ALDNOAH.ZERO -Earth At Our Backs- 作:神倉棐
11の4「希望という名の積荷」
Mission Name >
Operation Objective > お姫様を護衛せよ
Date > 2014/11/25
Time > 1603hrs.
Location > Novostarsk UFE HQ Geofront
Sky Conditions > Overcast
Cloud Cover > 8/8
聞こえるかね?軍曹、メビウス1
よし、ではこれより作戦を説明する
本作戦は現在当基地を攻撃中の敵揚陸城に対する反抗強襲揚陸作戦「
我々はアセイラム・ヴァース・アリューシア姫殿下の協力の下、敵揚陸城の中枢たるアルドノアドライブを強制停止させる
後段の揚陸城への直接攻撃に備え、アセイラム姫殿下をAAA/BBY-001デューカリオンへと移送せよ
軍曹、君たちは彼女たちを護衛し放送室から
メビウス1、今君がいる技術研究本部研究区画の第7格納庫はジオフロント深層にあり合流地点までは一番遠い
そこでテム・レイ技術大尉が試作していた可変戦闘機用の
既にジオフロント内部には敵カタフラクトを含め、多数の火星兵力が侵攻中だ
現状、各防衛ラインにて食い止めているが何処まで持つかは分からない。それぞれの移動ルートは
お姫様から目を離さず、しっかりと守り切るんだ
君が、君たちが守り連れて来てくれたからこそ得た貴重な終戦のチャンスだ
各員最大の健闘を
【西シベリア平原 地球連合本部ノヴォスタリスク ジオフロント中層 11月25日16時9分】
〈West Siberia Novostarsk UFE HQ Middle layer of the geofront 1609hrs. Nov 25, 2014〉
ジオフロント中層──軍曹らの護衛の下で先程までいた放送室を後にしたアセイラムたちは、至る所で隔壁が閉じ警報音が鳴り響く廊下を進んでいた。
「大丈夫だ、ちゃんと仲間の所まで連れて行ってやる」
時折、安全確認のために立ち止まり斥候としてレンジャー隊員が先行偵察に向かう中、恐怖と不安が滲んだ顔をしつつ進む少女たちに軍曹は安心させるようにそう言う。
「軍曹」
そしてアセイラムたちを鼓舞していた軍曹の下に、今まで斥候に出ていた隊員──特に冷静で落ち着いた声の隊員が戻って来る。
「前方クリア、本部から送信されたルートが使えそうです」
「よし、俺が先導する。お前たちはお嬢さん方を守れ」
「了解!」「了解です!」
斥候からの報告に前進を決めた軍曹を先頭にその後ろを報告をした隊員が、殿はいかつい声が特徴の隊員と彼らの中で一番若く真面目そうな隊員が続く。護衛対象であるアセイラムを筆頭にシャルロットとエデルリッゾの3人を挟み込む形で進む彼らだったが、司令部が敵の侵攻に合わせて設定したルートなだけあって特に敵と会敵することもなく、ジオフロント表層一歩手前までやって来ていた。
「
《急行中だ、現在リフトを上昇中。間もなくジオフロント表層に到達するだろう》
「了解した、だがこちらは少しマズい状況だ。近くで銃声が聞こえる、おそらくすぐ近くで交戦中だ」
ジオフロント表層へ向かうに連れ、侵攻を続ける火星の敵兵とも会敵するリスクは跳ね上がる。これまで運良く会敵することなくいられた軍曹チームだったが、表層一歩手前ともなればそうもいかないらしい。合流地点である第43
《何?……確認した、現在その付近では第37歩兵隊が交戦中だ。今のところ我が方が善戦しているが抵抗が激しい、どうやら迂回突破を狙っているようだ》
「迂回だと?」
軍曹からの報告に再度ルート上の確認を行なった司令部、常に軍曹やメビウス1こと一帆の動向を
《手当たり次第に爆発物で隔壁を破壊している。そのルートに至るまでまだ幾つか隔壁が残っているがいつまで保つかは不明だ、急げ軍曹》
故に「急げ」と急かされる軍曹たちだが、都度行う安全確認やほぼ一般人の少女3人を連れてではそう素早くは進めない。特にこれから戦場となっている場所に自ら進まねばならないということに、歴戦の兵士でもない少女たちは無意識に足がすくんでしまっていた。
《っ!マズいぞ、軍曹!》
「敵襲だ!角に隠れろ!」
