平和な世界での守護者の投影   作:ケリー

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はい、ほら吹きの作者です。



うっわ!2ヵ月半くらい更新してなかったのか!
すいません!活動報告でもホラ吹いてましたね。
繊細は伏せますがとあるやらなければいけないがあったことを忘れていてそのせいで色々とあったとだけ言っておきます。

あまり言い訳はしません。
ごめんなさい


そのかわり 長いから許して!!


最初の戦い

昼食の一件以来は特に目立ったようなイベントもなく時間も過ぎ、最後の授業が終わるベルが鳴ると士郎はいつも通りに部活へと足を進めた。

 

弓道部に所属している士郎ではあるが士郎自身が矢を射る事は滅多にない。今までに様々な武術を学び、美綴と共に切磋琢磨していたが弓道だけは別であった。

 

他の武術は相応の努力と時間をかけて学んできた士郎ではあるが弓道だけはそれをしなかった。否、する必要がなかった。

 

弓術に関しては既に極致に達している士郎はそもそも弓道部に入る必要もなかったのである。必要はなかったのだが、美人は武道をしていなければならないと言う謎の哲学を持った幼馴染に半ば強制的に入部させられたのであった。そういえば互いにまだ弓道を習っていなかったなと士郎の話も聞かずにいつのまにか二人分の入部届けをだしていたのである。

 

ここまでされては言いたくても言えず士郎は仕方ないと弓道部へ入部したのであった。

 

今度こそ負けないとばかりに初日から張り切っていた美綴ではあるが士郎が申し訳なさそうな顔をしながら一度弓を引いてみると彼女の張り切りは一転して怒りへと変わってしまった。正確には怒りというよりも拗ねているのだがそんな事は士郎が気づくはずもなく終始膨れっ面であった。そんな彼女の機嫌をとる為に色々手を尽くしたのは今ではいい思い出。

 

 

そんな彼女ではあったが今では当然のように主将までに成長しているのだから彼女の才能は恐ろしくもある。当時は士郎のほうが実力があるのに何故自分が主将になったのかと声を上げていたが実は士郎の推薦からの判断であったりする。自分の他人には理解できない感覚ではうまく後輩に教えることはできないなどと言い、さらには『美綴みたいな性格のほうが俺より断然向いている』と真剣な顔で言われてしまえば美綴も余り強く反発することもできなかった。後から遠まわしに士郎に認められていることに気づいて照れたのはまた別のお話。

 

 

ただ士郎は自分が弓道部で弓を引くのは少し違うと感じており自分から進んで弓を引くことはせずに、部員の面倒や道具の整理などに時間を使っていたりする。これではまるでマネージャーのようだと美綴に言われているのだがそれもいいかと士郎は思っていたりもする。

 

色々な出来事もあったりはしたが今では何事もなく部員全員が部活に励んでいるし部員も士郎の実力を知っておりそんな士郎のありかたに疑問を持つものもいない。

 

ただ美綴は昔のように切磋琢磨する日々が過ごせないのが残念だったりする。

 

 

 

 

 

「衛宮~」

 

着替えを済ませて弓や矢の整理をしていると後ろから声をかけられた。

振り返ってみると今朝もあった美綴であった。しかしその表情はいつもよりやけにご機嫌である。

 

「どうした美綴、今日は随分と機嫌がいいな」

 

「そりゃぁね。お弁当もおいしかったし、衛宮からも今度なにか貰えるしこれでご機嫌にならないわけがないよ」

 

いつになくご満悦な幼馴染に士郎は手を休ませずに微笑み。

 

「そっか、そこまで喜んで貰えるならこちらとしても嬉しいな。その感じだとセラの弁当にも満足してくれたみたいだしセラにもそれとなく感想言っておくよ。」

 

「満足も何も大満足だよ。 そうそうはいこれお弁当箱、今日はありがとうね」

 

そういうと美綴は包みに入った弁当箱を士郎に渡した。どういたしましてと言いながら士郎がそれを受け取ると、美綴の背後からもう一人誰かが近づいてくるのが見えた。紫色の髪を持ったその人物__

 

「いいなぁ美綴先輩、先輩のお弁当貰って。しかも昨日は先輩の当番でしたし・・・・」

 

__間桐桜は羨ましそうな視線を美綴に向けながら言う。美綴と同じく当然のように士郎の当番の日を知っているのは彼女が士郎の料理の弟子であるからだがそれはまた別のお話。そんな指をくわえている桜の後ろでは彼女の兄で士郎の友人である間桐慎二がやや不機嫌な様子で立っていた。

 

「ふふーん、まぁなんだ幼馴染の特権って事でさ。」

「いや、偶然だったんだけどな。それと実際に作ったのはセラだったし。それよりも慎二、なにかあったのか?」

 

何かを言うわけでもなく佇んでいた慎二ではあったが士郎が声をかけることで反応を見せる。むしろ士郎から話してくれるのを待っていたかのように慎二は腕を組みながら口を開いた。

 

「放課後になんで僕のことを待たずに先に部活にいくのさ。」

 

「えっ、だってクラスの娘と話し中だったし邪魔しちゃ悪いかなと思ったんだが」

 

「ふん、お前がいても誰も邪魔だとは思わないよ。とにかく衛宮のくせに僕を置いていくなんて駄目なんだからな。僕より先に行くなんて許さないから、お前は僕の後ろか隣にいろ。」

 

「そうか、じゃぁ今度からはちゃんと声をかけることにするよ。」

 

少々腹の立つような言い草ではあるが士郎はそのことを気にした様子もなく作業に戻ることにした。美綴ほどではないにしろ彼とはそれなりに付き合ってきた時間が長い。お世辞にも良い性格とは言えない彼ではあるが、彼の面倒くさく素直ではない所が間桐慎二の味だと士郎は思っている。しかしやはり人に好かれるような性格ではない事から彼のことをあまりよく思っていない者がいるのもまた事実。

 

一成などもあまり慎二の事を良く思っていない様子ではあるが無理やり突き放したりあからさまな敵意を向けたりはしない、せいぜい説教や文句などの小言を言うくらいであろう。慎二も面倒くさそうにはしているがはっきり拒絶している様子もない、恐らくあれが二人がうまく付き合う方法なのであろう。

 

