デート・ア・ペドー   作:ホワイト・ラム

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さてさて、2巻分を合わせた美九パラノーマルも遂に完結です。
さぁ、ラストは一体どうなったんでしょうか?

美九ファンのみんな、ごめんなさい!!


学・祭・閉・幕!!

未だ喧騒が続くDEM社の社内。

ペドーの居る場所は会社の中なのに、見上げれば満点の星空が広がっていた。

 

ヒュルルル……

 

「へっくし!」

一陣の風が吹き、舞い上がった埃に鼻を擽られペドーがくしゃみをする。

 

「まじやべーわ……」

語彙が少ないと馬鹿にされそうな、つぶやきをしてペドーは目の前にある光景を見た。

 

 

 

 

 

「小癪。人の子よ、貴様はなぜ我に剣を振るう?」

 

「知れた事!!我らには貴女のその力が必要なのです!!

だが必要なのは『力』のみ、その人格は不要――!

よってはぎ取らせて頂きます!!」

黒いドレスを纏った、十香。

夜の闇の中に埋もれずなおも、輝きと存在を纏うその姿は、ウェスコットの言葉を借りるなら確かに『魔王』だった。

 

そして、その魔王に立ち向かう一人の麗しき戦乙女(ヴァルキリー)――エレン・メイザース。

 

上下、左、フェイントを交えての再度の左。

闇夜を切り裂くようなレーザーブレードが、エレンの技の速さと相まっていくつもの残光を残しながら十香に巻き付いている様に見えた。

人でないモノと、人を超えた人間の戦い。

 

ペドーは此処に木て初めてエレンの実力と、精霊の恐ろしさを目にした。

ふと横に目をやると、四糸乃、くるみそしてシェリも同じ様な顔で、目の前の戦いを見ている。

呆然とした三人は、エレンの声で現実に引きもどされた。

 

「そこッ――! 〈ロンゴミアント〉!!」

 

「ほう?」

エレンの攻撃を捌いた十香に、一瞬の隙が出来る。

その一瞬の隙を付いて、エレンがレーザーを束ね巨大な槍の様に変化させた。

その槍を受け止めた十香だが、その一瞬後に槍が大きく輝き周囲の建物を巻き込んで吹き飛ばした!!

 

「十香!!」

 

「良いぞママ~!」

心配するペドー、無事を確認しようとするがその直後に聞こえてきた、気の抜ける声に足を止める。

 

「赤ちゃんプレイ野郎――」

 

「ふふふ、どうだい?エレンママの実力は?

くっふっふ、あの力。やはりママに必要なのは純粋な力さ」

こちらを逆なでするのが目的か、近くにあった冷蔵庫からわらび餅を取り出し悠然と食べ始める。

 

「くふふ、後でお口ふきふきしてもらわないとね……」

その勝利を確信した、非常にうっとおしい顔に不快感を見せたのはペドーだけでは無かった様で――

 

 

 

「…………」

エレンの攻撃を受けた十香が、煙の中から姿を見せる。

右手の手袋が破れ、腕にみみずばれの様な傷が出来ている。

 

「チッ――〈暴虐公(ナヘマー)〉!」

小さく舌打ちをした後、自身の持つ手にある大剣――〈暴虐公(ナヘマー)〉を笑いながら邪な妄想を浮かべるウェスコットに対して思い切り振り下ろした!!

当然、十香の位置から出は届くはずのない一撃。

しかし、剣からはすさまじいプレッシャーを含む光が放たれ、一直線にウェスコットへと向かった!!

 

「アイク!!」

それを見て、エレンは瞬時にスラスターを起動させ、ウェスコットの前に立ち己を盾にした。

再度の爆発!

今度はエレンが爆風に飲まれた。

 

「エレンママ!!」

その様子に流石のウェスコットも、装いを崩した。

 

 

 

「無事ですか?アイク?」

爆風からエレンが姿を見せる。

その口調には余裕があったのだが――

 

「エレン!?その傷は――」

 

「防御に気を取られ過ぎて、傷が開いた様ですね……」

ワイヤリングスーツからは、大量の血が滲み出ていた。

胸と腹の獣の爪痕の様な3本の傷、そして背中にある巨大な斜めの切り傷。

嘗て、スズモトとの闘いで折紙が言ったように、リアライザを回復に回せばその分他の部分がおろそかになる。

エレンはこれから開いた傷の止血用、威力と回避などの戦闘用、そして自身とウェスコットの防御用と3つの用途が出てくる。

 

「万全の状況なら、戦局は変わりますが――」

 

「うん、わかったよ。大丈夫、ママの体を優先させよう」

 

「ありがとう、うぇすちゃまは優しい子、よしよし」

ウェスコットを抱いて、エレンが飛び上がった。

どうやら本当に脱出する様だった。

 

「悪いが、今日は此処までにしよう!さらばだシドウ・イツカ!!

