平和な世界での守護者の投影   作:ケリー

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自分で言ったことも守れないとは情けない・・・・

もう言い訳はしません。すいませんでした。


ではでは続きをどうぞ。


始まり

覚悟を決めたその日から衛宮士郎はかつてのエミヤシロウと同じように自殺まがいの修行法を続けていた。

エミヤシロウは魔力が高まる深夜の時刻に毎日土蔵にて魔術の鍛錬を行っていたが士郎はそうはしなかった。

確かに魔術の鍛錬は魔力が高まる夜に行うのが一番なのであろう、しかし魔術回路すらもまともに開けてない状態では魔力の高まりなどないに等しい。

よって、エミヤシロウのあの間違った修行法はべつに夜でなくてもいいのだ。

 

その事に気づいた士郎はエミヤシロウとは違い、毎日深夜に_だけではなく(・・・・・・)_周りに誰もいなく、かつ時間がある時にどこでも行っていた。何年も続けていたことなので耐えることなどわけもなかったし、集中力を切らすことなどはなかった。規格外なまでの精神力によって士郎は多いときは一日に3回も魔術回路を作り出していた。一日に行う回数が増えたためエミヤシロウよりも断然に早い段階で魔術回路は神経と同化してしまった。3回以上もやろうと思えば出来ていたはずだが、さすがに生存が保障できるほどには気力がなかったのでちゃんと安全ラインを考慮して魔術回路を作り出していた。作り出そうとした魔術回路によって体内がズタズタに引き裂かれるような感覚が襲う毎日、まるで背骨が通常ではありえないところにズレるような痛みと内側から何度も串刺しにされるような激痛。常人ならば発狂し、ショック死してもおかしくないような痛み。魔術師であっても命を落とす危機さえあるこの作業(・・)を士郎は何度も、それこそ年単位で続けていた。無事に生き残れたことを実感した後は、鳴り響く心臓を落ち着かせるべく精神統一と同じ要領でイメージトレーニングも行っていた。実際に投影するわけではないが投影するつもりである英霊が好んで投影し、もっとも長くその者と戦場を駆けた二振りの剣をイメージする。創造理念を鑑定し、基本骨子を想定、蓄積された年月を計算し、経験を読み取り、その手に幻想を再現する。

 

魔術回路の鍛錬も大事ではあるが恐らく衛宮士郎にとってはこれがもっとも重要な修行なのであろう。

 

何故なら衛宮士郎は戦うものではないから。

 

できるのはただ生み出すことだけ_

 

忘れるな、いつだって自分は作ることしかできない。

衛宮士郎に出来ることは作ることだけだ。相手より強くなろうとは思うな。

想像(創造)するのは自分より強い自分だけでいい。

 

修行する度に思い浮かべる自身に向けた言葉。

 

士郎はその言葉を忘れず、また迷走しないようにと呪文のように己の内で繰り返し唱えるのであった。

 

 

 

 

 

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「ったく、まさか一年で帰ってくる破目になるとはね」

 

『あらら、せっかくの帰郷ですのに随分な言い草ですね。』

 

「これくらい良いじゃない、覚悟を決めて本格的に魔術の世界に足を踏み入れると決めて日本を発ったのにまさかのたったの一年で帰されたのよ。とんだ肩透かしよ。」

 

空港の場に、真っ赤な服を着た一人の少女が荷物を片手に口を開ける。独り言のつもりで言ったその言葉に、どこからか肉声とは違った声が返ってきた。機械といわれてもそうではなく、かと言って人の声とも言えないその声の根源はどうやら彼女の持つ荷物かららしい、数秒とたたない内に声の主はニョキッと姿を現した。その姿はステッキのようで先のほうには円がありその中心には五角星が描かれている。更にその円からは白い羽が左右に三枚、計六枚生えていた。取っ手の部分は赤く染められておりその姿はまるで魔法少女が使う魔法のステッキのようであった。そんな子供のおもちゃのようなステッキに向かって話す見た目高校生の少女ははたから見たらイタイとしか言えないだろう。それよりも驚くべきことはそのステッキが独りでに動き、更には喋っているということだ。まるで生きているようなそのステッキに少女はまるで当たり前とも言わんばかりの態度で会話し続けている。

 

『しかしですねぇ~、ブツブツと文句を言ってますがこれも立派な任務で私達の製作者()の弟子になる最大のチャンスだって事忘れてませんかぁ~?』

 

「その通りですわ、そんなにイヤなら負け犬らしくこの任務から降りて全て(・・)(ワタクシ)に任せてもらおうかしら。(ワタクシ)もあなたという足手まといがいないほうが素早く任務を達成できて助かりますわ。」

