デート・ア・ペドー   作:ホワイト・ラム

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お待たせしました。今回も更新です。
しかし、所謂回と回を繋ぐ回……

はてさて、七罪の恐ろしい作戦は!?


化けたのは誰だ

「ウェスコット?サー・ウェスコット聞いているのですか?」

DEM社のオフィスの一室、会議室の真ん中で哺乳瓶を咥えたウェスコットが、重役たちに糾弾されていた。

 

「何か、問題でも?」

涼しい顔をして、ウェスコットがおしゃぶりを置き、赤ちゃんが頭にかぶる様なピンクのフリフリの名前良く知らんアレを被る。

 

「~~~~~!!

何処が問題ないと言えるんですかな!?秘匿技術であるリアライザを大衆の目に晒すような作戦!!ASTへの過度の干渉!!さらに、一般市民への攻撃!!挙句の果てに日本支部をビルごと丸っと失ったんですよ!?損失はざっと見つもっても――」

 

「ばーぶー」

ウェスコットが興味ないとばかりに、おもちゃのガラガラで遊び始める。

 

「話をまじめに聞いてください!!」

ダァン!!と音を立てて、ウェスコットが起こした事件の概要書をデスクに叩きつける。

はぁはぁと荒い息を整え、男――マードックが深呼吸をする。

 

「諸君らにもこの際訪ねたい。君らはこのままでいいと思うのか!?

我らが汗水流して働いている間この男は、自身の部屋でおむつを宛がって哺乳瓶でミルクを飲んでいるんだぞ!?こんな奴に、会社を任せていたら、何時潰れてもおかしくない!!私は今、たった今、ここでウェスコット代表の辞任を要求する!!」

マードックの言葉に、会議室のほかのメンバーがうなづく。

それもそうだ、なんというか多くの役員はウェスコットが四六時中しているプレイに突き合わされ、中にはおむつを替えさせられた者もいる。

当然、彼らには鬱屈したストレスが溜まている。今回の事は単なるきっかけで、何時かはこうやって不満が爆発していただろう。

 

「いいですかな?サー・ウェスコット」

会議の議長であるラッセル老人(若い子のお尻大好きそう)が口を開く。

 

「構わない、これは皆に認められた正当な権利だ。ばぶー」

 

「では、ウェスコットの解任に賛成の者は手を挙手」

マードックが笑みを浮かべ、ほかの社員も次々と手を挙げる。

 

「では、挙手はゼロ。マードック氏の意見を棄却します」

 

「な、ななんですって!?皆、確かに手を……!?」

マードックは驚きのあまり、目を見開いた。

上げていたはずの右腕が――『ない』

 

「う、腕が!?」

 

「無様ですね」

ウェスコットの背後、エレンが生身の状態でレーザーブレードを構える。

どうやら瞬時に、レーザーブレードを伸ばし、役員たちの腕を切り落としたらしい。

 

「アイクに歯向かう者は――」

 

「う、うう………うう、おれの……俺の腕がぁああああああああ!!!

あああああ!!!!あぁあああああんまりだぁああああああああああ!!!!

あぁああああああ!!!あひぃあひぃあひぃ……うえぇえええええええええ!!!

えぇえええええ!!!へぇえええええええ……!!!!!

ふぅー、すっきりしたぜ。仕方ない、医療用リアライザでくっつけるか」

一瞬だけ大泣きしたマードックは、すぐに冷静さを取り戻し、地面に落ちた腕を拾って会議室を後にしようとする。

 

「ふはは……なぁに、心配はいらないさ。私の欲しいものが手に入ればこんな会社君たちにすぐに――」

 

ボトン!

 

勝ち誇るウェスコットの右手が、地面に()()()

 

「あれぇええええ!?どうして!!どうして私の腕も!?」

 

「あ、やべ。すいません、ミスしたようです」

狼狽えるウェスコットに対してあくまで冷静に、エレンが話す。

 

「いやいやいや!!どうして間違うかな!?だってほら、腕落ちて――」

 

べちょ

 

今度はウェスコットの左腕が落ちた。

 

「あ”そっちも間違ってましたか……」

失敗失敗とエレンがため息をつく。

 

「エレェンママぁあああああ!??」

相当のショックに本当にウェスコットが幼児退行を起こしてしまう!!