そんな二人の間に入って二人を落ち着かせるのが士郎の役目であったりする。性格の違う者達ではあるがうまくバランスの取れている三人であることはクラスメイト全員が共通して持つ感想である。

 

 

 

士郎の返事に満足したのか慎二はふんっと鼻を鳴らしながらその場を離れてしまった。士郎はと言うと慣れているのか特に気にした様子もなく_仕方ないなぁ_とこぼしながら軽く笑みを浮かべていた。

 

そんな二人の様子を見て、間桐桜と美綴綾子の二人は顔を見合わせながらお互いに微笑むのであった。

 

 

 

 

遅れて登場してきた弓道部顧問は朝の一件の事をまだ引きずっているのか登場と共に『士郎~!今日ご飯作りに来てぇ~!!』と咆哮をあげながら士郎に掴みかかってきたのであった。

 

 

 

今日も弓道部は平和である。

 

 

 

 

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私は思います。

幾ら何でもこれはないと・・・・・

 

確かにラヴから始まるレターだと早とちりしてしまった私にも少しは問題があるとは思うけど正直、会って間もない小学生にこのような手紙を送るのは如何なものかと思います。

 

_今夜0時 柳洞寺まで来るべし来なかったら殺す(帰ります)_

 

四六時中元気なルビーも一瞬静かになってしまうほどの肩透かしを食らっていた。ご丁寧に直筆じゃなくて文字の一つ一つの線を定規で書いたみたい。後半の取り消し線も相まって脅迫文にしか見えない。そもそもここまでするかと思ってしまう。後半の一文字も書き間違えたのかは分からないけどもし書き間違えたのなら書き直すとかは考えなかったのかな?

 

『帰りましょうかイリヤさん・・・』

 

「うん、そだね」

 

『何事も前向きに・・・ですよ!』

 

「うん、そだね」

 

ルビーらしくもなく、どこか無理に明るく振舞っている様子で私達は帰宅したのであった。

 

 

 

 

家に着き、ルビーに何が出来て何が出来ないかを聞いた後、参考までにまだ見終わっていないアニメのDVDをリズお姉ちゃんと一緒に観賞することにした。よほど熱中していたのか気づいたら既に日が暮れようとしていた。だけど(一方的な)約束の時間まではまだまだ時間もあったから、後回しにしていた宿題をやることにした。

 

宿題を終わらせてる途中に部活からお兄ちゃんが帰ってきて。帰宅途中に目に付いたからと私にコンビニの新作アイスを買ってきてくれた。すごく嬉しかったです。さっそく食べようと思ったけどもうすぐ夕食だからそれはデザートだと言われて渋々そうすることにした。

 

その後は何かが起こるわけでもなくいつも通り夕食を食べてお風呂に入ってすこしして寝ることにした。

 

しかし本当に寝るわけにもいかないので寝たふりをして皆が寝静まった頃にこっそりと家を抜け出すことにした。ルビーも一緒だったから余り退屈せずに待つことができたけど、恋の話に突入したときはお口ミッフィーしました。

 

 

 

家を抜け出した後もまだちょっと時間があったのでルビーに言われて少しだけ魔力砲の練習をした。火力が分からずにアスファルトに小さなクレーターを作ってしまったのは内緒である。とりあえずは老朽化と言う事にしておけないだろうか?

 

 

「そんなこんなで深夜0時です。」

『誰に向かって言ってるんですかイリヤさん?』

 

「いや、小学生らしく小学生っぽい日記のような何かでモノローグをと__」

 

『器用なものですね。』

 

「ほらそこ、無駄話してないで行くわよ。」

 

「行くって、ここじゃないの?」

 

てっきり待ち合わせ場所であるこの山門が戦いの場だと思っていたけど、どうやら違うらしい。

 

「いいえ、確かにここであってるわよ。空間の歪みはこの山門前からはっきりと観測されてるわ。」

 

「そう言われても・・・・なにもないんだけど?」

 

凛さんの指差すほうを見てみてもやっぱり何もない。余りにもはっきりと言うものだから私には見えない何かだと思った。もしかしたら私が戦う相手は幽霊さんなのかもしれないと思うと急に怖くなってきた。

 

「そうね、ここであってここでじゃない。言うならばカードは別の世界にあるのよ。」

 

いよいよ、凛さんが何を言っているのか分からなくなってしまった。頭を抱えている私に気づいたルビーは『実際に見せたほうが早いでしょう』と言って私達を中心に魔法陣を浮かび上がらせた。

 

急な出来事に焦る私だったけど、そんな私をスルーして凛さんは淡々と説明を続けていた。

 

「そうね・・・今私達がいるこの世界がコインの表とするなら今から私達が向かうのはその裏側_」

 

足元の魔法陣から光が浮かび上がり、少しずつその輝きが大きくなるにつれて肌で感じることができた。これが魔力なのかと_

 

「同じであって違う世界、まるで鏡の内側のようにそっくりなその世界_」

 

強くなる光はついに目を瞑ってしまうほどに膨れ上がり私たちを包むように目の前を真っ白にしていった。

 

「鏡面界__そう呼ばれる世界にカードはあるの」

 

光が止むと、視界に移ったのは先ほどと同じ場所。移動すると言われて目を開けてみるとそこには一秒前と同じ光景。一瞬何も起こってないと思ったけど違う。

 

ここはさっき居た場所とは違う。

星が見えていたはずの空は毒の霧のようなもので覆われており、この空間全てがさきほどよりも重い何かで支配されつつあるのが肌で感じられた。

 

一言で言うのであれば

 

「雰囲気が違う」

 

しかしそんな考えもすぐに失せることになる。

一変したこの状況に驚愕して固まっていた私だったが目の前から感じられたこの空間から感じる不気味な何かとは一線を画す別の何かによって正面を向かざるを得なかった。

 

 

 

それはいつの間にかそこにいた。

まるで、誰かを待っていたように自然な佇まいで_

無形の型のはずなのに、そこからは一つの隙も見当たらない_

陣羽織に三尺はあるだろう長刀_

腰まで届きそうな長い髪_

 

その姿はまるで____

 

 

「お侍さん?」

 

 

 

 

 

 

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「くそ!思いのほか準備に時間が掛かったか!」

 

