ALDNOAH.ZERO -Earth At Our Backs- 作:神倉棐
自分にとって処女作となる本作品につきましては長らく未完の状態ではありましたが、突然ではありますが連載再開と現在構想中の作品の実験の為にも一度内容の修正と改善の為に一部改稿させて頂きました。
今後とも一層のご愛顧を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
4/6 「抜刀者、襲来」
Mission Name >
Operation Objective > 敵性不明機を撃滅せよ
Date > 2014/11/20
Time > 1710hrs.
Location > Japan Naval Station Kitakyushu
Sky Conditions > Lightly Cloudy
Cloud Cover > 3/8
よし、全員の無線機の周波数が一致しているな?
緊急事態につき点呼は省略、手短に状況説明と作戦を確認する。
敵性不明機によって奇襲攻撃を受けていると、ここ北九州海軍補給基地正面ゲート付近を哨戒中であった
現在正規軍人である彼らがゲート付近で応戦、徐々に後退中だがお世話にも戦況は芳しくない。
まだ埠頭にはLCACが2隻が給油作業により停泊中であり、このままでは避難民を乗せたままのLCACもまた敵の攻撃に晒されかねない。
よって我々はコンテナヤード入り口周辺にて待ち伏せし後退中の味方機とともに敵性不明機を迎撃、LCAC出航までの時間を稼ぎ支援する。
では次に作戦目的を確認する。本作戦における最終目的は敵性不明機の撃退もしくは撃破、あるいは我々やLCACが致命的損害を受けることなく外洋への離脱することにある。よってその第一目標は小隊2機での敵性不明機を正面で抑える本隊での足止め、第二目標として裏取りを行う別働隊2機での包囲、第三目標としてもうひとつの別働隊1機と1人での罠を仕掛けこれらの戦力で以って敵性不明機……これより仮称「
なお、本作戦地域である北九州海軍補給基地のコンテナヤードには戦術データリンク上に存在する地図には記載されていないコンテナの山が多く積載されており極めて視界は劣悪であり、生身の人サイズならばともかくカタフラクトサイズではかなり機動力には制限が掛かる。
各員は地図や索敵レーダーを過信せず音や振動などから五感全体を使った敵機の捕捉、もし接敵した場合でも落ち着いて対応して欲しい。
そして各員の配置についてだが……本隊2機は俺と伊奈帆、裏取り担当の別働隊第一班はカーム君と起助君、罠担当の別働隊第二班には韻子さんとソラが担当とする。なお、各員コードネームは
で、先にひとつ確認しておくがここにいる全員、軍事教練で習う「重機操作」の講義は履修しているな?特に韻子さんとソラ。
重畳重畳、ちゃんと履修しているなら問題ない。これから仕掛ける罠の詳細について、今から戦術データリンクで全機に向け一斉送信する。各員、すぐさま詳細を確認してくれ。そして質問がある場合は今のうちに質問して欲しい。
……質問はないな?
ではこれより作戦を決行する。
以上、全機出撃。配置に付け。
【日本 北九州海軍補給基地 11月20日 17時12分】
〈Japan Naval Station Kitakyushu 1712hrs. Nov 20, 2014〉
戦術データリンクから習得した基地のマップデータを元に、即興で作戦と戦陣を整えた一帆たちは交戦中の歩哨部隊の救援のためコンテナの山を掻き分けて急行していた。
───しかしやたらとコンテナの量が多いな
直線ならば僅かな距離ではあるものの、実際には地図に記載されていないコンテナの山を迂回しつつ進むことになるためその距離は倍になる。その間に味方が全滅していなければ良いのだが……、
《アパル…ーサ33、状…況報告》
《敵……カタフラ…クト……1機、ビル…の陰に………て潜伏中。現在……応戦中………》
無線の周波数を調整し敵性不明機と応戦中である
───動くなよ……下手に仕掛けたら絶対お前ら5秒くらいでやられるからな?