 

「大丈夫ですよ~、うぇすちゃま~ママが直してあげましょうね?」

エレンが優しい顔をして、落とした腕を宛がうが――

 

「ままぁ!?そっち腕の左右逆!!逆!!」

 

「ちッ、もう正気に戻ったか」

 

「エレン!?」

舌打ちをして、ウェスコットの声を無視して自身のリアライザで治療を始める。

 

「うぐ、ぐっす……ひどいや、ひどいや……」

ぐずぐずと泣き出すウェスコットをなだめながら治療をするエレン。

その姿は彼女の姉妹にとても良く似ていたそうな……

 

 

 

 

 

「あ”-……あ”-……あ”あ”……」

 

「……何やってんのよ」

今のソファーに顔面をくっつけ、布地に向かって意味もなく声を出すペドーと、その様子を見てあきれた顔をする琴里。

 

「いや……昨日の夜、四糸乃が座ってたソファーから四糸乃の残り香がしないかと思ったんだけど――」

 

「何やってるのよ!?」

ペドーのあまりに気持ち悪い行為に、琴里の背中に悪寒が走った!!

 

「だめだな……今更だけど、どのにおいが誰のか分かんないんだよね……」

 

「いやぁ……もう、二度とそのソファ座れないじゃない!!

っていうか、精霊に狙われているのよ!?もっと危機感を持ちなさい!!

いつ襲ってくるかすら分かんないんだから……」

 

「いや、もう、10日以上音沙汰無いし、良いんじゃない?

もう、第……えーと、なん部だっけ?ま、いいや。兎に角、完!!で良くない?」

 

「良い訳ないでしょ?それに、ようやく七罪が動き出したみたいだしね」

ポケットから、封筒を取り出すとペドーに投げつける様に渡す。

切手も差出人の名前もない、ただロリコン野郎へと書かれた少し厚みのある封筒だった。

 

「これは?」

 

「ラブレターよ、七罪からのね」

 

ポイ!

 

「捨てんな!!何も言わず、内容すら読まず捨てんな!!」

その場でごみ箱に、手紙を投げ入れたペドーが嫌そうな顔を向ける。

 

「え~?だって、なんか加齢臭とかしそうだし……っていうか、読みたくない……

琴里読んで!!読み聞かせして!!」

ソファーに寝転び、駄々っ子の様にいやいやをする。

 

「まったく……少し待ちなさい……えーと……

ん?写真かしら……?」

琴里が明けた封筒の中から数枚の写真が落ちてきた。

それは皆ペドーの近くにいる人物で、十香、折紙、四糸乃、くるみ、琴里、シェリ、耶倶矢、夕弦、美九、亜衣、麻衣、美衣、殿町の13枚の写真だった。

その写真はどれも正面から撮ったものではなく、視線の向きが違う、場所が遠いなどの盗撮したと思われるや写真だった。

 

「ん、もう一枚は?」

ペドーが写真の間に挟まっていたもう一枚のカードを見る。

 

『この中に、私がいる。

私が誰か当てれる?

みんなが消えてしまう前に』

 

「ふーん?」

ペドーがソファから起き上がり、カードをまじまじと見る。

 

「これは、七罪からのゲームね。

文面通り読み取るなら、この中の『誰か』に化けた七罪を見つけれるかってトコね」

 

「ああ、けど気になるのは最後の一文……『みんなが消える』?

俺の取って代わろうとしたように、ほかのみんなをどっかに閉じ込めるつもりなのか?」

否応なしに、人質を取られて始まったゲーム。

13の写真の中にいる容疑者をペドーは見つけられるのか!?

