ALDNOAH.ZERO -Earth At Our Backs-   作:神倉棐

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EPISODE.12/【たとえ天が堕ちるとも -Childhood's End-】
12/1 「Mother Goose1」


12の1「マザーグースワン」

 

Mission Name > Heaven's Feel(天の杯)

Operation Objective > 敵要塞艦を制圧せよ

Date > 2014/11/25

Time > 1630hrs.

Location > Enemy CCF

Sky Conditions > Overcast

Cloud Cover > 8/8

 

 

全員揃いましたね?

 

それではグラン・ゴップ本部大将より引き継ぎ私、ダルザナ・マグバレッジ海軍大佐が後段作戦「天の杯(ヘヴンズ・フィール)」の内容を説明します

 

本作戦は現在、ノヴォスタリスク地球連合本部に対し侵攻中の敵揚陸城に対する反攻強襲揚陸作戦の後段作戦です

 

我々はアセイラム・ヴァース・アリューシア姫殿下とともに、敵揚陸城へと降下し制圧

 

その中枢たるアルドノアドライブを強制停止させます

 

 

本艦は敵揚陸城からの攻撃を避け、このまま一旦高度限界である成層圏(高度2万)まで上昇

 

上空より可変戦闘機ならびにカタフラクトによる空挺降下を実施します

 

降下中は当然、敵揚陸城からの迎撃──対空砲火に曝されることとなります

 

そこで先んじて本艦より降下予定地点周辺に対し制圧艦砲射撃を実施、続けてデコイバルーンを投下し撹乱します

 

なお、このデコイ投下に乗じて第一陣としてメビウス1が出撃

 

ISCを全力稼働させつつ、デコイと制圧射撃に紛れ目標地点へと急降下

 

後続部隊の安全確保のため、予定地点周辺の脅威を一掃します

 

 

さらに、メビウス1が目標高度に到達した時点で第二陣として第108機動歩兵(マスタング)隊を中核に回収した残存防衛部隊より編成した強襲揚陸部隊本隊が降下

 

橋頭堡の確保を確固たるものとした上で、本艦もまた敵揚陸城へと強行接舷

 

接舷箇所から歩兵部隊(陸戦隊)による要塞艦内部への直接制圧作戦を展開します

 

 

また、本作戦に連動し、本艦の支援射撃開始と同時に連合本部でも残存戦力を結集し全面攻勢を実施

 

陽動作戦を行い、既に基地内部に侵攻している敵カタフラクトを含む全敵戦力を足止めします

 

 

本作戦は「早さ」が生命(いのち)です

 

敵の懐にさえ入って仕舞えば、如何に敵のアルドノアドライブ搭載型カタフラクトが強力であっても十分な脅威とはなり得ないでしょう

 

このため本作戦参加全機に対し空挺オプションを含め、全種追加オプションの使用を許可

 

特に、本作戦の中核であるメビウス1と第二陣中核であるマスタング隊に対してはコンフォーマルパワーアシスト(オプションパック)を支給します

 

 

そして本作戦の最重要人物であるアセイラム姫殿下についてですが、本人たっての希望もあり先陣を切るメビウス1の機体に搭乗

 

メビウス1の技量、そしてピンポイントバリアを含め、本艦以上に最も安全なのは彼の後ろです

 

よって、本作戦中のみメビウス1のコールサインを変更

 

コールサインは「Mother Goose(マザーグース)1」とします

 

 

最後に、本作戦に参加する全ての将兵に告げます

 

皆さんの生命、私が貰い受けます

 

各々、それぞれの任務を完遂し、必ず生還せよ

 

それ以外は許可できません

 

諸君の幸運を祈ります

 

総員、配置について下さい

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【西シベリア平原 デューカリオン艦内 11月25日16時33分】

〈West Siberia Inside the AAA/BBY-001 Deucalion 1633hrs. Nov 25, 2014〉

 

 

降下作戦開始10分前、高度2万メートルへと向けて急上昇しつつあるデューカリオン艦内にて。ほぼ直角に上昇を続けていながらも、アルドノアドライブの恩恵をフル活用した慣性・重力制御技術によって、ちゃんと()()()()()()()()()()ように調整された搭乗員待機室には、作戦の中核となる一帆やアセイラムを筆頭に伊奈帆たち第108機動歩兵(マスタング)隊のメンバーや本部にて回収された残存防衛部隊から選抜・編成した強襲揚陸部隊本隊のメンバーが一堂に会していた。

 

「……いよいよ、ですね」

 

マグバレッジ艦長からの作戦事前説明(ブリーフィング)を受け、各々瞑想や遺言、物思いに耽っている者が多くいる中で、一帆のすぐ側に腰掛けていたアセイラムが緊張した面持ちでそう言う。

 

「ええ……そうですね。いよいよです」

 

アセイラム自体、直接戦闘に出るのは新芦原での「Doll Drop(だるま落とし)」作戦以来2度目。つい数日前の出来事であるというのに、随分と遠くまで来た気もする。それまで何度か戦いはあったが、常に矢面に立ってきた一帆や伊奈帆たちに比べれば明らかに「戦場慣れ」をしていない彼女の反応は、既に戦場が(非)日常となってしまった一帆からしてみれば何処か眩しいものでもあった。