真夜中の肌寒い中、衛宮士郎は日課である魔術鍛錬もせずに柳洞寺へと駆けていた。口調とその表情からは焦りと共に少しばかりの苛立ちが感じられる。

 

カレンからの情報で恐らく今夜午前零時に二人が行動を起すだろうと言われて色々と準備をしようと思ったがどうにも自宅で行動を起すのは至難であった。家族の目(特にセラの)がある中で聖骸布を広げることも難しく、さらにはそれを加工など出来るわけがない。仕方がないので皆が寝静まる夜までは大人しくすることにしたのである。

 

とりあえずは魔力殺しの聖骸布で外套を作り、余った分はそのままにしておくことにした。加工が終わると次に引っ張りだしたのは使う日が来なければいいと思ってはいたが万が一のことを考えて製作しておいた戦闘服である。見た目は彼の弓兵(・・・・)と類似しているがところどころ違いが見つけられる。

 

まず、目に付くのはその色。

とある正義の味方は赤い聖骸布に黒のボディーアーマーであったが士郎の持つ戦闘服はその逆で黒い聖骸布に赤のボディーアーマーだった。それに加えて士郎は正体がばれないようにと黒いフードを取り付けていた。コレに口周りを包帯や布などで覆えば自分が誰かなどは分からないだろう。声も布越しであれば分かりにくいはずであるし、やろうと思えば声など幾らでも変えられる。

 

もしも戦闘になるとしたら相手はきっと魔術師だろうと予想し、ならば自分の素性がばれないようにと顔を隠すことを決めていた。もしも取り逃がしたりなどして自分の家族、更には知り合いを狙われるようであれば士郎は自分を許せないだろう。たった一つ、正体を隠すだけで危険は大分減らせる。ならば対策は徹底的にとるべきだ。

 

 

 

全ては予想に過ぎない、しかしその確率は決してゼロではない。

危険な芽は全て摘むべきである。

否、芽になる前__それこそ危険な種は撒かずに全て消し去るべきである。

 

 

そう

 

 

愛する者を守れるのならばどんな事も惜しまずやってみせよう。そう決意し、赤原礼装ならぬ黒原礼装を身に纏い、口元を包帯で覆った士郎は急いで家を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

「っ!やはり出遅れたか!」

 

簡単に装備を確認してから最終的な魔術回路の検査を終えた後、記憶にあった歪みの存在する場所を一つずつ確認していたら柳洞寺の歪みが急に増幅したのを感じ、山門へと急いで方向転換した。数秒でたどり着くとそこにはいつも通りの山門があった。

 

しかし、士郎からしてみればこれは明らかに異常であった。

日に日に歪みが大きくなるのは知っていたことである、だがコレほどまでにはっきりと感じることはなかった。まるで毒霧の入ったビンの蓋を一瞬だけ開けて閉めた事でもれ出てしまったような、そんな禍々しいものを感じた__

 

 

 

原因は分かっている、何故なら一度このような状況に相対したことがあるからだ。

これではまるでカレンに無理やり帰されたあの時と同じ

 

 

 

つまりはもう既にあそこにはあの二人がいるだろう事は簡単に予想できる。

今すぐにでもあの二人の加勢に向かいたい所ではあるが__

 

「クソっ!場所も原因も分かってるってのに!」

 

__衛宮士郎にはそこへ行く手段がない

 

 

 

 

今回も■■■の味方はなにもできない

 

 

 

 

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「何ボサッとしてんの!構えて!」

 

「えっ!えっ!構えるって__」

「あれは具現化したカードよ!人じゃないわ!そしてその正体はッ!?」

 

何かを言おうとした凛さんだったけど、私はそれに耳を傾けることが出来なかった。

何故なら今までピクリとも動かなかったお侍さんが__

 

 

__まるで瞬間移動でもしたかのように、いつの間にか私の目の前にいたのだから。

 

 

「うひゃぁ!」

 

自分でも何故避けられたのかは分からない。ただ身体が勝手にこうするべきだと訴えかけ、その通りに動いただけ。もしくはただ単に運がよかっただけなのかもしれない。ただ分かるのはもし私があの場で動いてなかったら__

 

(確実に首がはねていたっ!?)

 

その事に気づいたのはあのお侍さんから全力で離れた後のことだった。

無我夢中で自分の持てる最大のスピードで後ろに下がった時に、ようやく理解が追いついた。

 

鼓動がうるさい

 

頭の中で何かが響く

 

身体がそこで止まっているなと警報をならしている

 

 

『恐ろしいスピードですね。あの一太刀もただものではありません。物理保護を8割まで上乗せしておきましょう』

 

「見た感じはセイバーかしら?服装からしても和服だしいきなり日本の英雄とやりあうなんて。メジャーなので行けば宮本武蔵か佐々木小次郎って所かしら?どちらにしてもあの敏捷性はやっかいね。目で追うことなんてほぼ不可能に近いわ。」

 

『おそらくあのスピードで懐まで入り、長い刀でレンジを確保して相手を切る感じですね。典型的な接近戦型のようなのでここは出来るだけ離れて遠距離攻撃を仕掛けるのが無難かと』

 

「そうね、私達じゃアレに反応することなんて無理だわ。イリヤ!アレから距離を置くわよ!」

 

言うや早いか、凛さんはすぐさま刀の振りにくい林の中へと駆けていった。

分かっている、距離を置かなければいけないことなんて分かっている・・・・けど

 

「__身体が・・・動いてくれない」

 

「『っ!?』」

 

足が震える

ルビーを握る手の感覚もない

今にも泣き出しそうなほどに目には涙がこみ上げてくる

喉も渇き

体中からいやな汗があふれ出てくる

 

さっきの出来事が脳内で何度もリプレイされる、

リプレイされるのは現実とは違い私の首が宙を舞う映像。

 

実際には起こってないことだと分かる、だけど_

 

 

そうなっていてもおかしくはなかった(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

「いやだよ・・・怖いよ・・・・早くここか__」

 

イリヤ!!

イリヤさん!!

 

 

気がつくと私は空を見上げていた。目に映るのはキラキラ輝くお星様と淡い光を映し出す綺麗な月。

そして感じる浮遊感

あれ?

私・・・・・飛んでる?

