Re:ゼロから始める異世界ライフ   作:カルート

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2 路地裏騒動

「はぁ……お家帰りたい。」

 

 溜息と共にそんな言葉を吐き出す。

 あのメイドと別れた後、すぐに近くの路地へとフラフラと入って行ったのだった。

 人が多い為休憩を取ろうと立ち寄ったのだが、思ったよりも静かで舗装などがしっかりとされている。

 下を向き石畳の地面を見つめつつ、とりあえずこの世界について今ある情報で考えてみる。

 

 まず今いるのは親竜王国ルグニカというらしい。

 そして言葉は通じる、しかし先程の店にあった文字が読めないという事に気がついた。

 どうやら自動翻訳機能でも働いているのか、言葉の意思疎通のみ可能なようであり、文字の読みまでは翻訳してくれないらしい。

 皆は読めているだろうが俺からしてみれば古代文字だかよく分からない形の文字が並んでいるだけだ。

 

「いやー……マジ異世界ライフ、試練しかないわ……。いや、むしろこの試練は神が俺を試している?つまり、この試練クリアすれば勝ち確ルートまっしぐらか!?」

 

 そんな訳ないのは分かっているのだが、右も左も分からない異世界にこの身一つで放り出されて、自暴自棄になってしまうのは仕方ない事であると思う。

 勿論、そんな事言っても誰も聞き届けてくれる人などいないのだが。

 ──いや、正確にはいた。

 

「んだぁ?アイツ、何かブツブツと言ってやがるぜ。」

 

「どうでも良いだろ、んな事。おら、出すもん出せよ。」

 

 路地裏の入り口、つまり俺のいる位置の真正面に3人組の男達がこちらをニヤニヤと口を歪めながら、歩いて来ている。

 

「おっとー……これはまさか、試練その2か?まさかこれは強制イベント?つまりつまり、お前らは倒される為の雑魚共か!よっしゃ、気合入ってきたぁ!」

 

「あ?んだと、こいつ……。」

 

「舐めてんのかこらぁ!」

 

 本来ならばこんな強気で馬鹿げた行為などはしないのが、生憎と今の俺には召喚者への怒りと、非日常によるアドレナリン的なもので脳が鬱憤を晴らさせんとしていた。

 ゆっくりと立ち上がり、目の前の男共を見据える。

 

「……ふ、ふふふ、はっはー!この無敵最強なクロス様に勝てるとでも思っているのか?さぁ、行くぜ、先手必勝!」

 

 最早、訳の分からないテンションになりつつ足を踏み込みその場から左にいた男へと突貫を掛ける。

 3人組はその突然の行動に驚きの表情を浮かべ硬直している。

 

「おっらぁ!必殺の殺人タックル!」

 

 同じ意味が重なっているのだが、気にせず左にいた1番図体の小さい男へとタックルをかまし、見事にクリーンヒットを決めると後ろへと吹っ飛ばされる、そしてまだ硬直をしている隣の男へと続いての奇襲をかけた。

 

「さーらーにー!朝の散歩で鍛えた足腰キック!」

 

「んぐっ!?」

 

 その場で回転をかけ、右脚でのミドルキックが真ん中のひょろっとした男のお腹へと突き刺さる。

 男はお腹を押さえ呻き声を漏らし、その場へ蹲った。

 続いて最後の奇襲をかけようと、未だ立っている図体の良い男へと目を向けたのだが、その運ばかりの奇襲劇は終わりを迎えたようだった。

 

「コイツ……調子にのるなよ!」

 

「がっ!?」

 

 突如眼前に拳が飛来したと思った瞬間、俺の身体は地面を転がっていた。

 喧嘩すらした事ない俺が受ける痛みは、新鮮でありながら昇りきった思考を覚まさせ恐怖を覚えさせるのは容易で、全身に震えが走る。

 

「……ったく、舐めやがって。」

 

「ヘヘッ、大人しくしてりゃ良いものをよ。」

 

 ゆらりと俺が一撃を加えた2人が、大したダメージを負っていないのか起き上がり地面に転がる俺を次々と蹴り上げてきた。

 

 こんな事なら調子に乗るんじゃなかった、と内心後悔してももう遅い。

 多勢に無勢、不意打ちの後大人しく逃げ出していれば逃げられたかもしれない、そんな今更思っても仕方ない事が頭をよぎる。

 

 ──痛い、苦しい、あぁ鼻血が出てきた……口の中も切った、鉄の味が口内に広がって気持ち悪い。俺はここで死ぬのか……?この訳も分からず放り出された異世界で……?くそっ……ふざけんなよ……異世界の女の子とウハウハルートとか俺最強ルートとかのイベント回収してないんだぞ……。

 

 未だ蹴り続けてくるチンピラ共を見上げようと首を動かそうとするが、なおも蹴り続けられる足に阻まれてしまう。

 意識も薄れ、口内に血が溜まり始めた頃、その声が聞こえた。

 

「──全く……何をしているのかしら。」

 

