武偵の王子様 作:石田金
その内テニスの王子様風にキンジのプロフィールを作りたいと思っています。
翌日。
「言っとくけど俺は強襲科に戻る気はねえぞ。協力するのはともかくな」
朝食は幼なじみの白雪が作ってくれたタケノコごはんだ。俺はそれを食べながらアリアに言う。彼女が我が家に来襲したのはどうやら俺を仲間に引き入れたいからだと言う。それも探偵科から強襲科に戻らないといけないらしい。最も危険な強襲科に、だ。
無論断った。一般人を目指す俺は自ら死地に戻ったりはしない。それ以前に大会だって控えているのだ。怪我のリスクが高まる強襲科に戻るなんて馬鹿らしいにも程がある。
しかし、この天才のアリア様がそんな理由で納得してくれる訳がない。こいつは俺を家から追い出しやがった。なんだよ、頭を冷やせって。来客にそんなこと言われた時点で俺の頭の中はひえっひえだよ。
天才の考えることは訳が分からん。同じ天才でも常識人の財前とは大違いだ。おかげで俺は町内一周マラソンをすることになったぞ。良いトレーニングになったから良いけど。
結局アリアはそのまま俺の部屋に泊まった。強襲科に戻ってパーティーに入るまで意地でもここにいるらしい。うーん、それにしても男の部屋に女の子一人で泊まり込みとかそんな危険なことよく出来るな。女性が苦手な俺じゃなかったら何をするか分からないぞ。彼女の両親は怒らないのだろうか。
親も親で破天荒の可能性が高いな、これは。まあ世の中にはタバコ吸って他校の生徒の財布盗んでバイクに乗る中学生もいるし、それに比べればまだアリアはマシなのかもな。五十歩百歩だけど。
・・・・・・それにしてもこのタケノコごはん美味いな。白雪は本当に料理上手だ。昨日ランニングの途中に街中でばったりと再会した時は案の定凄く心配されたっけ。色々と弁明するのは大変だったけどこれが食えたならそれも悪くなかったかもな。
「ダメよ! あたしが強襲科って言ってるんだからあんたは強襲科に決まってるでしょ!」
美味かったはずのタケノコごはんが不味くなった。
◇
アリアを何とかする作戦を練るために俺は依頼を引き受けた。
武偵校は単位の取り方が一般校と少し違う。この学校では通常授業だけで単位をとることは難しい。犯罪者を追う、要人警護をするなど長期的に出かけることになる生徒に配慮するためにそれらの任務達成と同時に単位をもらうことが出来る。
情けないがテニスバカである俺は頭もバカで成績が悪い。どれくらい悪いかというと授業時間=睡眠時間になってるくらいの頭の悪さである。遠山三兄弟は長男を除いて二人とも頭が悪い。なんと二人揃って苦手な教科が主要五教科だ。
そんなバカな俺みたいな生徒にはこの制度はとてもありがたい限りである。勉強しないでテニスしまくってても無事に進級出来るなんて素晴らしい。・・・・・・あれ? 俺はこの学校から転校して本当に大丈夫なのだろうか。
まあ良いや。という訳で俺は猫探しの依頼を引き受けたのだ。それにしても猫を見つけて捕まえるだけで単位がもらえるなんて楽だな。『ほぁらー』と特徴的な鳴き声をしている猫なんて限られているし。
「キーンジ」
何故か専門棟の外で待ち構えていたアリアに俺は肩を落とした。あー、もう出会い頭に波動球ぶちかます作戦で良いかな? 考えるの面倒だ。待ち伏せされていた俺は投げやり気味にそう思った。
「なんでここにいるんだよ」
「あんたがここにいるからよ」
「答えになってねーよ。なんで授業サボってんだよ」
「あたしはもう卒業出来るだけの単位を揃えてるもんね」
「へー」
