グリモア~守護者~   作:エウラス

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エウラスです。
当方の作品もかいてますが、昨今それに匹敵するほどに気に入った作品であるグリモアの二次創作もかいてみたい、と思い今に至ります。
相変わらずの不定期更新に加え稚拙な文章能力、設定の独自解釈などがありますが、不揃いの情報なども多いため、あくまで『こんなグリモアの世界もあるんだな』程度に思って見ていただけると幸いです。
グリモアっぽい何か、がコンセプトです(苦笑)


全ての始まり編
グリモア:プロローグ


プロローグ:転校生

 

霧の魔物。

正体不明、出生不明、正確な生体すらも不明という謎の魔物。

300年も前に現れ、一時は人類の滅亡すら予見された。

しかし、とある存在たちと、各国の軍の力でなんとか凌ぎ今に至る。

各国の軍はたしかに優秀な力を持っていた。

いざとなれば核兵器による殲滅も可能。

彼らがいればなんとかなると思われている節もある。

しかし、それ以上に素晴らしい戦果を上げたのが……。

『魔法少女』、そう呼ばれる若い男女たちだ。

男女比で言えば8;2で女子率が高い。

しかし、その身に秘められた魔力による攻撃。

それらはどれも霧の魔物を退ける有効な手段になっていた。

魔法少女の存在発覚からそうしないうちに、日本にも専用の学園が建てられる。

その名も、私立グリモワール魔法学園。

各国から集められた選りすぐりの素質ある少年少女がここに集められる。

目的は、霧の魔物と対抗するための戦力育成だ。

そして……そんな学園にまた一人、新たな少年が足を踏み入れる。

降り注ぐさわやかな朝日を眩しそうに見上げた少年の名は――。

 

『柊 紫陽花』

 

名を呼ばれた少年は太陽の光で眩んだ眼を細めて主を探す。

そんな彼の目に映ったのは、ウサギの形をした何かだった。

着ぐるみにしては小さく、ぬいぐるみにしては大きい。

でもどちらかと言えばぬいぐるみに分類されるそれは満足気に『頷いた』。

そう、『頷いた』のだ。

紫陽花の目にも困惑の色が濃い。

 

紫陽花「……えっと?」

兎ノ助「俺が珍しいかい?」

紫陽花「少なくても、喋って動いてるぬいぐるみは初めてみた」

兎ノ助「ぬいぐるみじゃないんだが……まあいいや」

兎ノ助「呼びかけに反応したってことは、柊紫陽花本人でいいんだな?」

 

紫陽花は未だ戸惑いつつも頷いて応える。

そもそも、魔法が存在するって判明したこのご時世。

喋って動けるぬいぐるみが居ても不思議じゃない。

紫陽花もまたそう思い込むことにした。

さらっとぬいぐるみじゃない発言を流したまま。

森の中で喋る兎というシチュエーションにとある童話を思い浮かべたりもしたが。

 

兎ノ助「まずは、ようこそと言っておこうか」

兎ノ助「俺は兎ノ助。道中不便はなかったかな?」」

紫陽花「ああ、うん。特にはなかったよ」

紫陽花「というか、待遇が良すぎて怖いくらいだったかな」

兎ノ助「はっはっは、今や君たち魔法少女……君の場合魔法少年か」

兎ノ助「君たちは丁重なもてなしをされるだけの『価値』があるんだよ」

 

嫌な表現だ。

そう紫陽花は心のなかでため息をついた。

柊紫陽花という少年はとても心が優しく、喧嘩や争いが嫌いだ。

そんな彼が、人間を『道具扱い』している言葉をよく思わないのも仕方ないことだった。

しかし、そんな彼の気持ちも杞憂に終わる。

 

兎ノ助「ま、政府はそう言ってるがこの学園のやつは皆そうは思ってねえ」

兎ノ助「変な心配せず、普段は特殊なとこのある学園と思って過ごしてくれ」

紫陽花「……気遣ってくれたのか?」

兎ノ助「よせやい、俺は未来ある若者にはまっすぐ育ってもらいてえだけよ」

 