地球全域に流されている火星側の妨害電波のせいでこの短距離での軍用通信であってもやや影響が出ているが、それでも通信自体は可能だ。
《包囲……して一斉に…仕掛ける、全機…散開セヨ》
そしてそれも距離が詰まればマシになる。コンテナヤードを進むにつれて徐々に鮮明になる通信を聞いた一帆は、その通信機越しに聞こえたその内容に思わず閉口した。
───え"、何の備えもないのに突っ込む気か⁉︎先手必勝?それなんて死亡フラグ
犠牲を前提とした情報収集のための強行偵察や威力偵察ならばともかく、別段そう言った役割もなく詳細も分からない相手に無策で突っ込むのは死にに行くようなもの。しかもまだ思想や常識から想定しやすい同じ地球に住む地球人が造った兵器ならばともかく、相手が地球の尺度では計りかねない火星製のアルドノアドライブ搭載機ともくればどんなビックリドッキリメカなのか見当も付かない。一帆は取るものも取り敢えず、現場の状況を確認するためにアパルーサの隊長機からメインカメラの情報を共有・取得し自機のサブ
───「今すぐ逃げろ」……とはいえないな、せめてコッチが合流するまで相手が待ってくれればいいんだが
一帆はそう思うが敢えて口にはしない。一帆たちは所詮学生の延長線上にある義勇兵もどきのようなもの、腐っても正規軍人である彼らに対する命令権はないし聞いてもくれないだろう上に死ぬと分かっていても戦うことこそが彼らの仕事である。そんな一帆の思惑を他所に、アパルーサ隊の3機は横並びの陣形から半包囲のために鶴翼のように左右に広がりつつ10式/M2 75mm小銃を構え距離を詰め始めた。
「ん?あれは……」
その時、サブ画面に映るメインカメラの映像のビルから
「いや、まさかコレ向こう側から
画面に映ったその閃光、そして理解したその正体に一帆は目を剥いた。あり得ないほどの
───いや、ちょっと待てよ。コンクリートが破壊されるならまだ分かるが
確か建材などに使われるこういった物の融点はかなり高くセメントで1450℃、コンクリートでは確か1600℃前後だった筈である。つまり、単純計算であの青白い光は最低でも1600℃以上の熱を発しているということだ。
───畜生!やっぱり火星の機体はビックリドッキリメカかなんかかクソッタレめ‼︎
一帆の内心の罵倒を他所に、その青白い光は斜めに動きビルを両断する。倒壊したビルの塵煙の中から現れたのはあの青白い光を発する超高エネルギー兵器を持った銀色のカタフラクト、つまり今回の
「うわぁ……何アノ厨二感溢れる
そしてその敵性不明機を画面越しとはいえ目視した一帆がこぼしたのがこの台詞である。敵機の持つブレードだかサーベルだかの刀身──レーザーなのかビームなのかはたまたプラズマなのかは素人の一帆が見ただけではさっぱりだが、少なくとも地球の技術であれだけの出力を出そうとすればきっととんでもなく大きいか大量の
《こ、攻撃開始ッ‼︎》
一帆がそんな馬鹿らしい考察という現実逃避に走っている間でも、時の流れは止まることはなく事態は待ってはくれない。アパルーサの3機から放たれた銃弾は、しかし1発たりとも火星カタフラクトに届かなかった。
───はぁ?何でHE弾が空中で爆散してるんだ?
ブレードを振る度に、アパルーサ隊から撃ち出されたHE弾は須く空中で爆発してしまう。理解不能の謎現象に一瞬「は?」と声に出して唖然とした一帆だが、よくよく画面を観察して見るとHE弾は着弾で信管が作動しているのでなくブレードの超高温に晒されて誤爆していることが分かる。しかしHE弾の炸薬はTNT火薬のはず、いくらコンクリートすら融かす
───そうなると何かしらの要因で信管の方が誤作動を起こしているのか?