通路を折れ、遂に目的地まで残り100メートルの地点でそのすぐ背後の隔壁が破られる轟音がする。と同時に爆炎と白煙の中から火星兵が放ったであろう、盲撃ちの制圧射撃が彼ら彼女たちが潜んだ曲がり角にも着弾した。
「軍曹、ここは我々が抑えます!軍曹は彼女たちを」
「分かった!お前たちはここを守れ!──死ぬなよ」
「勿論です、軍曹!」
「余裕だぜ!俺が全部やつけてやらぁ!」
「お気を付けて、軍曹!」
即座に手に持っていた
「着いた!」
通路を越えた先、軍曹たちが辿り着いたのは全力出撃により既にもぬけの殻となった第43格納庫のキャットウォーク上であった。
「メビウス1は⁉︎まだなのか?」
《間もなくだ!ジオフロント表層には出たが敵歩兵と会敵している、振り切って合流中だ!》
見渡す限り、誰もいない格納庫。整備士さえ深層へと避難したか、他の防衛戦に参加しているのか。雑多で人っ子ひとりいないように見えた格納庫の様子に、軍曹は未だ到着しないメビウス1の現在地を尋ねる。
「きゃあっ⁈」
「撃たれた!姿勢を低く、遮蔽物に身を隠すんだ!」
その時、格納庫内に突発音とともに丁度シャルロットの目の前、金属製の手すりに何かが当たり弾ける音がする。咄嗟に伏せたことで、彼ら彼女らの頭上を何発もの銃弾が飛び抜けていった。
「HQ、HQ!撃たれた!合流地点に敵兵が侵入して来ている!至急応援を求む!」
《何っ⁈付近に動かせる部隊はない、だが間もなくメビウス1が到着する!それまで踏ん張ってくれ!》
飛び散る火花と金属片を浴びつつも、応援を要請するが
「敵は……1、2、3……いや4人。発砲音の軽さと火線のバラつきから考えて奴ら
高所かつ通路入り口に陣取っているため、そう簡単に向こうから当てられるとは思えないが
「固まっているのは……あそこか!君たちは伏せたまま耳を塞いで!それ行けっ!」
投擲したのは幾つか持っていた手榴弾の内、非殺傷の
「良し、最低2人は無力化できた」
降って来た手榴弾が発した膨大な閃光と爆発音に、堪らず物陰から飛び出て来た火星兵を狙い撃つ。
「なっ⁈何だ、何事だ⁉︎」
「きゃぁあぁー!」
明らかに精細を欠き、火線の減った敵兵からの攻撃に内心ほくそ笑むが、突如として大爆発を起こしこじ開けられた格納庫の大扉に流石に軍曹とて度肝を抜かれる。
「───一帆さん!」
そんな中、唯一その爆発を起こした主が己の騎士だと確信していたアセイラムがその名を呼ぶ。
《待たせた!アセイラムさん!》
その声に応える様にして爆煙を突き破り、格納庫内に突っ込んで来たのは白き翼の戦乙女。
「さあ、乗って!」
「任せたぞ、少年!こちらの少女たちの事は任せろ!」
「シャーリー!エデルリッゾ!」
「カズホさん!姫様を頼みます!」
「行って下さい、姫様!どうかご無事で!」
そんな一帆の視線に気付いていたのか、軍曹は引き続きこの場に残るシャルロットやエデルリッゾのことは任せろとそう叫ぶ。そんな軍人の鑑ともいえる軍曹の姿に、一帆はヘルメット越しながらも尊敬の眼差しとともに敬礼し、アセイラムもまた残った従者たちからの激励を受ける。
「
「ええ、軍曹さんやシャーリーたちのためにも急ぎデューカリオンへ!」
“成すべき事を、為さなければならない”
【西シベリア平原 地球連合本部ノヴォスタリスク ジオフロント表層 11月25日16時22分】
〈West Siberia Novostarsk UFE HQ outer layer of the geofront 1622hrs. Nov 25, 2014〉
ゴップ本部大将やマグバレッジ本部大将に導かれ、
《注意!メビウス1、
「──そこっ!」
しかし注意が飛ぶと同時に一帆の操るVF-25の前後が反転、その右手に持った
《メビウス1、敵兵を排除》
背後に散った爆炎とソレに掻き消された絶叫を置き去りに、一帆は立ち止まる事なくそこまま前進し続ける。ただ急いでいるというのに敢えて
「きゃっ⁈」
「チィっ⁉︎」
直後、キャノピーやコックピット周辺の表面に幾つもの
《進行方向上に敵兵だ!回避しろ!》
地面を滑走し爆走するVF-25の進む進行方向の先に、自動小銃を構えているらしき火星兵数人の姿が見える。
───時間がない、強行突破するしか……ない!
