ウィンド・ソングリシュテンという人物は偉大な人物だ。
まず、寝つきが良い。そして毎朝同じ時間に起きる。さらに、寝起きの機嫌が悪いことが少ないという点で。
それ以外のことに関して、彼は実に不器用な男だった。食事をしてもボロボロとこぼすし、袖にグラスをすぐ引っ掛けるし、脱いだ服は落葉樹の生い茂る秋の森のように、地面が見えなくなるまで脱ぎ散らかしていた。
そんな偉大な彼は、睡眠を取ること以外では賞賛されることがなかった。彼自身は、自身の職業である『魔法使い』という物事全般において評価をされたかったようだが、残念ながら彼の睡眠以外の私生活と同様に、『魔法使い』という技術職でも、実に不器用であった。
魔法学校を教師の温情で卒業した彼は初めは公的機関で働いていたようだ。その頃の彼を知る人間は、誰もが彼を「彼は偉大だった。本当に、偉大だった」と諦観と皮肉を交えて口にする。本来的に、彼は社会の歯車に組み込まれるべき人間であった。彼の歯車は人間社会という複雑怪奇な構造物を回す上で、実に重要な役割を果たすことができた。どんなに滞った案件も、彼が参加するだけで水が上から下に流れるのと同じくらい、自然に解決することができたし、重要なプロジェクトを始動する上で、彼は誰もが見落としがちな小さな歯車を拾い上げて、「これは、本当に必要ないんですか?」と訪ねることがあった。それは多くの場合、最終的に構造物の動きを左右する重要なパーツであって、誰もが彼を「彼こそが、本当の魔法使いなのだ」と敬意を込め、『
しかし、その全てが彼の意図しない所で起きた話で、ソレに対して彼は良く呆然とし、たびたび怒ることもあった。
そして彼は、多くの人の制止の言葉を振り切って、職を辞退し、まさしく『魔法使い』として生きていくことになる。「『
それでも僕は、睡眠と過去の栄光という要素を除いた、『魔法使い』としてのウィンド・ソングリシュテンに対しても、彼は偉大だと考えている。
僕が魔力を10で火を生み出せるとき、彼は50を使わなければ火を生み出すことができなかった。僕が水を打ち出し的に当てたとき、彼はどうやっても的に水を当てることができなかった。
でも、彼の偉大さはそこにはない。
「いいか、必要なものを、必要なところに置く。本来在るべきところに、それを戻してやる。どれが正しくて、何が問題なのか。それを把握することが、魔法使いにとって大切なことだ」
『人間』としてそれができなかった『魔法使い』は、魔法でもそれを明確に体言することができなかった。彼ができたのは、その構造を設計し、入り口を作ることまでだった。
それでも彼のこの言葉は、今でも僕にとって大きな指針となっている。
だから、僕は歯車を回して、道を作っている。
師匠、ウィンド・ソングリシュテン、。『
そして偉大なる彼。
もういない、偉大だった彼。
やってしまった……。
どう見てもオリジナル作品ではないですね。(かといって原作名を明記するのもなんだか憚れる/ちなみにどの『僕』という設定もありません。雰囲気です)
ご意見、ご感想をお待ちしております。というより、感想などがないと書く気力がわかないので、よければ是非感想等お願いします。
一話自体とても短いですが、お付き合いくだされば、嬉しいです。