ロアナプラ鎮守府   作:ドラ夫

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引退する詐欺じゃねえかっ! と思ったそこの貴方、大変申し訳ありませんっ!
かまってちゃんみたいになってて、ホントすみませんね。
あのですね「結局ロアナプラ鎮守府最強のあの人は誰なんですか?」という質問が稀に良く来ててですね、その度にメッセージで送っていたのですが、もうそれが面倒くさくって。
しかもメッセージって一度送ると修正出来ないから、なんかこう、色々と不安なんですよ。
そこでこの話を投稿しました。

実はロアナプラ鎮守府を書くにあたって、一話〜八話プラスプロローグアンドエピローグの触り(最初の2000字くらい。話の大筋と、スポットを当てる艦娘を決める為に)は一話を投稿する前に書いていたんですよ。

本来は最終話投稿→プロローグ(というより前日談)→エピローグという流れでした。
このプロローグ編の触りで秘書艦のあの人が分かるので、それで投稿した的なノリです。
推敲とか全くしてない(しかも書いた時は番外編が存在していなかったから、設定が食い違ってるかも)ので、色々と多めに見てください。


プロローグ・オリジン

 産まれてこの方、マトモな人付き合いというものをしたことが無かった。

 小学生の頃までは両親が居たが、提督と艦娘だった二人は、多額の保険金を残してこの世を去った。妹もいた気がするが、いつの間にか何処かへ消えていた。よくある話だ。

 世界中で人口がどんどん減少して行く中、少子化の一途を辿るこの国。元々周りに人が少なく、また俺自身の人柄もあったのだろう。誰かに話しかける勇気が出なかった。

 しかし、それを苦に思ったことはなかった。

 高校生の頃までは本を読めば身近に登場人物を感じられたし、テレビやラジオをつければ人の声が聞けた。

 やがて大学生になった頃、酒とタバコを覚えた。

 酒を飲んで、タバコを吸って、テレビを見て、寝る。

 この頃になると人類はもう敗北に近く、大学生に通えるほど裕福な人間はほとんどいなかった。だだっ広い大学生の教室で、俺は一人で授業を受けていた。

 孤独は感じなかった。

 酒を飲んで、タバコを吸って、テレビを見ていれば、平気だった。

 

 

 やがて俺は、一人の女性に出会った。

 二つ上の先輩で、俺と良く似た境遇にあった。

 ただ俺とはまったく違った思想の持ち主だった。両親が死んで殻に閉じこもった俺とは違って、彼女はそれを糧に今を生きていた。

 彼女は言った。いつか母の様に、いや母以上に強い艦娘になって、この戦争を終わらせると。

 良い事だ。そう思う。

 前向きだし、キチンとした目標を持つ事はプラスになる。応援してあげるべきだ。

 しかし、何故だろうか。ひたすら前に向かって進む彼女を見ていると、無性に腹が立った。イライラとした。焦燥した。不安になった。

 全て上手くいっているのに、重大な何かが破綻している、そんな気にさせられた。

 酒を飲んで、タバコを吸って、テレビを見ても、それは消えなかった。

 

 

 大学生を卒業した頃、俺は提督となった。

 血筋なのかは分からないが、俺にはその資格があった。資格があるのなら、やるべきだ。

 白い軍服を着て、地下シェルターを出た。

 初めて太陽を見た。なるほど、綺麗だ。美しい。心が惹かれる。ただ、彼女を見ている時と同じくらい、苛立ちを覚えた。

 初期艦を選んでくれ、そう言われた。

 候補は五人──五隻というべきか──電、五月雨、漣、吹雪、そして“彼女”。

 俺が迷っていると、“彼女”が俺に言った。

 ──アンタは一生選ぶ事ができない。アンタは人を知らないから、だから、私が選んであげる。アンタは今から私の提督。良いわね?

 その日から俺と“彼女”、一人と一隻の日々が始まった。

 それは決して楽なものではなかった。戦って戦って、仲間を増やして、仲間が死んで、敵を殺して。

 色々なことがあった。残念ながら、俺の持つ語彙では言い表す事のできない、色々な出来事が。

 身近で味方が産まれ、味方が死に、敵が産まれ、敵が死んで行く中、俺もまた産まれて──死んだ。

 

 

 そんな折、俺は昔大学で知り合ったあの女性に出会った。

 彼女は艦娘になっていた。重巡洋艦「足柄」それが彼女を表す記号だった。

 酒もタバコもテレビも辞めた──辞めたというより、多忙のあまり辞めざるを得なかった──のに、何故だか前より彼女を見ても苛立たなくっていた。

 意外な再会を喜ぶ暇もなく、それからも戦いの日々が続いた。

 そして到頭、その日がやって来た。

 敗北の日だ。

 人類はまだ負けてはいなかったが、俺は敗北した。

 当時鎮守府の中で一番強かった戦艦「榛名」が轟沈した。随伴していた足柄も手足が吹き飛び、助かる見込みはなかった。

 俺は生きたかった。死なせたくもなかった。

 故に、祈った。

 神でもなければ、ましてや大本営にでもない。

 俺の秘書艦であり、初期艦であり、最も信頼していた“彼女”に。

 “彼女”が俺を選んだ時と同じ口調で、彼女は答えた。

 ──私に任せておきなさい。アンタは何も心配しなくていいの。

 それが見栄である事は、流石の俺にも分かった。しかし俺は、彼女に縋らずにはいられなかった。

 結果として、奇跡は起きた。

 轟沈した榛名は復活し、足柄は完治した。“彼女”は無数の深海棲艦を滅ぼし、俺の元へと還ってきた。

 その時になってようやく、俺は理解した。どうして俺が提督なり得たのか。どうして“彼女”が俺を選んだのか。何故深海棲艦は産まれたのか。

 そして、俺は誓った。

 どんな事が有ろうとも、俺は彼女達と共に生きると。







ちなみにエピローグは「最果てからのエピローグ」です。
2500字くらい書きました。
内容的には、生物が全ていなくなった地球を、たった一人残された“彼女”が渡り歩きながら、戦争の終わりから提督が死ぬまでを振り返る話です(提督は普通に寿命で死にました)。

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