デート・ア・ペドー   作:ホワイト・ラム

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さてさて、今回も投稿です。
タイムも少しは縮んだかな?
後はクオリティ……


ニ亜ノート

一人のロリコンがキッチンを進んでいく。

やや埃の積もったシンクを通り過ぎ、目指すは冷蔵庫の中。

 

「さて、今日は冷蔵庫の中にあるあまりもの食材で出来る、簡単ロリコン料理で逮捕していくわね……」

 

がちゃ――

 

「あら、やだぁ!やだ、冷蔵庫の中――マジで、何も無いな!!」

ペドーが演技っぽいしゃべり方をやめて、何時もの調子に戻る。

冷蔵庫の中にあるのは、ビールの缶、ビールの缶、そしてアルコール依存症御用達と一部界隈で有名な「エクストリーム・ゼロ」。ちなみにアルコール度数9%なり。

 

ガラッ!

 

一縷の望みをかけて、開いた野菜室には焼酎たち。

 

「…………」

 

「しょうねーん、まだー?簡単な物でいいから早くー」

絶句していた所に、リビングからニ亜の呼ぶ声が聞こえる。

そしてペドーは……

 

 

 

「本条先生、お待たせしました。どうぞ、たくさん食べてくださいね」

 

「わーい、少年ありが――なぁにこれぇ?」

 

「シェフの気まぐれ、ソルト・スープでございます」

ニ亜の前に出されるのは、ホカホカと湯気を立てるお湯!

 

「簡単な物で良いって言ったけど、簡単すぎない!?

お湯わかしただけだよね!?」

 

「塩も入ってますよ?」

笑みを崩さすペドーが言い返す。

 

「塩だけに、塩対応ってか?

上手い事言った積りか、しょうねーん!!!」

 

「ドリンクの、ソイジュースです」

 

「あ、無視した!?完全に無視した!!

これに至ってはただの醤油やないかーい!!」

弱ってるとは、一体何なのかと言わんばかりのニ亜の叫びが、マンションに響いた。

 

「あ、ああ……もうまじむり……死ぬ……」

 

「ミッションはコンプリートしたし、帰るか」

ペドーが踵を返そうとした時――

 

「このままじゃ、今年の本が間に合わない……」

 

「な……んだ、と?」

 

「せっかく、久しぶりに本を出そうとしたけど、お腹が空いて力が出ないんじゃ仕方ない……」

ニ亜が後悔たっぷりと言った様子でわざとらしく、口を開く。

ピクリとペドー体を震わせる。

 

「本条先生の新刊……数年単位で、供給が止まっていたのに、新刊が?」

 

「あー『行く先々でなぜか【仲良し】されちゃう娘』の新刊も書く予定があったのに……これは延期するしかない……か……」

 

「仕方ないな。ここは俺が料理の腕を見せる時だな!

お腹を空かせた人を放ってはおけないぜ!」

某食品ヒーローみたいな事を言いながら、ペドーが入口に置いていた買い物袋を取りに行く。

 

(彼は、ビックリするほど欲望に素直なのね……)

ニ亜は予想以上の食いつきに若干引きながらペドーの背中を見送った。

 

数分後……

 

「げっぷぅ、うまかったぁ……生き返ったぁ!」

土鍋を空にしたニ亜が、背伸びをする。

しおれていた雰囲気がなんというか、ハリを取り戻した様だ。

 

「いやぁ、先生が元気になって良かったですよ。

原稿頑張ってくださいね」

最後の部分にペドーが強めのイントネーションをくわえる。

 

「あー、それなんだけどさぁ。

割とマジで原稿ヤバイ。少年、お手伝いプリーズ」

 

「え”!?」

まさかの要望に流石のペドーが動揺する。

 

 

 

「先生!ゴムかけ全部終了しました。

7ページから10ページまでの、ベタ始めます!」

 

「了解少年、インクはそこの棚の使ってよ」

丁寧に下書きが消された原稿をペドーが渡す。

ニ亜が確認を終わらせた時には、背景を黒く塗る仕事にペドーが取り掛かっていた。

 

「いや、少年すごいね。

これは、手先が器用とか気が利くタイプじゃなくて――()()()()()()タイプだね?」

 

「さ、さて、何の事やら……」

ニ亜の言葉を軽く流しながら、ペドーが新しいページの作業へ移る。

 

「しょうねーん。普通の人間は『ゴムかけ』とか『ベタ』とか言わないんだよ?

これは中学の時にハマって、少し調べた系でしょ?

