コロナが未だに流行っていて、嫌な時期ですね。
そんな時こそ、くだらない作品で笑ってくれたらうれしいです。
「ふふふぅ~ん、ふふんふぅー」
ペドーの鼻歌と包丁がリズミカルに食材を刻む音が、リビングに流れる。
ソファーの上では琴里がチュッパタップスを口に咥え、シェリたちがTVゲームに勤しんでいる。
「あ、そうだ琴里。今日新しい精霊に会ったぞ」
「へぇ……へぇ?精霊!?なん――むぐぅあ!?ぐぅえ!!かはっ、かはぁ!」
一瞬スルーしかけた琴里が、内容を把握して飛び起きる。
その先、チュッパタップスが変な所に入ったのか、胸を押えてえづいた。
「けっほ……あー、あー……なんで、そんな大事なコトあっさり言う訳?」
何とか飴を吐き出し、死の淵から生還した琴里がペドーを睨む。
涙目になってて可愛い。
「ごめ、忘れてた。ゆるしてちょんまげ」
「…………」
一瞬なにか琴里が言いかけたが、無駄だと思ったのか結局は黙った。
「で?現段階で分かってる事は?相手の名前くらい知ってるんでしょうね?」
琴里の言葉に、ペドーが今日在った事を説明し始めた。
「全知の精霊〈
どんな機密も筒抜け、事実上この世のセキュリティすべてが無意味になる。
この世界で情報がどれくらい危ないか……」
琴里が直接的な力は無いが、今まで天使でも特に厄介だと呟いた。
「はっ!?俺のお宝ファイルが危ない!」
「いや、もっと恐れるべき事態があるでしょ……」
最早分かり切っていたという顔で、琴里が突っ込む。
「あ!しかもそれだけじゃないぞ!!書いた事を逆説的に未来に確定できるらしいんだよ。
ほら、因果の逆転って言うのか?
ぶっちゃけると、何でも出来るデスノート的なヤツ!」
「なるほど、そんな使い方も……」
その時!琴里の脳裏に電撃が走る!!
今まで、点と点であった物が、一つの線として繋がる衝撃!!
「『アレ』お前か!!」
琴里が何かに気が付き、語気を荒げた。
「え、あ、ヤベ!……な、なんのことかな!?」
「今更誤魔化すな!!自身の胸に手を当てて聞いてみろ!!」
琴里がペドーが帰ってくる前に行ってしまった、恥ずかしい行為を思い出し顔を真っ赤にする。
しどろもどろになってペドーが誤魔化すが、もう遅い!
「くだらない事するなら、ファントムの事とか調べればいいでしょ!!」
怒りに任せて琴里がその辺の物を投げてくる。
「へ?ファントムってなんだっけ!?」
ひょいひょいと琴里が投げる投擲物を回避しながらペドーが尋ねる。
「完全に忘れてる!?」
「とりあえず、来週はデートに行ってくるわ!!
天使の能力さえ手に出来れば、みんなのスリーサイズが日々成長していく様が、手に取る様に分かる様になる――何をする!?」
ペドーの言葉に、今までじっと聞いていた七罪や四糸乃が飛び出しペドーの手足を押さえつける!
「な、なぜだ!?なで動かんP・ド!!」
「廃棄した幼女画像と同じ所へ行け!!」
シェリの言葉に琴里が頷き、ペドーの顔面にスイカの形の置物を叩き込んだ!!
2日後、ペドーは天下御免のアニメの聖地、秋葉原通称アキバに来ていた。
人がごった返し、人口密度がヤバイ事に成っている。
さらに、その中の人物も。
「でゅふふふ、拙者、女の子以上に可愛い寧ろもう女のでは?系男の娘大好き侍に候」
「これはこれは丁寧に、拙者、付き合うか付き合わないか位の幼馴染がチャラ男の彼女にされているの大好き侍に候」
「貴様!?NTR流派の者か!?」
「貴様こそ!BL流派か!!」
「ええい!!男の娘はBLではないとあれほど!!」
少し視界をずらせば、己の性癖を語る侍たちがあふれていた。
「この町、濃いな~」
ペドーも幼女大好き侍として参戦したかったが、この後の攻略の事を考えやめておくことにした。
『ペドー君、目標きました!』
「了解です」
インカムから聞こえた箕輪の声に、瞬時にペドーが頭を切り替える。
そう、この攻略さえうまく行けば、この世界のありとあらゆる幼女の秘密が自身の手の内になるのだ。
こんなチャンス逃がす訳にはいかないとペドーが、拳に力を入れる。
「……すっごい、気持ち悪い顔してるわね」
フラクシナスが仕えない為、とある施設の地下からモニターしている琴里が顔を歪める。
「まぁ、ペドーさんが考えそうなことと言えば……」
それに同調した数人のメンバーが、仕方ないとため息を漏らす。
「あれ?本条先生居なくないか?」
駅の改札口で、電車から降りてくる無数の人間達に視線を投げかけるが、約束の相手を見つけるのに非常に苦労する。
「やっほー、少年!」
「あ、本条先生!」
真横から声を掛けられて、ペドーが反応する。
どうやら、うまい具合に視界から外れてしまった様だった。
「おっと、少年。ここでその名前を出すのはNGだよ?
