デート・ア・ペドー   作:ホワイト・ラム

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戻って来た!私は戻って来たぞ!!
誰やコイツ?的な視線にも耐えて戻って来た!!戻ってきましたよ。

本当に待ってた人、ごめんなさい!!


二亜ファナティック
ペドの奇妙な冒険~ファントム・ロリータ~


太平洋上空にて、一機の飛行機が飛んでいた。

その機体にはDEMのマーク。その中で銃声が響いた。

それとほぼ同時のタイミングで薄いバリアの様な物を飛行機が通過した。

 

「……この感覚は……ステルスの内の一つを抜けましたわね?」

飛行機の内部で、黒い霊装を纏った最悪の精霊『時崎 狂三』が顔を上げる。

その周囲には飛行機の乗組員と思われる男たちが倒れている。

 

この飛行機の向かう先はDEM社の所有する無人島。

本来太平洋の上に出来た小さな島に、ステルスをする為のテリトリーなど存在する訳がない。それだけでその島が『普通』ではないのが推察される。

その時、再び体に掛かる違和感。

 

「2つ目のステルスを通過……どうやら、噂は現実味を帯びてきましたわね」

自らの緊張を緩和する様に唇を舐める狂三。

その目的はDEM社が確保しているという『第2の精霊』との接触である。

以前ペドーと共に、ここではない施設を探しに行ったが結局件の彼女と会う事は出来なかった。

だが、幾重にも重なる重要なセキュリティーに期待が高まっていく。

ステルスの影響か、先ほどよりも外が暗くなった気がする。

どうやら、ステルス機能は外部からの光すら弱めてしまう様だった。

 

「3つ目のステルスを通過。

さぁ、この島には何が――」

狂三が飛行機の窓から外を見た。

そこには――

 

 

 

「なぜだぁ!なぜ私が押される!?

この身には人類最高峰の頭脳がある!!

この体には世界最高峰のリアライザがある!!

そして我が手には、精霊たちの力すらあるというのに!!

頭脳!!科学!!霊力!!すべてが世界最高峰!!

私は、私は人間を超えたんだ!!

私は……私は神に成ったんだぁ!!!」

白い生地に赤いひび割れの様なラインが全身に走ったワイヤリングスーツを着た髪の長い女が空中で叫ぶ。

自身の体と同程度の十字架の様な物を背負い、その十字架を丸い円が囲み、その縁から上下左右に緑のエネルギー体が迸っており、さながら奇跡で形作られた十字架にも見える。

 

「っはぁ!ダッサいの~

神だなんだって言っても超ザコじゃ~ん?」

神を名乗る女を煽る様に、陸にいた幼女が舌を出す。

黄色いツインテールにボロボロのホットパンツにキャミソール。

幼い容姿に不釣り合いなほどの過激に露出した格好をしていた。

 

「ぬぅぅぅ!!この、この人形風情が!!!

私が命を与えられなければ、ただの肉の塊でしかないハズの実験材料が!!

神を侮辱するな!!死ねェ!!」

女の背負うエネルギー体の十字架の内、上部が蛇の様に形を変えて口を開く。

両手に2メートルをゆうに超えるだろう緑のブレードを出現させて急降下してくる!!

 

「うおぉおおおおおおおお!!!その身に罰を受けろぉおおおおおおおお!!!」

 

「罰?罰だって?それを受けるのは、幼女に武器を向けたお前だろ!!」

幼女の後ろからボロボロのペドーが飛び出してくる!!

 

「な、貴様!?」

女がペドーの姿に驚愕する。

 

「いっけぇ少年!!鳩尾が弱点だぁ!!

そこが制御部分であり、同時にもっとも衝撃に弱い部分だ!!」

更に後ろから姿を見せた本を携え緑のシスターの様な恰好をした精霊がエールを送る。

 

「食らいやがれ!!」

 

「この――私ガァ!!」

ペドーの霊力を纏った蹴りが、女の鳩尾の丸い機械を蹴り壊す。

 

「あ、ああ……あああ、ああああ!!」

機械からエネルギーがあふれ、光に包まれる。

 

「パッパ!危ない!!」

爆発の瞬間、黄色い髪の幼女がペドーをかばう。

 

 

 

否名(イナ)ちゃん!?否名ちゃん!!」

爆風に飲まれ、ペドーが声を上げる。

地面にはさっき倒れた精霊。

 

「あっは……クソザコ、神様気取りに……一発かまして……やったわ……へっ……

ザッコ……ほんと、ザッコ……」

否名と呼ばれた幼女が笑う。

 