 

 

「くっ!」

 

気づくと私は凛さんの腕の中にいた。それでも勢いがありすぎたのか凛さんも一緒に後方へと勢いよく吹き飛んでいった。

 

お腹のほうから遅れて感じる鈍い痛みでようやく自分が切りつけられて吹き飛んだことに気がついた。

 

まったく見えなかった。それよりも切られたことさえも分からなかった。

いや・・・それよりも、

 

「私・・・・生きてる?」

 

あの一太刀を受けて生きていることに驚きだった。

確かに衝撃と何かで殴られたような痛みもあったけど、悶絶するほどのものでもなかった。せいぜいドッジボールの球が当たった程度の痛みだった。

 

それにしては私の身体が吹っ飛んだほどの衝撃とは矛盾が起きる。

 

一体何が・・・

 

『危なかったですね~、事前に物理保護を底上げしておいてよかったです』

 

「えっと・・・・ルビーのおかげ?」

 

『そうですよ~、恐らく半信半疑だったようですけどこれでもワタシはすごいんですからねぇ』

 

お腹を見てみても傷らしい傷もない。

その事にホッとするとジャリっと前方から音が聞こえた。

 

「暢気に話してるところ悪いけど今は敵の目の前よ、それと早く私の上からどいてくれるかしら?」

 

「ワワっ!ごめんなさい!」

 

そういえばそうだった。私、凛さんに受け止められたんだった。

 

「えっと!さっきはありがとうございました!」

 

「いいわよ別に、確かに貴方みたいな子にアレを前にして平然としていろって方が無理な話だわ。ごめんなさいね怖い思いをさせて。でも、酷いことを言うようだけど今はアレの相手をお願いしてくれるかしら。本当は私がやってあげたい__いえ、私がやるべきことなんだけど今の状況じゃ私は無力に等しい。」

 

 

 

だから・・・アレと戦って

 

 

 

あれだけの事を経験して尚もそんな事を言う凛さんだったけど

別にその事に怒りが込み上げてこなかった。

 

 

だって・・・・あんなにも申し訳なさそうな顔されたら私も怒る事なんて出来なかった。

 

「分かった。」

 

まだ不安はあるし恐怖もある、だけど幸いにも相手の攻撃は私には通らない。だから死ぬようなことはないだろう。刀を前にして今もまだ震えてはいるけどさっきみたいに身体が動かない程でもない。ルビーが言っていた通り、あのお侍さんが届かない距離まで下がって遠くから魔力砲を打ち続ければまだ勝算はある。

 

接近戦では勝てない、だから今は_

 

 

「距離をとる!」

 

 

足には自身がある、これでも駆けっこでは男子にだって負けた事はない。だけどスピードはあっちのほうが明らかに上、追いつこうと思えば一瞬で追いつくことが出来る。そんな相手に距離をとることなんて無理。だから_

 

 

「ルビー!下がりながら相手を近づけないようにするには!」

『あのスピードだと恐らく反応速度もそれなりにあるでしょう避けられては足止めにもなりません、なのでここは散弾のほうが有効かと』

 

 

実際にはまだやったことないけどここに来る前に色々聞いていたから分かる。

確かイメージは霧吹きのように細かい弾丸を広範囲に打ち出すように!

 

相手も私が距離を取ろうとしているのに気づいたようで刀を握って動き出そうとしたときだった。

私がルビーを振り下ろすと扇状に細かい魔力砲がお侍さんを飲み込んだ。

 

「範囲を広げすぎよ!それだと一発一発が弱すぎて足止めにはならないわ!」

 

一発で散弾が出来たことに喜びそうになったけど凛さんの叫びですぐに頭を切り替えてもう一度同じ手順で、だけどさっきよりも狭い範囲で散弾を打ち出した。

 

打ち出す間隔を開けすぎると相手が近づいてきてしまうから出来るだけ連続で打ち出す。

 

『恐ろしい相手ですね自分に当たる奴のほとんどを切り落としてます』

 

ルビーの言う通り、お侍さんは散弾をその長い刀で切り落としていた。

だけど、相手の足を止めることには成功している。

 

『距離は十分でしょう。これ以上離れればこちらの威力も下がってしまいます!相手が散弾に気を取られているうちに一発ぶちかましてください!』

 

足を止めてルビーを勢い良く振ると先から散弾とは比較にならないほどの魔力砲が相手へと一直線に打ち出された。

 

ドンっと魔力砲が相手に当たったのを確認できた。これで倒せたのならよし、倒せてなくてもそれなりのダメージを与えられたはず。

 

そう思いながら砂煙の舞う中で相手の状態を確認するべく意識を集中させる。

ゴクリと緊張の中で聞こえた。それは私からなのか後ろに控えている凛さんからなのかは分からない。

 

モウモウと煙が晴れるのを待つだけなのにそれが実際よりも遅く感じてしまう。まるでこの瞬間がテレビのスロー映像のようだ。

 

するとどうか・・・・

 

 

斬!

 

 

っと煙が横一線に切られていた。

 

 

「「!?」」

 

 

現実は甘くはなかった。

捌ききれなかった散弾のダメージはあるようだけど本命であった魔力砲でのダメージは一切受けていない。恐らく魔力砲のほうが脅威と分かり、散弾を無視して魔力砲を切り裂いたのだろう。

 

『カレイドの魔力砲を切るとは、やはりとんでもない技量の持ち主ですね。これは一筋縄では行きそうにありません。』

 

「でも、あの小さな散弾でもそれなりに効いてるみたいよ。見た感じ耐久力はなさそうだわ。多分一発でも本命が当たれば結構なダメージになると思うわ。とりあえず近づかせるのは危険なのは分かっているんだから同じ手段で足止めして本命の数を増やせばいいと思うわ。イリヤ、連続でどれくらいの数を出せる?」

 

「やったことはないからなんとも言えないけど多分3発は連続で出来ると思う」

 

こればっかりは練習もしていないから言い切れない。だけどさっきの感覚なら連続で3発は打てそうな気がする。

 

「初めてでそれだけ出来れば十分よ、とにかく今は距離をッ__」

 

その刹那・・・・空気が変わった。

何かが来るのが分かる。

今まで無形だったあの侍が初めてちゃんとした構えをとっていた。

それだけではない、ここからでも感じる集中力に私たちを貫かんばかりの鋭い眼光。

ここら一体の重圧も肌の上から直に感じることができるほど。

 

