すこしずつ原作から離れていくかもしれません。
邂逅のS/精霊は二人で一人
「それでは処分を言い渡す――」
暗い部屋の中、ASTの重鎮たちが折紙を見る。
話題は先日のホワイトリコリスの無断使用の件だ。
「鳶一折紙一曹を懲戒処分とする――リアライザには今後触ることは無いと思いたまえ……」
議長が重々しい口調で、告げる。
その言葉に折紙は一瞬息を飲むが――
「待ってくださいよ!!確かに折紙はホワイトリコリスを無断使用しました。
けど、それは特殊隊員のスズモト氏を救うために……」
傍らに従事する、日下部 遼子が今ここに居ない『彼』の事を想いながら口にする。
「それで?スズモト氏の暴走もそちら、または個人の責任だ。
それを止めたのは立派だが、ほかの手段が有ったのかね?」
「な!?それには異論があります!!
もともと4Gシステムを止めるのには、隊員がいくらいても足りません!!
ただでさえ、人数不足のウチにそんな装備を止めるにはホワイトリコリスしか――」
「口を慎みたまえ。
いかなる理由が有ろうと、この事態は看過できん。
スズモト、折紙両名を懲戒することは――」
ガチャ――
その時、扉が開き長身の男が入ってきた。
技官たちは、その男の顔を見た瞬間口を噤んだ。
「サー・ウェスコット……」
漆黒のスーツに、アッシュブロンドの髪。
ナイフの傷跡の様に目は鋭く、30代だというのに老獪な得体の知れなさが有る男だった。
「やぁ、諸君。お取込み中だったかな?」
フランクな口調で話すこの男こそがリアライザを製作した会社の事実上のトップ。
その名も、サー・アイザック・レイ・ぺラム・ウェスコット。
「ホワイトリコリスをプレゼントしたというのに、マナはダウンしてしまっているようだね……
さて、風の噂で聞いたんだが……
マナ以外で、ホワイトリコリスと4Gを動かしたモノがいるようだね?」
ウェスコットの言葉に、そこにいる全員が息を飲む。
当たり前だが、どちらも秘匿技術の為、出向社員でない者が使用したというのかかなり不味い状況ではあるのだ。
「スズモト氏と……そちらのお嬢さんか」
ウェスコットの視線を受けた折紙にゾクリと嫌な悪寒が走った。
「両名とも、すぐさま処分を下すことに成っています。
具体的には記憶処分ですかな」
その言葉を聞き、ウェスコットは大仰な動きで頭に手を当てた。
「なんですって?『アレ』を使えるウィザードを二人も処分?
リコリスは、まだ調整が不完全なので詳しくは言えませんが――
4Gに関しては、私の知る限りまともに動かした人間は2人もいないというのに?」
「ええ、規律は規律ですので」
「ほう?
ウェスコットの瞳が細く狭まった気がした。
その視線にそこにいた者達が、一斉に息を飲む。
ASTをはじめ各国の主要施設には、すでにDEMのリアライザが配備されている。
コレが何かの形で、供給され無くなれば――
そう、遠回しだがこれは脅迫だ。
『自分の機嫌を損ねるとどうなるか、わかるだろう?』
ウェスコットはそう言いたいのだ。
「……なめるなよ……民間企業!!」
一瞬のためらいの後、議長が絞り出す様に言った。
軍は決して屈しない!!そんな鋼の意思の表れだった!!
「ふふふ……そうか……ここまで言ってもダメか……
なら、ソレなら仕方ない……」
くくくと、笑ってウェスコットが後ろに連れていた秘書に目くばせした。
「…………」コクン
秘書は小さく頷いた。
「ふぇ……ふぇ……ふぇぇえぇぇぇぇぇ!!!」
突然のウェスコットの鳴き声に、そこにいた全員が戦慄した!!
「やだやだぁ!!僕のいう事聞いてくれなきゃ嫌だい!!」
引き裂く様に、上着を脱ぎ棄てる!!
その下に有ったシャツにはデカデカと『バブみ!!』の文字!!
「エレンママ~!!みんなが僕のいう事きいてくれいなよ~!!
僕えらいのに~!!うわぁああああああんんん!!」
「はいはい~。うぇすちゃまは、いっぱい頑張ってますよ~
ママはちゃんとわかってますからね~」
そういって、エレンママと呼ばれた秘書が優しくウェスコットの頭を撫でる。
「これがDEM社の社長……」
全員が目の前で起きる
正直な話、一刻も早くこの異物を除去したいのだが、相手は権力のある人間。
無下に扱ってどうなるかは分からなかった。
「うぇすちゃま~?ママに良い考えが有りますよ~」
「ウッ、ウッ……どうするの?エレンママ?」
こそこそとエレンママが、うぇすちゃまに耳打ちをする。
なんというか、いろいろとキツイ。
数秒後うぇすちゃまが、スマフォをエレンママに貸してもらい電話をし始めた。
「どうぞ、取ってください」
急に素面に戻ったウェスコットがスマフォを議長に渡した。
「?――はい、もしもし――!?佐伯官房長官!?
はい――はい――、ええ……しかし……
な!?処分を軽くしろと!?天下りの件も無しに!?
それは困ります――いえ、しかし――
はぁ!?ざっけんなよ!!ズラハゲ!!
おおッ!?ええ度胸しとるやないけ!!お偉方に尻尾振ってるだけのハゲのお前と違うんじゃボゲぇ!!
……いいですよ、そこまで言うなら!!
10年前の資料、私の所にありますよ?アナタはすっかり忘れた様ですけどね?
そう、そうです!!ABC計画です……
私がこの資料を公表して、アナタはまだその地位にいられますかね?