カラカラと笑いながら先を歩く兎ノ助に苦笑いを浮かべる。

紫陽花は彼が悪い人(?)ではないと判断した。

あんなにナチュラルに嘘をつくのならそれは怖いことなのだが。

それはさておき。

歩き続けていた彼らの前に、森の中には不釣り合いな立派な門。

そう、それこそが私立グリモワール魔法学園の出入口だ。

ここに入れば、もう逃げることは難しくなる。

とはいえ、紫陽花にそのつもりはない。

『一人でも多くの人を守る』。

その願いを叶えに来たのだから。

一度止めた足を再び動かし、その門を潜った。

 

 

その先に広がっていたのは、大自然の中にあるには立派過ぎるものだった。

まるで西洋の学園のような作りの建物がところどころにある。

そのどれもが木々の合間を縫うように配置されていた。

利便性はわるそうだな、と考えながらもある種の高揚感。

それを感じながら、紫陽花は兎ノ助の後について建物の中に入った。

 

 

中に入ってまず一番に思ったのは、『普通』ということだ。

確かに所々見慣れないものはある。

しかし、基本的な所は普通の学園に通っていると勘違いするレベルの作りだった。

 

兎ノ助「確かに背負うもんはあるだろうが、お前らは学生だ」

兎ノ助「色々と面倒なもん背負わせる分の配慮くらいはな」

紫陽花「本当に、思ったより人情が通じるようでありがたいよ」

兎ノ助「当り前だ」

兎ノ助「クエストについても、基本的に命の危険がないよう最善をつくしてるからな」

紫陽花「クエスト?」

兎ノ助「簡単にいえば任務だな」

兎ノ助「それぞれの活躍や適正によって色々とある」

 

一般的なのが討伐。

その他にも研究・探索・防衛などがあると兎ノ助は続ける。

クエスト……いわゆる、霧の魔物に対向する目的を持った行動全般に言えることだ。

そのクエストも強制ではなく、危険と感じるものは辞退することも可能。

基本的には対象の生徒でも対処が可能である場合のみに受注が許される仕組みだ。

だが、物事には例外やイレギュラーも多く存在する。

あくまでも、霧の魔物は未確認の相手だ。

仮に命を落とすことになっても仕方ない。

紫陽花自身も、その旨を記す書類に目を通し理解もしている。

ひと通りの説明を終える頃になり、俺は職員室に通された。

 

担任「ご苦労様です、兎ノ助さん」

担任「あなたが柊紫陽花くんですね?」

紫陽花「はい」

担任「それは早速ですが、あなたの能力を再確認しますが……」

紫陽花「はい、どうすれば?」

担任「口頭確認で結構ですよ」

担任「まず、あなたは治癒・援護・妨害が得意なサポート系で合っていますか?」

紫陽花「はい、合っています。メインは治癒と援護……」

紫陽花「必要に応じて多少の妨害魔法が使えるという具合です」

担任「なるほど……そして、これが一番大切なのですが」

 

来たか……と紫陽花は頷く。

 

紫陽花「俺は、魔力を他人に譲渡することが出来ます」

紫陽花「俺自身理解してないですが、結構な量を渡せるみたいで……」

担任「噂はほんとうだったのですね……魔力容量を測ってみても?」

紫陽花「どうぞ」

担任「では早速……きゃっ!?」

 

教師が紫陽花の腕に測定用の機器を装着、測定を開始した直後。

その機械はとんでもない音量の警告音を出した直後に黒煙を吹いた。

あちゃー、と兎ノ助が言ってるのを聞きつつ、紫陽花は困ったように笑う。

 

紫陽花「すいません、なんか」

担任「だ、大丈夫よ」

担任「それよりも、貴方の魔力容量は一体どうなってるの!?」

兎ノ助「ま、既存の魔力測定器じゃどれもまともに計測出来ないレベルの大きさだって話だな」

担任「……魔力の専門家のところでもですか?」

紫陽花「そういえば、ここに来る前の施設では結構壊れちゃいましたね」

紫陽花「……高そうだったけど、大丈夫かな」

担任「……」

兎ノ助「宍戸の嬢ちゃんならあるいはってところか」

 