「この感じ!宝具!?いえ、それにしては魔力も感じない。でもこの重圧は__イリヤ!はやく距離を取るのよ!」

 

『いえ!この距離は相手の範囲内です!全魔力を物理保護に変換します!なんとか耐えてください!』

 

「ほっほうぐって!?一体何が起こるの!」

 

二人の焦りようからなにか大技がくるのが予想できたが具体的なことが分からないのでうろたえてしまう。凛さんは元から離れていたので恐らく範囲外にいるのだろう。だけどルビーが言うには私は逃げることが出来ないらしい。その事が理解できた瞬間、またも最悪の事態が脳裏を過ぎってしまいせっかく持ち直せたと思った恐怖が引きかえってきてしまった。

 

一度受けた相手の攻撃は私には通らなかったことは分かっている。だけど理解していても怖いわけではない、それにこれは大技だ。また無事であるという保障はない。全魔力を防御に回すと言われたけどそれでも不安はある。

 

 

秘剣__燕返し(つばめがえし)

 

 

また、見えなかった。

気づいたら私の身体はまた吹き飛ばされていた。

それと共に三つの衝撃が私の身体を襲っていたのに気づいた。

先ほどの比ではない衝撃と痛みが身体を襲っていた。まるで何かで強く殴られたような感覚・・・・だけど

こんなことを考えられているって事は私はまだ・・・・

 

 

「生きてる!!」

 

 

綺麗にとはいかないけど出来るだけ受身を取って相手を見据える、相手は私が1秒前まで居た場所に立っていた。相手に吹き飛ばされる形でだけど距離は取れた、すぐ後ろには凛さんがいる。随分遠くまで飛ばされたみたい。

 

痛みはあるけど相手の大技も防ぐことが出来ている。この分なら勝機はありそう。

 

『いまのは・・・・・・まさかそんな___』

 

「燕返し、って事は相手の正体は佐々木小次郎ね。だけどこれはとんでもないわね、動きなんて目でも追えないしその攻撃も捉えることは不可能だわ。今の一太刀だって相当なものよ。カレイドステッキがなかったらと思うとゾッとするわ。」

 

「一太刀じゃっ・・・なかった」

 

「えっ?」

 

「切られた後に気づいたけど3回切られてた。」

 

「まさか、あの一瞬で3回も攻撃したって言うの!?」

 

『それだけではありません、今のどう見ても3つとも同時に放たれてました。とても信じられない事ですけど今のは多重次元屈折現象で間違いありません。』

 

「多重次元屈折現象ですって!ただの剣士が魔法を使ったって言うの!」

 

『いえ、先ほどの攻撃からは魔力を欠片も感じられませんでした。恐らくただの剣技、技術のみであの現象を起したのでしょう』

 

「うそ・・・・・でしょ!剣技だけで魔法の領域に達したと言うの!そんなの__」

 

__馬鹿げてる

そう吐き捨てる凛さんだったけど私は二人が言ったことの大半を理解できなかった。言動からよっぽどすごいことだと言う事は分かるけど何も分からない私からすると今はそんなことより目の前の敵に集中したほうがいいと思ってしまう。

 

 

 

 

 

_____________________________________________

 

 

 

「くそ!何か方法はないのか!」

 

目的は目の前にあるというのに届かないというもどかしさに士郎は手を額に当てる。

自身の中にある世界に何かないかと捜索してみるが該当するものは何一つなかった。カレンからの情報で場所は鏡面界だということは分かっている。しかし士郎にはそこへ辿り着く手段がない。

 

カレンも鏡面界へ行く手段は知ってはいるらしいが自分にそんな能力はないといっていた。カレンが出来ないのであればへっぽこである自分も到底出来るとは思っていない。しかしそんな事を言っていられるほど士郎には余裕がない。

 

一か八か得意な解析をかけて術式を探るという手はある。しかしそれによって起こる反動は予想がつかない。更に解析対称が剣でないので解析自体の難易度も跳ね上がる。

 

だが、そんな事で諦める士郎ではない。

リスクを理解しつつも士郎は覚悟を決め、地面に片手をつけようとした時だった。

 

「誰かくる!」

 

内心で舌打ちしつつ士郎は急いで木の裏へと身を隠す。

 

(こんな時間に一体誰が?)

 

覗いてみるとそこには自分の元主人と小さな少女がいた。

だがその事実に士郎は混乱してしまう。

 

(何故だ!?お嬢様は既に戦いの場に居るんじゃないのか!それにあの少女は一体?)

 

わけが分からなくなった。

最初に感じた大きな歪みはルヴィアと凛が移動したからだと思っていた。

しかし、当のルヴィアはここにいる。だとしたら__

 

(凛は一人で向かったというのか!?)

 

幾ら二人の仲が悪いと分かっていてもあの凛が私情だけで一人で向かうなどという選択をするとは思えなかった。だが同時に凛は負けず嫌いだということもよく知っていた。認めはしないだろうが二人が互いにライバル意識を持っているのも知っている。

 

なのでルヴィアよりも先にと考える可能性もあるわけで・・・・・

 

(ないとは言い切れない!!)

 

こんな大事にそんな子供のような対抗心を持ち込むなどとは考えたくもないがそれを完全に否定できることもできない。もしそうだとしたらかつての師匠には呆れてしまう。しかし今はそんな事を考えている場合ではない。

 

もしも凛が一人で向かったとしたのなら彼女が今危険な状況だということになる。ならば余計に時間を無駄にすることはできない。

 

それに問題はそれだけではない。

ルヴィアの横に居る少女とその格好だ。

 

昨夜見たときは確かルヴィアがカレイドステッキの所有者であったはずだ。だが今はどうか?

