あー、疲れた……
「ッ……」
気が付くとまたアノ世界に立っていた。
「ヤレェ!!」
「仕留めろォ!!」
出現した途端、身の覚えの無い敵意を向けられる。
降り注ぐ雨の様な、銃弾、レーザー、エネルギー弾、そして投擲武器。
霊装のお陰で痛みはない。
痛みはないが、霊装は人の殺意までは消してくれない。
「あッ……!」
――怖い――
「ヒャハ!!精霊は消毒だぁ!!」
「逃がすな!!」
「今日こそ仕留める!!」
――この世界は――怖い――
「や、めて、くだ――キャ!」
言葉を話そうとした瞬間、目の前で爆発が起こった。
炸裂弾か何かが、すぐ近くで破裂したのだろう。
『おおっと、よしのんにオイタとは、やるねぇ?』
「よ、しのん……」
助けを求めようと、自身の右手を見るがソコにはいつも彼女を守ってくれるパペットは存在していなかった。
――息がつまる――うまく呼吸ができない――怖い――
「ヒャハ!!」
「はぁ!!」
「始末する!!」
尚も敵意はその少女を苛み続ける。
守ってくれるものを、失った時。
自身の口が動くのが分かった。
「
ぐぅぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!
地面からせり出す様に、その心の無い守護天使は現れた。
「なにぃ!?」
「氷が!?」
「ひゃは!!薄着には辛いぜ!!」
「助け――」
「逃げ遅れ――」
数人の人の声が聞こえなくなる。
――ごめんなさい――ごめんなさい――
自分のした事に、震え始める。
寒さのせい等ではない、相手を傷付けた心苦しさからだ。
そんな四糸乃の心を無視するように、心の無い天使は町を氷の世界へと変えていく。
たった一体、たった一体のパペットによってさっきまで人の住んでいた平和な街並みが氷と冷気の覆われた生物の住むことのできない死と停滞の支配する世界へと変わっていった。
「なんだコレ……」
フラクシナスの艦内のメイン画面に映る、氷に覆われていく街並みに士道が小さく声を漏らした。
十香の時の破壊された街並みもそうだが、今回は明らかに街並みを残した姿で別物に変りつつある事が否応なしに異常性を感じさせた。
「精霊が無茶やってるのよ、雨に霊力を含ませてってのが何時ものパターンでしょうが今回は地下水路や水道水まで自身の能力として取り込んでいる。
なるほど、利用できる水は町ならいくらでも有る訳ね……
そして、その水を利用して――」
画面の中央、巨大な水と氷と風のドームが鎮座して居た。
このドームの中、この奥に四糸乃が居る。
「まるで全てを拒絶する、絶対の防御。
さぁ、お姫様はあの中よ。
そして、ASTもいつまでも手をこまねいて見ては居ないでしょうね」
琴里がチュッパタップスで画面をさすとASTが巨大な大砲を用意している様子が見えた。
「まさか、アレを――」
「撃つ気でしょうね。
それがASTの仕事でしょうし、動かない敵になら命中率を無視した威力の攻撃が出来るわ。
流石に、コレは危な――」
グラァ!
フラクシナスが、突如揺れる!!
それと同時に、艦内のアラームが鳴り響く!!
「まだ、遭っても居ないのに……!!
もう、不機嫌のサインか?」
「違うわペドー!!このアラームは!!」
「指令!!大変です!!
精霊の霊力を含んだ雨により艦内のシステムがダメージを!!」
船員の内の一人が、叫ぶように報告を入れた。
フラクシナスとて、所詮人工物の戦艦。
霊力を含んだ雨と霊力による冷気を影響を受けない訳では断じてない!!
「くッそぉ!!顕現装置の3分の2を残りの3分の1の補助に使いなさい!!
このまま、此処に居るのは危険よ。
最悪この艦を地面に落とすことに成りかねない……
最低限、ステルスと冷気に対するバリア、それと余った力を利用してこの空域を脱出するわ。
四糸乃は残念だけど、次回また顕現した時に攻略するわ!!」
士道を乗せたフラクシナスが、四糸乃の居る氷のドームから離れていく。
「あ……!」
士道が小さく声を漏らした、四糸乃の隠れるドームが爆風を上げた。
ASTの使った例の大砲だろう。
小さく、ドームの壁が崩れたがすぐに氷が修復していく。
「退避よ、士道。
今は耐える時よ、流石にASTの居る真っただ中にアンタを連れて行くことは出来ない。
次のチャンスを待つのも立派な作戦よ」
琴里が諭す様に話す。
一言一言かみしめる様に、言葉を紡ぐ。
「そうだよな、あ~焦った。
あの中行けって、言われるかと思ってビクビクしたよ。
前さ、十香の時俺撃たれたじゃん?あの時は精霊の力っぽい炎で何とか成ったけど、今回は流石にやばいなーって思ってたんだよ」
早口で、士道が琴里に話す。
どうやら、静かだったのはビビっていたから、らしい。
その様子に琴里は安心した様に息を吐く。
「ええ、あの力ね。
回復はするけど決して、過信してはいけない力ね。
アンデットモンスター張りに戦えるチート染みた力よ」
「そっか、便利な力だよな。
これで、
一転して、士道が真剣な表情へと変わった。
ふざけた態度から、凛々しささえ感じられるほどに。
「ちょっと、何をする気?