 

「勿論忘れてないわルビー、私も本来はここまで文句を言うつもりはなかったわ、なんたって大師父からの条件なんですもの。えぇ、文句は言わないわ____こいつさえいなければね!」

 

ルビーっと呼ばれたステッキが赤い少女に問いかけるとふとその背後からもう一人、金色の髪に青いドレスを着こなす同年代の少女が現れた。髪の色からして外国人の彼女は流暢な日本語と共に現れ、ドリル状に編まれたロングヘアーをなびかせながら見ただけで高価だと分かるほどの青いドレスを着ていた。全身から溢れる高貴なオーラは一般人からは近寄りがたい雰囲気を漂わせておりその一つ一つの仕草はまさにどこかのお嬢様のようなそれであった。

 

そんな二人が横に並んで歩みを進めていると急に取っ組み合いの喧嘩を始める。二人の目立つ容姿からもだが公衆の場でいきなり始まった喧嘩に周囲の人達は驚き、目を向けては見るが二人の迫力からすぐにその場をそそくさと離れていってしまう。そんな二人を眺めながらルビーはその羽を人の腕のように動かしやれやれと言ったように言う

 

『まったく、またいつもの奴ですか?いつまで経っても変わらない人達ですねぇ~。』

 

『公衆の場での喧嘩は控えるようにしてくださいマスター。』

 

徐々にエスカレートする二人の喧嘩の最中にルビーと良く似た、しかしどこか違うステッキがもう一機金髪少女の所持していたカバンの中から唐突に現れた。

ルビーとそっくりなそのステッキはルビーとは違い蝶のような羽を生やし、中心の星は五角星ではなく六角星で全体的に赤いルビーとは違いその色は青かった。更にはルビーとは違いその声はどこか冷静でどちらかというと機械のそれに近かった。

 

偶然かその二機の色は所有者である二人の少女が着ている服と同色である。

 

幾ら止めてもやめない二人の喧嘩を二機は静かに見守りながら溜息を吐く勢いで呆れるのであった。

 

『この調子だと任務達成は厳しいかも知れませんねぇ~』

 

 

 

 

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「さてっと」

 

「ん?早いな衛宮、部活はいいのか?」

 

「あぁ、今日は俺が夕食当番だからさ」

 

放課後の校門前で自転車にまたがろうとしていた士郎は、彼の親友であり学園の生徒会長でもある柳洞一成(りゅうどういっせい)により行動を一時停止し声のした方へと首を向ける。聞かれた質問に簡単に答えると一成はなるほどっと小さく頷いた。するとその瞬間何かに気づいたように軽く別れの挨拶を述べて足早にその場を去ってしまった。どうやら生徒会の仕事中だったらしくあまり長く話すつもりは最初からなかったらしいが士郎の後ろから確認した誰かの接近により思っていたよりも早く会話を切り上げ、士郎に背を向け、軽く手を振り、そのまま校門へと足を戻すのであった。

 

「お兄ちゃん!」

 

すると入れ替わるようにやって来た何者かによる声が士郎の耳に届いた。

士郎が知る限り、自身を兄と呼ぶ者は一人しかおらず、振り返ってみると案の定接近していたのは妹のイリヤスフィールであり。普段部活で一緒に帰宅することが出来ないことが多いからか嬉しそうに小走りに近寄ってくるのが目に見えた。

 

そんな嬉しそうな妹の笑顔に心が温まり、士郎は軽く口元を吊り上げて近寄ってくる妹を迎える。

 

「イリヤも今帰りか?」

 

「うん!一緒に帰ろうお兄ちゃん!」

 

「いいけど・・・友達はいいのか?」

 

ふとイリヤの後方を見ると見知ったイリヤの友人達が揃ってイリヤの後を追ってきていた。どうやら友人達を置いて真っ先に士郎の元に来たらしい。不思議そうな顔をしながら友人達はイリヤに追いかけ、その視線をイリヤの向かうほうへと向けると納得したように呆れるのであった。

 

「イリヤ兄の言う通りだぞ、勝手に走り出してどうしたのかと思えば___なるほど、理解した」

「まぁ大体予想は出来てたけどねー」

「イリヤちゃんはお兄さんが大好きだもんね」

「おっす!イリヤの兄ちゃん!」

 

呆れるように言うメガネのかけた少女。

語尾を延ばし、のほほんとした糸目の少女。

苦笑気味に言うこの中では一番おとなしそうな少女。

元気よく男口調で挨拶する少女。

 