兎ノ助の言葉に、教師は感嘆のため息をつく。

この学園設立史上、そこまでの魔力を持った生徒は存在しない。

確かに扱う魔法が強い生徒は多く輩出している。

しかし、魔力容量は基本的にそう多くないことが一般的だ。

一日休憩をはさみながら扱うくらいの魔法総量が一般的な魔法の容量と言われている。

紫陽花の場合、量でさえ小魔法程度に見える力を持っているということだ。

そして、その特異性は別の誰かに譲渡することが出来るというもの。

紫陽花が居れば、どんなに大魔法を打とうがまず枯渇することがない。

いわば最高のタンクというわけだ。

 

担任「さて……色々と驚きは多いですが」

担任「ようこそ、柊くん。あなたも今日からこの学園の生徒です」

紫陽花「はい、よろしくお願いします」

担任「では続いて貴方のクラスですが――」

 

ビビビビーッ!!!

 

担任「っ!?」

兎ノ助「こりゃクエスト受注者からの援護要請かっ?」

担任「ええ……こちらグリモア管理棟、報告を!」

『ザザ……救援……ザザ……っす……!』

『このままじゃ……ザザ……お嬢が……!!』

兎ノ助「おいっ、場所はどこだっ!?」

『ザー……………』

担任「なんてこと……」

兎ノ助「なんてこった、こんな日に……」

担任「柊くん、悪いけど今は……えっ?」

紫陽花「……霧の魔物と断定出来る群れに追われる幾つかの魔力を感知」

 

紫陽花はすでに動いていた。

先ほどの通信は機械に魔力を通して行う電話に近いものだ。

その発生源にはもちろん魔力が伴う。

それらを逆探知し、その対象周辺に霧の魔物の魔力を探ったのだ。

そう、あの一瞬でだ。

彼、柊紫陽花自身は決して強くない。

ただし、彼の真価はサポートにこそ発揮される。

このような場所探知など造作も無いことなのだ。

彼は弾かれるように職員室を飛び出し、救援要請のあった場所へ向かった。

 

 

一方、その頃。

 

自由「痛っ……厄介なことに巻き込まれちまったっすねえ……」

刀子「自由、大丈夫かっ!?」

自由「私は大丈夫っす」

自由「それより、どうしますかねえ……この状況」

 

救援要請を出したグループ3人のうちの一人、小鳥遊自由は悪態をつく。

周囲を蟻のような形状をした魔物に囲まれて退路はない。

更に言えば、先の戦いで大分消耗している。

撃てて中魔法が2発というところだ。

到底どうにか出来るような状況ではない。

 

刀子「……さっきの救援要請、届いたと思うか?」

自由「難しいでしょうねえ……焦っていたのもあって途切れ途切れでしたし」

刀子「くそっ……」

 

正直、自由は今回のクエストにもそこまでの危険は感じていなかった。

せいぜい、学園近くに突然現れた霧の魔物の群れを倒す。

ただそれだけのはずだった。

しかし、彼女たちのリーダーであり、主人である野薔薇姫の行動。

それが全てを悪化させていた。

当の本人は手痛い一撃をもらい、絶賛気絶中なわけだが。

魔法少女とは言え一人の少女である自由と刀子。

さすがに人一人を担いで逃げ切ることは難しかった。

魔力が有り余っていれば話は別だが。

 

刀子「休ませてももらえんのか……ふっ!」

自由「肉体労働は嫌いなんですけど、ねっ!!」

 

刀子は薙刀で、自由は魔法による障壁で追撃を防ぐ。

とはいえ、彼女たちの体力も底をつきかけていた。

疲労のあまり、自由は膝をついてくるしげな呼吸を上げる。

 

刀子「自由っ!?」

自由「はは……笑えねえっすね……」

 

手に持っていた箒のような魔法具を杖代わりに自由は悪態をつく。

どう見てももう疲労困憊状態。

さすがの刀子も、死を覚悟した眼で魔物と対峙する。

大きく開けた口から覗く牙。

それに咀嚼されるように殺される。

そう考えた彼女たちは思わず目を閉じて身を固くした。

 

ガキィンッ!!

