パソコンが壊れてしまったため、執筆速度が激減中ですがお察しください(泣)
今回はなんと朱鷺坂チトセの登場です。原作では中盤?になって関わるようになった彼女ですが、今作品ではなんと序盤に出ます。ですが、主人公の存在は原作とちょっと違っている部分があります。それは主人公が時間の繰り返しを理解していること、そして、その時間は朱鷺坂チトセの経験したいわゆる裏世界とは違う末路を描いているという点です。裏世界については出ることはまずありません。本作の舞台はあくまで、表?のみです。
第17話:協力者
転校初日に戻ってから、俺は大きな事柄に関してはなるべく以前と同じように動いていた。理由は簡単だ。どんな些細なことがあの未来へつながる要因になるかわからない以上、下手な改ざんをすれば取り返しがつかない未来を招く恐れがある。それを危惧してだ。だからこそ、俺はほとんど同じように振る舞ってきたし、イヴを含めた風紀委員たちとのクエストでもわざと怪我を負って、過去になぞらえた動きをしてきたわけだ。
……だからこそ、俺は突然現れた一人の女子生徒相手に混乱している。
チトセ「貴方は、一体何者なのかしら?」
開口一番そんなことを言われたら誰でも固まるだろう。だが、俺の場合はその『誰でも』に当てはまる驚きじゃすまない言葉がその後に続く。
チトセ「『私の知っているもう一つの世界』には貴方はいなかったわ」
紫陽花「っ!?」
チトセ「貴方の存在が、少しずつだけど学園の雰囲気を良くしていっているのも気がかり。それになにより、その能力の特異性……」
紫陽花「……」
チトセ「もう一度聞くわ……貴方は一体何者なのかしら?」
紫陽花「何者って言われても困る。それにだ、今時そんな冗談なんて誰も信じないだろ」
急に現れたその女子生徒、朱鷺坂チトセは妙に不思議な雰囲気を持っていた。とはいえ、まずありえない……だが、だからこそ俺は一つカマをかけてみる。なんの気もなし、といった体で言い放った俺の返事に軽く眉を歪めてため息をつく朱鷺坂。
チトセ「それでごまかしているつもりかしら? それとも、私が冗談を言っているか確認でもしたいの?」
紫陽花「いやいや、ごまかしてるわけじゃなくてだな。普通、そんなとんでもない話をされても普通の人間は戸惑うだろ」
チトセ「そうね……普通なら、鳩が豆鉄砲を食らったような感じで目を丸くするわね。もしくは、素っ頓狂な声で返事されるか、怪訝な表情でみられるか。……だけど、柊紫陽花くん。貴方は明らかに反応が違う。笑顔のつもりかもしれないけれど引きつってるし、微妙にだけど……震えてるわよ?」
紫陽花「っ!?」
言われてきづいた。確かに俺の腕、足は小刻みに震えている。この分じゃあ顔が引きつってるってのも間違いじゃなさそうだな。俺は観念してため息をつきながら朱鷺坂を見た。
紫陽花「まさか俺以外にも時間の巻き戻しを経験してるやつがいるとは思わなかったよ」
チトセ「時間の巻き戻しに関して言えば、正確には貴方以外にもいるわよ。それよりも私が気にしているのは、私のいた世界に貴方がいなかったって言うことなの」
紫陽花「? さっきもそんなことを言ってたな……どういうことだ? 俺からしてみれば朱鷺坂を見たのは今初めてだ。前回の時、俺は朱鷺坂が生徒会のメンツにいるのをしらなかった」
チトセ「……どういうこと? この世界がとても安定しているように思えるのは、もしかして……」
所々が小さすぎて聞こえなかったが、どうやら向こうにとっても俺の存在は色々とイレギュラーだったようだ。混乱しているようだが、それに関して言えばこっちだって同じだ。俺以外の人に時間の巻き戻しがあったという記憶はないっぽいし、そもそも出会いとかいろんなものがリセットされた状態だったんだから。
確かに、いくらかの生徒との出会いやらは早めに起きちまったけど、それが関係しているとは思えないしなあ。