それぞれが登場と共に別々の言葉を口にし、イリヤと合流を果たすのであった。その声に反応して振り返ったイリヤは苦笑気味にそれでいて申し訳なさそうに謝罪し、友人達の事は頭のなかから抜けていたのか士郎の質問に答えられず、『えーと、えーと』っとオロオロしながら頭を悩ませていた。

 

そんな妹の姿に士郎も苦笑する。自分と帰ろうと誘ってもらったのは嬉しいが、それで友人を置いていくのは士郎の望むことではない。かといって、住んでいる家も同じでせっかくの誘いを断る理由もなく友人達と帰らせることもできない。なので困ってるイリヤに士郎はある提案をする。

 

「みんなも途中まで道は同じだし小学生だけで帰すのも心配だから一緒に帰るのはどうだ?」

 

その提案にイリヤは首を縦にふり、友人達もイリヤ同様文句もなく同意してくれた。

士郎一人だけが自転車に乗り、小学生五人を歩かせることにも行かないので士郎は自転車を横に並走させながらイリヤ達の歩幅に合わせつつかつ歩道の内側を歩いていた。そんな小さな気遣いにおとなしそうな少女、桂美々(かつらみみ)は気づき、やはりイリヤの兄は優しいのだと再確認するのであった。

他の少女達はと言うと男口調の少女、嶽間沢龍子(がくまざわたつこ)が騒ぐのを落ち着かせるのに気をとられていて気づくことはなかった。メガネの少女、栗原雀花(くりはらすずか)が言葉で落ち着かせようとし、それでも収まらないところを糸目の少女、森山那奈亀(もりやまななき)が物理的に静める(沈める)のであった。そんなコントのような出来事に士郎とイリヤの兄妹は苦笑気味に眺めるのであった。

 

 

しばらくすると徐々に友人達はそれぞれの家へと向かうべく分かれ道で別れ、最終的には士郎とイリヤの二人だけになっていた。二人だけになった途端、さきほどまでの賑やかな空気はなくなりあたりも打って変わって静かなものへとなっていた。

 

「相変わらずタツコちゃんは元気だね」

 

「うーん、元気というか・・・元気すぎるというか・・・今日だって__」

 

士郎がそういうとイリヤも続くように感想を言い、そこから思い出すように今日起こった出来事を語り始めた。楽しそうに今日の出来事を語るイリヤを眺め、士郎はこんな日常を守りたいと何度目かも分からない思いを浮かべる。このような普通の平穏を士郎は大事にしようと思い、そのための努力も惜しまないつもりでいる。今夜も時間が空けばいつも通りに鍛錬を行い、いづれくるかもしれない脅威からこの日常を守れるように今出来る全てをもって対策を続けるのであった。

 

 

隣で笑顔を浮かべる妹によく似た少女の最期のようにはすまいと思い、その歩を愛する者達の住む我が家へと向けるのであった。

 

 

 

 

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「ただいま~」

 

「おかえりなさいイリヤさん、士郎も一緒ですか。」

 

玄関を通ると洗濯中だったのかセラが洗濯籠を抱えながら出迎えてくれた。

 

普段は部活で帰宅時間が違う士郎がイリヤと一緒に帰宅した所をみてそういえば今日は士郎が夕食当番だということを思い出し、同時にその事に少しばかり腹が立った。

 

困ったことに必要ないと言っても衛宮家の長男は進んで家事をやりたがる、それも完璧といっても良いほどの手際でだ。家政婦としてもメイドとしてもまるで仕事が奪われるようで納得がいかないことばかりである。これが母親であれば助かったり感謝したりもするのだろうがセラはアインツベルンのメイドでありそんな自分の仕事に誇りを持っている。なのでそんな自分の仕事を横取りされるのは許せないしそれよりも許しがたい事にこの男、料理に関してはセラよりも上であるということである。そこいらのシェフですら負かすような腕を持つセラであったとしても士郎には勝ったことが一度もない。一体どこでどのようにそのようなスキルを身につけたのかは未だに謎だがそれはセラのプライドをズタズタに引き裂いていた。何度勝負を挑んでもあまり乗り気ではないしたとえ乗り気でなかったとしてもやはり士郎には勝てたためしがない。ならば家事はどうかと言えば負けたことはないが勝てたこともない。つまりは互角なのであった。

 

もう一人のメイドであるリズに至っては居間でゴロゴロしてばかりで士郎が家事をしてくれるのを良いことに好き勝手やっている。最近では士郎の夕食当番を楽しみにしていたりする。一度、メイドが長男に料理をやらせてあまつさえは楽しみにしているなどとはどう言う事だと強く言ってみたら_『だって士郎のほうがおいしいし』_などと言われてセラは膝から崩れ落ちたのを覚えている。

