ロアナプラ鎮守府   作:ドラ夫

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 “確かに人間は不完全な生物だが、世界が不完全である以上それは必然である”



              ──不知火


02 鈴谷

「パンパカパーン! 第八百六十七回、提督閣下感謝杯を開始しまーす!」

「「「うおおおおお!!!」

 

 廊下を歩いていると、外から愛宕の声と歓声が聞こえてきた。どうやら、賭けレースをやってるみたいだ。

 この鎮守府での娯楽は──一、セックス。二、殺し。三、酒とクスリ。四、賭け事だ。どれも盛んに行われている。

 一番走者は長門。

 二番走者は翔鶴。

 三番走者は高雄。

 四番走者は千歳の様だ。

 騎手はそれぞれ、第六駆逐隊が務めていた。

 

「それじゃあ、よーいドーン!」

 

 愛宕の号令に合わせて、各走者達が一斉にスタートした。

 僕の鎮守府の艦娘達は異様に回復速度が速い。それを利用して、走者──『馬』を作る。

 簡単に言えば、四肢を肘と膝の辺りから切断して、回復しない様に濃硫酸が染み込んだ布を押し当てている。その状態で目隠しとギャグボールを着ければ『馬』の完成だ。

 ちなみに『馬』に選ばれる艦娘達はロリコンとドMだけだ。『馬』も彼女達からすればご褒美らしい。相変わらずぶっ飛んでる。

 ちなみに長門と千歳がロリコンで、翔鶴と高雄がドMね。

 

「ご不快でしたら即座に辞めさせますが、いかがいたしますか?」

「うん? いや、彼女達の娯楽を奪っちゃ可哀想だよ」

「畏まりました。出過ぎた真似、失礼いたしました。償えるなら如何様にも」

「いや、大丈夫だよ。むしろ僕のことを思っての提案、ありがとう」

「勿体無きお言葉、感謝いたします」

 

 今日の秘書艦──鈴谷が、真っ白なうなじが見えるくらい深々と頭を下げた。

 他の鎮守府の鈴谷はJKみたいな軽いノリらしいけど、この鎮守府の鈴谷は冷静沈着、ハイライトは常にない、髪の色も相まって氷の様な印象を受ける。

 正直、もっと気軽に接して欲しいんだけどな。キッチリし過ぎてて、仕事がない時、二人で黙って執務室に座ってるとメチャクチャ気まずい。

 

「おら! 左に曲がるのです、このゴリラ!」

 

 長門に乗った電が長門の角? 電探? を思いっきり左に引っ張った。首が曲がっちゃいけない方向に曲がる。その上左脇腹に蹴りも入れていた。

 ギャグボールを咥えている長門の口から唾液と一緒に「グモッ! グモッ!」とくぐもった声がこぼれた。あれで喜んでるというのだから笑えない。

 

「そーら!」

 

 何故か全裸の隼鷹が、翔鶴の進行方向に向けて空いた酒ビンを投げた。ビンはあっけなく割れ、道にガラスの破片が散乱する。

 

「ほら、もう直ぐゴールよ。あと少しだから、頑張りましょう?」

 

 翔鶴に乗った雷が母の様に優しい声で語りかけた。翔鶴は張り切って進み──ガラスの破片が散らばってる場所に突っ込んだ。

 

「ん゛ん゛ん゛んんん!」

「はーい、ストップよ」

「ん゛ーーーー!!!」

 

 一気にガラス地帯を駆け抜けようとした翔鶴を、雷が髪の毛を引っ張って止めた。

 ブチブチブチ、という髪の毛が抜ける音が聞こえてくる。首が180度折れて、翔鶴の後頭部が背中に当たっていた。僕ならもう十回は死んでるな。

 雷は根っからのサディストだ。彼女曰く、一旦救いを見せてから絶望に堕とす、その落差の瞬間が一番楽しいらしい。怖い。

 ちなみに雷は深海棲艦を飼っている。

 弱った深海棲艦──雷が裏で手を回して弱らせたんだけど──を保護して、手当てをしている。そして回復して、いよいよ海に還す瞬間、後ろから撃ち抜くらしい。その時の「どうして……」という顔が何よりも好きなんだって。怖い。