理解したくなくとも爆発しないはずの物が現実で爆発しているのだから納得しない訳にはいかない。暴発のカラクリにはある程度の目星を付けた一帆は、5人もの後輩たちを指揮する指揮官として意識を切り替え対策を考える。
《う、うわぁぁぁぁぁああっ…………ザッザザザ…………》
たった数振り、巨躰に似合わずやたら高い俊敏性と機動力で無造作に振われた雑な太刀筋のそれだけで機体を溶断され瞬く間にブレード1本にアパルーサ小隊は全滅した。
───やっぱりお前ジ・●でそれなんてビームサーベルかライトセイバーじゃねえか
全滅の瞬間までを観測していた一帆は本日何度目かのツッコミを内心で相手に叩き付けていた。団子虫程ではないがやや丸っこい体躯に太目の腕と、どうやって自重と慣性移動に耐えているのか小一時間火星の設計者連中を問い詰めたい設地面の小ささと細さの両脚を見た一帆は戦場であるというのにツッコむ前に一瞬白目を剥いていた程である。
───お前ら頭シロッ●かよ⁉︎しかし分かってはいたがなんだその逝かれた切れ味、絶対設計者はその辺り某機動戦士リスペクトだろ。あと正規軍人なんだからもう少し持てよ
何故だろう、こんなふざけてるようでふざけてない奴らにこんなに追い詰められている一帆の目には何故か目から汗が流れていた。
《アパルーサ33⁉︎》
しかしそんな一帆を現実に引き戻すかのように管制員の絶叫に近い悲鳴が響く。やはり一帆たちは救援には間に合わなかった。
「くそっ、作戦第一段階の放棄を宣言する!全機後退だ、作戦第二段階の通り第2埠頭ぎりぎりで迎え撃つぞ」
《だが会長、それではLCACが!》
余りに早く呆気ない友軍部隊の全滅に、一帆たちは即断即決で当初の作戦を繰り上げ立て直し計る。
「今ここで迎え撃ってもこちらが不利だ。
《了解、バードアイ。ハンター2とルナ1から連絡、2人とも作戦位置についたよ》
おかげで本来の「時間稼ぎ」という意味では時間的余裕はないが、「戦力の再配置」という意味での時間的余裕を多少なりと捻出することに成功する。
「分かった、マグバレッジ艦長」
今回の作戦の要である韻子とソラが無事配置に付いたことを確認した一帆は、先程アパルーサ隊とLCACとの間に割り込むように接続した今や自分たちの専用回線となった通信回線を開いた。
《なんですか》
「状況は?」
一帆によって唐突に開かれた回線に特段驚くこともなく、マグバレッジ艦長は通信に応答する。
《良くはありませんね……正直に言えばかなりまずいです。一番艇の方は?》
《給油作業の中断完了、このまま緊急発進します。距離を取って
一帆と二番艇のマグバレッジ艦長、そして一番艇の小林少佐との通信が途中で途切れると同時に轟音が響く。視線を向けると第2埠頭入り口近くに停泊していたLCACの一番艇の艦橋部周辺にブレードが突き刺ささっていた。それにブレードが突き刺さったままという事は少なくとも刀身部分は実体化させているのか、内部に芯みたいなモノがあるのかだろう。
───機体から離れても刀身部を維持できるのか……ますますビームサーベルかライトセイバーにしか見えなくなってきた
さらに機体の手から離れても刀身部を展開できていることを考えると、アレは柄の中にエネルギーを貯めておける構造と考えるべきだろう、実に厄介である。後退と陣形の布陣が完了したと同時に倉庫群から姿を現した白いカタフラクトはゆっくりと一番艇に近づき、突き刺さったブレードを引き抜きこちらを振り返るついでに一番艇のSSM発射管を切り裂く。片手間に切った刀身の熱量でSSMへ誘爆したのだろう、切断と同時に起きた爆発で飛散した破片と爆風に向かい側の埠頭に停泊していたマグバレッジ艦長座上の二番艇のLCACが激しく揺れていた。
「ちっ、火星の軍人は必要以上な破壊が過ぎるな……。今のは明らかなオーバーキルだろ」
あの紫団子虫のパイロットもだが、火星騎士とやらにもうちょいまともな軍人はいないのだろうか?やることなすこと全てが何処か大袈裟で幼稚過ぎる。LCAC程度にフリゲート艦以上の艦艇が持つような
「……取り敢えず
《ハンター1、了解》
《ハンター3、了解》
《ハンター4、了解》