チトセ「少なくとも、貴方がこの世界にとっての害ではないのは確かだと思うけれど」
紫陽花「おい」
チトセ「言い方が悪いのはごめんなさい。けれど、『あんな状況』を見せられたら、誰でもそうならないようにしようと動くはずよ」
紫陽花「『あんな状況』……」
あの時の光景が脳裏に浮かび、俺は思わず口を手で覆っていた。胃からせり上がってくる物を無理やり飲み下し、湧き出る不快感に顔をしかめる。今の俺は相当ひどい表情をしているだろう。それを見たのか、朱鷺坂は少しだけ表情を和らげていた。
チトセ「どうやら、貴方も被害者側だったようね」
紫陽花「……というと、朱鷺坂も?」
チトセ「……少し立場としては微妙な立ち位置ではあるけれど、あんな光景は二度と見たくないと思うわ」
唇を噛み、悔しげな色を含んだ声音でそう答えた。きっと朱鷺坂のほうにも色々あったんだろう。
紫陽花「結局のところ、あんなことになった原因がはっきりつかめてはいないんだよな……」
チトセ「? 単純な結束力の低さ、そして戦力の違いによるものだと思っているのだけれど、違うのかしら?」
紫陽花「それだけじゃ、軍の奴らに殺されるなんてことにはならんだろ。絶対に裏に黒幕が――」
チトセ「ちょ、ちょっと待ちなさい。貴方は……今どんな状況でこの場にいるの?」
紫陽花「うん?」
何やら様子のおかしい朱鷺坂を置き、俺は最初にこの学園に来たときのことから話すことにした。それからはクエストに参加しつつも平和な毎日をすごしていたこと、その先で第六次大規模侵攻が起こったこと……そして、その最中に銃殺されたことを説明する。それらを聞いていた朱鷺坂の表情がどんどんと険しくなっていた。
紫陽花「その後……俺は一時的に思考放棄みたいな感じになっちまって……多分、撃たれたんだと思う。意識が途切れる瞬間、地面に倒れたような衝撃を感じたからな」
チトセ「……じゃあ、貴方は別の世界から来たわけではないのね?」
紫陽花「さっきから度々出てるが、そのもう一つの世界ってのは一体……」
チトセ「そうね……本来であればそれをいうには時期が早いとは思うけれど」
そこで意味有りげな視線を俺になげかけた朱鷺坂がしばらくの間、逡巡するかのように静止する。
チトセ「貴方だけであれば下手な混乱を招く可能性は低いとは思うし、話してもいいわ」
紫陽花「いいのか?」
チトセ「ええ、でもくれぐれも他言無用でお願いするわ。あまりにも荒唐無稽な話だし、『敵』がどこに潜んでいるのかもわからないから」
紫陽花「……なるほど、分かった。まあ、言ったところで変なやつだと見られる程度で終わりそうだけどな」
『かもしれないわね』、と苦笑いを浮かべたあと、朱鷺坂は色々なことを教えてくれた。俺達が現在こうして過ごしている世界とは別に、とあるゲートを仲介して行けるもう一つの世界が存在しているんだそうだ。そこは、こちらの世界が『なるはず』の世界……つまりは遠くない未来の姿らしい。俺の場合は皆が死んだ理由は人為的なものとはっきりしていたが、そちらでは魔物の侵攻に対抗できずにジリ貧状態となった結果みたいだ。グリモアの生徒で生き残っている存在もわずかで、人類は滅亡寸前だという情報までついてきた。
あまりの内容に俺は深いため息をつく。この世界がもしかしたら、そんな凄惨な状況に陥ってしまうかもしれないほどに追い詰められているだなんて。
チトセ「……以上が私の知っている内容よ」
紫陽花「ありえない……と、以前の俺ならそう言ってただろう。だけど、俺は色々と経験した後だしな」
チトセ「そう言ってもらえると助かるわ」
紫陽花「しかし、なんで朱鷺坂だけで? 他の奴らはこれないのか?」
チトセ「色々と事情があるのよ。ゲートだって存在を知っているのはこちら側の人間でも数名しかいないんだから。下手に知られればこっちへと流れてくる危ない人間だっているでしょうし」
