ALDNOAH.ZERO -Earth At Our Backs- 作:神倉棐
10/4「白夜のソラで」」
Mission Name >
Operation Objective > 機関再起動まで母艦を防衛せよ
Date > 2014/11/24
Time > 1631hrs.
Location > Arctic coast permafrost zone of Russian Federation
Sky Conditions > Overcast
Cloud Cover > 8/8
聞こえますね?
たった今、副機による副電力下で稼働していた艦載
距離3万、高度2千、数は7
二時の方向から2機、六時の方向から3機、十時の方向から2機です
飛行経路から鑑みて友軍の可能性はほぼ皆無……よって現時点で全て敵機と断定、全艦第一種戦闘配置を発令します
この進路……おそらく本艦の所在地は完全に暴露していたと考えるのが道理、しかし如何に情報負けしているとはいえ航路等の偽装を施していたというにも関わらずこのタイミングと補足されるまでの速度……一体どうやって?
……失礼、ともかく
本艦の唯一の航空戦力である「第118機動歩兵隊」
本艦が機関を再始動し現地域を離脱できるまでの間、防空戦闘を行います
また、機関始動次第即離脱する都合上、飛行能力を持たない
万全とは口が裂けても言えない状況ですが、このまま本部まで逃げたところで、現時点でその位置を知られては元も子もありません
敵機の全機撃墜。少なくとも殿下がアルドノアドライブを再起動するまでの間、本艦を防衛して下さい
以上、VF-25発進
【東シベリア永久凍土上 デューカリオン艦内第二格納庫 11月24日 18時44分】
〈Over the permafrost of East Siberia Hangar 2 in AAA/BBY-001 Deucalion 1844hrs. Nov 24, 2014〉
永久凍土上で起こった、ライエによるアセイラム殺害未遂事件。裏で異変に気付いた捕虜2人が収容室内で暴れ出したり等の混乱はあったものの、その一方で件のアセイラムは一帆の適切な手当てと献身により一命を取り留めたこと、そしてその実行犯だったライエの精神状態がようやく安定したことでデューカリオン艦内に燻っていた
それにより緊張からホッとした、やや弛緩した空気となった艦内。しかしそんなデューカリオンに追い討ちを掛けるが如く、息つく間もなく艦載対空レーダーが捉えたのは敵機の来襲であった。
《総員、第一種戦闘配置。繰り返す、第一種戦闘配置》
《全艦対空戦闘用意》
《全艦載機
最早、いい加減聴き慣れてもきた艦内で鳴り響く劈く様な警報音。皆が皆、配置に就くべく走り回る中で、既に一帆はフライトスーツを着込み操縦席へと飛び込んでいた。
《第2格納庫艦載機格納シリンダー回転、VF-25の
ガコン、と格納庫自体が動き出し、遂に奇怪な絡繰の置き物としてでなく格納シリンダーの本領*1*2が発揮される。
《現在、本艦は地上に着底しているため通常の発進
駐機台に載せられたデューカリオン唯一の航空戦力は、シリンダーの回転と駐機台の移動により発進口と着艦口を兼ねた艦底部格納ハッチ直上へと運ばれる。
《VF-25は射出位置へ》
《機体固定装置、超電磁
アームとレールにより駐機台からハッチへと移ったVF-25。本来ならここからカタパルトで後ろ向きに吐き出される所だが、生憎デューカリオンは現在地表に着底しておりその様なことをして無事に発艦できる
《よってメビウス1のVF-25は
割と無茶振りではあるが、自力で発進するよう指示された一帆。とはいえデューカリオンが幾ら飛行/航宙戦艦といえど、艦載機の射出口が艦底部にしかない以上は当然、カタパルトを用いない発進も想定されている。
《
「了解、降着装置装置格納。変形する」
胴体下に懸架されたガンポッドを避けて、機体とハッチを固定していた固定装置が機首側を軸に
《接地確認、固定装置解除。
「エンジン始動前チェックリスト、
解放されるハッチと、ハッチ入り口に展開される防護壁。途端に極寒の大気が庫内に吹き込むが、それもVF-25のセカンドステージ熱核タービンエンジンが唸り声をあげればあっという間に熱波に取って代わる。
《聞こえますか?メビウス1》