 呆れながらまるで呟くような声を聞き取りながら、俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──何か柔らかいものが俺の頬に当たっている……気がする。薄っすらと目を開ける、これはまさか膝枕イベントなのでは?心無しか、何か良い香りしなくもない。

 

「うへへ……。」

 

「顔が嘔吐してしまいそうなほど気持ち悪いから、今すぐその顔剥がして貰える?」

 

 ──何か罵倒らしき声が聞こえてきたんだが、何故か俺へ向けた言葉に思えてしまう。

 

「──というか、その存在を消した方が良いと思うわ。」

 

「……何でだよ!というか存在否定ってどういう事!?……っ。」

 

 ガバッと起き上がり存在否定された相手に、咄嗟にツッコミを入れたのだが、身体のあちこちが痛み苦痛で顔が歪み、ツッコミが中断されてしまう。

 目の前を見やると、先程別れたはずのメイドが能面のような顔でこちらを見ていた。

 

 ──目の前?

 

 ちらりと俺が寝ていたであろう場所を見るとハンカチが敷いてある、勿論拾われたはずのものだ。

 

「膝枕イベントは!?ちくしょう、何でだ……いててて!?」

 

 まるで血涙でも流さんばかりの心の叫びを上げようとするが、相変わらず痛む身体に邪魔をされて悶えてしまう。

 

「はぁ、見てられないわ……主に見苦しい意味で。」

 

「本当にお前、辛辣だよな!?こっちは怪我して……あれ?さっきのチンピラは?まさか助けてくれたのか……?」

 

「別に、ただボロ雑巾が転がっていたからゴミ箱へ持って行こうとしただけよ。」

 

「ボロ雑巾じゃないからな!?というか俺、ゴミ扱いかよ!?」

 

 身体に痛みが走るが、そんな事お構いなしに一つ一つにツッコミを入れ、半眼を向ける。

 この子は何故こうも人を貶して来るのだろうか。

 そんな疑問を持ちつつ息を吐き出す。

 

「とにかく、助かった。マジで死ぬかと思ったよ……マジで。」

 

「……次からはこんな路地裏に1人で入って行かない事ね、変態。」

 

 ……何故、未だに変態と呼ばれているのか分からないが助けられた事は事実、ここは大人として黙っておく事にしておこうと出かかったツッコミを抑える。

 

「それで君は何故ここに?あ、まさか俺を追って来たとか?やっぱり気になっちゃう感じ?うんうん、分かるぞ、その気持ち──」

 

「今すぐその腐りきった思考と口を、脳と一緒に停止させてもらえるかしら?」

 

「……オッケー、分かった。ツンデレ路線だな?俺はそっちもいけるぞ。むしろばっちこい。」

 

「…………」

 

「あぁ!?待って、分かった。分かったから、無言で行かないで!」

 

 つい口が回り、調子に乗った発言をしていると彼女は無言で立ち去ろうとしてしまい、慌てて俺は引き止めに入った。

 昔からこうで、調子に乗った発言してしまい相手の事を怒らせたりしまう事が度々見られ、今通っている高校の教員に注意される事が多い。

 少しは改善していかないといけないのだろうか、と一応頭の中の片隅へと置いておく。

 

「はぁ……貴方見ない格好だけど何処から来たの?」

 

「これまた異世界召喚定番の台詞……だが、しかし!むしろそう言われた方が実感が湧く!そう、俺こと、池……じゃなくてクロスは遥か極東の地からやってきたのだ!」

 

 段々と慣れつつある身体の痛みを感じつつ叫ぶ。

 今まで急に放り出されて1人寂しく異世界ライフを送っていたからか(経った1、2時間程である)人恋しさを感じてた俺は高らかにお決まりの台詞を告げた。

 

「極東……?ここルグニカが1番東の国のはずだけど。」

 

「何だって?つまり俺は地図の外からしてしまった……?」

 

 ──俺は伝説の国ジパングから来たという事か?まさか地図の外側から来てしまうとは……いやいや、どう考えてもこの世界に日本が存在してないだけだろう。

 

「貴方、真面目に話す気あるのかしら。」

 

「いやその……割と真面目に嘘ではないんだ。」

 

 訝しげな視線を俺へと向けてくる彼女。

 地図上には存在しない所から来た、と狂人張りの事を言われれば無理はないだろう。

 正直な話、誤魔化す選択肢がないというのが本音でこれ以上何かを語れと言われても材料がないのだが。

 

「……それで、ここで何をしていたの?」

 

「……ここの石畳とこれからの人生相談?」

 

「…………」

 

「無一文でどうしようかと思っていた所存であります、はい。」

 

 無言の威圧に負け正直な状態を口にする。

 彼女はその言葉を聞くや否や、物凄い溜息を吐かれ哀れみの目を向けられた。

 

 ──仕方なくない?だってニューゲームなのに始めたら、持ち物無しでダンジョンのど真ん中にいたような感じなんだぜ?ゲーマーもびっくりの鬼畜ゲームまっしぐらだよ?

 

「……はぁ、着いてきなさい。」

 

 溜息を吐きつつ、仕方ないと言わんばかりの顔で彼女はそう告げたのだった。

 

 

 

 

 

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