グリモア~守護者~   作:エウラス

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お久しぶりです、エウラスです。

パソコンがぶっ壊れてしまい、現在はタブレットで無理やりキーボード接続からの執筆なのでかなり編集が遅いです(主に電池の消耗的な意味で)

ですが、ノロノロとでも作品を進められたらと思っています。見てくれている人は少ないと思いますが、ぜひ応援お願いします。


繰り返された世界編
第16話


第16話:戻ってきた時間

 

「……い、……生?」

 

声が聞こえる。どこか軽そうな、低い声が俺を呼んでいるようだ。その声に集中していくと、徐々にいろんな感覚がクリアになっていく。やや霞んだ視界には、白い動物のような物が浮かんでいるように見えた。

 

動物?「おいおい、大丈夫か? まだまだ夏には遠いはずなんだが……」

紫陽花(……卯ノ助?)

 

相手が誰なのかを認識した途端、俺……柊紫陽花の感覚が正常に戻っていく。周囲には見覚えのある、街とグリモア学園を繋ぐ森の中の道だった。

 

紫陽花「っ!?」

卯ノ助「うおっ?」

 

慌てて俺は自分の体を確認し、異常がないかを調べる。あの時の感覚や情報を思い出すなら、俺は軍の奴らに襲われて死んだはずだ。おぼろげながらに銃声のようなものを聞いた覚えもある。同時に、仲間たちのリアルな死に様を目にしたことを思い出して吐きそうになった。

 

卯ノ助「お、おい……大丈夫か? 体調が悪いなら、今日は一旦学生寮に……」

紫陽花「ま、待ってくれ! 今日は……今日はいつだ!?」

卯ノ助「はっ? いやいや、今日は3月の23日だろ? 入学の手続きを済ませるために来た、柊紫陽花で間違いないよな?」

紫陽花「……」

卯ノ助「おい……まさか人違いか?」

紫陽花「いや、悪い。何か白昼夢でも見てたみたいで」

卯ノ助「ふうん? まあいいけどよ。手続きは本当に今日でいいのか? 何なら明日にしてもいいが……」

紫陽花「いや、今日で良いよ。心配かけてすまない」

卯ノ助「そうか、ならもう何も言わないぜ。俺は卯ノ助、グリモア学園にようこそ」

紫陽花「改めて。俺は柊紫陽花だ……よろしくな、卯ノ助」

 

『おう』、と気さくに応える卯ノ助に俺は内心パニック状態だった。だが、卯ノ助の反応は明らかに素だし、なによりも周りにあの時のような雰囲気は漂っていない。そして、卯ノ助がいった日付……それは確かに俺が学園への入学手続きをした日付だ。今までのことは全て夢だったのか? そう思ってしまいたかったが、それを俺は否定した。何が起こっているのかは分からないが、あれは間違いなく現実であったことだろう。今でも、俺はあの時の感覚が生々しくのこっているのだから。

 

紫陽花(なら一体、今のこの状況はなんなんだ……?)

 

完全に混乱状態である頭を必死にクールダウンさせながら、ひとつの結論に至る。正直、馬鹿げてるとしか思えないがこれはいわゆる、時間の巻き戻しなのではないか……と。……まてよ、時間の巻き戻し?

 

紫陽花「! まずい!」

卯ノ助「うおっ? 今度は一体何だ??」

紫陽花「う、えっと……今、普段から警戒するのに使ってる感知魔法に反応があったんだ。こっからちょっと離れた森で3人くらいの反応があるんだが、妙に弱々しくて……」

卯ノ助「離れた森に3人……? そりゃもしかして野薔薇たちか? いや、だがそこまで手こずるような内容のクエストじゃなかったはずなんだが……」

 

不思議そうに首を傾げている。まあ、面識のないやつに急に言われたらそういう反応になるよな。さすがに未来から意識だけ飛んできましたなんて言ったところで、まったく信ぴょう性がない。同じ立場であるなら俺だって信じられないだろうしな。思い出したような発言をそうですか、と信じて行動してもらえるほど、俺たちは親しくないのだから。

 

