ALDNOAH.ZERO -Earth At Our Backs-   作:神倉棐

45 / 55
い、いつの間にか1月が終わっている……だとっ⁈

皆様、あけましておめでとうございます。更新を楽しみにしてくださっている方々、申し訳ありません。拙作ではありますが、今後ともよろしくお願いします。


10/5「WILD HUNT」

10/5「WILD HUNT」

 

【東シベリア永久凍土上空 11月24日 19時00分】

〈Over the permafrost of East Siberia 1900hrs. Nov 24, 2014〉

 

 

 

《───聞こえるか、地球人。貴様に、聞きたいことがある》

 

極北の、今にも雪の降り出しそうな曇天の空。そんな低い空で幾重にも敵機との交差を繰り返す戦乙女(バルキリー)操縦席(コックピット)に届いたソレは、今まさにその背後を獲り合っている相手──火星騎士からであった。

 

「───誰だ、貴様は!何のつもりだ?」

 

空戦(殺し合い)の真っ只中に繋げられた通信に、今もなお続く敵機との交錯をやめることなく一帆はその所属と目的を問う。

交戦──それも同じく未来視(偽)持ち同時の戦い──の真っ最中なこともあって、いつもより遥かに固い声色で放たれた問い。

 

《我が名は揚陸城が主、クルーテオ・フォン・ヴァッフェル。戦うつもりはない、地球人である貴様に聞かねばならん事がある》

 

そんな一帆の問いに「クルーテオ」と名乗った火星騎士の男は、あくまで冷静に再度聞くべき事があると答える。

 

───信用、できるのか?だが、戦闘はまだ継続中だ……とてもじゃないが呑気に話す余裕はない

 

クルーテオからの通信に、一帆は一瞬悩むもそれどころではないと結論を出す。

 

「───ならまず降伏しろ!交戦中の敵相手に呑気におしゃべりできるはずないだろう!」

 

通信が繋がって以降、銃弾の応酬はいつの間にか途切れていてこそいたが、それでも相変わらず続いていた格闘戦(ドッグファイト)の中で、一帆は機体を捻りバレルロールの要領で敵機の背後に付く。

 

「降伏しろ、今そちらで生き残っている機体全部だ」

 

操縦桿の引き金に指を掛けつつ、一帆は無線越しに相手に半ばそう怒鳴るように告げる。

 

───降伏するかは五分五分かそれ以外、少なくとも戦うつもりはないのは事実らしい……今の所は

 

とはいえ、初手で母艦であるデューカリオンを包囲するように展開していたことや敵輸送機(スカイキャリア)各機が対艦攻撃兵装(ASM)を満載しているところを見れば、ただ仲良く「お話をしにやって来た」という訳でもないのも確か。

じっとりと、嫌な汗が滲む。

 

《───ふむ》

 

一帆が手袋(グローブ)越しに握った、ジョイスティック式の操縦桿や推力桿が僅かばかりの湿り気を帯び始めた頃。体感時間では数時間、しかし実際経過した時間にすれば数分……否、数十秒と経たない間のことではあったが、一帆の要求を受けた敵機の火星騎士はしばし考えるかの素振りを見せる。

 

 

《───よかろう。貴様の要求を受け入れよう》

 

「!」

 

 

しかしその思考も一瞬のこと、一拍の後に告げられた受諾の言葉に一帆は思わず息を呑む。まさか()()地球人を見下しプライドがやたらと高い火星の貴族が「全面降伏」を呑むとは思ってもみなかったのである。

 

───それだけ、向こうの言う「聞きたいこと」に価値があるということ……か

 

思わぬ事態とはいえ、敵に「降伏する」といわれて「はい、そうですか」と警戒を完全に解く訳にもいかない一帆は追跡の手を緩めつつも、万が一に備え引き金(トリガー)だけは指を離さずに内心でそう思考する。

 

《地球人、貴様──名前は?》

 

目の前の機体だけでなく他のスカイキャリアも含め、国際緊急周波数でもって降伏を宣言したのを確認した一帆が母艦(デューカリオン)のマグバレッジ艦長と降伏した火星騎士たちの収容手順を確認し始めたその時、降伏宣言以後はダンマリを決め込んでいた火星騎士──クルーテオが口を開く。問われたのは己自身の名前、場面が場面だっただけに「そう言えば、名乗られたのに名乗り返していなかったな」と思い出した一帆は小さく咳き込むと、右前方を飛ぶその機体を見つめつつ名を名乗った。

 

「八朔一帆、そちらからは()()()()されている地球連合の軍人で──今は()()()()()()をやらせて貰っている」

《……なるほど、やはり貴様が例のエース……「白い死神」か》

 

一帆の名乗りに、白銀の機体(タルシス)に乗ったクルーテオはその正体が開戦以後、新芦原(ニロケラス)から北九州(アルギュレ)種子島(ヘラス)と騎士たる火星貴族たちを討ち取り続けてきた悪魔。かつて火星側で「斑らの死神」と称されていた連合のエースであると理解したクルーテオは、そこに含められていた()()()()()()という言葉の意味とともに、己の推理が正しかったことを実感する。

 

《───そうか、ではやはり……》

 

地球技術ではあり得ない「空を飛ぶ大戦艦」と動きや変形をしていた「可変戦闘機」。

それらを実際に目にし、ひとり何かを呟いていたクルーテオだったが、そんな2人の間に思わぬ警報音が響く。

 

 

 

 

《高熱源反応、自動追尾照準固定(ロックオン)波照射を検知》

 

 

 

 

「っ⁈避けろ、()()()()()!」

 

 

 

 

目も眩む閃光が、極北のソラを切り裂いた。

 

 

 

 




非ログイン状態でも感想受け付けておりますので、よろしければ感想・評価もお待ちしてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。