紫陽花「そりゃそうか、俺だって安全な場所があるって言われたらそっちに逃げるだろうし」
色々とわからないことは多いが、朱鷺坂の抱えているだろう事情もなんとなく察した。だが、あまりにも規模の大きい内容に対して、俺は何もしてやれることが思いつかなかった。そんな俺の考えが読めたのか、彼女は困ったような笑みを浮かべながら首を振る。
チトセ「貴方には貴方の守りたいものがあるのでしょう? 無理に私に協力する必要はないわ」
紫陽花「だけど……」
チトセ「それにね」
紫陽花「うん?」
会話をぶった切る勢いで遮られたが気にせず、俺は先を促した。そんな俺を面白そうに見ながら、朱鷺坂は笑った。
チトセ「貴方は意識しているのかわからないけれど、貴方の存在がこの学園を良い方向へ導いているのよ」
紫陽花「はい?」
俺の存在がこの学園を? 特に実感の湧いてない俺は腕を組んで首を傾げていた。だめだ、全く思い当たることがねえ。
チトセ「どうやら素みたいね。貴方は難しいことを考えず、普段通りに行動しているといいわよ」
紫陽花「意味深なことを言われると逆に気になるんだが……」
チトセ「そう? じゃあ一つ例に上げるけど……貴方は朝比奈龍季と関わっているわよね?」
紫陽花「朝比奈と? まあ、軽く訓練に付き合ったりはしてるけどそれが?」
朱鷺坂から挙げられた例は意外なものだった。確かに俺は巻き戻った時からいろんなやつと関わるようにしてきている。それはひょんなところから情報が入ってくるかもしれないと思ったからだ。朝比奈のやつはとあるきっかけがあって、俺と似たような状態であることをしって協力している。あいつの場合は魔法自体が扱えなくて暴走しているが、防御が得意な俺ならと相手を了承してくれた。おまけに俺の場合、魔力譲渡もあるから時間が許す限り訓練できるしな。
チトセ「ええ、それが大切なのよ。確かに大きな力に対しての小さな力かもしれないけれど、貴方が関わったことで不安定だった力の一つが安定しているのだから」
紫陽花「そっちでは違ったのか?」
チトセ「少なくても、今ほどに魔法を使いこなせるようになった彼女を見た覚えはないわね」
紫陽花「そうだったのか……」
チトセ「ええ、貴方がいなくても変わっていたかもしれないけれど、『貴方がいたことで』変わっている子達は多い。それも一人や二人じゃないのよ。それがどれほどにすごいことか、あなた自身はわかっていないみたいだけれど」
紫陽花「う、ううん……」
言われてみても全く実感できない。だって俺、自分勝手に関わって相手の事情に首突っ込んでるんだけだぞ? 下手をすれば厄介者だと思われていたって不思議じゃないはずなんだが……。そんな俺の反応が面白いのか、朱鷺坂はしきりに笑っていたが、ふと……マジな顔でこちらに視線を送る。
紫陽花「どうした?」
チトセ「本来であればこの情報を伝えるのはもっとあとのつもりだったけど、こうして共有できる相手ができたことは非常に喜ばしいことなの。だから、多少なりともあなたに協力できることがあれば言ってちょうだい。できうる限りのことはするわ」
紫陽花「朱鷺坂……」
チトセ「確かに貴方がこちらの事情に全面的に協力してくれると助かるけれど、貴方には警戒すべき対象がいるのでしょう?」
紫陽花「それは……」
チトセ「タイミング的に、どうやら第六次侵攻と同時期のようだし……こちらとしても不確定要素は潰しておきたいのよ。こちらと完全に無関係ともいかないみたいだし」
紫陽花「そうだな……もう一つの世界がそうなったのも、もしかしたら同じ線でつながっているかもしれないってわけだ」
チトセ「そういうこと」
朱鷺坂が頷いたのを見て、俺も改めて意識をあの時のことに向ける。……理由はどうあれ、俺はあの日を二度と繰り返すわけには行かない。その首謀者が必ずいるはずだ。俺はなんとしてもそいつを見つけ出して対策をとらなきゃいけない。