舌を出してあかんべーとやったアリアに俺は気の抜けた返事をした。別にこの女の単位事情なんて知ったこっちゃない。こちとら毎年数多くの補修を乗り越えてきてるんだ。優等生の自慢なんか本気でどうでもいいんだよ。
「ほら、さっさと依頼を教えなさい。行くわよ、このバカキンジ!」
俺があまりに無反応だったことに機嫌を悪くしたのかアリアは足を蹴って言った。どうでもいいがすぐに人に暴力を振るう癖は治さないと他人に嫌われるぞ。もう手遅れかもしれんが。
「え、手伝ってくれんの?」
「そんな訳ないでしょ! あんたの腕を確かめんのよ!」
「猫探しで何の腕を確かめるんだよ」
テニスを武力と勘違いしたりおかしいぞ。今さらだけとこの子もしかしてバカなんじゃないか。俺は適当な会話をアリアとしながら猫探しへと向かう。
「あんたどういう推理で猫を探すの?」
「猫の気持ちになって探す予定だ。公園や路地裏が特に怪しいと思う」
「ただ単に猫の行きそうな場所をぶらぶら行くだけじゃないの。推理が苦手なあたしでも出来るわ」
逆に推理が得意な奴はどうやって迷子の猫を探すのだろうか。疑問である。
「お前推理は出来ないんだな」
「そうなの。一番の特徴は遺伝しなかったのよねえ」
「ふーん、お前の家系って探偵だったのか」
どの探偵だろう。ハーフっぽいし案外著名な探偵とかだったりして。あ、ちなみに俺は侍の家系である。今でこそ遠山家に生まれたことを少し後悔してるけど小学校の頃はこれだけでヒーローになれて嬉しかったな。パイロットのお父さんとかの系列に近いよな、侍の家系って。子どもの憧れってヤツ。中学校ではその家系のせいで最悪な目にあったけど。
「それよりお腹すいたんだけど」
「マジで。実は俺も飯食ってないんだよ」
「あたしは食べたけど減ったー。なんかおごって♪」
「おいおい。・・・・・・たく、しょうがねえなあ」
その辺でハンバーガーでも買うか。こうしてアリアを見ているとまるで妹が出来たみたいだ。弟の金太郎は大食いでワガママだから昔はよくお菓子とか買ってやったっけ。ほんの少しだけ高校生のアリアに小学生の頃の金太郎を重ねた俺は財布を開けるのであった。
「ほら買ってきたぞ」
「ありがとっ!」
「落ち着いて食べろよ。喉に詰まるぞ」
上機嫌でせっせとハンバーガーを食べるアリアに俺はますます金太郎の姿を重ねる。もしかしたら似ているのかもな、アリアと金太郎は。
「さ、食ったらまた猫探しだ」
「ん、分かった。・・・・・・やっぱりちょっとだけ手伝うわ」
「サンキュー」
それにしても猫は何処に行ったのだろうか。公園にいると思ったんだけどな。街中にいるとしたら常に動き回ってるのだろう。楽な依頼かと思ったが骨が折れそうだな、これは。まあ、アリアが手伝ってくれるというならきっと早く見つかるさ。俺は気楽に構えることにした。
夕方。
あれから数時間の間、迷子の猫を探し回った。
わざわざ街中に行く必要はなかった。迷子の猫は昼を食べた公園の端、ドブというか運河というかの水辺にいたのだ。
『ほぁらー』
資料にあった鳴き声だな。タヌキっぽい見た目も一致している。これは間違いなく依頼人の猫『カルピン』だ。
「か、可愛い」
アリアはカルピンの見た目が気にいったのか目を輝かす。意外と可愛いもの好きなんだな。拳銃を持ってる時とは大違いだ。
「ほーら、カルピン。こっちにおいでー」
俺は出来る限りの作り笑顔でカルピンに近づく。カルピンは人懐っこいのか喜んで俺の腕の中に飛び込んだ。結構警戒されると思ったんだけどな。武偵って火薬のニオイとかするし。それだけ人に慣れているってことか。
「ちょ、ちょっとキンジ! あたしに抱かせなさい!」
「あ、おいおい。俺が依頼主に届けるんだぞ」