いや、多分数枚は書いた事ある動きかな?やるな少年!」

 

「あー、忙しいいんで後にしてもらえます?」

細ペンを手に、ペドーが細かな部分のベタを始める。

その様子を見て、ニ亜はその部屋を後にした。

 

 

 

「ふぅ……先生。ベタ全部終わりまし――た!?」

 

「おお、少年やるじゃない。上手い上手い」

原稿を渡した時、ニ亜の恰好を見てペドーが固まった。

 

「お、おぉ?少年、早速気が付いたね?」

ニ亜はいつの間にか部屋着から妙に露出の高いメイド服へと変化していた。

短すぎるスカートに肩や胸を容赦なく露出させ、挙句の果てにへそ出しという、メイド服というよりも『メイド風』の男を悦ばせる為の恰好と言っても過言ではない服装になっていた。

 

「どーよ、これぇ?資料様に買ってあったのを着てましたぁ!

ムラムラする?おっきしちゃう?ベタ用のインクでおへその下に淫紋書いたり、内股のトコに「肉●器」とか「●ませ済み」とか書いちゃう?それとも、もっと過激に――」

 

「すいません、今痴女に襲われて――」

ペドーが素早く、携帯でおまわりさんに助けを求める。

 

「しょうねーん!!何通報してるの!!

ジョーク!イッツ、ジョーク!サービスの積もりだったの!!」

ニ亜がペドーから携帯を取り上げる。

 

「いや、どう見ても男を呼びつける痴女だし……」

 

「あの、これはイタズラ心というか……

えっと、ほら、はい、コレお給料ね?」

誤魔化すようにニ亜が給料袋を渡してくる。

 

「いただきます」

 

「おー、給料もらうのに躊躇ないね。

自身の仕事がお金をもらうに値するっていう自信かな?」

 

「給料というより、迷惑料の積もりですね。

さっきの行為を含めると、口止め料も込みの」

封筒の中身を数えながらペドーが答えた。

 

「ふざけただけじゃん、しょーねんー」

 

「んじゃ、帰りますんで。原稿頑張ってくださーい」

今度こそペドーが帰ろうと、踵を返した。

 

「待った待った!

本当に帰る積り?キミのやるべき事はここからじゃない?

五河 ペドー君?」

 

「あれ、俺の名前――」

名乗った記憶など無いと言おうとした瞬間ニ亜の姿が変わった。

メイド服から、シスターを思わせる十字のデザインされた服装へと。

その姿は――

 

「精霊?」

 

「ちょっとー、本気で忘れてるの?

否名ちゃんと一緒に島で遭ったじゃない」

その言葉で、ペドーは漸く目の前のニ亜が精霊であるという事実にイコールで結びついた。

 

「ああ、あの時の!」

ペドーがポンと、手を叩く。

 

「うわぁ……マジで幼女以外記憶から削除するタイプかぁ……」

明るいペドーの顔とは対照的にニ亜が困ったような顔をする。

そして虚空に手を伸ばし口を開いた。

 

「〈囁告篇帙(ラジエル)〉」

ニ亜の手に現れたのは一冊の本。

不思議な素材で包まれた、十字のデザインがなされた古書だった。

 

「ッ!?天使か!」

 

「いや、前も見せたし……けど、あー、能力は見せて無いか。

いいよ。見せてあげる全知の天使〈囁告篇帙(ラジエル)〉の能力を」

 

「全知……だって?」

 

「そうだよ。この〈囁告篇帙(ラジエル)〉は全てを見通す天使。

この世界ありとあらゆる事象が、この中に現れるって訳。

当然、君があの時あの場所を通るなんて事も簡単にわかっちゃうんだなぁ~。

本当に偶然だと思った?偶然倒れている相手が、偶然に精霊だったなんて?」

にやにやしながらニ亜が〈囁告篇帙(ラジエル)〉の表面を撫でる。

 

「まぁ、割とありますね。そういう偶然」

ペドーの脳裏には、偶然自分の通っている学校に現れた十香や、偶然帰り道で出会った四糸乃、偶然修学旅行先で出会ったシェリなどの事を思い浮かべた。

後、他に何人か偶然出会った精霊が居た気がするけど忘れた。

 

「……キミほんと、予想通りのリアクションしてくれないね?

ほんのちょっとだけ、また会えるの期待してあんだけどなぁ」

がっくりとニ亜がうなだれた。

 

「また会える?」

 

「んー、一応お礼……のつもり……

私この前DEM社の保有する島に捕まってたじゃん?」

名もなき島で起こった救出劇。

否名と一緒に成り行きで、仕方なく助けた精霊が居たなーと、ペドーが思い出す。

 

「お礼というより迷惑しかかけてないな……

それより天使の能力持て余してない?」

 

「うぐっ……確かに〈囁告篇帙(ラジエル)〉は全知の天使。

なんでも教えてくれるけど、調べないと何も出来ない……」

 

「ふぅーん、要するに便利な検索エンジンみたいなもんか」

身近にある道具でペドーが〈囁告篇帙(ラジエル)〉を例える。

 

「そういうと、ショボく思えるからやめて!

