯軋りして地に視線を落とす。
「…………貴方の気持ちは分かります。ですが貴方がいくらその巫女に復讐したとしても貴方の気持ちは晴れることはない。それ以前に勝てるはずもない」
冷静に考えてみれば当たり前のことだった。あの少女が妖怪になった時点で守られる側から狩られる側へと成ったのだ。それも人食いに。あの子も辛かったに違いない。だとしたらあたいは博麗の巫女に本来礼を言わなければならない。それなのにあたいは生きることが全てだと思ってあの子を生かし続けていた。それが間違いだった。あたいはずっとずっとずっと………あの子を苦しめていた。全部あたいのせいじゃないか………。もし初めて会ったとき彼岸へと渡していたらどうなっていただろうか。彼岸へ渡していればあの子を苦しめずに楽に逝かせてあげたのに。あたいが変な気を起こしていなければあの子は幸せだった………そう、幸せだった。
「あたいは………ッ!あたいはなんてことを………」
小野塚小町という者の全てが崩れて泣き崩れる。
「全部あたいのせいじゃないか……。そうか……あの子を苦しめていたあたいなのか…………」
「…………小町」
「……………すみません、閻魔……いえ、四季様。しばらく一人にさせてもらえませんか」
今にも消えそうな声で、しかしそれは映姫の耳に届いた。
「………………」
考える素振りを見せるとひとつ息を吐いた。
「分かりました。貴方がそうしたいのならそうさせてあげます」
「………ありがとうございます」
「…………博麗の巫女、貴方はこっちに来なさい」
「はぁ?何でよ」
「いいから来なさい」
「…………………分かったわよ」
崩れ落ちる小町の横を通り過ぎて映姫の元へと歩いていく博麗の巫女。するとポツリ、ポツリと雨が降り始める。服が肌と密着するが今は気にならなかった。
博麗の巫女を見送ると少女の方をチラと見て微笑む。初めて会ったとき小町は少女に『殺しに来る死神はいない』と言った。だがそんなものは勘違いだった。殺しに来る死神は小野塚小町、彼女自身だということを。……少女の死に誘ったのは他の誰でもない自分自身だ。だったら、だったらちゃんと償いは受けなければならない。
傍らに落ちている鎌を回転をかけて真上へと放った。
すぐに鎌は落下をし始めて小町に迫る。
「待っててね………今あたいがそっちに逝くから……そしたらお話いっぱいしようね………」
しかし、
「小町――――――――!!」
鎌が小町を裂く寸前小さな身体が覆い被さった。
夢想封印エグいですね。
感想、評価お待ちしております。
では次回までバイバイです。