 

「……よかったんですか?」

「……え?」

「敢えて一番危険な先陣を切る機体に乗るだなんて……デューカリオンが接舷してから陸戦隊と一緒に来た方が安全な筈です」

 

ただ、だからこそ一帆はアセイラムに問うていた。戦場が、戦いが怖いという彼女が何故一番危険で、一番負担の掛かる自分の機体に乗りたいとマグバレッジ艦長に直談判したのかを。確かに一帆の技量とVF-25(メサイア)に搭載されたISCやピンポイントバリア、それらを合わせれば如何に強力な対空防御であろうとすり抜けられる。だがそれは一帆にTASばりの変態機動に耐えられるだけの身体能力と操縦技術があってこそ、訓練も受けていない()()()少女でしかないアセイラムが耐えられるかは未知数であるし、そもそもこんな特攻じみた降下作戦に参加すべき立場の人間でもない。

 

「はい、一帆さんは私の「騎士」ですから」

 

だが、そんなアセイラムから真っ直ぐとした瞳で「信じています」と言われてしまえば「駄目(No)」とは言えない一帆は、ある意味で彼女に惚れた弱味といえよう。

 

「か、会長(かいちょー)……私たち学校で空挺降下訓練とかした事ないんですけどぉ……」

 

そんな、見ているだけで口の中がシャリシャリと甘ったるい感じになりそうな2人の世界に割って入るように、緊張から青い顔をしたマスタング33こと網文韻子(あみふみいんこ)が話し掛けてくる。

 

「大丈夫、軌道降下作戦とはいえ基本的に空挺オプション自体が高度に合わせて勝手に動作してくれる。一応マニュアル操作も可能だけど……まぁ、無難に機械に任せた方が安全だね」

 

若干、話し掛けてきたタイミングに作為的なものを感じなくはないが、それでも一帆は彼女を安心させるように本作戦にて彼女たちが担当する空挺オプションを用いた降下作戦とその仕様について説明する。

 

「目標高度で落下傘を展開、減速しつつそれでも足りなければ肩に付いたブースターで減速。ついでに着陸地点も調整してくれる優れもの……らしい。それに、生身でやるよりかは遥かにマシだ。降下中に焦って変な操作をしなきゃ大丈夫だよ、多分」

「多分って何さ、多分って!」

「韻子ならともかく、オコジョはおっちょこちょいだから。変なボタンを押しそう」

「言ったなこの野郎⁉︎そもそも傘が開く前に撃墜されたら一緒じゃねぇか⁈」

 

途中、一帆の説明に伊奈帆の解説が付け加えられるが一言余計だったらしくおちょくられたと感じたマスタング44こと箕国起助が伊奈帆に抗議する。

 

「あはは……まあそうならないための俺たち第一陣なんだけどね」

「確かに、会長が一足先に降りて対空砲を潰してくれないとどれだけ犠牲が出るか分からないですもんね……」

 

ある意味、作戦の成否は一帆ただひとりに掛かっている状態。韻子の言う通り、一帆がどれだけ迅速に揚陸城に配備された対空装備を叩き潰せるかで第二陣たる本隊の犠牲も変わってくる。

 

「ひとまず、整備長にはパイロンに積めるだけの爆弾を積んどいて欲しいとは頼んであるし、その数次第……かな」

 

YOPS-25/UFE25(試作オプションパック)にも大量のマイクロミサイルが搭載されてはいるが、高高度からの対地攻撃となると()()()爆弾で先読み爆撃した方が楽だ。それ故にわだつみの頃から引き続き一帆の機体整備を行ってくれている桜木軍曹にも「ありったけの爆弾を搭載してくれ」と直談判した訳である。

 

「爆弾、ですか?対戦車ミサイルとかの方が良いんじゃ?」

「ん?無誘導で十分でしょ?都合上どう足掻いても雲を貫いての急降下爆弾になるからミサイルだと射程とか誘導性能とか諸々で不安になるからね」

 

ただ、そんな一帆の常識*1は世間一般のモノとは異なるようで。桜木軍曹にもされた困惑顔を韻子たちにもされることとなる。

 

「さ、流石会長……」

「とんでもないなぁ……やっぱこの人」

「今更でしょ、カズ兄だし」

「?」

 

あっけからんという一帆にドン引きする韻子と起助、とっくに慣れ切った伊奈帆はむしろそれで当然とばかりの表情で頷き、そもそもそれがどれ程頭のオカシイことなのか全く理解していないアセイラムは頭の上に「?」(エクスクラメーションマーク)を浮かべている。

 

 

《全機出撃準備完了、総員、配置に付け》

 

 

そして、遂に待機室に鳴り響いた作戦決行の合図(アナウンス)。開いた扉と誘導に従って各々、自身の搭乗することとなる機体へと向かう隊員たち。

 