「届ける時だけあんたが抱いてればいいでしょ」
アリアは俺からカルピンを引ったくると上機嫌で依頼人の家へと足を進めた。
◇
「おー、でっけえ家だな」
依頼主の家はかなりの大きさの屋敷だった。一目で裕福家庭なのだと分かるレベルだ。
「そう? これくらい普通でしょ。むしろ少し小さいくらいよ」
「これで小さいって。お前どんな家で暮らしてるんだよ?」
「武偵ならそれくらい自分で調べなさいよ」
自分で調べたらそれは法律を守らなければならない武偵として失格ではないか。俺は少し疑問に思う。
「お前、絶対に依頼主に失礼な態度とるなよ」
「言われなくても分かってるわよ」
本当に分かっているのだろうか。俺がその場にいるかはさておきいつか絶対にこいつ依頼主に失礼な態度とるよ。間違いなく。その姿が余裕で予想つくな。名残惜しそうにカルピンを見つめるアリアを横目に俺は呼び鈴を鳴らす。暫く待つと「はーい」という女性の声が聞こえた。
「あら、あなたたちは?」
依頼人と思われる女性が玄関の前にやって来る。ちょっと白雪に似た雰囲気のある美人な女性が俺たちを迎え入れる。俺、こういうタイプの女の人が結構好みなんだよな。
「武偵です。ご依頼のカルピンさんを見つけて参りました」
「それはお疲れ様です。少し待っていてください。リョーマさーん」
依頼人はこの女性ではないのか。彼女は家の中へと入っていった。暫く待っているとドタドタと慌ただしい足音が聞こえる。
「カルピン!」
俺の弟くらいの少年『越前リョーマ』くんが血相を変えて玄関にやって来た。
『ほぁらー!』
カルピンは嬉しそうな笑顔を浮かべて越前くんの腕に飛び込んだ。越前くんも嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「ありがとう」
「どういたしまして。これくらいお安い御用ですから。もう飼い主に迷惑をかけちゃダメよ、カルピン」
『ほぁらー』
アリアはカルピンの頭を撫でると越前くんに笑顔を浮かべる。誰だ、こいつ。俺と依頼人との落差が激しすぎるぞ。いや、きちんと約束を守っただけなんだけどな。
「あ、そうだ。越前くんもテニスやってるのか?」
「まあね」
庭にテニスコートがあると思ったらやっぱりか。関係ないけどこの越前くんもアリアに負けず劣らずの失礼な奴だな。パッと見同い年のアリアにため口なのはまだ分かるけど俺は明らかに年上だよな。まあ生意気盛りな年頃だから可愛いもんか。金太郎もやたらと年上にため口訊いてるし。敬語なんて大人になる内に自然と身に付けるもんだからな。
「あんたもテニスやってんの?」
「ああ、結構腕に自信はあるぞ。一昨年の中学生テニス全国大会で優勝した選手にも勝ったことがある」
俺はそれまで全てストレート勝ちだったあの常勝立海大付属に唯一土を付けた男なのだ。まあ、あの時の俺は『アレ』になっていたから普通に戦ってたらどうなっていたか分からないけど。あの力は正直反則だ。アレになれば俺は無敗記録保持者の幸村精一ですらおそらく倒せるだろう。
「ふーん」
越前くんは興味深そうに俺を見る。なんか嫌な予感がするな。俺は僅かに後ずさる。
「ねえ、あんた俺と勝負してよ」
「・・・・・・え?」
何言ってんの、この子?
※キンちゃんはテニヌ使いなのでまだ普通のテニスしていた頃のリョーマくんでは絶対に勝てません。つまり次回は思いっきりダイジェストになります。
一応ヒステリアモードは最大時で天衣無縫の極みと同じくらいの強さを想定しています。金太郎はヒステリアがあるので原作より遥かに強化されてます。はっきり言ってチートです。キンジ以上のバランスブレイカーになっています