紫陽花「早速で悪いんだが……情報に強い奴に知り合いとかいるか? 特に、軍関係に強いと助かるんだが」
チトセ「軍……ね。直接的なら野薔薇のお嬢さんか神宮寺家のお嬢さんに聞くのが一番だけれど」
紫陽花「流石にそれは無理だ。いくらなんでも信頼関係が弱すぎる」
チトセ「でも案外いけるのではないかしら? 少なくとも野薔薇のお嬢さんは貴方を高く評価しているはずよ?」
紫陽花「あのなあ……いくら恩人の話だからって、こんな無茶苦茶な話を『そうですか』と受けてくれると思うか? 俺だって自身に起きた現象がなけりゃ、朱鷺坂の話だって信じなかったはずだ」
チトセ「それは……確かにそうかもしれないわね。そうなると直接聞くわけには行かないっていうことになるわ」
紫陽花「一応、野薔薇たちとは積極的に関わっていって、いずれはこの話を告げるつもりではある。だが、それは今じゃない。それ以外でできることがないかを探してるわけだが……」
俺がそう告げると、朱鷺坂は少しだけ考え込むような仕草を見せてから顔を上げた。
チトセ「そうなると、ちょっとした裏技に頼るしかないと思うわ」
紫陽花「裏技?」
チトセ「あまり褒められたことではないけれど、軍のデータ端末に直接探りを入れるのよ。要はハッキングね」
紫陽花「おいおいおい! そんなのバレたらとんでもないことに――」
チトセ「バレないとしたら?」
紫陽花「っ!?」
やけに自信満々な様子に、俺は二の句を継ぐ暇なく言葉を飲み込んだ。満足そうに笑いながら、朱鷺坂はとある生徒たちのことを教えてくれた。
双美心と遊佐鳴子という二人だ。二人共初対面ではないが、さして親しいわけでもない。それに、遊佐はなんとなくわからなくもないが、双美がそんな技術を持っているように思えないんだが……技術力云々より、性格的に。
チトセ「まあ、そうね。『普段の双美さん』であればたしかにそうかもしれないわ」
紫陽花「はあ?」
チトセ「騙されたと思って今度会いに行ってみなさい。そうね……結城さんにでも頼んで呼び出してもらってあげるから、都合がいいときにでももあっとで連絡してきなさいな」
紫陽花「お、おう……」
意味深な笑みを浮かべながら朱鷺坂は俺の端末にもあっとで履歴をのこしてきた。これで俺から彼女に連絡をするのは可能になったわけだが、いつの間に俺の端末の情報を調べたのだろうか。まあ、監視されてたっぽいことは会話の端々から察することもできたし今更か。
チトセ「さて、長く話し過ぎちゃったわね。放課後とは言え、そろそろ門限にうるさい風紀委員が動き出す頃でしょうし、このあたりにしておきましょうか」
紫陽花「そうだな」
言われて見回してみれば、周囲はすでに薄暗くなっていて夕日が沈もうとしているのが見えた。部活動をしていればこんな時間でも多少は言い訳できるかもしれないが、あいにく俺は帰宅部だしな。
チトセ「それじゃあ、また何かわかったら連絡するわ。そちらももし何かあれば些細なことでもいいから教えてね」
紫陽花「ああ、了解。それじゃあ――」
チトセ「あ、そうそう」
紫陽花「ととっ? その言葉を遮るのはやめてくれないか?」
チトセ「ふふ、ちょっとした偶然よ。それよりも、貴方は攻撃魔法について悩んでいるのよね?」
紫陽花「……もう驚かないぞ」
チトセ「あら残念。それはさておき、それならば東雲アイラさんか生天目つかささんを頼るといいわ。アイラさんは長く生きている吸血鬼だから経験も豊富でしょうし、生天目さんならきっとよろこんで手合わせしてくれるはずよ」
紫陽花「さらっととんでもない情報が出たような気がするんだが……わかった、考えておくよ」
チトセ「ええ、それじゃあ……良い夜を」
ほぼマイペースを通して去っていく朱鷺坂を見送り、俺は学生寮へと向けてあるき出した。
紫陽花(東雲か生天目を頼れ、か……)