 

そんな士郎に対抗するためにセラは暇さえあれば士郎がこれ以上家事を出来なくするために手をつけられる家事を全て終わらし、料理の勉強を始めていた。何百と言う本を読んでは料理の腕を上げ、しかしそれでも士郎にはかなわなかった。一度士郎に迫るほどの料理を完成させ後一歩のところで勝利を収められそうだった時、次の日には士郎は更に腕を上げてきてそれを見てセラが頭を抱えて暴走しそうだったことも覚えている。

 

リズやイリヤは料理勝負の日にはいつも以上に豪勢な夕食を毎回楽しみにしていたり、更においしくなるのであれば止める理由もなくむしろ望むところでもあるのでそんな二人の小さな争いを止める気などサラサラなかったりする。

 

一度セラが士郎に台所侵入禁止令を出したことがあったがそんなセラに対して士郎ではなくイリヤとリズが強く反対したためすぐに撤回された。リズならともかくイリヤにまで言われてはセラは何も言い返すことができず渋々反対意見を聞き入れた。しかしこのまま好き勝手やらせるわけにも行かないので士郎を制限させるべく料理は当番制に落ち着いた。最初は週に一回にする計画であったがまたも反対意見がでたので週に二回に落ち着いた。不満の声もあったがこれ以上はセラが譲る気がなかったので反対派の二人(イリヤとリズ)も渋々従った。本人の意見もなしに決められたことに士郎は溜息を吐くしかなかったのである。

 

なのでリズとイリヤは今日を楽しみにいていたりする。当然セラはこの日が嫌いである。夕食の時間にはどうしても自分との差を感じてしまうからである。なのでこのまま大人しくするつもりは毛頭ないので士郎が料理中は後ろでジッと観察して盗める技術を盗むつもりでいる。そんな視線を浴びることになる士郎はあまりいい気はしないし今でもまだ慣れていなかったりする。

 

そのような理由からセラはとりあえず玄関を通る士郎に鋭い視線を浴びせておく。

本人は苦笑するだけで余り効いている気配はないが。

 

イリヤはと言うと夕食を楽しみにしており上機嫌で部屋へと上がろうとしていた。

 

「あっそういえばイリヤさん」

 

部屋へと上がる途中にかけられた声にイリヤは振り返る。

 

「先ほどイリヤさん宛てに宅配便が届きましたよ、確か品名は・・・・DVDだったと思います」

 

「DVD?あっもう届いたんだ!」

 

品名から何か心当たりがあったのかイリヤは部屋へと上がるのを中断して早足に居間へと駆け込んだ。

そんなイリヤの様子に士郎とセラはなんだろうとイリヤの後を追ってみる。

その途中、士郎がセラの隣に並んだ瞬間、未だに抱えている洗濯籠を見て士郎が「やっておこうか?」などと言ったが当然セラは不機嫌気味に「結構です!」と断った。

 

イリヤの後を追っていると居間からイリヤの大声が聞こえてきた。

 

『あぁ~!リズお姉ちゃん先に見てる!』

『おっイリヤお帰り。』

『なんで勝手に見ちゃうのさ!』

『払ったの、わたし』

『そうだけどさ~!』

 

居間に入ってみるとリズがいつも通りお菓子を片手にアニメを見ていた。机の上に詰まれたパッケージを見るにどうやらこれが件のDVDらしい。先ほどの会話とこの状況から察するにイリヤが帰ってくる前にリズが見てしまったらしい。そんな二人が争っているのを背景に士郎は苦笑し、セラは額を抑えていた。

 

「何事かと思えば・・・」

 

「アニメのDVDか」

 

「あぁ、すっかりイリヤさんも俗世に染まってしまって。これでは奥様たちに顔向けできません」

 

「俗世って・・・いやまぁ、こういうのは個人の趣味だし。なによりイリヤの年齢だとこれが普通なんじゃないか?」

 

「普通って!何を言っているのですか!このままエスカレートしてしまえばどうなるか分かっているのですか!大体、義理とはいえ兄であるあなたがしっかりしていないからこういうことになるのです!」

 

「なんでさ・・・・」

 

「いいですか貴方は長男なんですから__」

 

 

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「はぁ~・・・・」

 

セラからのありがたい説教から開放され、士郎は自室で着替えた後夕食作りに取り掛かった。

後ろでは相変わらずセラが熱い(鋭い)視線を送っている。

その更に後ろにはイリヤとリズが帰ってきてからずっとアニメを見ていた。いつもならこれほど長い間の視聴はセラに止められるのだが今日は士郎を観察するのに夢中でそれどころではなかった。