呼ぶなら名前の二亜でお願い、他の精霊もそうでしょ?」
「え、あ、すいません……」
そうだ、ここはオタクの町。何処に本条先生の熱狂的なファンが居てもおかしくない。
しかも長らく作品を書いていない人気の作家だ。
その中で同人誌作家の名前など出そうものなら、デート所で無くなる可能性も十分ある。
それにしても……
ちらりとペドーが二亜の服装を見る。
よれたデニムに、くたびれたジャケット、口を覆うほどのマフラー。
そして何より目を引くのは海外旅行にでも行くのかと、聞きたくなるほどの巨大なキャリーケースだった。
この恰好は色気と言う物を完全に取っ払い、何かを運ぶという事に特化した格好だった。
「あ、しょうねーん。今『コイツ色気ないな……』とか思ったでしょ?
だいじょーぶ、ちゃんと下着は勝負仕様になって――」
「へぇ、そう」
「あー、興味なさげ!!」
冷たいペドーのリアションに、二亜が大げさにリアクションする。
その時、ペドーの耳にピコんと軽快な音が聞こえた。
どうやらフラクシナスの中で、選択肢が表示された様だ。
ペドーの予想通り、フラクシナスのメインモニターにはいくつかの選択肢が表示されていた。
①『その服かわいいな。似合ってるよ』
②『ダサい服着てるな。俺がもっと良いの選んであげるよ』
③『へぇ、脱がし甲斐のある服着てるじゃないか』
④『悪意に満ちた人間は滅亡するべし』
「総員、選択!」
琴里の掛け声に合わせて、皆がそれぞれの選択肢に投票を始める。
カタカタと、キーを叩く音はペドーのインカムにも伝わって来ていた。
「『へぇ、脱がし甲斐のある服着ているじゃないか』」
「は?」
「うん?少年は次にそう言うのさ」
突如、二亜がつぶやいた言葉が理解出来ずに、ペドーが一瞬困惑した。
だが次の瞬間――
『ペドー、集計が出たわ③番の――』
「へぇ、脱がし甲斐のある服着てるじゃないか、か?」
『!?』
ペドーの言葉に、琴里が衝撃を受けるのがインカム越しでも分かった。
「やっほー、琴里ちゃん見てるー?
血の繋がらない兄妹って、超ギャルゲ設定だよねー!」
二亜が虚空に向けてピースサインをした。
『なるほど、コレが全知の〈天使〉の力ね』
インカムから琴里の苦々しい声が聞こえてくる。
そうだ、考えてみれば二亜相手に隠し事は不可能だ。
二亜はこちらが、何をしようとしているかなど既に知っているのだ。
無論、調べさえすれば、初めての選択肢がいつどこで出るのかという事や、その選択肢の答えが何になるかなども当然の様に分かるのだ。
「んじゃー、妹ちゃんや他のみんなも今日はよろくねー」
二亜がカメラのある方に手を振って見せた。
「さー、懐かしのアキバへいざ!いえーい!」
一人テンション高く歩いていく。
「おーおー、しばらく来てないと結構変わってるんだねー。
日曜朝のメンツなんて、全員変わってるし……」
二亜がアキバを歩きながら、感慨深げに話す。
「〈
「ん~分かるちゃ分かるよ?けどソレ、ガチモンのネタバレじゃん?