「こちらメビウス1、聞こえている」
発進目前のVF-25のコックピット内、一帆が付けたヘルメットに仕込まれた通信機から聞こえたこれまでの整備士や管制員からでなく、今は艦橋にいるはずのマグバレッジ艦長からの声に一帆は発進準備の手を止めることなく返答する。
《ブリーフィングでも伝えましたが、我が方が捕捉した敵機は7機。おそらく例の火星の輸送機と思われますが、カタフラクトを搭載している可能性もあります。ゆめゆめ、楽観視はしないように。それと最後に、アセイラム殿下から伝言です ──
──御武運を、と》
今頃、アルドノアドライブを再起動しようと医務室から機関室に向かっているであろうアセイラムから艦長経由で伝えられた激励に、無意識に一帆はほんの少しだけ口角を上げていた。
「了解、メビウス1 ──VF-25メサイア、発進する」
推力最大まで
【東シベリア永久凍土上空 11月24日 18時50分】
〈Over the permafrost of East Siberia 1850hrs. Nov 24, 2014〉
《メビウス1の発進を確認、高度制限を解除。本艦を起点に6時の方向、距離2万5千、高度3千。最も本艦に接近しているこの3機を迎撃せよ》
組むべき
─── 敵機、
上空へと飛び出したおかげで一帆の駆るメサイアの機載レーダーにも敵機の情報──デューカリオンに迫る7機の機影──が映る。
「……南方から接近する3機を軸に鶴翼陣形で包囲網を形成、数で囲んで叩くつもりか。
状況からいえば既にデューカリオンは完全包囲状態。機数自体は少ないので両翼間はがら空きだが、それ故に纏めて堕とすのは不可能であり、各個撃破を狙うと移動距離もあって時間が掛かり過ぎる。ある種の飽和攻撃を受けることとなった一帆を含むデューカリオン戦力だが、問題はそれだけでない。
───それに艦長のあの台詞……やはり艦内に
デューカリオン艦内に、軍内部に裏切り者が紛れ込んでいる。
地球連合側の圧倒的な劣勢に加え、開戦当初から衛星軌道を押さえられているとはいえ、余りの敵との遭遇率の高さから最初から疑ってこそいたがこれ程対策を練ってなお捕捉され続けているとなると「考え過ぎ」とは断じることもできない。
「……とはいえ、犯人探しは後。まずは目の前の敵機を堕とす!」
しかし戦場においてそんな余計な事ばかりを考えてもいられない。迷わば敗れるし、身構えている時に死神は来ないものなのだ。
《C.I.Cよりメビウス1。敵機が本艦の有効射程圏に到達、これより近接防空戦闘を開始します。
そう考えて一帆が操縦桿を握り直した丁度その時、未だ主機が再起動してはいないデューカリオンより
《命中まで残り20……10……
音速の約2倍もの速さで駆け抜けた矢尻、一帆の背後からも9本ものソレが飛び抜けて行ったが敵も無策ではないらしい。
「見えた!」
だが今度はその回避のために大きく乱れた編隊に、一帆の駆るメサイアが喰らいつく。
《メビウス1、
隠れた太陽を背に上空から喰らい付いたメサイア、その進路上に放たれた58mmガンポッド弾が回避さえも許さず敵機を撃ち抜き撃墜する。
「避けた?」
爆散する1機の機影、しかし圧倒的有利な射線とタイミングでの狙撃であったというのに一帆の放った弾丸を躱した機体が1機。それは漆黒の機体の後部、展開された
「…………」
鈍重な輸送機の背後に付いた一帆、メサイアを振り切らんと機体に付けられた4基の旋回砲から
「───また、か」
曳光弾混じりの58mm×420mm
───なんだ、この違和感?
放った弾丸が回避される、それ自体は良い。幾ら一帆の技能がTASばりの「置きミサ」や「置きバルカン」ができる
《メビウス1、敵に
「ちっ!」
今度は一帆の方が敵に追われることになり、右に
───あの白い奴の能力……未来視か!
銃弾は
───やりにくい……
「……通信?誰から?」
《───ザッ、ザザッ、……き、こ……る……か、地球……人のパイロット》
「まさか⁉︎火星からの⁉︎」
通信機から聞こえたその声の主、それは今まさに交戦中の敵機。まさかの火星機からの
《───聞こえるか、地球人。貴様に、聞きたいことがある》
戦況が、大きく動こうとしていた。
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