バカなことはするんじゃない――」
「お前は、耐えれるのか?」
「え?」
士道の言葉に琴里が固まった。
「幼女が泣いている、悲しんでいる!!
分かるか?公園で笑って遊んで友達とふざけ合って、笑顔がきらきら輝いてるのが幼女なんだよ!!
幼女とは無条件で幸福であるべきなんだ、その振りまいた笑顔に救われる
はっきり言おう!!俺は幼女が好きだ!!舌足らずなしゃべり方が好きだ!!未成熟な体が好きだ、締まりの無いぽっこりしたお腹が好きだ。
小さな足の指を見ただけで快感すら覚える!!
お手伝いに失敗して涙目になる様を想像するだけで、おかしくなりそうだ!!
俺はそれらの感情すべてを肯定する!!
幼女こそ正義!!幼女こそ真理!!
真剣にそう思える!!ならば!!悲しむ幼女に背中を見せる事は出来ない!!」
「ちょっと、何を――」
「
士道が、フラクシナスのハッチを開けた。
非常時にしか開かない設計だが、現在は制御コンピューターまでも艦の維持に使っている状態。
力業で簡単に開くことが出来た!!
「あのバッカ!!」
「ひゃぁあああああほぉぉぉぉぉいいいい!!!」
冷気と雨の降りしきる中!!
パラシュートなしのバンジーをするペドー!!
その胸の内には確かな、計画があった。
「あの炎、たぶん精霊の力だよな!!
2個も3個もこの世に不思議テクノロジーなんて無いよな。
だったら、『俺の中の力』って考えるべきだよな!!
俺は、精霊の力が使えるハズだ!!
来いよ……」
胸の中から取り出すイメージで、十香の剣『
「来いよぉ!!サンダルフォン!!!」
カッ!!
ペドーの手の中、十香がかつて振り回していた。
破壊の象徴、悲しみを生み、苦しみの中で振るわれた剣が今!!
少年の思いに応え、守る為、救う為にその力を振るう!!
「だらぁ!!」
鏖殺公を近くのビルの壁に突き立てる!!
ガガガガッガガガ!!
けたたましい音をたてながら、凍り付いたビルに縦線を入れていく。
剣の抵抗分、ペドーの落下スピードが減速していく。
『何やってるのよ馬鹿!!
まさか、今の計算なしでやってないわよね?
なんどもシュミレーションした後にやったのよね!?
一歩、間違えば大惨事なんだけど!!』
インカムから琴里の声が漏れる。
どうやら小さな指令は相当お怒りの様だった。
「わり、許してちょんまげ」
『ふざけんな!!一歩間違えば死ぬって世界よ!?
戻りなさい!!早く!!今なら――』
「さーて、四糸乃救いに行くぞー」
『聞く気無し!?』
琴里の言葉を無視して、再びさっきの感覚を思い浮かべようとする。
自分の中には、世界を壊せる力が眠っている。
それは無く成ったりしてないハズだ、それを今から使う。
琴里にカマかけて見てわかった。
自分には、精霊の力を使う力が有る。
「ちょっとくすぐったいぞ?」
目の前に十香の座っていた、黄金の玉座が有る。
ペドーはそれに飛び乗って腰掛け部分を倒す。
玉座は少しずつ、形を変えて歪なサーフボードへと形を変える。
「さて、行きますかぁ!!」
地面を蹴って、黄金のボードによる氷世界の滑走が始まった!!!
「なぁ、琴里ぃ!!」
『何よ、馬鹿ロリコン』
「ごめんな?けど、逃げたくないんだよ」
『勝手に死になさいよ、馬鹿!!』
「たはは、帰ったらデラックスキッズプレート食わせてやるからな?
あ、フラグか?コレ?」
笑い飛ばしたあと、ペドーがボードを加速させる!!
もう止まらないし、止まれない。
「ヒャハ!!寒いぜ!!ホッカイロを買って来れば良かったぜ!!」
「紅茶、入りましたよ~」
ASTのメンバーが、現在新兵器の起動エネルギーチャージの時間を利用して休憩をはさんでいた。
世紀末ファッションの男性メンバーはやはり、寒い。
女性メンバーも入れて、お茶を楽しんでいた。
「ヒャハ!!暇だからクッキー焼いて来たぜ!!」
「うまっ!?女子力で負けた……」
「エネルギー充填65%!!……携帯より遅い……
実践での使用はまず無理だな……」
そんな中、折紙が小さく口を開いた。
「私にいい考えが有る」
「ん?なんだ?」
「祝賀会は、焼肉」
「それだぁあああ!!」
「肉だぁああああ!!」
折紙の祝賀会の計画に、他のメンバーが狂喜乱舞する!!