「イナはさ……所詮作られた、精霊だけど……最後に、自分の意志で……アイツに反抗してやったし……イナは、もう……籠の鳥じゃ……ない……ただの……肉塊じゃ……ない……イナは……虚構(imaginary)精霊(Number)なんかじゃないんだ……」

その時、島を囲うステルス機能が破壊され青い空と太陽が広がる。

 

「あ……そら、始めてみた……青くて……キレイ……」

否名は一滴の涙を残して、光の粒子になって空に消えていった。

 

「否名ちゃん……そっか、やっと解放されたんだね……

この狭い島からやっと……自由に……」

ペドーが涙をこらえる。

その背後から来たシスターの様な精霊は涙をこぼす。

 

 

 

「な~んちゃって~!どうどう?びっくりした?したぁ?

ぷぷっ!泣きそうじゃ~ん!ざっこ!ざっこ~」

否名と呼ばれた精霊が後ろに再度出現する。

 

「な、否名ちゃん!?消滅したんじゃ……」

 

「はぁ~?するワケないじゃ~ん!

パッパ頭よわよわなんだから~」

否名が挑発する様に舌をだす。

 

「この……ッ!イナガキ!!

メスガキ分からせペドーさん棒の出番か!?」

 

 

 

「え?なんですの、これ?」

狂三がきょとんとして、指さす。

なんというか、劇場版的なストーリーの最終決戦の最後だけを見せられた様な気分に狂三がなる。

 

「……あ!時子!奇遇だな!」

こちらに気が付いたペドーが挨拶をする。

 

「いえいえいえいえいえいえ……なんというか、全く理解できませんけど!?

一体なにが起きたんですの?何起きですの!?」

 

「話すと長くなるけど良い?」

 

「じゃ、結構ですわ!」

狂三はめんどくさくなるであろう空気を感じて、断った。

 

「あー疲れた、久しぶりに家に帰るかな……じゃあね!少年!」

ペドーの横で事態を見守っていたシスターの様な精霊が、空を飛び島の外に飛んでいった。

 

「あ、イナも、イナも!ばいびー!パッパ、運が有ればまたねー!」

同時に逆方向に否名も飛んでいく。

 

「全く……達者で生きろよ……世界は広いんだからな……」

ペドーが目を細めて、否名を見送る。

 

「……あれ、多分『第2の精霊』ですわよね……」

一応目的は達成できたのか?と狂三が疑問符を浮かべる。

全てが全て終わった事を何となく狂三は理解した。

 

「……私も帰りますわ」

 

「待って!お金貸して!帰れんから!!ってか、ここ日本?日本だよね?」

ペドーの困惑する表情を見て、狂三が静かにため息をついた。

 

 

 

 

 

「や~っと帰って来たぜこの町へ!

いや~、連絡も出来ずに一週間以上……みんな心配してるよな」

ペドーが久しぶりに感じる家路を急ぐ。

自宅が見えたきたその時――

 

「ミンナ、カイモノノ、オテツダイ、アリガトウ、ペド」

 

「こんなのただの気分転換よ。気分転換」

 

「ペドーさんとのお買い物楽しいです……」

ロボットが精霊たちに囲まれていた。

 

「ペド、キョウノユウハンハ、カレーペ――ド!?」

 

「おらぁ!!」

ペドーが走り、そのロボットを全力で殴り破壊する!

 

「え!?おにーちゃんが二人!?」

琴里が突如現れたもう一人のペドーに驚く。

 

「どう見てもロボでしょ!?なんで間違えるの!?」

ペドーがペドーロボを指さす。

 

「いや、だってペドーだし……突然ロボになる位しそうだし……」

シェリが困ったように視線をずらす。

 

「ペドーさんは、突然ロボに成ったりしません!」

 

『けど、けど~、語尾が「ペド」だったから、ペドー君だと思ったんだよ』

四糸乃が目をそらすが、よしのんが説明する。

 

「ペドーさんは、語尾に『ペド』を付けたりしません!!」

ペドーが必死になって説明する。

 

 

 

 

 

巨大な機械がペドーを飲み込んでいく。

此処は〈ラタトクス〉の所有する設備の一角で、とあるビルの地下にある。

先日の折紙との戦闘で〈フラクシナス〉は大きく傷つき修理が急がれている状況だった。

その為、ここはそれ以外でも対処できるようにと複数用意されている、隠れ家の一つらしい。

 

