秋の夜が近いのを感じますが、それでも熱さの戻りには要注意です。
秋の夜長には、まだ早いですが……
月でも見ながら、涼みましょうかね?
おや?あれは月では無くて……
???「このロリコンどもめ!!」
ちゅん、ちゅん……ちゅん、ちゅん……
「ん、ん~?」
ラタトスクの七罪を収容している部屋で、七罪がゆっくりと身を起こす。
窓など無い部屋だが、天井にあるスピーカーから鳥の囀る声と、朝を知らせるモーニングコール代わりの音楽が流れてくるのだ。
「そっか、ここ、よね……」
七罪が鼻を鳴らせば、壁の一部がテーブルに変形して、その上についさっき出来たことを匂わせる朝食が一式出来ていた。
「ここ……引き篭もるには、最適の空間よね。
3食おやつ付きで、ベッドもあるし……まぁ、問題はあのロリコ――」
「やぁ、ナッツみん。おはよう……昨日は、その、すごかったね……」
七罪が視界の端、噂をしていたロリコン野郎を目にする!!
「うぇえええええ!?」
七罪は奇声を上げながら、胸の傷が開くことを気にせずベッドから逃げ出す!!
「な、ななな、なんで、あんたが、ここに!?いったい、何をしてたのよ!?」
「何って……朝チュン?」
ペドーが体を隠す布団から見えるのは、素肌の両肩!!
「ま、まさか!?」
万が一を思い、自身の服装を確認するが、ちゃんとパジャマのままだった。
「あー……あせった……」
七罪が自身の額に浮かんだ汗をぬぐう。
「あーあ、バレちゃったか。実はさっきのはうそなんだ。
朝ごはんを持ってきた後、すやすやしている七罪を見ていて、つい我慢出来なくなって、お布団に入っちゃったんだ。てへ、ペロ!」
拳を頭に当てて、ウインクしつつ舌をだすペドー。
「すっごいむかつく!!っていうか、さっさと布団から出なさ――あ、いややっぱ出なくていいわ!!」
布団から出る様に言おうとした七罪が、部屋の隅に脱ぎ捨てられた男物の下着や服を見つけて断る。
(くっそ~、コイツ完璧に、今までの仕返しに来てるじゃない……)
七罪が心の中で、爪を噛む。
ペドーを気にしても始まらないと思った七罪は、現実逃避気味にテーブルの朝食に手を伸ばした。
「さ~、七罪。それが終わったらお出かけしような~」
「お出かけ?」
スープを飲みながら、七罪がペドーに視線を投げる。
「そ!デートだよ!!」
そう言ってベッドの下から取り出すのは、大きな麻袋!!
人間一人、もっと言えば七罪一人位を入れるのにちょうどいいサイズ!!
「それ。デートの為の道具じゃ……」
怯える七罪が、カップを落とす。
しかしペドーは止まらない!!
「ふふふ……さぁ……俺と!!
ふはははは、ははははは!!!はぁはははははっはっはっはっは!!」
「い、いや、いやぁぁあああああ!!!」
ペドーが麻袋を広げ、七罪に被せると勢いよく部屋から逃げ出した!!
「……これ、普通に犯罪じゃないかしら?」
別室でモニターを見ていた琴里が小さくつぶやいた。
なんだか最近ラタトスクがペドーの変態行為をバックアップする組織に変わってきている事を感じながらつぶやいた。
「だせー!!だせぇ!!私なんか、食べたっておいしくないわよ!!」
七罪の中では何処へ連れていかれるか分からない、恐怖で一杯だった。
煮えたぎる鍋の前か、それともミンチにされてハンバーグにされるのか、気が気でなかった。
麻袋の中で必死に七罪が抵抗するがペドーは止まらない、人間とは思えない力で七罪一人を抱えて走って何処かへ向かっている。
「食べる!?性的に!?あ、いや、今はそうじゃないぞー。
七罪、今日俺がお前を変身させてやるよ……ビューティーでかわいいBBAとは違う幼女の魅力たっぷりに変身させてやるのさぁ!!ぐっへっへっへっへ!!」
「せ、性的!?変身!?」
今度のペドーの言葉で、七罪のイメージがさらに変わる。
煮えたぎる鍋が置かれた部屋は、薄暗いそれでいてムーディで怪しいアダルティな部屋へ、そして七罪をミンチにする料理人は際どいボンテージに身を包んだ怪しい男に。
(へ、変身させられる……!
男どもの欲望を満たす精霊に……いや、むしろ使い捨ての道具に!?)