 

刀子(ああ……拙者はこんなところで死ぬのか……姫殿も守れずに)

自由「……奇跡って、あるもんすねえ」

刀子「っ?」

 

呆けたような声を上げる相方に目を開ける刀子。

そんな彼女の目に移ったのは霧の魔物でも、凄惨な光景でもなく――。

 

紫陽花「大丈夫かっ!?」

 

必死に霧の魔物たちの進行を障壁で防ぐ見慣れない少年の姿だった。

 

紫陽花「このっ……少しは大人しくしとけ!!」

 

紫陽花は全方位障壁を維持しつつ、麻痺粉を発生させた。

キラキラと淡黄色に輝く粉が切りの魔物を包み込む。

多少は効果があったのか、魔物たちは不快な声を上げて痙攣し始める。

その隙を見て、紫陽花は素早く自由たちに駆け寄った。

 

紫陽花「怪我はっ!?」

刀子「……え、えっと」

紫陽花「こっちの子は……気絶しているだけか、良かった」

自由「よくわかったっすね……場所」

紫陽花「ん、さっきの救援要請はで魔力つかったろ?」

紫陽花「だからそれの発生源を逆探知しただけだよ」

刀子「あ、あの一瞬でかっ?」

紫陽花「今はそんなことは置いておこう」

紫陽花「悪いが、俺の妨害魔法はそう強くない……じきに動き出すぞ」

 

肩越しに魔物を見る紫陽花の目には、だんだんと体が動き始めている。

彼の予想通り、動き出すのはそう時間もかからないだろう。

その光景を見てか、自由も刀子も表情は暗くなる。

応援が来たことは素直に喜んでいた。

しかし、攻撃魔法の使えない援護専門の相手ではジリ貧になるのが関の山だ。

そう、彼が『普通の魔法使い』であればの話だが。

 

自由「他に応援はいないんですかね……」

紫陽花「……悪い、居てもたっても居られなくて一人で来た」

刀子「お前は戦えるのか?」

紫陽花「いや、俺に出来るのは治癒と援護それに妨害魔法だ」

紫陽花「攻撃も出来んことはないが、殴ったほうがマシなレベルかもな」

刀子「くっ……ピンチであることは変わりないということか……」

 

絶望したように膝を折る刀子。

彼女自身もすでに満身創痍。

魔力も底をつき、立っていることすらきつくなっていたのだ。

 

紫陽花「……君らの魔法はあいつらに効くのか?」

自由「? ええ、使えればどうにかなると思いますけど……」

刀子「だが、拙者たちももう限界でな……」

刀子「見ての通り、立つのもやっとの有り様……」

紫陽花「いや、それなら勝ち目がある」

紫陽花「俺の魔力を二人に渡す」

刀子・自由「はっ?」

 

何を言っているんだ、こいつ。

そんな顔をされて紫陽花もうんざり顔になる。

実はこのセリフ、もう耳にタコが出来るほどに聞かされたものだからだ。

紫陽花の他に、他人に魔力を譲渡出来る存在は居ない。

その事実を聞かされていたとはいえ、である。

論より証拠とでも言わんばかりに、紫陽花は慣れた様子で二人に魔力を送る。

淡い光を発する自分たちの体に少し驚いていたものの。

後、若干のこそばゆさを感じていたりもするが我慢していた。

 

自由「これは……魔力がみなぎってくるっ?」

刀子「あ、ああっ……! これならいける!!」

紫陽花「俺がいる限り、二人くらいなら大魔法連発しようが大丈夫だ」

紫陽花「魔力を送り続けながら支援もする……情けないが俺に出来るのはそれくらいでな」

 

小さく、頼むとつぶやくと自由たちは困ったように笑う。

ピンチを救ってくれたというのに、なんとも謙虚な奴だなと。

しかし、今は笑っている場合でもない。

紫陽花の言ったとおり、麻痺の効果が切れたのか魔物たちが動き出していた。

怒り狂っているのか、甲高い耳障りな鳴き声を発しながら突進。

しかし――。

 

紫陽花「そうはさせないぜ」

 