「いやー、大変だったぜ。冬休み突入と同時に急に拉致されてさー

訳わかんない島に連れてかれて……琴里聞いてる?」

 

「聞いてるわよ!聞いてるから、万が一の為に検査してるんじゃない!」

機械の中から聞こえてくる声に琴里が苛立たし気に返答する。

 

「第一な?あんな偽ロボで騙されるなよ。

さっさと気が付いて探して欲しかったなぁ~」

 

「はい、検査終わり!帰れ!帰れ!」

乱暴に琴里が言い放つと、そのまま帰っていってしまった。

 

「……あーあ、機嫌損ねちゃった……ま、今夜は琴里の好物でも作りますかね」

検査用の服から、普通の服に着替えてペドーが更衣室を出る。

 

「フンふ、ふ~ん……あ!中津川さん!」

ペドーが視界に40代くらいの男を捉える。

 

「おや、ペドー君じゃないですか。

検査は終わりですか?」

中津川が手にコンビニ袋を下げながら話す。

 

「ええ、おかげで……まぁ、念のためと言った意味合いの方が強いんですけど――あ、それって!?」

 

「お、気が付きましたぺドー君?

そうなんですよ、コレ「週姦 マニアックス」の最新号なんですよ。

しかも、ほら!」

中津川がモザイク必死の雑誌の一部を指さす。

 

「「行く先々でなぜか仲良し(意味深)されちゃう娘」が乗ってる!?」

 

「そうなんですよ。学校へ行く途中で不良に絡まれ仲良し(意味深)、最近気になっている先輩に空き教室に呼び出されて仲良し(意味深)家族旅行へ行けば両親とはぐれて地元の優しい少年と仲良し(意味深)」

 

「よっしゃぁ!!俺も買いに行かんと!!」

ペドーは雑誌欲しさに一目散に走り出した。

 

 

 

 

 

「ふぅー……ふぅー……買った、買ってしまったぜ……」

露骨なまでにヤバイ顔をしながらペドーが歩く。

気が付けばクリスマスも終わり正月の準備で商店街は忙しい様を見せていた。

だがペドーには関係ない!

今大切なのは、この手の中にあるロリロリな女の子の痴態をその眼に収める事だけだった!

 

「ロリコンに盆も正月も関係ねーんだよ!!」

 

「う、うう……たすけて……」

 

「ん?」

突如聞こえた助けを求める声にペドーが反応する。

声のした方へ顔を向けると、そこは人気のない路地の入口。

うつ伏せで倒れる女性が、弱弱しく手を伸ばしてきた。

その顔には疲労の色が濃く見て取れた。

 

「さーて、帰るか」

 

「ちょっと!!見捨てるの!?」

再度踵を返したペドーの言葉に倒れる女性が再度顔を上げる。

 

「うわっ!?養豚場の豚を見るような目!!」

明日には出荷されてお肉になるんだな。なんて言うような冷酷な目に女性がたじろぐ。

 

「知らない人についていっちゃダメって言われてるから……」

 

「この前会ったよ!?否名ちゃんと同じ島にいたじゃない!!」

 

「いたっけ?あれ、なら精霊なの?」

 

「……!?」

倒れた女性は露骨に『しまった!』という顔をした。

 

 

 

 

 

「ほら、着いたぞ。帰るからな?」

 

「少年!?なんでそんなに帰りたがるの!?」

数分後、ペドーは仕方なく女性を介抱し、仕方なく女性の家であるマンションまでやってくる。

あのまま倒れられたら、流石のペドーも寝ざめが悪い。

ペドーはロリコンではあるがサイコパスでは無いのだ。

 

「ほら、お礼するから、入って入って」

女性がドアを開けてペドーを招く。

 

「異臭がしそ――」

 

「しません!!絶対……多分しません!!!」

言い直した事に若干の不安をペドーが覚える

 

「ってかさー、少年なんでそんなに厳しいの!?

女の人の部屋だよ?さっきから一応『当てて』いるのよ?

最悪『カギ取るー』とか言って、お尻まさぐられる程度は覚悟――」

 

「さて、帰るか」

 

「少ねーん!!なんでやぁ!!」

女性を置いて再度ペドーが帰ろうとする。

 

「ほら、賞味期限が切れれば高級食材だってゴミだろ?」

 

「爽やかな笑顔で、びっくりするほど外道な事いうね!?