紫陽花「……すまん、卯ノ助! 助けに行ってくる!!」

卯ノ助「!? おいー! 突然何を……」

 

後ろから俺を引き止めるような声が響いていたが、俺はあえて無視して森の中を突き進む。同時に感知魔法の範囲を広げる。程なくして、覚えのある魔力が3つと魔物の反応が大量に感じられ急いでそちらに向かう。そしてほんの少しの躊躇の後、俺は勢いよく2つの短刀を引き抜いた。

 

紫陽花(今でもこの力を使うのは怖い……正直、制御しきれていない力を使って回りが傷つくことが怖い。だけど……)

 

悪夢の中で死んでいった小鳥遊たちの姿が、目をつぶればいやというほどに浮かぶ。そんな光景はもう、二度と見たくはない。今度こそ……俺が守ってみせる!

夢中で駆け抜けていたせいか、予想以上に早くついたようだ。視界に見覚えのある蟻型の魔物に襲われている野薔薇たちの姿をとらえた。今まさに、魔物が噛み付こうとしているのを思い切り跳びかかりながら蹴り飛ばすことで防ぐ。

 

紫陽花「大丈夫か!?」

刀子「なっ!?」

自由「お、応援っすか?」

姫「……うっ」

 

あの時とは状況が若干違うものの、ほぼ同じだ。野薔薇は意識を失っているようで、支倉に抱きかかえられるようにしてぐったりとしている。他二人も満身創痍なんだろう、肩で息をしていた。

未だにこちらを取り囲み、隙を伺う魔物に対して双剣を向ける。あの時とは唯一違うことだ。静かに深呼吸をして、弱めに武器に魔力を宿す。

 

紫陽花「くっ……」

 

ちょっと流しただけで予想以上に制御が難しくなる。……だが、こいつら相手にはこれくらいで十分だろう。俺は暴発しそうになる双剣を身体強化をした手で強制的に押さえつけ飛びかかる。我先にと飛びかかってくる魔物を蹴り飛ばし、その反動で反対側に飛びながらその先に居る魔物を切り裂く。その度に込めきれなかった魔力が乱れ、姿勢を崩す。

 

紫陽花「くっ……!」

 

反動で動けなくなったところに、背後からの突進を受ける。幸い傷は深くもなく、出血も大したことはない。これならまだ動ける。そう思って動き出そうとした俺の腕が引っ張られた。

 

刀子「助けには感謝するが、無茶をするんじゃない!」

自由「そうっすよ……とりあえず、さっきのであなたも魔力を大分使ったはずっすよね。ここは一旦、逃げましょう?」

紫陽花「……すまん」

 

頭に登っていた血がスーッと下がっていき、冷静になるのを感じた。そうだ……一日やそこらで、今まで避けてきたことを克服できるはずもない。俺はさっきと打って変わって、自分の得意な方で力をふるう。回復魔法に身体強化、そして阻害魔法……さらには魔力の譲渡だ。その全てを同時に行いながら、改めて向き直る。

 

紫陽花「一緒に戦ってもらえるか? まだまだ攻撃面は特訓中でな」

刀子「傷が……それに、魔力まで……」

自由「一体……何者なんすか?」

紫陽花「まあ、後で分かるよ。とりあえず今は――」

 

飛びかかってきた魔物の体を避けながら、俺はその体に麻痺毒を振りまく。これで奴らはもう動けないだろう。ここは以前と違い、効率のいい魔術公式を駆使した結果、完全に魔物を無力化することに成功していた。

 

紫陽花「こいつらをどうにかしよう!」

刀子「……そうだな。協力させてもらうぞ!」

自由「じゃ、自分もやらせてもらうっす」

 

そこからの俺たちはまさに無双状態だった。動かない相手に万全の状態の俺たち。それだけで状況は火を見るより明らかだ。満足に動くことも出来ないまま、魔物たちは俺たち……いや、大半が小鳥遊たちの手によって霧に戻された。周囲に魔物がいなくなったことを再確認した後、俺たちはようやく一息つく。

どうやら野薔薇も目が覚めたらしく、体が万全の状態に驚いているのか目を丸くしていた。

 