 

あの奇妙な格好はカレイドステッキの力で間違いない。現に件のステッキは少女の手に握られている。

 

(あの子は一体誰なのか、何故カレイドステッキを持っているのか、お嬢様との関係はなんなのか。)

 

疑問は尽きない、だが今は凛の加勢が最優先。

カレイドステッキなら鏡面界へ移動するなど造作もない。恐らく凛もカレイドステッキの力を用いて鏡面界へと移動したのだろう。なら怪しまれるのを覚悟で彼女達に動向を願い出るのはどうかとも思ったがそれは余りにもリスクがありすぎる。最悪怪しすぎて置いてかれ、更には協会へ報告されるかもしれない。

 

なのでそれは却下。

ならばこっそり付いていくという手もあるがそれは至難の業だろう。

あっちには時計塔の主席候補とカレイドステッキがいる。実戦経験があまりない二人相手なら気配を消して近づくことは出来るだろう。しかし魔力は別である。士郎には魔力を消すという技術はない。カレイドステッキ相手に気づかれずに潜り込むなどほぼ不可能だろう。

 

(マルティーンの聖骸布を着るという手もあるがカレイドステッキ相手にどこまで通用するか分からない。あのステッキ相手には恐らく宝具クラスでもない限り姿を隠すことは難しいはず。)

 

なので用意しておいた魔力殺しの外套もやめたほうがいいだろう。

気づかれずに潜り込むことは難しい・・・・・

 

なら__

 

(気づかれてでも付いていく)

 

これならほぼ確実に鏡面界へと向かうことが出来る。

 

(だけど気づかれたときのリスクが余りにも大きい!)

 

あの二人なら事情を説明してもいいかも知れない。

なんだかんだ言って甘い二人である、士郎の事情や秘密をバラすなんて事はないとは思う。だがそれだと芋づる式にカレンとの関係や家族のことが分かってしまう。

 

(それはなんとしてでも避けないといけない!俺が魔術世界の事情を知っている時点でその家族も魔術関係者だということが明らかになる。それだけでなくその家族にも俺が魔術を使えることがバレてしまう!)

 

そんな事になれば長年隠してきた自分の秘密だけではなく切嗣達の努力も水の泡になってしまう。

 

よって、潜り込むという選択肢はどうやっても取れない。

その事が分かると士郎はまたも自身の無力さに苛立ちがこみ上げてくる。

 

そうこうしてる間に二人を中心に円状の魔法陣が浮かび上がり、光と共に二人の姿は消えていった。

 

(いや、まだ手がないわけではない。)

 

元々二人が来る前にやろうと思っていた方法がある。

確実性は皆無だが今実際に移動するところも目にした。

後は意地でも解析して自身の身体を鏡面界へとねじ込むことが出来ればいいだけである。成功したとしても恐らく士郎の身体は無事ではないだろう。

 

当たり前だ、別の世界へ無理やり移動するのだ。小さな穴に大きなものをねじ込むように自分の身体が傷付く可能性は高い。

 

(だけど、それでも構わない。)

 

__あそこには時計塔の主席候補二人がいるしカレイドステッキもある、それも二本だ。超級の魔術礼装に超級の魔術師二人がいる。二人の実力も知っているしカレイドステッキのアホ性能も知っている。

 

ならば問題はないはずである。

しかし、もしものこともある。それにあの小さな少女のことも気になる。

あんな子が戦場に参加すると知っていて何もしないわけにもいかない。

 

(だからこれは無駄かも無謀かも無意味かもしれない行動だ。だがそれでもいい、何もしないなんて選択肢は__)

 

「端から俺にはない!」

 

そう言い放ち、士郎は己の右手を先ほど消えた少女達の居た場所へと重ねた。

そして呟くのは己の人生と共にその身に刻んだ一つの呪文

 

 

―――解析(トレース)開始(オン)

 

 

_____________________________________________

 

 

 

「良いわよイリヤ!その調子!次は右に移動しながら散弾を撃つのよ!その後すぐに魔力砲を撃つように。タイミングはこっちで言うから。」

 

信じられない出来事から立ち直った凛さんはすぐさま作戦通りに事が進むように安全なところで指示を飛ばしていた。どうやらこの作戦はうまくいっているようであの侍さんにかなりのダメージを与えることに成功していた。凛さんも一件なにもしていないようだけど凛さんの出す指示はどれも完璧でタイミングもばっちりであった。

 

そのおかげで私も凛さんもあれ以来一度も攻撃を受けていない。

ルビー曰くあのお侍さんには理性がないようで思考するという機能がないらしい。

おかげで同じ方法でも相手は学習ができないらしく何度もこちらの攻撃を受けていた。

 

凛さんの言う通り、相手には魔術的な耐久力が低いみたいでまだ2発程度しか攻撃を受けていないのにもうすでに相手は満身創痍であった。その2発も完璧に当たったものでもないにも関わらずだ。さすが有名なお侍さん、タイミングも完璧だったのに魔力砲をすんでのところで防いでいた。

 

だけど防いだとしても低い耐久力のせいでダメージを受けてしまうようだった。

 

「この調子ならなんとかなりそうだね」

 

『そうですね、これだけやっても手段を変えないところを見ると遠距離攻撃はないのでしょう。自慢のスピードもこれだけ離れていれば追いつくこともできないようですし。散弾もうまく足止めをしてくれているみたいです。』

 

「後はこれを繰り返すだけでなんとかなりそうだね。」

 

『それにしてもイリヤさんの上達もすごいですね。少しずつですが弾速とコントロールが上がってきています。これを続ければいづれ防ぐ隙もなく相手に直撃できると思いますよ。』

 

確かに自分でも分かる。

同じことの繰り返しで慣れてきたのが一番の理由だと思う。後は恐怖を感じないこととか・・・・かな?

 

最初は怖くて全然動けなかったけど相手の攻撃が私には効かない事と相手が遠くにいることで安心してるんだと思う。

 

(ただ遠くから相手を一方的にいたぶってるみたいでなんか私のイメージしてた魔法少女とは違う気がして仕方がないけど・・・・)

 

『いやぁ~でも最初の相手がこういうタイプで助かりましたねぇ』

 

作業になりつつある魔力撃ちを続けているとルビーが何か気になるようなことを言い出した。

 

「それってどういうこと?」

 

『何事にもそうですが戦いにも相性というのがあります。それで今回の敵はワタシ達からすれば相性が良いといえます』

 

「さっき凛さんが言ってた魔術的な耐久力とかそういうの?」

 

『そうですね、それが一番の理由ですね。本来、遠距離タイプと近距離タイプは互いに弱点をつけるものなんです。今回の相手は明らかに近距離タイプです、このような相手には遠距離からの一方的な攻撃が一番効果的ともいえましょう。ですが逆に遠距離タイプも相手が懐に入ってしまえばこちらがなすすべもなく倒されてしまいます。なのでこの二つのタイプが戦うときに一番大事なのが___』