 雷の話が正しいのなら、深海棲艦は意思疎通が出来るという事になる。この話をしたら、大本営──いや、世界中はひっくり返るだろうなあ……

 

「Управляемый; блядь! собака!」

 

 響が何かロシア語を叫びながら、高雄のお尻に酒瓶を突っ込んでいた。中には琥珀色の液体が並々と入っている。

 あんな物を腸から摂取したらいくら艦娘といえどヤバいけど、僕の艦娘達は余裕だ。ちょっとふらつくくらい程度だし、それも直ぐに治る。

 

「直訳すれば──走れ、この阿婆擦れの豚畜生! と言ったところでしょうか」

「へ、へえ。鈴谷、ロシア語が分かるんだ。凄いね」

「いえ。私など、提督閣下の叡智には遠く及びません。閣下に少しでも近づけるよう、日々精進するばかりです」

「え? いや……そ、そう。が、頑張って?」

「はい。ご期待に沿えるよう、及ばずながら努力させていただきます」

 

 硬いんだよなあ……

 他の鎮守府の鈴谷に何度か会ったことがあるけど、艦娘の中でもかなり緩い雰囲気を持っていた。

 それが僕の鎮守府の鈴谷はどうだ。笑ったところを見たことがない。鈴谷曰く、笑う暇があったら鍛錬、とのこと。

 いや、鈴谷に文句がある訳ではないんだ。純粋に、どうしてこんなに他の鈴谷と違うのか、疑問なだけ。

 

 

 一位を走っているのは──千歳と千歳に乗った暁だ。

 暁は雷とはまた違った種類のサディストだ。雷が積み重ねた物を一気に破壊することに、精神的崩壊に愉悦を感じる。

 それに対して暁は、積み重ねる事すら許さずに、最初の段階で徹底して破壊する。肉体的崩壊に愉悦を感じている。

 簡単に言えば、暁は相手を痛めつけることに酔ってる。相手の反応はどうでもいい、暴力を振るえればそれで良いらしい。

 雷はマゾヒスト相手だと心的外傷を負わせ辛いから苦手だと言ってたけど、暁は逆に相性がいいらしい。

 

「遅い! それでも一人前のレディなの!?」

 

 レディ関係ないと思うけど……

 暁がイかれた顔をしながら千歳を殴りつけた。あの子はクスリを常時服用してるから、拳にリミッターがかかっていない。

 だけど千歳はそれにグラつく事もなく、むしろスピードを上げる。さすが、よく訓練されている。

 

 

 ちなみに、クスリやお酒は大淀が全て調達してる。

 鉛筆からロケットまで、実在するものなら何でも揃えられます。大淀の言葉だ。

 それを面白がった隼鷹がロケットを頼んで、その二日後本当にロケットが隼鷹の元に届いたことがあった。

 手数料込みで150億円。

 この鎮守府で二番目にお金持ちの隼鷹じゃなかったら、間違いなく破産してたな。

 そしてロケットは今はもう鎮守府にない。隼鷹が中国政府に400億で売りつけたからだ。どんな商才だよ。

 味をしめた隼鷹は時たま大淀からロケットを買って、方々の国に売りつけた。月に一度ロケットが運び込まれてくる鎮守府は、多分ここだけ。

 最近では明石が格安でそのロケットをそっくりそのまま作ることに成功。結果ロケットは値崩れしたけど……その一瞬前に、隼鷹はロケット産業から手を引いていた。どんな商才だよ。

 

「パンパカパーン! 一位は高雄でしたぁ! さっすが姉さん!」

 

 ゴール寸前のところで、高雄が千歳を抜いて一位通過した。

 どうやら響がウォッカが染み込んだ高雄のお尻に、火を放ったみたいだ。そんな事されたら、そりゃあ速く走る。

 

「流石だな、高雄。どうやら私もまだまだ精進が足らないようだ」

 