「アンタ、例のエースなんだろう?」

「貴方は?」

 

伊奈帆も、韻子や起助たちも準備が整った自機へと走って向かう中、同じく待機室を後にしようとした一帆の背後から呼び止める声がする。振り返った先、そこにはパイロットスーツを着た見覚えのない褐色の女性が立っていた。

 

「エリエラ・ジフォン空軍大尉だ、アンタが火星のお姫様を後ろに乗っけて例の機体を乗り回してるって噂のパイロットなんだろう?「リボン付きの英雄殿」?」

「空軍のパイロットが何故この艦に?いや、貴女もカタフラクトで出撃を?」

 

咄嗟にアセイラムを庇いつつ、先に機体に向かうよう目線で指示する一帆。そんなエリエラと名乗った女性兵と一帆の様子に後ろ髪を引かれつつも、一帆の指示通り彼女が待機室を後にしたのを見送ったエリエラは苦笑いをこぼしつつも答える。

 

「人手不足さ、あんな天気じゃ戦闘機どころかヘリすら飛ばせないってね。気付けば空飛ぶ飛行機乗りが、地べたをえっちらおっちら歩く機動歩兵に転身とは世知辛いもんだよ」

 

どうやら航空迎撃は無意味と判断したゴップやマグバレッジ大将らによって一時的に戦闘機からカタフラクトに乗せ替え*2られたらしき空軍パイロットの彼女は何処かおどけた調子で笑う。

 

「でだ、さっきの私の質問にも答えてもらおうか」

「……確かに、貴女のいう可変戦闘機のVF-25のパイロットは俺です」

 

しかしそんなおどけた顔も一瞬で真剣な表情になり、一帆へと返答を促す。一帆はエリエラの質問に言葉を選びつつ、彼女を正面から見据えて答えた。

 

「───」

「───」

 

互いに正面から見据えたまま、無言の一瞬が訪れる。

 

「──気に入った、アンタなら私たちの生命を任せても大丈夫そうだ」

「は?──いっ⁈」

 

しかしその一瞬を一方的に破ったのはリエリラの方であり、そんな彼女は何故か満面の笑みでズンズンと一帆へと距離を詰めるとその背中をバンッと叩く。幾らパイロットスーツ越しとはいえ、ユキと同じくらいかそれよりも長く軍人をやっているパイロットからの一撃は割と洒落にならないレベルで痛かった。

 

「頼んだよ、「リボン付きの英雄」。私も、私の部下たちの生命もアンタとアンタが連れて来たお姫様に賭けたんだからね」

「勿論です。損はさせませんよ」

 

一帆の答えに満足そうに待機室を後にする彼女、とはいえ本当に彼女が放った一撃が痛かった一帆は若干涙目になっている。

 

「──カズくん」

「ユキさん?」

 

そんないつものように締まらない雰囲気の中で、とっくに格納庫へと向かったであろうと一帆は考えていたユキが今度はその入り口に立っていた。

 

「はい、これ」

「御守り、ですか?」

 

涙を放り払いつつ、ユキの下へと向かう一帆。そろそろ作戦開始まで時間がないが、家族である彼女が声を掛けて来たなら話は別だ。彼女の前に立つ一帆、そんな一帆にユキはずっと手に持っていたらしい赤い色の御守りを手渡してくる。

 

「たしかこれって去年買った……」

「そうそう、安全祈願の御守り。私が買ったやつだけど……敵陣に一番乗りするカズくんに持っておいて欲しくて」

 

渡された御守りは何の変哲もない、何処にでもあるような近所の神社*3で買える代物……いや、触った感じ自分が買った同じ物よりも()()()()()()というか、別に()()()()()()()()らしく巾着の結び目も一度解いた跡がある。

 

「でも、良いんですか?伊奈帆とか、ユキさんが持ってた方が……「えいっ!」……もがっ⁉︎」

 

触った感触に違和感はあれど、その御利益の都合上貰うには少し抵抗があった一帆が返そうとした瞬間、ユキはそんな一帆を抱き締める。

 

「カズくんに、持ってて欲しいの。ナオくんの方は今頃ソラちゃんが渡してるだろうし……ほら、こういうのは特別な人に渡すモノでしょ?」

 

胸の内の一帆に、そう言い聞かせるようにして伝えるユキ。そんなユキの行動に、普段ならば狼狽える一帆も真剣に彼女の言葉に耳を傾けていた。

 

 

 

「……」

「死なないでね、カズくん」

「……はい」

 

 

 

作戦開始まで残り僅か。次にまた五体満足に会えるかも分からない一大決戦を前に、例えそうだとしてもふたりはこの一瞬を噛み締めていた。

 

 

*1
当然、TASばりの先読み能力あっての産物とエスコン(ゲーム)内部での代物

*2
元々、カタフラクトの操縦系は戦闘機をモデルに作られていることや、そもそもすわ有事の際には三軍の何処に所属していようが最低限カタフラクトを操れるよう基礎教養として訓練に組み込まれているため

*3
たしか「し」から始まって「の」が一杯付く名前の神社




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