 

「距離・・・だね」

 

『その通りです。ですが先ほどの説明で分かる通りタイプだけでは相性はあまり変わりません、ていうか互いに50-50のマッチアップです。』

 

「まぁ・・・・・そうだね。お互いに弱点がつけるし」

 

『そうですね。では考えてみてください、もしもあの侍さんが私たちの散弾を気にしなくてもいいほどの耐久力を持っていたらと__』

 

言われてゾッとする。

そうだ、もしそうだとしたらあのスピードで足を止めることもなくこちらへ一直線に向かってこれるんだ。

 

幾ら私に効果が薄いといってもまったくダメージがないわけではない。衝撃も痛みもちゃんとある。衝撃だけで気絶しちゃう事だってありえる。気絶なんてしたら私が危ない事だってわかる。

 

でも相手の攻撃が私に効果が薄いことも相性がいい理由の一つなんだろう。

もし効果があったのなら最初の一撃で私はやられているのだから・・・・・・・

 

「本当!最初の相手があのお侍さんでよかったよ!!!ありがとう!そしてさようなら!」

 

怖いイフの話を忘れるように私は泣き笑いでヤケクソ気味に今回最大の魔力砲を撃った。

 

大きな爆発音と共に砂埃が舞い、私はその中を見ようと動きを止める。

これで倒れてくれたならよし、そうでなかったらもう一度繰り返すだけ。

 

煙が晴れるとそこには膝をつき、刀で身を支える侍さんの姿があった。

 

「いまよ!次の一撃で倒せるはず!」

 

「よーっし!特大のぉ~___」

 

もう一度魔力砲を撃とうとしたときだった。

これで終わる、そう思ったその瞬間__

 

 

 

 

刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)

 

 

 

 

 

__お侍さんの胸から赤い槍が生えていた。

 

 

「ランサー、接続解除(アンインクルード)

 

見えなかった。

何が起こったのかわからなかった。

気づけば槍が生えていた。

結果しか見えなかった。

分からない

何が起こったのかがわからなかった。

 

後になってあのお侍さんがやられたことがようやくわかった。

 

でもなによりも__

 

「クラスカード、アサ・・・シン。回収完了」

 

あの子が誰なのかが分からなかった。

 

 

 

_____________________________________________

 

 

 

 

「なんとか・・・・・・これたか」

 

体中から血を流しながら、士郎は木の裏へと身を隠していた。

 

結果だけを言えば鏡面界への移動は成功した。しかし予想通り士郎の身体はズダボロになり、今にも倒れてしまいそうな傷だった。

 

鏡面界へと来てすぐにマルティーンの聖骸布で作った外套を纏うと視線を戦いがあったとされる場へと向ける。

 

そして士郎の目に映ったのは見覚えのある侍が見覚えのありすぎる槍に貫かれている光景であった。そしてその槍を握っているのは先ほど見かけた魔法少女。

 

「どういう・・・・事だ・・・・」

 

わけが分からない、ただその一言につきた。

敵が黒化したサーヴァントということはカレンから聞いていたので知っていた。

しかしそのサーヴァントが自分のよく知る者だったことに驚いている。

確かに冬木とは、更にはこの柳洞寺と縁がある人物ではある。

だがそれはこの世界での縁ではない。

 

確かに自分の知っているサーヴァントであるかも知れないと予想したことはある。だがその考えはこの世界とは違うということで、ないと再度思考して結論づけた。

しかしどうだ、目の前にいるのは佐々木小次郎であり、その胸から飛び出ている槍も自分と縁がありすぎるクー・フーリンのものである。

 

これがただの偶然とは思えない。

 

何かがある。

ただそのことだけは分かった。

 

(それだけじゃない、問題はあの槍だ)

 

あれは自分の目から見ても分かる。

宝具で間違いない。しかし本物でもない。

 

(だがアレが持つ()は本物だ)

 

まるで力だけが具現化したようなあの宝具に士郎は目を疑った。

自分の持つ能力とは別の方法で作られているのがわかるが方法は分からない。

秘められている魔力も一度が限界のものだ。

 

しかし、アレは宝具である。

宝具で間違いない。

 

槍に目が吸い込まれている士郎であったがすぐにその槍は姿を変えてしまった。

魔槍ゲイ・ボルクは一瞬の内にカレイドステッキへと変わっていた

 

(いや、あれは元に戻ったのか・・・それに、あのカード。見ただけで分かる、とてつもない魔術礼装だ。カレイドステッキが戻ったのと同時に現れたという事とアサシンがアレに姿を変えたところを見るにあのカードは英霊の何かを記録しているもの、もしくは英霊の座へと繋がっているものなんだろう。)

 

もしそうだとしたらあれを作った奴は魔法の領域にいるのかもしれない。

そう考えて思い出す。カレンも言っていたことだがアレは唐突に現れた。

 

士郎自身も歪みを感じたのは急なことだったのでアレが突発的に現れた代物だということは知っている。ならば疑問はつきない

 

(一体誰が?なんの目的で?いや、サーヴァントが出てきている時点で目的は決まっているようなものだ。)

 

最悪な予想である。

しかしその予想が間違っていないことが直感的に分かってしまった。

 

(間違いなく聖杯戦争と繋がっている。この冬木で歪みが7つとサーヴァント。関係がないわけがない。)

 

だとしたら疑問は更に増える。

この世界では聖杯戦争はもう二度と起こらないものだと思っていた。

実際に聖杯戦争の術式自体がもうないのだ。起こるはずがない。

 

だが__

 

(作り直したのならばそれは別だ!)