 『馬』から戻った長門が労いの言葉をかけた。

 さっきまでフゴフゴ言ってた人物と思えないほど爽やかだ。いつもああしてれば、本当にかっこいいんだけどなあ……

 ロリコンとは病気だ。

 レースが終われば第六駆逐隊も、『馬』役をしていた艦娘達もみんな仲良しだ。僕にはちょっと真似出来ない切り替えの速さ。

 一位になった高雄には、賞金として一億円が贈与された。賭けに勝った艦娘達は、それぞれ元の賭け金の1.45倍のお金を貰っている。

 帰り道、潮が二千万スったと嘆いていた。

 一番得したのは、元締めをしてる隼鷹かな。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 今日はヤバい。

 どのくらいヤバいかというと、マジヤバい。

 何せ今日は、他の鎮守府との演習がある。

 僕は演習があるたびに胃が痛くなる。僕の艦娘達が相手の艦娘達を轟沈させてしまうんじゃないか、といつも不安になるんだ。

 演習ではお互い沈まないよう、リミッターがかけられてるんだけど……僕の艦娘達はそんなもの平気でブッチ切る。

 

「今日はよろしくお願いしますね!」

「はい。よろしくお願いします」

 

 相手の方、物凄く元気だ。

 潜水艦達からの情報によると、かなり優秀な方らしい。ケッコンカッコカリをして最高練度になった艦娘も多数在籍してるらしいし、甲作戦を何度もクリアした実績もあるんだって。

 

「チーッス! 今日はよろしくね!」

 

 向こう方の秘書艦──鈴谷が挨拶をしてきた。

 あの鈴谷が笑顔で砕けた言葉を話している……何というか、違和感が凄まじい。

 対して僕の鈴谷は、嫌悪の眼差しを向けていた。ガラ悪すぎィ!

 

「ところで、まだ艦娘達が来ていない様ですが……」

「ああ。大丈夫です。今日戦うのは、この鈴谷一隻なので」

「は?」

 

 僕の鎮守府については、箝口令が敷かれて居る。だから僕の艦娘達がどれだけ強いか、大抵の人が知らない。

 

「それ大丈夫なのー? 一人きりで、しかもケッコンカッコカリもしてないみたいだし」

 

 相手の鈴谷が声をかけてきた。

 まあ当然だ。

 向こうは六隻フルメンバー、それも全員がケッコンカッコカリ済みの最高練度。面子も長門、陸奥、鈴谷、瑞鶴、龍驤、北上と割とガチだ。

 それに比べてこっちは鈴谷一人。ナメプと思われても仕方がない。

 

「──愚か」

 

 こっちの鈴谷が、ありったけの侮辱を込めた声で答えた。

 

「強さが練度や、ましてや人数で決まると思っているとは、全くもって愚かですね」

「へえ……。それなら、何が強さを決めると?」

「決まっています。忠誠心です。提督閣下に勝利を捧げんとするこの心こそが、強さに他なりません」

「忠誠心? そっちの鈴谷は随分硬いねえ。ま、忠誠心なら鈴谷も負けてないけど!」

「はっ。貴女のそれが忠誠心だとは、到底思えませんが」

「なっ、ムカちーん! さっきからちょっと口悪くない? それに、忠誠心忠誠心言ってるけど、そっちの鈴谷はケッコンカッコカリすらしてもらってないじゃん!」

「それがどうかしましたか? ご寵愛をいただけなければ、忠誠心を捧げられないとでも? 提督閣下にご寵愛いただけなくとも、例え嫌悪されようとも、私の忠誠心は変わりません」

 

 相手の提督が、お前どんな教育を艦娘に施してんだ? みたいな顔で見てくる。違う、僕は何もしてない。少なくとも故意的には。

 

「ここでこれ以上話しても栓なき事。演習の結果で、全てが分かるでしょう」

「ふん! 鈴谷と艦隊のみんなの力、見せてあげる!」

 

 僕の胃が痛くなる、もう一つの理由はこれだ。

 僕の艦娘達はガラが悪い。誰かれ構わずケンカをうるし、口を開けば罵倒しかない。

 