生き延びたのなら、また会おう!!」

エレンに抱きかかえられたままウェスコットが小さくなっていく。

 

「こらー!!厄介事押し付けんな!!謝罪と賠償を要求するぞー!!」

虚空に叫ぶが空しくも帰ってくる声は何もなかった。

 

いや、帰って来た。帰って来たのだ()()()()が。

 

「さて、次は貴様だ」

 

「ひぃいぃぃ!?」

ゆっくりと空から下りてきた十香。

その目は明らかに、こちらを敵とみなしていて――

 

「覚悟は良いか?」

 

「ひぃいい!!お、おれはただの幼女好きのお兄さんだよ!?

何も悪い事してないよ!!幼女にイタズラはするけど、BB――年上は手を出さないよ!!」

必死になって、ペドーが十香に誤解を伝える!!

だが、十香の目は鋭くなるばかり!!

 

「貴様――なぜ、このような所に童女が居るかと思えば貴様が連れてきたのか!?

あのような、童女たちに自身の醜く醜悪でおぞましい欲望を向けるとは――!

貴様の様な輩は世界の為に許しては置けぬ!!」

 

「えええぇええ?!なんで!?主人公!?」

まるで正義感に燃える主人公の様なセリフを吐いて、十香が〈暴虐公(ナヘマー)〉を構える。

 

「……っ」

 

「これはあいてのほうが、せいろんですわね」

 

「あーあー、何時かこんな日が来るんじゃないかって思ってたんだよなー」

3人が何とも言えない顔をペドーを見る。

理性ではもちろんペドーの味方をしたいのだが、いつもやっている行動や言動を考えるとどうしても押されてしまうのが分かる。

 

「さぁ、覚悟は良いか?」

 

「――良い訳、無いだろ……良い訳、無いだろう!!

俺は今日も明日も、明後日も幼女と一緒に仲良く暮らすんだよ!!

現在過去未来、全ての幼女とキャッキャウフフするまでは死ねねぇんだよ!!」

ペドーの欲望に呼応する様に、十香の剣――〈鏖殺皇(サンダルフォン)〉が召喚される。

 

「それは……なぜ、貴様がその武器を持っている!?

分からん、なぜかは分からんがやはり貴様は生かしておけん!!」

十香が空中に浮遊したまま、複数の光線をペドーに向かって飛ばす!!

 

「わったったた!?」

ぴょんぴょんとジャンプし、場合によってはサンダルフォンでガードしつつ走って逃げまわる。

瓦礫の間を縫うように移動して、逃げ回っていく。

 

(うーん……こっちを狙ってくるのは良いとしよう。

うん、ロリが狙われるのは避けたいからな……)

ビルの中、適当な部屋に隠れて息を付くペドー。

 

シャッ!

 

「!?」

ドアの開く音に、ペドーが身構える。

 

「あらあら、ペドーさんずいぶん追い込まれてますわね?」

 

「んだよ、時子か……びっくりさせんな」

姿を見せた狂三にため息をこぼす。

 

「……もう、時子で良いですわ……

えっと、一応報告に来ましたの、ペドーさんがバカみたいに騒いだおかげで周囲の建物を全部探すことが出来ましたわ。

結果を申しますと、此処には第二の精霊はいませんでしたわ。

けど、もっと()()()()()はいる様ですわね?」

 

ドぉおおン……ぱらぱら……

 

ビル全体が振動して、僅かに埃が落ちてくる。

どうやら上の階で十香が暴れているらしい。

 

「さてと、困りましたわね。

今の十香さんが少しでも癇癪を起してその気になれば、ビルごとペドーさんを抹殺するのも簡単ですわよね?

さぁ、ペドーさんどうします?私が助けてあげても良いんですけど――

さて、代わりに何を頂こうかしら?」

狂三が妖艶な顔でこっちを見る。

そう、これは遠回しの誘いだ。

絶対的な優位性で、ゆっくりと狂三がペドーを篭絡しようと――

 

「お前って、数年前まで包帯にハマってたんだってな?」

 

「くぁwせdrftgyふじこl!?