で?懲戒の件は?ええ、そうですか。では」
ウェスコットにスマフォを投げ返す。
周囲はさっきの言葉の応酬に気を取られ、気にしなかったが、携帯を落としたウェスコットの音で戻った。
「懲戒は変わりませんよ?
「うぐ……うえぇえええええええ!!!」
意趣返しを込めた言葉に、完全にウェスコットが泣き出す。
黙っていたエレンが、始めてウェスコット以外に口を開いた。
「議長。来週ザギンのキャバを貸し切りにしましょうか?
勿論奢りです、そして飲み放題です。
貸し切りという事は、ほかの男の目は無いという事で――」
「行くがな!!よし、折紙は謹慎2か月!スズモトはえーと、自主退社を願ってるから許可でー!閉廷!!解散!!」
大喜びで議長は、決定を覆した。
「…………」
大人の汚さ的な物を見まくった折紙は、結果として自分の都合がよくなったが釈然としない気分で帰っていった。
「君、なにかあったらここへ連絡をくれ。DEMは君への協力を惜しまないよ?」
「さて、エレン。私たちがここに来たのは、もう一つある。
例の資料は?」
「はい、ここに」
ウェスコットの言葉にエレンが資料を見せる。
そこに有ったのは精霊〈プリンセス〉の情報と――
「高校生ね?」
制服に身を包んだ、夜刀神 十香だった。
「エレン。君の出番だ――世界最強ウィザードの力見せてくれるね?」
「はい、赤ちゃんプレイ野ろ――じゃなかった、ウェスコット」
「ふぅ。終わった……」
期末テストを終わらせたペドーが一息つく。
周囲を見るが、みんなどうやらお疲れの様だ。
「ペドー、出来たのか?」
十香が小さく耳打ちをしてくる。
「当然だ、追試なんて事に成ったら幼女との逢引の時間が無くなるからな!!
放課後の時間帯ってのは、学校が終わって遊んでる小学生と合法的に一緒に成れる時間だ!!
そんな大切な時間を勉強なんてしてられないよな!?
当然、赤点に成らない程度には勉強はしてるぜ!!
ちなみに、俺は将来――」
「はーい!みなさん!!まだ、帰っちゃダメですよー?
決めることが有るのでー」
ペドーが熱く語る中で、タマちゃん教諭(消費期限切れ)が手を叩く。
その音にクラスのみんなの視線が集まる。
「突然ですが――、修学旅行の行き先が変更になりました」
タマちゃん教諭の言葉に、クラスがざわめく。
それもそうだ。せっかくの旅行前それも一月もないハズのこのタイミングで急な変更だ。
おかしいと感じる生徒も多いハズだった。
「場所は或美島ですぅ。
他にもバードス島や、ヘルヘイムの森へハイキングというのも有ったんですが残念ですねー」
その言葉を聞いて、数人のクラスメイトが騒ぎ出す。
「ええ!?或美島って、確かその日――やっぱり!!
おい、みんな!!修学旅行の日程の日、
「うっそー!?マジで!?超ファンなんですけど!!」
「けど、なんで或美島に?」
「なんか、5年前の同時多発空間震で記憶喪失のゲドーさんがたどり着いたのが、そこらしいぜ?」
「え?ゲドーさんって記憶喪失なの!?」
「知らないのかよ?荷物は『倉科 蒼空』あての封筒だけで、未だに自分の名前の思い出せないんだと、んでこの名前は仮に名乗ってるんだって」
「へ~」
思いがけない芸能人との、会えるかもしれない可能性に心を躍らせるクラスメイト。
一方ペドーは――
「修学旅行は2泊3日……その間幼女と触れ合いえない!?
くそ!!なんてことだ!!俺は、一体どうしたらいいんだ!!」
幼女分が不足することを考え、不安に陥っていた。
「はぁッ!!」
「気合。ほっと!」
二人の少女が、水面に向かって石を投げる。
2度、3度と水面を石が渡り沈む。
「珂珂珂!!我が風の力をしかと焼き付けたか?」
「嘲笑。私の方が長く飛びました」
「なにぃ!?回数は私の方が多いじゃない!!」
「反論。ルールはよりすごい方です」
二人の見た目がそっくりな顔をした少女が喧嘩する。
しかし、場所がおかしい。
そこは海のど真ん中!!到底石切の出来る場所ではない!!
そして、二人とも
「ち!仕方ないわね。この勝負、ドローよ。
次は――」
「提案。純粋にかけっこはどうでしょうか?」
「かまわんぞ!!我が最速であることを見せてやろう!!」
ほぼ同時に、二人の少女は空を走り出した。
巨大なサイクロンが起き、何処かへ走り去っていった。
二人は気が付かない。
自分たちの足元に、もう一人誰かがいたことを――
「う……ここは――」
激しい波と風の撃たれ、少女は海面を行ったり来たりする。
海の泡の様に、記憶が湧いては消えていく……
『後はえーと……殺した人数でも数える?』
『きっとボクは恋なんてしてるヒマがない国だったんだろうなぁ』
『今回は二人いたのね…………!?』
思い出すのは自分の言葉、そして最後に――
『
くすくす、くすくすくす、くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす――――――――。
自分を嘲笑う絶望の声。
「あ……ああ?」
無意識に浮かんでいた木材に捕まった。
その少女は、導かれる様にとある島へと流され始めた。
一瞬だけ、彼女の手に持っていた虫眼鏡が太陽の光を反射して光った。
次回のデート・ア・ペドーは!?
「精霊!?まさか、こんなところで?」
「まさかの、逆攻略!?」
「だいじょうぶー、こわくないよ~むふふふふふ……」
次回『邂逅のS/ペドーは彼女を我慢できない』
コレで決まりだ!!