紫陽花「大丈夫か?」

姫「……貴方が助けてくれたんですの?」

紫陽花「いやあ……俺がやったのは回復魔法と魔力譲渡くらいだよ。ほとんどはそっちの二人のおかげかな」

刀子「何を言う! お主が来てくれなければ、今頃拙者たちはどうなっていたか……」

自由「そうっすよ。……助かりました」

紫陽花「いや……うん、当然のことをしただけだよ」

 

以前と違って多少の余裕があったこともあり、今回は妙にしっかりと話をしていた。

 

姫「……私からもお礼を申し上げますわ。ありがとうございました……えっと?」

紫陽花「? ああ、そうか。俺の名前は柊紫陽花……今日グリモアに転入することになったんだ。よろしく」

姫「転入生の方でしたのね……でも、どうしてここへ?」

紫陽花「俺の得意魔法の中の一つに感知魔法もあってな。たまたまずっと張っていた感知魔法の範囲内に変わった反応があったから来てみたってわけだ」

刀子「感知魔法か……しかし、どの辺りを歩いていたのかは知らぬが、随分と範囲の広いものなのだな」

紫陽花「あはは……まあね」

 

さすがに全開に近いレベルで展開しましたとはいえないので適当にごまかしておこう。

 

紫陽花「とりあえず、いつまでもこんなとこに居るのも何だし……帰ろうか?」

姫「そ、そうさせていただきたいのは山々なのですが……」

紫陽花「うん?」

姫「安心したら、こ、腰が……」

自由「あちゃー、お嬢……腰抜けちゃったんですか?」

刀子「では拙者がおぶっていきます故」

姫「待ちなさいな。貴女たちだってさっきの戦いで疲れているでしょう? 少しすれば治ると思いますし、もうしばらく――」

紫陽花「よっ」

野薔薇家一同『なっ!?』

 

ラチがあかないのでちょっと失礼かなーとか思いつつも、野薔薇をお姫様抱っこの要領で抱える。うわっ、野薔薇ってかなり軽いんだな。

 

刀子「お、おお、お主! いきなりなんてことをしておるのだっ!?」

紫陽花「えっ? いやさ、あまりここに居たら危ないかもしれないだろ? 俺はまだ体力に余裕あるし、俺が運んだほうがいいんじゃないかと……」

刀子「そ、それはまあ確かにそのとおりなのだが……」

自由「まあまあ、ここは柊先輩に任せて帰りましょーよ。……正直、一秒でも早く帰って休みたいですし」

姫「そ、そうですわね……その……お願い出来ますか?」

紫陽花「あいよ。任された」

 

本人から直々に頼まれたので改めてしっかりと抱え直し、歩き出した。

 

紫陽花(今のところは……概ね以前と同じか)

 

帰路につきながら、俺はふと前回との違いを考えていた。多少の出会い方に違いは出たものの、概ね過去と似た状況のようだ。

 

紫陽花(でも、このままじゃダメだ。積極的に行動をとらないと……!)

 

本当ならばすぐにでも野薔薇と話をして、軍の中に不穏分子がいることを伝えたい所だ。だけど、互いの間に信頼関係すら気づけていない今、そんなことを伝えるのは明らかに愚策だろう。そうなると――。

 

紫陽花(勝負は、京都出張クエストのときか……)

 

おそらく、この時間軸でも俺を狙ったとかいう理由で仕組まれた京都へのクエスト要請が来るはずだ。とは言え、その辺りは確定とは言い切れないのも怖いところだな。なるべくは過去の俺と同じように行動できるようにするが、全てが同じように動くかはわからない。これからの行動が、もしかするとまたあの『残酷な未来』へとつながる可能性がある。

 

紫陽花(ぞっとする話だな……)

 

知らず知らずのうちに双肩に乗せられた重さに潰されそうになる。だけど、それ以上に……あの光景を二度と見たくないという思いのほうが勝っていた。

 

紫陽花(……まずは、情報収集と関係の構築……それからだ!)

 

決意を新たに、学園への道を歩いた。

 

 

 

 

 

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