何とかテンポを戻していきますのでお願いしますね。
「やぁ、シェリちゃん。夜の海って不思議な感じがするよね!」
遠くにぼんやり明かりが見える夜の海、ステージに立ったシェリとペドーが対峙する。
「はぁ、ボクの行く先々に現れるのはなんで?
ストーカーなの?それとも、ボクに惚れた?」
諦め半分、からかい半分のシェリの言葉。
「うーん、惚れてるのは確かかな?幼女好きだし?シェリちゃんいい子だし?」
途端にシェリの顔が曇った。さっきまで浮かべていた、感情が一瞬にして消え失せる。
「……何も知らない癖に、ボクは悪人だよ?
この無銘天使で何人も殺してる!!今すぐ君も消し炭に出来るよ?」
シェリが自身の無銘天使を構えて見せる。
「撃てるのかい?その虫眼鏡、今は夜だよ?」
「撃てるさ、ボクを舐めるなよ?」
薄暗いステージ、闇の中、海の波の音だけが二人の耳をうつ。
シェリが構える中で一歩、ペドーがステージに足を掛ける。
「……チっ、読まれたか」
舌打ちをして、シェリが虫眼鏡を消す。
「?」
「正解だよ。僕の無銘天使は虫眼鏡。
夕方の弱い光や、室内の光でもいいけど、人を殺すには威力が足りない。
人工の光でもいいけど、流石にこの時間じゃ無理」
お手上げと言いたいように、シェリが手を上げる。
「さて、ボクをどうする気?」
尚も手を上げるシェリのすぐ近くに、ペドーが立つ。
二人の視線が絡み合う。
「ねぇ、何か――ヒャイ!?」
突如、シェリが飛び上がりお腹を押さえる。
その部分は少し濡れていた。
「サイダー買ってきた。一緒に飲もうぜ?」
今さっき、シェリのお腹にくっつけた方のサイダーをペドーが口を開けて飲み始めた。
「なんで、こんなにみんな優しいかな……」
ペドーに手渡された、サイダーをシェリが飲んでいく。
炭酸のさわやかさを以てしても、シェリの心のモヤモヤは消えなかった。
「優しい、ね?優しさって何だろう?他人も思いやれることか?」
ステージの端に腰かけ、二人並んで足をブラブラさせる。
「他人を思いやれる事?ハッ、耳障りだけは良い言葉だね」
サイダーを飲み干したシェリが缶を握りつぶす。
「思いやるか――そういえば、あの精霊ほら、年増の二人いるじゃない?」
ペドーが、昼間の事を話す。
お互いが勝負し、相手を生き残らせようとしている、二人の精霊の話を――
「は?自分を犠牲に相手を?」
あり得ない。そう言おうとした時二人の時間が止まる。
「は?夕弦が?そんなことを?」
一体いつからいたのか、耶倶矢が呆然とペドーの話を聞いてた。
しまった――と言おうとした時、さらにもう一方公からも声が。
「復唱――耶倶矢が、夕弦を選べと……そう言ったのですか?」
此方には夕弦。
二人の精霊が意図せず、並んでしまった!!
「ふ、二人とも話を――」
「「ふざけるな!!」」
ペドーがなだめようとした時、すさまじい風が両者の間に吹く!!
二人の姿が、霊装を纏った姿へと変わる。
耶倶矢は巨大なランスを、夕弦はペンデュラムに使うような鞭を、それぞれ手にする。
「ああ、ダメね。本当にダメ、私としたことが夕弦の馬鹿さ加減を忘れていたわ!!」
「肯定。それはこちらです。夕弦としたことが耶倶矢の無能加減を忘れていました」
二人が向き合って、武器を構える。
風に飛ばされたシェリをペドーが抱きしめながら必死で守る。
「なら、結局こうなるのよね!!」
「戦闘。戦いで勝者を決めるのみです!!」
爆発的な風と共に両者が激突する!!
再度吹いた風に、ペドーがシェリをぎゅっと抱きしめた。
「まって、ステージが!!ゲドーのステージが!!」
「危ないって!!下がって!!」
軋むステージの中、シェリが必死になって手を伸ばした。
「お、なんだ嵐か?」
旅館のクラスメイトたちが突如吹いた嵐に、反応をする。
暴風、雷、そして雨。
のんきな者が多かったが、折紙は別だ。
「ペドー、今いく」
つい先ほど、友人からペドーが「幼女の反応がする!」といって外に出ていったのを聞いた。
この嵐だ、雨で濡れ透けになったペドーと成り行きでお外で――ごほん、困って居るだろうから助けに行くことにした。
「ッ!?何者――!!」
旅館を出た瞬間、後ろからプレッシャーを感じ飛びのく!