「提督閣下、勝利をより確実に献上させていただくために、艤装の使用許可をいただきたく思います」

「うーん、それじゃあ12.7cm連装砲だけね」

「愚案を承認してくださって、ありがとうございます」

 

 演習を行う場合、僕は艦娘達に艤装を使わないよう厳命している。理由は単純に、強すぎるから。

 リミッターがかかってるから死なないとはいえ、あまりの恐怖にPTSD──心的外傷後ストレス障害になってしまう事が多いのだ。

 だけどまあ、今回は全員が練度をカンストしてるわけだし、そこまで酷い事にはならない、と思う。鈴谷は艦娘の中でも理性的な方だしね。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

 簡易的な司令室に入って、鈴谷を応援する。

 僕が指示を出しても良いんだけど──そうするより、鈴谷の独断で戦った方が圧倒的に強い。僕も戦術をかじっているけど、鈴谷をはじめとする一部の艦娘達の戦術に関する知識は尋常じゃない。とてもじゃあないが、敵う気がしない。

 

 

 

 “ビーーーーッ!”と開戦を告げるブザーが鳴った。

 先ずは向こうの龍驤と瑞鶴、鈴谷が艦載機を発艦させた。こちらの鈴谷は海のど真ん中で突っ立ってる。直ぐに発見され、爆撃された──けどまあ、無傷だ。

 多少擦り傷の様なモノが出来たけど、三秒もしないうちに回復した。

 次に北上から先制魚雷が放たれる。

 そこで初めて鈴谷は動いた。

 自分の足元に向けて、弾丸の入っていない12.7cm連装砲を──つまりは空砲を自分の足元に向けて放った。

 

「──えっ?」

 

 場違いなほどのんきな、北上の驚く声が聞こえた。

 空砲は海に開くはずのない風穴を開けた、深海の砂が見える。その余波で巨大な波を引き起こ起こり、鈴谷を中心に、360度全ての方向に巨大な津波が走って行った。

 北上が放った魚雷は空中で波に呑まれ爆破、ついでに北上と龍驤、瑞鶴をも呑み込んでいった。

 

「とりゃ!」」

 

 向こうの鈴谷が波に向かってを砲撃した。波にポッカリと穴が開き、そこから向こう艦隊の艦娘達が波を通り抜けていく。

 良く統一された、素晴らしい動きだ。

 僕の艦娘達は連携プレイというものを知らないから、少し羨ましくなる。

 陸奥が46cm三連装砲を放った。鈴谷はその場で小刻みにステップを交わし、全弾難なく回避。

 

「とった!」

 

 いつの間にか至近距離に来ていた長門が、九十一式徹甲弾を両手に持って直接叩き込もうとした。

 普通なら、ここで終わりだろう。が──

 

「──脆弱」

 

 鈴谷は力で無理矢理長門を押し返す。

 徹甲弾を手刀で切断し、爆風を拍手の風圧で押し返す。そのままの勢いで長門の横腹を回し蹴り。

 グニャ、グギッ! という音が響いた。

 前者が内臓を潰した音、後者が背骨をへし折った音だ。

 蹴られた長門は水上を水切り石の様に一回、二回、三回──十三回跳ねた。

 

「な、長門? 長門!? う、うそ……でしょ? ぁ、ぁぁぁ──ああああああああ!!!」

 

 陸奥が狂った様に46cm三連装砲を鈴谷に向けて放った。だが狂っていても、狙いは正確だ。全てキチンと鈴谷の方に向かっている。流石の練度だ、日々の鍛錬の賜物だろう。

 再び鈴谷が空砲を放つ。それは陸奥の弾丸に当たり、吞み込み、勢いを落とすことなく陸奥に被弾した。

 ……詳細は省くけど、陸奥はリタイアだ。

 

「さて、貴女が最後ですね」

 

 言うが早いが、鈴谷は一瞬でその場を離れ、向こうの鈴谷の目の前に立った。そして向こうの鈴谷が反応する前に、首を片手で掴み持ち上げる。

 向こうの鈴谷は持ち上げられた状態で反撃──20.3cm(2号)連装砲を超至近距離で放った。それは鈴谷の顔に直撃した。したけど……頬を少し焼いた程度だ。それも直ぐに治る。