 

「なぁ、琴里……この双子って、どっちがどっちか区別付く?」

八舞の写真を見せて、ペドーが口を開く。

 

「は?え、ちょっと?耶倶矢と夕弦よ?え、わかるでしょ?」

 

「いやほら、双子?だし区別付かないよな?」

ふざけている様子ななどない、ペドーの言葉に琴里がひきつった笑みを浮かべる。

 

「普通にしていても区別付かないんかい!!」

琴里が突っ込みを入れる前にすでにペドーはそこに姿はなかった。

 

 

 

 

 

「で?私のところへ来たと?」

フラクシナス艦の内部、ラタトスクの観測官である令音のもとにペドーはいた。

 

「さっき話したのが、七罪のゲームの内容です。

もし七罪の話が本当なら、この写真の中にいない令音さんは白……セーフです」

 

「ふむ、自分で抱え込まず応援を呼ぶ、君は賢いね。

分かった、まずはこのメンバーを秘密裏に機械で調べてみよう……

おそらく尻尾を出すことは無いが……万が一の可能性もあり得る。

では君には、ほかのメンバーとデートをしてもらおうかな?」

 

「デート?」

令音の言葉に、ペドーが固まる。

 

「無論だ。彼女たちと付き合いが長いのは君だろう?

もしデートをして、違和感があれば七罪をあぶりだせるかもしれない。

無論、こちらで全力でサポートするよ。

なにか、小さなことでも良い。みんなとの絆が試される時だ」

令音の言葉を聞いて、ペドーが渋々だが了承した。

 

 

 

 

 

10月22日。ペドーが居間で十香と話している。

一番最初に、七罪を見分ける相手に選ばれたのは十香だった。

 

「ほら、お替りジャンジャンあるからな?」

 

「ぺどぉ……もっとぉ、きなこ……ちょうだい……きなこのためならなんでも、するぞぉ……」

居間の机の前、徳用5キロと書かれたきなこの袋が2~3袋散乱している。

顔や服をまっ黄色にした十香が、尚も焦点の合わない目できなこを体内に取り込み続ける。

その姿は危険な薬物を摂取しすぎた末期患者の様だが、きなこなので問題は無いだろう。

素早く、ペドーからきなこの袋を奪い、手ですくい顔にかける様子をじっと見る。

 

「十香、喉乾かないか?お茶とか……」

 

「いらん!!そんな物、黄な粉の味が誤魔化されてしまうではないか!!」

十香に追加で3袋のきなこを与え、ペドーは部屋を後にする。

常人ではとうに口の中の水分を奪われ切ってしまう量のきなこを摂取して、なおかつ飲み物を拒否する姿勢。

 

「あの黄な粉ジャンキーっぷりは、間違いなく本物だな」

容疑者が一人消えた事に安どしたペドーが、自室へ向かう。

 

 

 

 

 

ペドーがおしゃれをした格好で、家の前に立つ。

携帯を見ると約束の時間はもうすぐだった。

 

(さてと……普通に考えて、入れ替わる相手を、あらかじめどっかに閉じ込めたりしてばったり本人と会わない様にする程度の事はするよな……

もうすでに、誰かが七罪に入れ替わっているのか……

写真を見る限り、おかしいのは誰も居ない……強いて言うなら、よしのんがなんか偽物っぽい位か……けど、パペットに化ける事は無いだろうし……

さて、これから――)

 

「よぉ、ペド野郎」

考え事をしていて、すっかり反応が遅れたペドー。

一瞬だが、急に話しかけられ驚いてしまった。

 

「おっはよー!シェリちゃん。

今日は絶好のデート日和だな。脱がし甲斐のある下着履いてきてくれた?」

確認とばかりに、シェリの履いているズボンに手を伸ばすペドー。

 

「履く訳ないだろ!?」

しかしシェリはその手を払いのけて、こっちをにらみつけた。

 

「ボクはペド野郎がどーしても、デートしたいって言いうから、仕方なく付き合ってやってるだけなんだぞ!?それ以上ヘンなコトしたか帰るならな!!」

ビシィ!とシェリが指をペドーに突き付けた。




地味に描くのが楽しいのがウェスコット組。
ペドーのようなハイテンション変態ではなく、権力で自分のやりたいことを押し付ける静かな狂気とでも言える姿が好きですね。

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