その一瞬後に、地面に何かが降り立った。
「ワイヤリング……スーツ?」
一見してそれは、人間の様であった。
だが、骨格がおかしく異様に長い手に、ピストンシリンダー風の機構を採用した脚部パーツ。
明らかに人間ではないハズの存在がワイヤリングスーツを着込んでいた。
「これは一体?あなたは何者?」
人間でないロボットが、リアライザを使用するなどおかしなことだ。
折紙が警戒を強める。
『どーも!姉さん、ガンダムですぅー……』
「嘘やろ?」
まさか返答が来るとは思っていなかった、折紙が可笑しな声を上げた。
だが、ロボは口?を閉じたりはしない。
『おおきに姉さん、ノリいいな!
まいどー、正体不明のロボですー。
名前だけでも憶えて帰ってね?』
突如、ロボットがインチキ臭い関西弁を語りだす。
多分実際に使う人からしたら、憤怒必至物のお笑い芸人が扱うようなしゃべり方だった。
「くッ!?」
一瞬のスキを突き、ロボが拳を突き出してくる。
『避けんといてーな、気絶させるだけさかい!
嫁入り前の女の子、傷モンにせーへん様にするの大変なんやで?』
尚もインチキ関西弁で、ロボが攻撃をラッシュする。
ふざけた様子だが、その攻撃は確かで折紙の意識を刈り取ろうと攻撃を繰り出す。
その時、新な闖入者が有った――
「鳶一折紙、外は危険だ。早く宿の中に戻るんだ」
それはクラスの副担任の、令音だった。
ロボに気が付いたのか、そちらにも声を掛ける。
「あー、キミ。うちの生徒に――ロボ?」
『アカン!秘密保持優先や!!』
ロボのターゲットが令音に変わり、拳を付きだした。
「先生危ない!!私は死にまシェーン!!」
ロボの攻撃を腹に受けて、折紙はそのまま意識を失った。
「副指令!!!或美島北部の海岸で、すさまじい勢いの風が発生中です!!
嫌な風が吹く!!これだからこの島は嫌いなんだ!!」
苛立たし気に、箕輪が吐き捨てると非常時を知らせるようなアラームが鳴り響く。
「風?村雨解析官からの連絡は?」
「それが――さっきから、試しているのですが……」
「連絡妨害ですか?こちらに知覚をさせないとは……
万が一の事を考え、こちらから接触を図ります。
高度を1000メートルまで下げて、この前ポーカーで負けたヤツを送ってください」
てきぱきと神無月が指令を出す。
そして、地上に連絡員を送るその一瞬、ほんの数秒だけ〈フラクシナス〉の不可視機能が薄れる――
同時刻。
「――!艦長!レーダーに反応です!!
これ――空中艦です!!」
その言葉に艦長パディントンが、目を細める。
「なに?」
その両手には、チンして温めて食べるタイプのチーズたっぷりクリームドリアが握られている。
「あのタイプは――DEMのヤツではないな。
不可視領域を展開できる艦など――俺の知る限りDEMの3機だけ――
ハッ!?まさか――Jアーク!?ついに再起動したのか、Jアーク!!」
「あの、フラクシナス機関では?」
「それだ!」
解析官の言葉で、パディントンがひらめいたようにコンソールを叩く。
スプーンに当たって、跳ねたチーズがパディントンの目を直撃する!!!
「ぐぅぁああああ!!あっちぃいいい!!!クソ!!
フラクシナスめ!!!許さんぞ!!
主砲用意!!目的、消失した正体不明艦!!」
顔面にチーズのクリーミーな臭いを漂わせ、パディントンが怒鳴る様に叫ぶ!!
「え、『エレンママ』に報告した方が良いのでは?」
「かまわん!!よくも儂のクリーミーチーズドリアを!!」
クリーミーチーズドリアの恨みに燃えるパディントンが、驚く程冷淡な声を出してこういった。
「――
バァン!!バァン!!シュー……
「な、なになになに!?」
突如起きた衝撃に、椎崎 雛子は頭を押さえていた。
まさに、不意の衝撃そしてメインモニターに映るのは、こちら撃ったと思わしき空中戦艦。
「さ、左舷テリトリー20%低下!!」
誰かが、状況を報告した時やっと他のメンバーも、自身の仕事を思い出したように動き出す。
「リアライザ3号機の出力低下!!」
「損傷は軽微です!!」
少しずつ、情報が動き出すフラクシナス。
多くのメンバーは、混乱していた。
戦闘だ、空中艦同士の戦闘が始まってしまったのだ。
多くのモノは、まさかという『現実味の無い現実』に支配される。
だが――
「ふむ、反応がないという事は向こうも不可視領域の展開が可能になったのですね?