被弾を最小限に抑えるべく、放たれる火線を縫って前進しながらも構えたガンポッドと追加されたマイクロミサイル発射の引き金を弾く。放たれた58mm×420mm
「頭下げて!耳を塞げ!」
《……無茶するな、メビウス1》
今まで戦った中でもダントツで気分は最悪で、吐き気もする。ただ不幸中の幸いなのは、一帆が言うまでもなくキャノピーへの被弾の影響で後部座席のアセイラムが頭を伏せた状態で目を瞑っていて、その目の前で飛び散ったソレらを目撃しなかったことだろう。
《メビウス1の機影を確認!》
「見えました!デューカリオンです!」
目の前に
「あれは──!」
「スカイキャリア!」
丁度残存防衛部隊の収容を終え、艦載CIWSやSAMによって敵歩兵部隊や接近した
《……全く、何で
その時、デューカリオンに纏わり付かんとしていたスカイキャリアの1機に1発の銃弾が命中、その翼をへし折り爆散させる。
「「ライエさん⁈」」
咄嗟に発砲方向を確認する一帆とアセイラムのふたり。一帆たちが来た方角とは別方向、突如戦闘と回線に割り込んで来たのは、その特殊な生い立ち故に聴取のために軍の留置所へと一時的に拘束されているはずのライエ・アリアーシュであった。
《そのまま行って、着艦を援護する》
放棄された即席陣地に陣取って、同じく陣地に放置されていたであろう10式/SAM-R 75mm狙撃銃をデューカリオンに接近しようとする敵部隊に連射するライエのアレイオン。
《艦底部格納ハッチ展開、超電磁着艦制動装置起動》
《交戦中につき、着艦誘導ビーコンは出せません。手動で着艦して下さい》
ライエの制圧射撃により確保された間隙を縫って着艦する一帆操るVF-25。
《メビウス1、着艦!》
《次はあのアレイオンだ!収容急げ!》
固定装置により固定されたことを確認し、次にライエの機体を収容すべくハッチのスペースを空けるために第2格納庫へと移動しようとしたまさにその時、新たな敵機──それも火星のアルドノアドライブ搭載機が襲来する。
《敵カタフラクト出現!》
《全艦、緊急発進!》
「待って下さい!まだライエさんが……っ!」
《行きなさい!ここは私が抑える!》
前段作戦の主要目的たるアセイラムの収容ができた時点で、これ以上危険に曝されつつもジオフロント内に留まる理由はない。後段作戦の決行のため緊急離脱を図るマグバレッジ艦長の判断に異を唱えようとしたアセイラムを取り残される側なはずのライエが制止する。
《良いから!この状況をなんとかしようとしてる、そうでしょう?さっさと行って!それに……私もそろそろぶん殴ってやりたかったのよ。私たちをこんな目に合わせた黒幕って奴を!》
画面越しではあるが、決してヤッケっぱちではないと、まだ死ぬつもりないと断言する彼女の瞳にこれまでのような狂気や諦観はない。むしろちょっと活き活きとしているようで、本気で黒幕をブン殴ってやると息巻く彼女の様子は、それこそが今の今まで抑圧されていた彼女本来の気質なのかも知れない。
「っ……!分かった、ここは任せる!」
《ええ、生きてまた会いましょう。……お姫様も》
「──はい!どうかご武運を、ライエさん」
故に、信じることにしたふたり。残して行くことに不安がない、訳ではないが彼女ならばやり遂げるだろう。今も戦っているであろう軍曹たちや同じく残ったシャーリーとエデルリッゾの様に、生きて再び会えると信じて。
《ダメです!敵侵攻によりメインシャフト管制室との通信途絶!ゲート開きません!》
《ならば1番から4番、誘導弾発射準備!ならびに全砲門最大仰角!目標、メインゲート!撃てぇ!》
《