シュバァ!!
そんなメンバーの横を、誰かが高速で走り抜けていった!!
「なんだ!?子供!?」
「ゴールド・サーファー?」
「シルバーじゃなくて?」
「うぉおおお!!」
氷と水が散弾の様に振りまく、ドームの中!!
ペドーが進んでいく!!
ボードに身を任せ、ひたすら目的の相手を探し向かう!!
全身が痛い、目が開けられない、まっぐす進んでいるかもわからない。
だが、何となくわかる。
俺の助けを待っている人が居る!!
そして――
遂に、氷と雨の止まった場所にでる。
ボードも服もボロボロだった。
だが、少し先に四糸乃が呆然とこちらを見ていた。
服の下にかくしたよしのんを取り出し、手に装着させようとして止める。
(よしのんって、四糸乃がいつも手を入れてたんだよな?
これに手を入れれば、間接握手――いや、もっとこう、触って欲しい場所に装着すれば――)
『変な事、考えてないわよね?』
インカムから、琴里の声が聞こえて来た。
今まさに、不埒な事を考えていたペドーが慌てる!!
「そ、そんなハズないだろ?
ほ、ほらー、四糸乃?よしのんだぞー?」
『はぁい、四糸乃!
一人で良く頑張ったねー。
ペドーさんが来たから、もう安心だよ?』
下手糞な、声真似でよしのんを演じる。さりげなく自分に依存する様なセリフを話させる。
「よ、よしのん……」
四糸乃がよしのんを受け取ると、素早く自分の手に装着する。
パクパクと動かす。
『たっだいまー!!恋しかった?恋しかった?んん?』
「あえて、よかった……」
ぬいぐるみと会話していると、「家族が増えるよ!」的なイメージが浮かぶがいろいろと台無しに成りそうだからやめた。
「ぺ、どー、さん」
「ちゃーんと、連れて来てやったぞ?
これで、もう怖くないな」
笑顔を作り、四糸乃の顔を覗き込む。
「あ、ありがとう、ございます。
よしのんを連れて来てくれて……」
「ご褒美はチューで、よろしく」
「ちゅー?」
訳が分からないという顔をする四糸乃に対してペドーが破れたポケットから、目のハイライトの消えた幼女が、同じく目のハイライトの消えた拘束された男に馬乗りに成って無理やりキスをしているイラストを見せる。
「これこれさぁ!!俺に馬乗りになった!!さぁ!!早く!!」
地面に寝転がって、四糸乃を呼びつける!!
インカム?うるさいから捨てたよ?
「は、はい……失礼、します……」
ペドーの唇と四糸乃の唇が触れる!!
容赦なく舌を入れたら、拒否られた……
だが、体に温かい物が流れ込み空が晴れ始める。
封印成功の合図だ。
「あ、ッ……」
「きゃ……」
ペドーと四糸乃が同時に浮かび上がり、フラクシナスの内部に転送される。
どうやら琴里が回収してくれた様だった。
「いろいろ言いたいけど……!!
いろいろ言いた過ぎて言葉が出ないわ!!
約束通り、デラックスキッズプレート!!奢りなさいよ!!」
「おう、分かった。
四糸乃も行こうぜ!
この世界はさ、本当は優しいんだ。
仮にもし、神の仏も、ヒーローも居なくても、お前を好きなロリコンは確実に居るんだぞ?」
「……? は、はい?」
イマイチ、意味が分からないと言った様子で四糸乃が頷く。
ペドーと四糸乃が仲良く手を繋いで歩く。
「はぁ~、うまかった。
四糸乃は満足か?」
「は、はい……」
ペドーの言葉に四糸乃が頷く。
満足そうに頷くペドー。
「まったく!!今回は特例なんだからね!?
普通はもっと検査をしてから――」
カリカリと怒りながら、琴里が家のドアを開ける。
「あ……」
玄関を開けたすぐ先、十香が呆然とした顔で帰ってきた3人を見る。
「と、十香!?コレは忘れてた訳じゃなくて――」
「十香じゃん、ごめーん。
存在自体すっかり忘れてたわ、じゃーなー。
俺、四糸乃と遊ぶ系の仕事が有るから」
ワザとらしく謝って、四糸乃を連れて2階へと上がっていく。
「と、十香?」
琴里の前で、プルプルと十香が震える。
拳を固く握る。
「私は、馬鹿だ。大馬鹿者だ……
部屋に居る間に、ペドーはあの幼子に夢中に成ってしまった……
もう、引きこもるのはやめだ!!もっと、もっと積極的に動かねば!!」
決意を新たに、十香が立ち上がる!!
次回予告!!
やってきたのは……季節外れの転校生!?
この転校生、ちょっと訳あり?
しかし!!
「興味ないわ」
感心0のペドー!!
更に緊急事態が!!
作者「やっべぇ、手元に3巻ねーわ……」
どうなる次回!?