アレはウチだけの特権だと思っていましたが……
なるほど、技術は日々進化しているのですね」
神無月があごを触りながら、ぼそっとつぶやく。
その様子は、全く慌てた様子もなく
「おっと、ボーッとしてるヒマありませんよ。
第二波が来ます。自動回避と不可視を解除して防御結界を展開してください」
「は、はい――うわぁつ!?」
一人の作業員が、バリアを展開した瞬間再び艦を大きな揺れが襲った。
神無月が言った通り、第二波が来たのだ。
相手は徹底的にこの艦を落とす気らしい。
「ほう、バリア越しでもこの威力……
なるほど、性能に余程自信があるようだ。
なら、久しぶりに本気を少しだけ、出しましょうか!!」
コンソールの一部を蹴る神無月、そしてその中からはシリンダーと針のついた銃の様な物を取り出す。
「いい!?」
異様な物体の登場に、クルーの一部が可笑しな声を上げる。
それは銃型の注射器だった、怪しい緑の液体がタプンと揺れる。
「さぁ!!行きましすよぉ!!アドレナリン、
注射器の中身を取り込んだ神無月が激しく目を動かす。
一瞬脱力して地面にたおれ、再度神無月が勢いよく起き上がる。
「ふふふ……鳴った……鳴ったぞぉ!!破滅のゴングがよぉ!!」
ゲタゲタとタガが外れた様に神無月が笑い狂った。
「なんで、なんでこんなことに成るんだよぉ!!
お前らどっか行けよ!!」
嵐の真ん中シェリが、喧嘩を続ける八舞の二人に声を張り上げる。
ゲドーのステージが風にあおられ、少しずつ嫌な音を立て始めている。
「まて、なんか――いる!!」
風と雨の雷の中――何かを見つけたペドーが再びシェリをかばう。
それは機械だった、ひと昔前のアニメに出てきそうな安っぽい見た目のロボがペドーの前に降り立つ。
「DD―007〈バンダースナッチ〉と言っても分からないでしょうね」
凛とした声が響く。
それは、随行カメラマンのエレンメイザースだった。
「まさか、こんな辺境の場所で〈ベルセルク〉に会えるとは、驚くべき行幸。
そして、アイクから聞いたことが有ります、準精霊までいるなんて……
数々の不運を覆す幸運ですね」
無遠慮な視線をシェリの這わすエレン。
「何者だよ――」
「さぁ?準精霊が手に入るのはかなりの幸運です。
精霊に近い存在、精霊とは違い
エレンがワイヤリングスーツを纏おうとした時――
「さぁ、こちら――へッぷ!?」
後ろに控えていた〈バンダースナッチ〉が倒れてきた!!
その衝撃で、ワイヤリングスーツを召喚するデバイスが地面に落ちる。
「な、何をしているのです!?敵はあっち――」
なんだか可哀そうな顔をした、ペドーが倒れたバンダースナッチを見る。
「あ、made in China……あそこって、安いけど質が少しねー」
「んな!?少し完成図と違うからおかしいと思ったんです!!
けど、安かったし……大量に生産できるって!!」
「防水加工してなかったんだなー」
ペドーがエレンの落とした、デバイスを拾う。
そして大きく振りかぶり――
「ま、待ってください!!それを無くしたら、アイクになんて言えば――!!
お願いです、それを返してぇえええええええ!!」
「海にシュートぉおおおおおお!!」
ペドーが遠く遠くに投げ捨てた。
「ぐす……なんですか、コレ。
良いとこ全くないですよ!!」
エレンがグズグズと泣き出した。
「……ゲドーより、外道だな……オマエ」
「幼女以外のお願いは聞かないことにしてるんだ。
さてと、次はシェリちゃんのお願いを聞いてあげようかな?
ステージ、守りたいんだよな?守ろうぜ、年増の精霊ぶっ飛ばして、笑顔でステージに上ろうぜ!!」
ペドーがシェリと共に、精霊に嵐に向き合った。
作中の方言は完全に適当です。
実際に使う人からしたら違和感がバリバリでしょうが、許してください。