ほら、入って入って!はーい、オープン!」

女性が扉を開き、半場無理やりペドーを引き込む。

引き込んだ先は――

 

「うわぁ……」

部屋中に広がる本、本、本の山。

そして、食べ散らかされたインスタント食品の空き箱の山。

物とゴミにあふれた、所謂『汚部屋』だった。

 

「……夏場なら、異臭間違いなしか」

げんなりしながら、足元の紙に目をやる。

その瞬間――!

 

「はっ?……え?あ?え?」

ペドーが理解できないと言った様子で硬直する。

 

「ん~どうした少年?まさか、私の使用済み下着というお宝を見つけてテンションが――」

 

「これは!?そんな!!」

ペドーが拾うのは一枚の紙、コマ割り、セリフ、ペン入れが終わった漫画の原稿だった。

だが、そのマンガのキャラクターにペドーは見覚えがあった。

おどけない姿で男の欲望を受け止める幼女。

快楽に怯えつつもその快楽を貪ることを覚え始めた雌の顔。

それらが躍るこの作品は――

 

「イクナカ!?」

 

「お、そうそう。『行く先々でなぜか仲良し(意味深)されちゃう娘』は私の作品ですよ~

読者さん?いけ、一応これは18歳以上向けだから少年には――」

 

「本条先生!!」

突然、ペドーが女性の手を握る。

 

「うえ、少年!?急に積極的に……」

 

「先生の大ファンです!!」

ペドーが感動と言わんばかりに、握手をする。

 

「うっわ!うっわ!宝の山か~うわぁ!マジで!?」

ペドーが本棚に進み、そこに並べられた本を手に取る。

 

「ああ~、コレコレ!初めて先生の作品読んだのコレだったなぁ!

ああ!こっちはお気に入りだったんだけど、十香が破った奴だ!

絶版本だし、もう二度と会えないと思ってた……感動の再会だ……

スゲぇ、ここは聖書の集まりか!?もはや崇拝しかない!!ここに神殿を立てよう!!」

ペドーが涙を流し、喜びを全身で表現する。

 

「…………なんか、想定から大分違うけど。

改めて自己紹介しようか?私はニ亜(にあ)

本条 ニ亜。

漫画家にして――()()()()()です」

 

「!?」

この女性が何なのか。

ペドーが身構える。

精霊ならば、向こうから接触してきた目的はなんなのか?

全ての精霊がこちらに友好的とは限らない。

ならば、彼女の目的はなんなのか?

 

「さて、少年私は……お腹が、空いて、死にそうです……おねがい、何か作って……?」

そう言うや否や、ニ亜はベットに倒れ伏した。

 




キャラクター紹介

人造疑似精霊『i』
作中でペドーが『否名』ちゃんと読んでいた少女。
4月にASTの一人がペドーを誤射した際に回収された細胞を、DEM社の天才と呼ばれた女性が圧力をかけて入手。
ペドーの持つ『精霊の霊力を封印する』という性質に目を付け細胞を培養。
遺伝子的に改造を繰り返し、当時捕まっていたニ亜の霊力をモデルにした人造霊力を注ぎ込むことで完成した一種の人工生命体。

太平洋の島でDEM社本社にも秘密で研究がおこなわれていた。
制作者はリアライザの科学力と精霊の力を取り込み、自身を人間を超えた存在=神へと変わろうとしていた。
『i』はその研究の過程で生まれた副産物。
名前すら与えられずに『机上の空論の精霊』という意味を込めて虚数(imaginary Number)と呼ばれていた。
拉致されたペドーに名を聞かれた時咄嗟にそう名乗ったが、聞き間違いによって「イナ」と呼ばれる事になる。
そして、島の『外』にあこがれペドーと一緒に脱出する事を決意する。
自身の創造者に逆らい、自由を手にする。
だが、人造霊力によって生命維持をしている彼女にとって、創造者に逆らう事は死を意味する。
最後は体の霊力を全て消費して消滅した。

かに見えたが、ペドーによって封印された事によりパスがつながり、ペドーを通じて霊力が送られることで生き延びる。
彼女は世界を見るべく旅だった。

名前の無い記号の「i」を捨て、精霊「否名」として。
ペドーの細胞を培養したという意味では娘ともいえるかもしれない。
そして実年齢は余裕の一桁。
両人はそのことを全く知らないが、否名がペドーを『パッパ』と呼ぶのは見えない絆がそうさせるのかもしれない。

作者がメスガキが書きたいんだよぉ!
となり、作った。
彼女とペドーの脱出の話は多分書かない。

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