思う所は多々あるが、戦闘とは先に熱くなった者が負けるもの。冷静に保ちつつ一帆は伊奈帆やカームと起助への指示とその返事を聞きながらHE弾からAP弾へと装填し直した小銃を構える。作戦第二段階での配置上、別働隊第一班のカームと起助はコンテナヤードのコンテナジャングルを隠れ蓑に敵機の背後へと周り込み、それに対して敵機を正面から抑える囮兼本隊の一帆と伊奈帆が正面の配置についている訳なのだが……。
───やっぱりあいつコッチのこと完全に舐めてるだろ?構えすらしねえし
正面に据えた敵機は未だ構えすら見せない。確かに機動力や反応速度こそ高いが、全ての弾丸を避けるか切り裂くなんて離れ業は某機動戦士でも一部の
「敵機の装備している兵装はあのブレード、仮称「ビームサーベル」とするがアレ唯一である可能性は低い。少なくとも複数は存在すると考えられる。しかし今回の敵の兵装は前回とは違い常時展開型ではなく適時搭乗者の自己判断で切り替える必要のある、つまり人間の判断が必要な武装だ。それはつまり乗り手に付け入ることで無力化できると言うことでもある」
しかしモノは考え方次第で見方を変えれば敵機の搭乗者は前回同様典型的な「地球人を見下し甘く見た火星人」であり、機体自体も地球上での運用を想定し切れず「汎用性を著しく犠牲にした結果汎用化した」が故の何らかの欠陥を抱えている可能性も高くそこに付け入る隙も大いにあるに違いない。
───まあ、その隙がなければその時は皆んな仲良く御陀仏だ。寂しくはないが、そうなるようにはしたくない
それに丁度今朝一帆がマグバレッジ艦長に言った通り、「地の利を生かし能力さえ封殺できれば誰でも火星のカタフラクトを倒せる」というのを証明するには絶好の機会だ、目の前で実演するというのも悪くはない。
「総員、作戦開始!」
戦争が始まって僅か2日目、一帆たちの2機目となる火星のアルドノアドライブ搭載機との戦闘が始まった。
【日本 北九州海軍補給基地 11月20日 17時16分】
〈Japan Naval Station Kitakyushu 1716hrs. Nov 20, 2014〉
「本作戦の至上命令を再度確認する、本作戦において我々の任務は民間人の乗るLCACの給油中断作業の完了後、機関が始動次第LCACが外用に待避するまでの時間稼ぎだ。無理な追い討ちは禁止、以上だ」
《了解》
会敵後、先に動いたのは正面で小銃を構えていた一帆と伊奈帆。交互に、そして3点バースト射撃でその2人から放たれたAP弾を火星カタフラクトは先程アパルーサ隊を全滅させたのと同じように切り裂こうとするが、HE弾ではないので幾らかの軌道が僅かにずれただけで装甲に当たる。しかしやはりというかなんというか、想定した通り装甲は地球のカタフラクトよりも強固らしく表面に小さな傷を刻んだだけだった。
「消費の割には合わないが……足止めにはなるか」
装甲車程度なら蜂の巣にできる75mm×630mm AP弾を
《バードアイ、
「了解!……ちっ、弾が弾かれてやがる」
そしてその効果は嫌に劇的だった。先程まで一応といえど当たっていた弾丸が、装甲に直撃するかしないかの距離で装甲表面に触れた先から弾道が不自然に曲がり直撃せずに周囲のコンテナにまで弾かれ始めたのである。
《弾頭が蒸発して弾かれてる……ライデンフロスト現象か……それでもなんて熱量だ》
団子虫のような障壁がある訳でも某機動戦士みたく
“ライデンフロスト現象”
あるいは「ライデンフロスト効果」と称されるそれは、物体と高熱体が接する箇所が蒸発あるいは気化することで薄い蒸気の膜を作りそれ以上の接触を阻むことで、物体がこの水蒸気の膜の上で浮遊した結果摩擦が小さくなり容易に横滑りするようになる効果であり現象である。
───つまり弾頭に触れる時間を増やすことで弾頭部の金属を蒸発させて弾丸を逸らしてるのか
正に「当たらなければどうということはない」を地で行く戦法だが、良くもまぁそんな誰が考えても実行はしないものをやろうと考えた挙げ句に実現するのか一帆には理解できない。まだ
「だが、炸薬や質量の異なる弾種で対応が変わっている。しかしこれ以上に増やしたり、デカくて強いやつだったらどうだ?」
しかしそれこそがこの驕れるジ・●モドキの
「作戦第三段階に移行。ハンター1、今‼︎」
《了解、ハンター3・4!》
《おう!》
前後からのAP弾とHE弾混合の連射と共に放たれた数発の
「ぐっ、やはりアルドノア分の出力差が出るな……」