 

「貴女方の忠誠心と私の忠誠心、どちらが上かハッキリしましたね」

 

 向こうの鈴谷から返事はない。首を絞める力が強まってるんだ。

 

「そもそも貴女のそれは、忠誠心ではありません。私は提督閣下に死ねと命じられれば、即座に死にます。行きずりの男に抱かれろと命じられれば、即座に抱かれます。焼いた鉄板の上で土下座も出来ますし、爪の間に針だって刺しましょう。それを苦とも思いません。喜んで、私はそうします。貴女にそれが出来ますか? 出来ませんよね。なぜなら貴女のそれは忠誠心ではないからです。貴女のそれは──」

「うおおおぉぉおおお!!!」

 

 雄叫びを上げて、後ろから長門が襲いかかった。鈴谷はそちらを見向けをせずに、顔に裏拳を当てて吹き飛ばす。

 鈴谷の一撃を受けて立ち上がるなんて……あの長門、不死身か?

 

「話が遮られましたが、まあ良いでしょう。続きを──いえ、必要ないですね。それでは──」

 

 “ビーーーーッ!”と終戦を告げるブザーが鳴った。

 向こうの鈴谷が沈んだからではなく、僕が降参を選んだからだ。

 あのままだと、鈴谷が鈴谷を殺しちゃう。いくらリミッターがかかってると言っても、至近距離で首を絞めて殺す、何てことを想定してはいない。

 

 

   ◇◇◇◇◇

 

 

「申し訳ございませんでした。提督閣下の経歴に泥をつけたこと、この命でお詫び出来るとは思いません。故に──」

「いや、いや。大丈夫、大丈夫だから。それに今回は、僕が独断で降参したわけだしね。鈴谷は全く悪くないよ。この件について、これ以上何か言うつもりはない、いいね?」

「……畏まりました」

 

 非力で臆病な僕がときたま艦娘達に強く出る時がある、それは今だ。

 何故なら彼女達は、不手際があると直ぐに深海棲艦を皆殺しにするか、自殺しようとするからだ。彼女達位強いと、自殺も難しい。前にこの世の醜さに絶望した不知火が自殺しようとした時などは、核ミサイルを大淀から仕入れて自分に撃とうとしたくらいだ。

 まあとにかく、深海棲艦を皆殺しにするにせよ、自殺するにせよ途轍もない被害を被る。主に世界が。

 だから僕は彼女達の提督として、置物提督のせめてもの仕事として、自責の念を取っ払ってる。多分八回くらいは世界を救ってると思う。

 

「それじゃあ、帰ろうか」

「はい」

「おい、待て!」

 

 僕らが鎮守府に帰ろうとすると、今日の演習相手をしてくれた提督が呼び止めてきた。

 

「陸奥は退役することになった。鈴谷もだ!」

 

 これだ。

 僕が恐れてたのは、まさにこれ。

 演習で艦娘を失う。普通では決してあり得ないことだ。

 自らの艦娘を失った提督は、時に物凄く自暴自棄になる。僕は一般ぴーぷる、艦娘の攻撃どころか普通の人間の一撃で死ぬ。

 命を狙われるとか、怖くて堪らない。

 

 

 僕達は逃げるように鎮守府に帰った。

 僕は単純にあの提督の視線を受けるのが耐えられなかったからで、鈴谷はあの提督を殺すのを耐えられそうになかったからだ。

 鎮守府に帰る道すがら、僕は鎮守府宛に電報を打った。今回の敗走は僕が原因で、鈴谷に全く非はない。そういった内容だ。

 僕の鎮守府はイかれてる。その中でも、重巡洋艦達は特にイかれてる。こうやってフォローしておかないと、彼女達は平気で仲間を殺す。

 飢えた狼なんかに狙われた日には、鈴谷といえど絶命は免れない。

 ちなみに、重巡洋艦の中での鈴谷の強さは上の下くらいだ。平均よりは強いけど、トップ連中には歯がたたない、といったところかな。怖い。


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