な、なんで知ってますの!?」

そこまで行って、狂三が思い出す。

そうだ、今ペドーの陣営には自身の分身が一人いる。

未来の自分の事をなぜ知っているのか、おそらく他の分身体が教えたのか、包帯にハマっていた頃の自分と出会ったのか、そのいずれかだろう。

 

「そ、そのアレですわよ!?アレ、戦いの治療の延長でちょっと、多めに巻いてみただけで――べつにかっこいいとか、思ってませんわよ!?

と、兎に角コレ以上言わないでくださいまし!!」

 

「いいよ、止めてやるよ。けど代わりにちょっと用意してもらいたいモノが有るんだけど?」

 

「わ、分かりましたわよ!!」

悲鳴のような声を上げ、狂三が走って逃げていく。

 

 

 

数分後、実際の時間でしておよそ10分くらいで頼んでいたものは手に入った。

 

「ペドーさんの予想通りでしたわ……たしかにコレを」

 

「おう、んじゃ。十香を奪還しに行ってくるわ!」

受け取ったモノを手にしてペドーが破壊音のする場所へと向かっていく。

 

 

 

「む、遂に姿を見せたか……下郎め」

ビルを破壊していた、十香の前にペドーがニヤついた笑みをして立つ。

 

「むかつく奴だ。なにか言ってはどうだ?世事の句くらいなら聞いてやらんでもないぞ?」

 

だッ――!

 

帰って来たのは、言葉ではなく行動だった。

ペドーが走って十香へと飛び掛かる!!

その手に持つのは、先ほどと同じサンダルフォン!!

 

「結局は武器に頼るか!!」

 

(ンな訳ねーだろ!!魔王に勝てるハズない!!)

内心で悪態をついて、ペドーが素人の剣技で十香の持つナヘマーへとサンダルフォンをぶつける!!

 

「ふん――!これしきで、私に歯向かうとは――」

十香がナヘマーをずらし、ペドーのサンダルフォンの上を滑らせる。

そして、不意に手に掛かる力が抜ける。

 

「なにを――」

十香が目を見開く。

ペドーは自身の武器であるサンダルフォンを撃ち合いの途中で投げ捨てた!!

そして剣を乗り越え十香にさらに近づく!!

 

「!? コイツ、武器も無しに――!」

すぐ近く、そこにペドーが近づいて――

 

「だが、所詮は奇策!!」

十香がナヘマーをずらしてペドーの胴に食い込ませる。

力の入らない体制、それどころかこの近距離だ、威力はたかが知れている。

だが、タダの人間の胴を真っ二つにするのは容易い!!

 

ずぶッ!!

 

ペドーのシャツを破き、剣の刃が肉にめり込む――かに見えた。

 

「これは――!?」

十香が目を見開くと、そこに有ったのは氷。

ペドーの肌を剣は確かにとらえていた!!

だが、流れる血を凍らせ空気中の水分を凍結させて、体に十香のナヘマーを固定していた!!

 

「貴様!?正気か!!」

 

「ああ、正気――ぼぼっ!?」

至近距離で、ペドーが口をひらくと共に、何かの黄色い粉が口から洩れる。

さっきまで話さなかったのは、ずっとこの口に入れた黄色い粉を隠すためだったのだ!!

 

「な、なんだ、この、粉は――!?」

未知の粉に、十香が慌てると同時に、自身の唇が目の前の男に唇でふさがれた。

その瞬間、男の口から何かの味がする!!

十香はなぜか、その味がこの黄色い粉の味だと理解できた!!

 

(なにを考え「黄な粉……」ているんだ?この「黄な粉」男は、奇策にしても「黄な粉!」流石におか「黄な粉!!」しい。

この粉は「黄な粉!!」なんだ?自身に「黄な粉!!」だけ効果のある毒か?それとも「黄な粉!!」催眠作用のある「黄な粉!!」薬?

いや、そもそ「黄な粉!!」もなぜ「黄な粉!!」この男「黄な粉!!」は自身に接「黄な粉!!!」吻などを「黄な粉ではないか!!」しているん「黄な粉ォおおお!!」だ?)

十香の体が、心が反転する。

なにか、自身の奥にある存在が、こちら側へ出てくる様に。

その衝動は抑えきれず、ダムが決壊する様にあふれ出した!!

 

「む?ペドー……ここは、どこだ?」

 

「よぉ十香。いいか?知らない人に『お菓子あげるよー』って言われても付いて行っちゃダメなんだぞ?今回みたいに攫われる可能性があるからな!」

 

「むぅ?すまない……お菓子の食べ放題に引かれたのだ……」

ペドーに注意され、十香がシュンとうなだれる。

 

「ま、いいや。無事に帰って来たんだ。

さ、家に帰って黄な粉食おうぜ!」

そう言って取り出したのは、大量の黄な粉!!