紫陽花が手をかざすと、再び障壁が発生し護りを固める。

その障壁に阻まれ、ギチギチと顎を動かしながら壁を破壊しようと群がった。

一匹ではびくともしないはずの防御専門の魔法だが、軽いヒビが入り始める。

 

紫陽花「うわっ……数の暴力ってやつだな……」

紫陽花「二人共、行ける?」

自由「魔力さえ戻ればこっちのもんすよ」

刀子「ああ、後は任せてくれ」

紫陽花「頼もしいことで……じゃあサービスだ」

自由「これは……体が軽い?」

刀子「それに力もみなぎってくるぞっ!」

紫陽花「出来る限りの身体強化、かな」

刀子「ありがたい、これで百人力だ!!」

 

刀子はそう不敵に笑い、愛用の薙刀を振り回しながら魔物へ駆け寄る。

人間とは思えないほどの跳躍を見せたかと思うと、落下の勢いと共に魔物を一閃。

それは一体と言わず、複数体の魔物を塵へと変えた。

その一撃に怯んだのか、魔物の勢いが目に見えて衰える。

 

紫陽花「よし、怯んでるぞ!」

刀子「はっはっは、これが拙者の本気だ!」

紫陽花「だけど後ろに気をつけろよっと」

 

死角から噛み付こうとしていた魔物がいたため、刀子自身に障壁をかける。

そのことに気づいたのか、バツが悪そうにソッポを向く。

自由は自由で、何やってんすかねえ、と呆れていたのだが。

 

自由「さってと、さすがに今回は私も鬱憤たまってるんで発散させてもらうっすよ」

自由「……お嬢を頼めますか?」

紫陽花「ああ、しっかり守る」

紫陽花「だからじゃんじゃん行ってくれ、援護はする」

自由「たいていはそれ、役立たずキャラが言うセリフっすけど……」

 

自由は魔法具を振りかざすと、周囲に群がっていた魔物が消し飛ぶ。

一瞬遅れてからすさまじい風を感じたため、風魔法かと紫陽花は判断。

刀子も負けておらず、魔力を宿した薙刀による薙ぎ払いで魔物を屠っていく。

あれほどに劣勢だったにも関わらず、敵が一瞬で数を減らしていた。

散り散りに逃げていた魔物も綺麗に駆除し、刀子は一息ついて戻ってくる。

 

刀子「……礼を言う、もしあの時お主が来ていなかったら後はなかった」

自由「ええ、さすがに今回ばっかりはダメだって思ったっす……」

紫陽花「本当、無事でよかったよ……」

 

紫陽花は心の底から安心していた。

彼にとって他人の死は重要なものだ。

安心したのか、ふと自然と湧いた笑顔。

その笑顔を見た二人の少女はというと……。

 

刀子(な、なんて爽やかな顔で笑うんだ……こやつは!?)

自由(い、いやあ……なんかこっちが恥ずかしくなるくらいいい笑顔っすね……)

 

と、内心動揺+照れていたのだが紫陽花は気づかない。

そんなそれぞれの心境渦巻く中、ようやくもう一人の少女が目を開けた。

 

紫陽花「大丈夫か?」

姫「……」

 

ここで唐突にだが、野薔薇姫という人物について軽い説明をしておこう。

彼女は良いところの生まれで、常に身の回りに世話役がいた。

それらは全て女性で構成されていたため、彼女自身には男性経験はほぼない。

さあ、この予備知識がある状態で、考えてみてもらおう。

今、姫は紫陽花に抱き起こされる形で彼に覗きこまれている。

ピンチに現れて救ってくれた、決して悪くはない顔立ちをした少年。

そこから導き出される結果は――。

 

姫「……王子様、ですの?」

紫陽花「……へっ?」

 

自分にとっての白馬の王子様と盲信するものだった。

その言葉に、なんとなくでも気持ちのわかる刀子と自由は複雑だ。

とはいえ、そのフクザツな心境がどこから来るのかはわかっていないのだが。

……これが、柊紫陽花という少年がこの学園に入って初めてのクエストになったのだが……。

それを知るのはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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