異世界西遊記 作:越後屋大輔
再び意識を取り戻したら草木一本生えてない荒野に立っていた。
「ここが異世界ねぇ」俺はしばらくボーッてしてから手のひらを見つめる。強面おネェ神様とのやり取りが夢や幻でなければ姿はサルになっているはず。
「アレっ?」手や足は一度死ぬ前と変わらない。顔や全体像はわからない。頭に触れるとやけに毛深くはあるが、孫悟空の代名詞ともいえる緊箍児がない。
「あの強面おネェ神様俺を騙したのか!?」でもそんなことしても彼(彼女?)には何のメリットもない。一旦落ち着いてもう一度自身の姿を確認する、赤い着流しに虎模様の腰巻きは間違いなく孫悟空だ。西遊記の話を思い出してみる、確か彼は自身のみならず体毛も変身させられたはず。髪の毛を抜いて息を吹き掛ける、あっという間に髪の毛が大きな鏡になった。早速生まれ変わった自身を写そう、心臓がドキドキする…。
今の俺の姿は昔テレビで見た堺○章や○取○吾そのままだった。
「コスプレかよ!」心情としてはがっかり半分一安心半分だな。
「さてこれから何処へ行こう」容姿に気をとられていて失念していたがずっとこんなところにいてもしょうがない。とりあえず西遊記らしく西へ進もう。一人旅だけど。
「觔斗雲!」声に出したらホントに出てきた。しかも乗って空を飛ぶ事もできる。町か村を見つけるまでこれで移動しよう。本気になって飛べば一瞬で世界一周もできるがそれじゃ余りにもつまらないので速度は遅めにする。しばらくすると一軒の百姓家がみえた。
「ちょうどいい。あの家でこの世界について色々聞いて見よう」觔斗雲を急降下させるが、やはり遅めにしても速すぎたか、目的地より数キロ離れた森に降りてしまう
とたんに派手な出迎えを受ける、眼前には体高5メートルはある豹柄の狼がいる。少なくとも地球上に存在しない生き物だ。だけど恐怖は感じない。
「モノは試しというしやってみるか」耳から細い鉄棒を取りだし2メートルぐらいの長さ、家電リモコンぐらいの太さにする。やっぱ孫悟空といえば如意棒でしょう、さっきの荒れ地で装備は確認済みなんだよね。狼の頭目掛けて降り下ろす。一撃で倒した。
「クーガルフがやられた!?」叫び声に振り向くと狩人らしき40代ぐらいのおっさんと見た目17~20歳の若い男女四人が俺と巨大狼の死骸へ視線を往復させて口をパクパクさせている。少女達とおっさんは青い顔をしているしかも腰が抜けたのか座り込んで動けずにいる。つーかクーガルフっていうのか、この生き物。
「あっしはここから東の集落で長をやってるバーキンといいます。こちらは集落でクーガルフ討伐を依頼した冒険者の方々です。いやぁ、討伐ランク18のクーガルフを簡単に仕留めるとはお強いですなぁ。」おっさんから紹介された若者達のリーダーらしきイケメンは少し不機嫌そうだが無理もない、知らぬとはいえ俺がクーガルフを倒してしまったから彼らのパーティーは仕事も収入も奪われた形になる。ン、これはある意味世界を知るチャンスかも。
「キミ達、俺と取引しないか」この提案に彼らが不思議そうな表情をみせる。しかしここは前世地球人の知恵の使いどころ自己紹介も兼ねてパーティーに持ち掛けた。