七罪の脳裏には、不自然に腹が膨らみ、なぞの白い液体が掛かって、全裸に首輪をされて目にハイライトの無くなった自分が豚小屋に放置される、凌辱系エロゲのワンシーンの様な物が想像される。
そうこうしているウチに、ペドーは目的の場所に七罪を置く。
そしてドアを開けて、その場から逃げていった。
「こ、ここは……?」
もぞもぞと、麻袋から抜け出した七罪の目に飛び込んできたのは、煮える釜でも、ミンチの機械でも、怪しい部屋でもなく、調教師でもない清潔感にあふれた部屋。
隅に置かれたアロマキャンドルが揺れ、中央にはベッドが置かれている。
想像していたよりもずっと、普通な部屋だった。
「はぁい、お・ま・た・せ♡
サロン・ド・ペドフィリアの出張で~す!」
七罪が来たと思われるドアから、身長の高い長髪の女の子が出てきた。
何処となくキラキラした瞳と、すらっとしたスレンダーな体系が妬ましい。
「あ、あんた誰よ!?」
「うふ、紹介が遅れたわね。私は五河 詩織よ。
気軽にしおりんって呼んでね?」
七罪の安心させるように、しゃがんで目を合わせきて、肩をポンポンと優しく叩いた。
「あ、えっと……よ、よろしく、お願い、いたします……」
七罪はそのあまりに、気さくな態度にすっかり毒気を抜かれてしまった。
「それじゃ、さっそく服を脱いであのベッドの上に横になって?」
「はぁ!?」
詩織から発せられた言葉に、七罪が素っ頓狂な声をだす。
「あら、聞いてなかったの?今日は貴女を変身させちゃうのよ?
第一段階目は、この通りエステでーす!」
じゃじゃーんと自慢げに、高級そうなアロマオイルを持ち出す詩織。
「はっ!なるほどね、私みたいな勘違いブスが喜んでる様を見て、あざ笑おうって――」
「教育的指導!」
「あだ!?なに、すんのよぉ……」
ネガティブな七罪の言葉を遮る様に、詩織の軽いチョップが七罪の頭に当たる。
「良い?七罪ちゃん。この世には確かに豚そっくりのBBAがいるわ。
けど、それと同じように天使の様な幼女たちも居るの。
生まれ持った違いは確かにある。けどね、なんの努力もしないで諦めるのは早いわよ?
とりあえず、あなたは『女』という性別に胡坐をかきすぎね。努力なさい!努力を!!ひがむのはそれからだって遅くないんだから」
詩織の言葉に、七罪が息を飲む。
「と、いう訳で――エステ、はじめちゃうわよ?」
「あ、えっと、心の準備ががががががががががが」
あっという間に七罪は服を脱がされ、ベッドの上に置かれ、エステを受けさせられてしまった。
必死に抵抗しようとしたが、「もう、むりでしゅ……」の言葉と共に気を失ってしまった。
数分後……
「ふぅおおお……なんという赤ちゃんクオリティ……」
七罪が自身の両手の指を見て、感動のあまり声を出していた。
すべすべつやつや、まさにその手は卵肌、いや、それどころか生まれたての赤ん坊の様な手だった。
「どう?びっくりした?エステでも、こんなに変わることもあるのよ?
じゃ、次のお部屋行ってみましょうか?」
七罪に服を着替えさせて、次の部屋へと誘う詩織。
「は、はい……」
この時珍しく(七罪本人でも驚いた)素直に答えることが出来た。
「次のお部屋は~~~~散髪のお部屋で~す」
そう言って詩織が見せるのは、まるで床屋の一室を借りてきたかのように精巧に作られた床屋さんにある椅子と、流し台だった。
トレイにはよく手入れされた、ハサミやブラシ、櫛などが置かれている。
「切るの?」
不安げに七罪が詩織を見上げる。
自身の髪はぼさぼさで愛着など無いが、切るとなれば話は別だ。
七罪は拒絶の意を詩織に示す。
「怖い?そうよね。けど安心してね?切るのは枝毛だけだから。
その前にシャンプーとリンス、トリートメントをして……
大丈夫よ。髪は女の命、ぞんざいになんかしないわ」
詩織の真剣なまなざしに、七罪が小さくうなづいた。
「ねー、七罪ちゃん。七罪ちゃんって、週にどれくらい髪に櫛通してる?」
シャンプーを流しながら、詩織が七罪に尋ねた。
「き、きほん……やらない……」
「あーら、ダメじゃない。さっきも言ったように髪は女の命!
手間をかけてもかけすぎなんて、事は無いんだからね?」
ほら出来た。の声と共に七罪が鏡に映る自分をみて、再度声を上げた。
「これ、私……?」
「うふ、素材が良いのよ。素材が。
んじゃ、次の部屋に行きましょうか」
にっこりと笑うと詩織は七罪の手を引いて、次の部屋へと進む。
この時すでに七罪の抵抗はほとんどなくなっていた。
次の部屋は、もはや部屋というより店内と呼ぶ方がふさわしい場所だった。
ハンガーやマネキンが並び、みなそれぞれおしゃれな服を身に纏っている。
「ここは……ブティック?」
「そう、七罪ちゃん専用のブティックよ?
七罪ちゃん変身作戦第三段!キュートな服で変身よ?」
美容、頭髪に続き服と来た。
だが、七罪は店の発する『リア充オーラ』とでもいう独特の雰囲気にすっかり気おされてしまっている。
「わ、私に何を着せる気よ?」
「うーん、こればっかりは好みだし……私一人が決めて言い訳じゃないでしょ?