 

そうこうして夕食は終わった。

いつも通りイリヤとリズが幸せそうな顔をしてセラが悔しそうな顔をしたのは言うまでもない。

夕食の後はリズとイリヤのアニメ視聴はセラにより終了しリズは部屋へ、イリヤは風呂へと向かった。

士郎は夕飯の後片付けを始め、セラが居間の掃除を始めていた。

 

半分ほどの食器を洗い終わると士郎は何かを察知したようにピタリと動きを止めた。

一瞬ほどだったが士郎は止めていた動きをもう一度動かすように急いで残りの食器を片付けていった。

 

その後は急いでエプロンを外して台所を出て行った。

当然、慌てている士郎に疑問を思ったのかセラは尋ねる。

 

「どうしたのですか急に慌てたりして?」

 

「いや、ちょっとやらなきゃいけないことを思い出してな。悪いセラ、部屋の掃除は手伝えそうにないや」

 

悟らせないように士郎は至って普通どおりを装ってそう答えると玄関を出た。

夜になって気温が下がったことで肌寒く感じるが士郎は急いである場所を目指す。

 

「ここ最近感じていた微力な魔力とは違う明らかに大きな魔力・・・・場所は・・・・・空!?」

 

最近になって判明した七つの小さな魔力。それは日に日に膨れ上がるように大きくなり、場所もそれぞれ違う。しかし、七つの内の二つはつい数週間前にある知人から解決したという報告があった。

その時の事は最近の出来事なのでよく覚えている、一瞬妙な空間のズレを感じ取って現場に向かってみればそこにはその知人が一人で虚空を見つめていた。

何があったのか聞いてみれば大丈夫といい、自分で調べてみても違和感がある程度しか分からなかった。

その後はこちらの仕事だからと家に帰れと言われ仕方なく帰った。

一体どのように処理し、また魔力の正体は一体なんだったのかと問えば気にするなの一点張り。

 

問い詰めても何れ分かるとしか教えてくれなかった。

 

色々なもので釣ってみても教えてはくれなかった。一度本気で自分を餌に使おうかとも思ったが不幸な未来が確定するのでやめておいた。

 

何度聞いても無駄だったので一人で未だに調査は続けているが分かったことはまだ何もない。ただ分かるのはなにか良くないことが起こると言うことだけだ。

理由はただの勘だが膨れ上がる魔力を放って置いていいことが起こるとは思えない。

しかし今回察知したのはそんな魔力とは違う明らかに大きな魔力。

一瞬残りの五つのうちの一つが急激に増えたとも思ったがそのどれもは前に調査した時と変化なし。

よって考えられるのは何かしらのイレギュラーかもしくは__

 

 

「外からの何者かか!」

 

 

空を見上げてみるとすぐに魔力の元凶は見つかった。

思っていた通りそれは昨日まではいなかった何者かの仕業であった。

しかし_

 

「へっ?」

 

数キロ先でもはっきりと視覚できる士郎だからこそ空の上にあるものもはっきりと見えることができた。

見えてはいる__

 

 

 

__見えてはいるのだが自身の目に飛び込んできたそれに頭が追いつかないだけであった。

 

空の上に舞っているのは二人の人物、それもどちらも顔見知りである。

しかし身に纏っているその装束は先ほどイリヤが見ていたものに酷似している。つまりは魔法少女が着るようなフリッフリな服装であった。

知り合いがそのような格好をしているのを見てしまってどのような反応をすればいいのだろうか・・・・

 

それだけではなく片方は狐耳に狐の尻尾、もう片方はなんと猫耳に猫の尻尾が生えている。もはやどこかのコスプレにしか見えない。

だがコスプレだったらどれほど良かったか。

その二人は、格好はともかく、空を飛んでおり高密度の魔力の塊をぶつけ合っていた。並みの魔術師では、それこそ魔法の域だと思われる飛行能力を駆使しこれまた通常では困難な純粋な魔力の塊を、それも超高密度で連発していた。

 

しかし・・・

 

「あんな目立つ格好で、しかもあんな目立つ魔術を連発していたらいずれ誰かにバレるとか思わないのか?」

 

士郎はがっくりと肩を落とし空に舞う二人の人物の名を口にする。

 

 

 

 

「一体何をやっているんだ・・・遠坂とルヴィアお嬢様は・・・」

 

 

 

 




セラと士郎の絡み大好きです。

後士郎の精神力は超強化されてます。

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