一帆の機体は旧式の複座型機、多少の(魔)
「それもこれも織り込み済みだ、作戦第四段階に移行!隙はできたぞ2人共‼︎」
《 《ラジャ!》》
そこに韻子とソラが操作する大型コンテナクレーンが吊り下げたコンテナが左右から振り子のように弧を描き、火星カタフラクトの頭部とビームサーベルを持つ右腕に直撃する。
「おお……クリティカルヒット」
《ぶっ‼︎3回転トリプルアクセルしてやがるぜ!》
《
吶喊のせいで若干動きの悪い一帆の機体を除き、ちょっと嬉しそうな伊奈帆や爆笑しているカームたちだが追撃に余念はない。情け容赦なく、それもコンテナが当たったせいか反応するまでの速度が目に見えて下がった左側を狙ってさらに銃弾をぶち込んで行く。
《 《もう一発!》 》
そこに韻子とソラが「もう一丁!」とクレーンを操作してもう一度火星カタフラクトに向けてコンテナをぶつけようとするが、流石に警戒していたのか奇襲性もへったくれもなく今度は2本目に取り出したビームサーベルにあっさりと溶断される。
《 《ですよね~》 》
───仲良いな、おい。あと「ですよね〜」っていう暇があるなら避難しろ
無駄に息ぴったりだった韻子とソラがクレーンから韻子のカタフラクトに乗り換えたのを確認し、一帆が再度敵カタフラクトに目を向けると敵機は再びビームサーベルを振り回し伊奈帆相手に孤軍奮闘をつづけていた。
「左頭部大破に右腕中破、あの衝撃じゃパイロットもダメージを受けてるはずなんだが……よくやる」
しかしあと一手足りない。ビームサーベルを振り回しているだけの敵機と比べ、撃ち続ける必要とその弾薬に限りがある一帆たちは時間が経つごとに不利になる。現に前線を張っている伊奈帆たちも徐々に押されてきており、ここに韻子に託した
「それに俺の機体もかなりガタがきてるみたいだし戦闘続行は困難か……せめて撤退するだけの手があれば……ん?これは……」
撃破や撃退は困難と判断した一帆が撤退のための方策を考えていると、突如主画面に表示されたのは戦術データリンクの更新。そしてその反応と識別信号はつい最近、それも数時間前に似たようなタイミングとシュチュエーションで見たものと同じものである。
───まあ、これで何とかなるか。ただ毎度毎度こんなギリギリのタイミングじゃなくても良いと思うんだがなぁ
一帆がそう思った直後、コンテナヤード上空に海上から幾つもの照明弾が上がったと同時に敵機周辺にカタフラクトの物とは違った質の閃光と爆発による破壊が降り注ぐ。今までとは違い、海上から放たれた攻撃──艦砲射撃に敵機は動きを止める。
《遅くなりました……マグバレッジ艦長。安全航路の確保に手間取りまして》
そして何故か一帆の操縦席にもLCACと海上の揚陸艦との通信が聞こえてきたことで、ようやく一帆はLCACとの回線が繋ぎっぱなしだったことに気付く。
《不見咲君……君がモテない理由を教えましょうか?》
《少し焦らす方が良いと聞きましたが?》
《それはモテてからやる戦術です》
一刀両断、あの敵機のビームサーベル並みにマグバレッジ艦長は不見咲と呼んだ女性のコンプレックスを一言で両断する。
───やっぱりだけどマグバレッジ艦長、口喧嘩では絶対勝てない気がする……怒らせないようにしよう、うん
聞いてならなかったような気のする通信を一帆が聞いてしまった直後、海上からの再攻撃を示す信号がモニターに表示される。
「潮時だ、全作戦の中止を宣言する。総員撤退、LCACまで後退しろ。殿は俺と伊奈帆で行う」
《 《 《 《了解》 》 》 》
一帆の号令で別働隊第一班と第二班が艦砲射撃と揚陸艦上のアレイオン数機からの射撃による誤射を避けつつLCACまで後退、殿の本隊である一帆たちも伊奈帆のスレイプニールに肩を借りて程々に銃弾をばら撒きつつ後退を始める。
「よし、伊奈帆頼む」
《了解、しっかり掴まって。舌噛むよ?》
ある程度まで後退したところで伊奈帆は右腕上部に取り付けられている
「ふぅ……なんとか退けたな……」
無事に北九州海軍補給基地を出港したLCACの上で、ひとり無線機を切った操縦席の中で一帆はそう呟く。
「やっぱり祟られてるのかはたまた疫病神にでも付かれているのか……お祓いしてもらいたいなぁ……」
取り敢えず、一帆には今はこれで良しとする他なかったのだった。