だから、アドバイスをくれる人を呼んじゃいました~
みんなカモンカモン!」
ぱちぱちと手を叩くと、部屋の奥から数人の女の子が出てくる。
青い髪のパペットを付けた少女、赤い髪の軍服を肩にかけた少女、ひときわ幼いゴスロリに身を包んだ幼女、そして最後に褐色肌で元気いっぱいと一目でわかるボーイッシュな少女。
「いい!?」
突然の他人の登場で、七罪が小さく嫌がった。
「大丈夫よ、怖くないわ。さ、服を選びましょうね?」
詩織が優しく七罪の背を押す。
「お前、そのしゃべり方……」
褐色肌の子が何か言いたげだが、すぐに口を閉じてしまった。
「?」
小さな疑問は残る物の、みんながそれぞれの服を差し出して次から次へと、着せ替え人形の様にされる七罪。
「やっぱり、もっとふりるがいりますわ」
「うげー!ボクはそんな動きにくそうなの、ゼッタイ着ないぞー?」
『おややん?シェリちゃんももっと、可愛い服着るべきじゃないかな?』
「七罪ちゃんコレ着ない?大切な部分にチャックが付いたレザーの服……」
「あんたは!なんてもの持ってくるのよ!?」
詩織の冗談に赤髪の子が、蹴りを叩き込んだ。
てんやわんやで、3時間ほど過ぎた時、ついに七罪の服が決まった。
そして次は最後の部屋だった。
「それじゃ、七罪ちゃん。最後の相手は私よ?」
部屋の中、椅子に座った詩織が手招きをしている。
肌をエステされ、髪も手入れされ、新しい服も用意された。
なら最後に来るのは?
「うすうす、気づいてるわよね?最後はメイクよ」
詩織がウインクして、化粧品のセットを差し出してきた。
「…………メイク?」
「そう、七罪ちゃんを生かす為のメイク。
取り繕って、誤魔化すんじゃない、貴女本人を生かす為の『変身』」
もはや七罪は嫌がることは無かった。
ただ素直に、詩織の前に座って彼女の化粧を受け入れた。
「ねぇ、七罪ちゃん。ちょっとした勝負をしない?」
「勝負?」
手を動かしながら、詩織がそんなことを言ってきた。
このタイミングで、若干不穏な単語にわずかに身構える七罪。
「その姿は、自分はダメだダメだって思ってる、七罪ちゃんをちゃんとカワイク出来たら私の勝ち。
もし、私の手で変身させられなかったら、七罪ちゃんの勝ち。
そうね……ここを出して自由にしてあげても良いわ」
「!?」
あまりに簡単な勝負に、七罪が声を上げそうになる。
「さ、出来たわ。後ろに鏡があるわ。
見て見て?」
すぐに終わった化粧。七罪は詩織に背を向けて、後方にあった姿見に映る自分を見て驚いた。
「これ、私……?」
鏡に映るのは、やぼったい自分ではなかった。
かわいらしい少女が、こちらを向いて驚いた顔をしている。
「うそ、うそよ……こんなの、何かの間違い……だって、アレだけで……
私がこんなにかわいいなんて、おかしいわよ……!」
否定の声を上げる、七罪の後ろで詩織が立ち上がるのが鏡に映った。
「そうかしら?変身は、意外と簡単に出来るのよ?
詩織が自身の長い髪を掴んだ時、するりと髪が落ちた。
「え……詩、織……さん?」
鏡の中、詩織が髪――ウイッグを外し、メイク落としで顔の化粧を取る。
そして男の声で――
「詩織?誰それ、俺ペドー!!
じゃんじゃじゃ~ん!今明かされる衝撃の真実ゥ!!
俺は、幼女の味方!ペドーさんだぜ!!」
勢いよく、女性ものの服を脱ぎ捨てる!!
それの姿は間違いなく、今朝のロリコンで――!!
「うわぁああああ!!!!」
「いやー、楽しかったぜ。お前を変身させるのはよ!!
すっかりカワイクなって……うんうん、ペドーさんはうれしいぞ!!」
「あ、いえ、あ?」
思い出すのは詩織との記憶!!
サロンでマッサージされ、シャンプーされて、服を着替えさせられて、そして化粧までさせられた相手は!!ロリコン!!
「い、いやぁああああ!!!」
自分がかわいくなったことと、同じくらい衝撃の真実を知った七罪は、情報を処理しきれなくなり走って部屋から逃げ出した!!
「七罪!?七罪何処行く――あ、転んだ」
手を伸ばした先、サロンの場所で気絶した七罪を、ペドーは優しく抱き上げた。
「ふぅ、変身の反動が大きすぎたかな?」
すっかり可愛くなった、七罪をペドーが満足気に連れていく。
いや、違うんだ……真ゲスじゃなくて、真ペド……そう!これは真ペドなんだ!!
決してパクリではない……オマージュ、オマージュです!!