 

新しく別の聖杯戦争を作り出したのなら話は繋がる。

しかし、そう決め付けるのは早計だと言い聞かせ頭を振る。

 

(情報が少なすぎる。今は再び聖杯戦争が起ころうとしていると分かっているだけでいい。どうやら問題を解決するためにあの二人があの爺さんから任務を受けたみたいだし。)

 

これが別の魔術師なら即効であのカードを奪うところだが、あの二人とあの魔法使いが裏で関わっているのならひとまず安心である。

 

(にしてもあの少女は一体・・・・・)

 

よく観察してみても分からない。

格好はともかくあの少女には見覚えがない。

アイツ(・・・)の記憶にも何一つ該当しない。

 

身元もそうだが彼女が何故カレイドステッキを握っているのかが分からなかった。

昨晩見たときは確かルヴィアが使っていたはずである。

 

実力的にもルヴィアのほうがあるはずなのに何故態々あの少女がカレイドステッキを使っているのかが分からなかった。

 

(まぁ確かに年齢的にはあの子の方が魔法少女としてあってはいるけどさ・・・)

 

こんな危険な任務にあの少女を連れてくるような人物ではないはずである。

恐らく彼女を連れてこなければいけない何かがあったのだろうが、考えてみても分からない。

 

(昨日の喧嘩で魔力を使いすぎたとかじゃないよな・・・・・・)

 

だとしたら元主人と師匠には心底呆れてしまう。

 

(そういえば遠坂は無事か____)

 

探そうとしてやめる。

否、やめてしまった。

 

他の事に視線を奪われていたから今の今まで気づかなかった。

しかし視野を広げてみてすぐに気づいた。誰かがそこに居た。顔は見えないただ見えるのはその後ろ姿だけ。

 

その後姿に身体が固まってしまった。

身体だけではなく思考そのものも止まってしまった。

 

(どういうことだ!!なんで・・・・何故!)

 

綺麗な銀髪、ピンク色の魔法少女が居た。

見慣れた後姿だった。

見間違えるはずがなかった。

 

誰よりも守りたいと思った存在がいた。

 

そんな少女が何故?

 

(何故イリヤがここに居る!)

 

 

 

 

 




<<後から遠まわしに士郎に認められていることに気づいて照れたのはまた別のお話。
<<ただ美綴は昔のように切磋琢磨する日々が過ごせないのが残念だったりする。

自分で書いたくせに思った。美綴さんカワイイよね。


<<僕より先に行くなんて許さないから、お前は僕の後ろか隣にいろ。

こいつ書くの一番難しかったです。どうやって慎二のツンデレっぽい面倒くさい性格を現そうかと頭を使ったのは覚えています。


<<『士郎~!今日ご飯作りに来てぇ~!!』

先生が生徒に何言ってんだか・・・・・


<<士郎の持つ戦闘服はその逆で黒い聖骸布に赤のボディーアーマーだった。

Unlimited Codeのアーチャー2pカラーだと思えばいいです。

<<それに加えて士郎は正体がばれないようにと黒いフードを取り付けていた。コレに口周りを包帯や布などで覆えば自分が誰かなどは分からないだろう。

アーチャーの上下に分かれてる聖骸布の上の部分にアサエミのフードを取り付けた感じ。ただし色は黒。


<<今回も■■■の味方はなにもできない

伏せてるところに何が入るのかは想像にお任せします。


<<まるで瞬間移動でもしたかのように、いつの間にか私の目の前にいたのだから。

知名度のせいもあるけどランサーより早いとかやばいですよね。もし山門に縛られずに広い場所での戦いだったらめっちゃ手ごわいはず。


<<もしくはただ単に運がよかっただけなのかもしれない

さすがイリヤ、幸運と直感は高い。


<<「__身体が・・・動いてくれない」
<<足が震える
<<ルビーを握る手の感覚もない
<<今にも泣き出しそうなほどに目には涙がこみ上げてくる

小学生だもん!こうなってもおかしくないさ!


<<それにしては私の身体が吹っ飛んだほどの衝撃とは矛盾が起きる。

痛みの割には吹っ飛んだというちょっとした物理法則と痛みの矛盾点。こういう細かいのをいれるの好きです。邪魔ならけしますが。


<<「いいわよ別に、確かに貴方みたいな子にアレを前にして平然としていろって方が無理な話だわ。ごめんなさいね怖い思いをさせて。でも、酷いことを言うようだけど今はアレの相手をお願いしてくれるかしら。本当は私がやってあげたい__いえ、私がやるべきことなんだけど今の状況じゃ私は無力に等しい。」

再現できたかは分かりませんが。こういう凛の性格好きです。まぁ3ヒロインの中では一番 下ですけどね。(ごめんね凛ちゃん、でも好きだよ!ただ3人と比べれば低いだけで)。ちなみに作者の好きな順位はこうです、桜>=セイバー>凛。


<<カレンからの情報

何回か出てきたけど、便利な言葉だった。


<<こんな大事にそんな子供のような対抗心を持ち込むなどとは考えたくもないがそれを完全に否定できることもできない。

お二人とも・・・・・・・


<<凛さんも一件なにもしていないようだけど凛さんの出す指示はどれも完璧でタイミングもばっちりであった。

指示以外にも考察とかアドバイスをくれた凛。原作では本当に役立たずだったけど出来る範囲で役目を与えてみました。金ドリルさんは本当になにもしてないけど・・・・・(ごめんね)

しかしルビーがやばい!めっちゃアドバイスとかするしめっちゃ仕事してる。(本当誰だお前)


<<(まぁ確かに年齢的にはあの子の方が魔法少女としてあってはいるけどさ・・・)

本人達の前で言ったら士郎殺されるな


<<お侍さん
イリヤならさん付けすると思った。あとカワイイ





めっちゃ長くなりましたね。遅れてもいましたし文字数も普段の3倍くらいあります。
3つに分けるか迷いましたけど一つに繋げました。分けたほうがいいと言う意見が多ければ3つくらいに分けときます。


初っ端から原作とは全然違いますね。
これからドミノ式に他のことも変わっていきますのでお覚悟を。

くどくない程度に色々細かく書いたつもりですがいかがでしたでしょうか?
わりと細かく書かないとと思っているのでキングクリムゾン的なのは余り使ってません。あったほうが良いという声が多ければそうしますが。

後はそうですね。細かい伏線とか設定や描写に気づいてくれたら私としても嬉しいですね!

ではでは次回からやっとお話が動くようなものなのでお楽しみに!

あっそうだ。活動報告でも書きましたがここ専用のツイッター作りました。
ツイッター初心者ですが投稿した際にはあっちで通知したいと思います!






やっと美遊ちゃん出せたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
遅くなってごめんよぉぉぉ

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