いつぞやと同じ様に再び火星の姫君を、地球人類の希望を乗せたその方舟は、天上を目指し外界に広がるそのソラへと遂に飛び出していった。
《ふぅ……一仕事、といったところか》
《随分と疲れた様子だな、老いたんじゃないか?まだまだ戦いはこれからだぞ?》
《くっくっくっ……いいや、私たちの勝ちだ》
《見たまえ、彼は……彼らは無事に飛び立った。それが「モグラ」と称される私の勝利だ、彼らが空中にある限り私の負けはない。そして、彼らならやってのけるだろう》
《……ならば、せめて彼らの帰って来れる場所を守らなくては。“英雄”に凱旋と出迎えは必要だろう》
《ああ、彼らの勝利に、ケチをつけたくはないさ》
1986年に国際連合の主導で樹立された超地球規模での地球の統一連合組織「地球連合」に参加した全ての軍隊やそれに準ずる組織が統合された「全地球防衛機構軍」の中でも、1989年から旧日本国自衛隊・現極東方面軍が制式採用している主力自動小銃。
元々は国連主導の「全地球防衛機構軍構想」が生み出される遥か前から陳腐化しつつあった64式7.62mm小銃の後継として旧日本国自衛隊向けに開発されていた代物であり、対火星ではなくあくまで旧東側諸国に対抗すべく設計されているため旧NATO・現UFE標準の5.56x45mm UFE弾との互換性を持つ。
本来は地球連合軍へと合流する上で旧西側陣営の一員として特殊部隊等の一部部隊への先行量産分を除き、旧アメリカ合衆国軍・現北米方面軍が制式採用しているM16へと切り替え・調達が行われる予定であったが、軍隊を統合し補給等を画一化する上で最も消費量が莫大となる銃弾の規格を旧西側陣営のNATO標準とするか旧東側のWPO標準とするかで北米方面軍とユーラシア方面軍で大いに揉めた挙げ句、1999年にはユーラシア大陸紛争と第一内惑星間戦争が勃発したことでM16の調達は無期限延期、極東方面軍は89式の追加増産を行う
なお、「
ちなみにALRとは「Advanced Lightweight Rifle」の略である。
過去、種子島秘密基地研究棟において、琴乃がまだ全領域対応型可変戦闘機としてVF-25の基礎設計を行っていた段階に立案された装備換装を行うことで任務に応じて機体の特性を追加・変更する「オプションパック・システム」構想に基づき開発・試作されていた可変戦闘機専用追加兵装システム。
起動因子問題によりVF-25自体が放置されたことで開発も凍結されていたが、第二内惑星間戦争勃発後に機体を勝手に引っ張り出して乗り回した挙げ句、大戦果を挙げた一帆の活躍をゴップ本部大将経由で耳にしたテム・レイ技術大尉が独断で開発を再開。
その大部分に過去テム自身が設計し、アレイオンの登場で旧式化しつつあったスレイプニール用に新たに設計・開発に携わった「コンフォーマルパワーアシスト」の基礎設計等を流用しているため、かなり荒削りではあるものの短期間で実用に耐えうる代物として完成した。
なお、時間の無さと試行回数の不足から初めから空力云々は一才考えらておらず、それらをかなぐり捨てたVF-25本体と両翼に装着した大型化学ロケットブースターによる圧倒的推力をモノを言わせた狂気的な加速と飛行を実現している。
諸元
▪︎推進用メインブースターエンジン×4
▪︎姿勢制御用サブエンジン×4
▪︎高機動バーニアエンジン×10
▪︎インテーク近接ミサイルCIWSランチャーポッド×2
▪︎背面VTS方式マイクロミサイルランチャー×2
▪︎対艦対空両用76mm単装速射旋回砲塔×2
▪︎追加複合センサーユニット×1
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