けど、それだけが〈囁告篇帙(ラジエル)〉じゃないんだからね!」

ニ亜が頭の装飾を引き抜く。

それは先がペンの様になっており〈囁告篇帙(ラジエル)〉に何かを書き始めた。

 

「???」

 

「〈囁告篇帙(ラジエル)〉にはこの世の真実だけが書かれている……

つまり、逆説的にこの本に書かれた事は真実となるのよ!」

 

「な、ナンダッテー」

この世の理を乱す力をニ亜は持っていた。

この力を使えば、ニ亜は世界の全てを変えられるのだ!

だが……

 

カリカリ……

 

「まだ?」

 

「もう、ちょい……」

 

カリカリカリカリ……

 

「長くない?」

 

「後ちょいだから!」

 

カリカリカリカリカリカリカリカリカリ……

 

「あ!!絶版になった上回収された『がいやぁめもりぃず』がある!読も読も……」

 

カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ……

 

「先生ー、コレの2巻どこに――」

 

「出来たアァ!!」

資料用の本を読んでいたペドーに、ニ亜が〈囁告篇帙(ラジエル)〉を掲げる。

次の瞬間、ペドーの体に異変が起こった。

 

「ぬ!?からだが、勝手に!?」

何か強い力が働きペドーの体を動かす!

手足が勝手に動いて、ダンスを始めてしまう!

 

「うぐっ!?日曜朝の特撮のエンディングダンスを踊ってしまう!?」

 

「そう、これが未来記載。未来をあらかじめ書き加える事が出来るの」

 

「くそう……ぺドーンダンスを一曲踊っちまった……

けど、すごい能力だ……直接的な事は不可能だけど、使い方によっては最強の天使か……」

ペドーが額の汗をぬぐう。

 

「うんうん、ようやくこの〈囁告篇帙(ラジエル)〉の恐ろしさが分かった?

けどさ、このせいで狙われてるのも嘘じゃないんだよね……」

ニ亜は実際、ついこの間までDEM社の保有する島に監禁されていた。

天使を持つことは大きなメリットもあれば、それと同じ位DEM社に狙われるというデメリットも抱える事に成るのだ。

 

「て、事でさ?少年にもう一個だけお願い!」

 

「封印……ってことですか?」

 

囁告篇帙(ラジエル)〉の能力でペドーのバックなど既に調べがついているだろう。

そして、このタイミングでの自分に対する『お願い』と言えばある程度の予想は出来る。

 

「その通りだよ少年。場所はアキバで時は、なるはやで!

いやー、監禁生活長かったから2次元求めててさー

新刊、続巻、最終巻全部見なきゃ収まんないのよ!

それに、年末にはコミフェの新刊出さなきゃだしー」

 

「コミフェ新刊出るんですか!?」

ペドーが即座に反応する。

 

「おうよ!偶然急病で空いたトコが有ったから滑り込みさせてもらいましたー!」

 

「うぉおおおお!!!!本条先生の新刊きたぁああああああああああ!!!!!」

ペドーが肘をついて、全力で喜びをアピールする。

 

「おーおー、少年大喜びだねぇ?

けど、本命はデートなんじゃないの?」

 

「あ、いえ。新刊の方が大事なんで」

きっぱり言うペドーの言葉に、ニ亜は内心不安を覚えた。

 

 

 

 

 

「そんな事より……〈囁告篇帙(ラジエル)〉すげーっす!少し貸してもらっていいですか?」

 

「お、おう、少年。いきなりキラキラした目をしてどうした?

貸して欲しいってなら、すこしだけだぞ?」

少年の様なキラキラした目でペドーがニ亜から〈囁告篇帙(ラジエル)〉を受け取る。

 

「漫画は時間が掛かるから文字にしてみるか」

サラサラとペドーが書き込んでいく。

 

 

 

 

 

「あのロリコン一体どうしたのかしら?帰りが遅いわね」

家の居間で琴里が何気なしにつぶやく。

同じ部屋には遊びに来た四糸乃と七罪、部屋の端ではシェリがゲームに勤しんでいる。

 

「まったく、仕方ないわね」

琴里はそう言って部屋を出た。

そして数分後――

 

「あー、誰でも良いから私のカメラで、動画を撮影してくれない?」

 

「え!?」「あ!!」「ん!?」

戻って来た琴里の姿を見て全員が絶句した。

琴里は真冬で、部屋の中だというのにスク水の姿になっていた。

 

「お前アタマおかしーのか!?」

シェリが琴里を指さす。

他のみんなは声すら出ない様だ。

 

「はぁ?別にペドーに動画を送るだけよ。

こんなの普通、普通」

シェリに自身の携帯を持たせそして――

 

 

 

「お、来た来た!

おー、すげー!ひゃほほほぉい!!」

ペドーが送られてきた動画を見て大興奮する!!

 

「あ、コレ不味い奴だ……」

即座に事態を察したニ亜が〈囁告篇帙(ラジエル)〉を消す。

 

「ふっ、計画通り」

 

「少年が凄く悪い顔してる!!」




あんまり、話すすまねーなぁ……
ペドーさんが脱線させまくるからなぁ。

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