さっきウェスコットがわらび餅を食べているのを見た、ペドーが周囲にあるスーパーになら黄な粉があると思いいたり、狂三の取りに行かせたのだ。

黄な粉ジャンキーの十香には当然、効果は抜群で。

霊力の再封印と並行して、元の人格へと戻すことが出来たのだ。

 

その時、太陽が昇り始めた。

どうやら夜明けの様だ。

 

「さてと、みんなで帰るか!」

ペドーが、こっちに向かって走って来た3人を見ながら笑い出した。

天央祭はまだまだ終わらない。

 

 

 

 

 

「いやー、今回は楽しかったなぁ……おい、くっつくな!」

 

「ねぇ……いろいろ言いたいんだけど……ちょっといい?」

ペドーに対して琴理が、言葉を話す。

時間は丁度、天央祭の終わりの後打ち上げも終わり、一日分の振り替え休暇を楽しんでいる時だった。

結局美九の歌に操られた人間たちは、夢うつつの状態で確かな記憶がなく。

特殊な幻覚を起こすガスが工場から漏れたという事になった様だ。

その後遺症か知らないが、数名の人間の性癖が歪んだのはあまり知られていない。

 

「ん?何かな?あっけなく洗脳されて、縛られて放置されて、忘れられた挙句膀胱が決壊してパンツびちょびちょにしちゃったマイシスターよ!」

琴理の顔がカアッと真っ赤に染まった!!

 

「いろいろ……いろいろ説明しなさいよ!!

なんで、八舞の二人はあんな風になっているのよ!?」

琴理が部屋の隅を指さすと、がたがた震える夕弦と耶倶矢の二人がいた。

小さく「変態こわい。変態怖い」と抑揚のない声で呟いている。

 

「この二人は、本物の変態と出会って勝負を挑んだんだ。

命があって、性癖が歪んでいないのは奇跡だね……」

可哀想なモノを見るような、顔でペドーは見る。

 

「じゃ、じゃあ、ソッチは?ねぇ、何があったの!?」

琴理の興味は、ペドーの傍らに控える美九に向かった。

 

「だぁりぃん……だぁりん、すき、すきですぅ……美九はだぁりんの奴隷ですぅ……

どんな命令にも、絶対服従ですぅ……」

目の宿っている光は完全に消え去り、卑屈な媚びた、到底アイドルをやっていた美九と同一人物とは思えない様な姿の美九。

 

「なにって?攻略しただけだよ?」

 

「何した!?何をした!?」

琴理が椅子から勢いよく立ち上がり、ペドーに詰め寄る。

 

「美九――すこし席を外してくれ。

そうだな……コンビニでかき氷のアイスでも買って来てくれる?」

 

「はい、はい!美九はダーリンのお願いなら、何でもします!!」

凄まじい笑顔になり、美九は喜んで走っていった。

 

「で?一体、何をしたの!?まさか、やばいクスリでも使って――」

 

「いやいや、そんな事しないよ!

美九をフラクシナスに閉じ込めた後、元ファンの罵声を録音してすごい小さな声で、永遠に再生し続けたんだよ」

 

「は、え?ちょ……」

余りにえぐい手口に、琴理の口角が呆れて歪んだ。

 

「んで、俺が話す時だけ、音を止めて、優しく美九を肯定してあげたんだよ。

『オマエは悪くないぞ』『俺だけは味方だ』『俺が居れば大丈夫だぞ?』って」

要するにペドーがやったのは、一人ボッチになった美九に優しい言葉をかけただけだ。

それが非常に規模が大きい事とすべてマッチポンプであることを覗けば……

その手法は場合によっては洗脳と呼ばれることもあるが……

 

「意外と封印はすんなりいったよ!」

嫌に良い顔を浮かべる外道を見ながら、琴理は胸の中で哀れな犠牲者(美九)に深く同情した。




次回予告!!
BBA!!それは年増の女!!

「分かってる、ペドー君分かってる!!」

BBA!!それはロリコンの天敵!!

「むりむりむりむり!!絶対加齢臭する!!加齢臭するぅ!!」

BBA!!それはどんなに若作りしてもバレる存在!!

「犯人はお前だ!!お前がBBAだ!!」

次章!!七罪トランサーズ!!
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