私、フラゲ情報とかも見ない系でさ~
敢えて、どうしても必要な事以外〈天使〉は使わない様にしてるんだよね」
ネタバレは好まない。ペドーは何処となく分かる気がして、小さくうなづいた。
「おっと、まず本屋の前にここ寄りますか」
「ここは?」
二亜が指さすのは、なんだか派手な服ばかり置いている服屋。
服という服が、明らかに現実離れしている。
「コスプレショップ、来たこと無い?ほら、コスプレものAVとか――」
「BBAがスク水着て、ツインテしてれば幼く見えると思ってるレーベルは滅亡して欲しい!!むしろ俺がさせたくなるわ!!」
「うわ、地雷踏んだ」
突如ペドーの押てはいけないボタンを踏み抜いた二亜が、その気迫に押される。
「と、とにかく、行こうよー、ね?楽しいから?」
笑顔で誤魔化し二亜がペドーを見せの中に連れ込む。
「お、おおぅ……」
店内に並ぶのは、様々な派手な衣装たち。
ナースにメイドに、巫女に何か良く分からない服。
コスプレしている人を見た事はあるが、実際に売っている店に来たのは初めてだった。
オタク向けの店が放つ特有の雰囲気に気おされ、まるで初めてアネメイトに来た中学生男子の様な気分に成ってしまう。
「少年!少年!」
あっけにとられているウチに、二亜が3着の服を持って走ってくる。
「いきなりですが少年にラッキーチャーンス!パフパフ~
なんと少年はこの3つのコスプレ衣装のなかから、私がするコスプレを自由に決められちゃいます!
①ナース服
②なんか久しぶりに出てきたら雰囲気が一気に変わったロボット服(約42万)
③『ワルキューレ・ミスティ』のミッドナイトファイナルフォーム
さて、どれどれ!」
二亜が目をキラキラさせながらペドーに尋ねる。
「俺は、今の恰好が一番好きですよ」
ペドーは瞬時に、何かを選択した後の→実際に着てみる→着た姿を見せられる→感想を言わされるの流れを予測した!
「興味ないだけでしょ!?
もういいもーん!そんな少年に選択肢なんて上げません!
勝手に着ちゃうもんね!」
そう言って二亜は全部の服を持って試着室に入っていった。
(絶対アレ着たかっただけだよな……)
明らかに押していた③を持って部屋に入っていく二亜を見て、ペドーは密かに思った。
だが、二亜が試着室で手を伸ばした服はナース服だった。
正直な話、二亜はせっかくだから全て着てやろうと思っていたのだ。
「あ!少年見て見て!脱ぎ掛けのナース服超エロい!
なんか、凄まじい劣情を催す恰好!!ほらコレ!!」
イタズラ心の導くまま、二亜がカーテンを開ける。
服のボタンは全て取れ下着がモロに見え、半分脱げたストッキングは一部のフェチズムを持つ人間を容赦なく誘惑するだろう。
だが――
「あれ、少年は!?」
カーテンの向うに、ペドーの姿は無かった。
その代わりに……
「あの、お客様。うちは試着は自由ですが、そのような恰好で出歩かれますと……」
「あ、す、すいません……で、出禁は勘弁してください……」
現れた店員にニ亜が釘を刺される。
久しぶりの店で興奮しすぎた様だ。
因みに、その頃ペドーは……
『カオスライザー……』
怪しい万力の様なパーツが付いたベルトを巻いていた。
手に持っているのは、四角いプラスチックの道具。
それをベルトに押し込んだ。
「変身……」
その掛け声と共に、ベルトのレバーを引くと万力が開いた。
『ロリコニックライズ……ブレイクダウン……』
「やべー、買おっかなコレ?」
こっそり楽しんでいた。
「もー大変だったんだから!あやうく出禁よ?最悪痴女で警察沙汰よ?」
コスプレショップの前で、二亜がいかにあの後大変だったか語る。
「いや、10割悪いのそっちじゃないですか……」
今回は珍しく何もしていないペドーが、ニ亜に応える。
なんというか、これほど疲れるデートは今まで無かった気がする。
「はぁ、ま、いいや。次、次はメインの目的の本屋行こうか。
少年行きつけの本屋とかある?」
「行きつけって言うよりも、今回は何を買いたいかですよね?」
ペドーの言葉に二亜が眼鏡の弦を触る。
「へぇ、やっぱり分かる系なんだね」
騒がしい雰囲気から一転、二亜が静かに語りだす。
「先生が欲しいのが新刊なら、やはり大型書店がよろしいかと。
しかし、もし同人誌が欲しいなら『ロリのアナ』『メロンエナジーブックス』などの店に、一店舗しかおろさない作家さんも居るので、おそらくその2店舗は確実に回りますよね?」
ペドーが携帯のマップを確認しながら、周辺の本屋を探す。
「いいね。少年。基本を押さえてる。なら、最早いう事はあるまい……
私が知ってるアキバの店を全部紹介してやろう!
付いて来るがいい!共に行こう!!」
「ハイ、先生!」
ペドーが返事をしてついていく。
その様はまるで何かの師弟の様にも見えた。
「……ナニコレ……」
なんだか濃すぎるデートの内容に、モニターを見ていた琴里がげんなりした。
ペドーさんは幼女好き好き侍です!