東雲については全くといっていいほど情報がないが、生天目ならたしかに訓練くらいには付き合ってくれそうだ。それこそ、魔法の暴走で怪我を負おうがお構いなしに戦いそうだしな。吸血鬼って情報を信じるなら、東雲のほうにも当たりをつけておくべきかもしれない。
そして、肝心な情報についてだが……これまたある意味まっさらな状態からのアプローチをかけなきゃいけないわけだ。幸い、取っ掛かりは朱鷺坂がどうにかしてくれるらしいから任せるにしても……。
紫陽花「なんか、知らないうちにとんでもないことに巻き込まれちまってるな……俺」
今回ようやく話をできる相手が一人出来たからよかったものの、正直な話……精神的にはかなり参っていた。あまり考えないようにしてはいたが、限界はある。夜眠れば未だにあの日の光景を見ることもあった。そんな日は眠ることも出来ず、朝になるのを淀んだ思考で考え込んで過ごす日々。自分で言うのもなんだが、今もなおよく潰れなかったなと思う。それはただ一心に、『やり直したい』と思ったからだ。流されてばかりではなく、俺はもっと周りを見て、漠然ではない明確な目標に向かって生きる。それが今の俺の生き方だ。
紫陽花「っし! 気張ってくぞ!!」
端から見れば恥ずかしいことをしつつも、俺は自分への喝を入れて寮の門をくぐった。
朱鷺坂と出会ってから数日たったある日のこと。例のごとく購買で買ったジュースで喉を潤していると、もあっとに見慣れぬ名前のメッセージが届いていることに気づいた。
『お、お久しぶりです先輩! 私、瑠璃川秋補です、覚えてらっしゃるでしょうか?』
おおう、まるで真面目っ子のテンプレのような文面だな。まあ、多少子供らしい部分も出てるけど。時間を見てみるとついさっき送られてきたみたいだし、ちょっと返事でも書いてみるか。
『ああ、覚えてるよ。散歩部の子だよね』
『そうです! よかったぁ……覚えててもらえて』
予想以上に早い反応に若干驚きつつ、メッセージを返すことにした。
『どうした? 何か困ったことでもあったか?』
『あっ、いえいえ! そういうわけでは……ないんですけど。先輩、明後日の日曜日は空いてますか?』
『大した用事は入れてないよ』
日曜はせいぜい、新しい料理に挑戦してみるかと思ってた程度だ。だからもし何らしかの要件があるなら手伝うのもやぶさかじゃない。ただ、それっきり待ってみても全くもあっとへのメッセージが届かず、後でくるかなと思ってしまおうとしたところでメッセージの到着音が響いた。
『すみません、お姉ちゃんから逃げるのに時間がかかってしまいました。よろしければ、買い物に付き合っていただけませんか? その……出来れば、お姉ちゃんにバレないように』
『というと、その買い物の内容はもしかして、お姉さんへのプレゼントかな?』
『はい、いつも頑張ってくれているお姉ちゃんに、せめて何か送れたらなって思いまして……』
ふむふむ、なるほど。過保護な姉に億劫そうにしてはいるけど、やっぱり仲はいいんだな。そういうことなら付き合うのも構わないんだが……。
『俺、そういうプレゼント選びのセンスないぞ? 最悪荷物持ちだけになるかもしれんがいいか?』
『大丈夫です! 先輩のこと信じてますから!』
無条件な信頼がきつい!
『分かった、今度の日曜何時にどこで待ち合わせる?』
『そうですね。じゃあ、12時に風飛市のショッピングモールでお願いします!』
『12時にショッピングモールな。了解』
『はい! 待ってますね!』
文面から喜んでいるだろう様子がはっきり読み取れる内容だったな。これをすっぽかしてはいかんだろう。
状況的に遊んでいられるような場合ではないのだが、根を詰めすぎるのもまずいのはわかっている。今度の日曜はつかの間の休日を楽しみますかね。
小さく笑いながら、空になって不快な音を立てるストローから口を離し、ゴミ箱へと放るのだった。