グリモア~守護者~   作:エウラス

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第一話

第一話:ようこそ、リリィクラスへ

 

さて、俺は転校初日から魔物との戦いを経験した。

そんなドタバタなんかもあり、結局土日を挟んでの今日が初日。

すでに担任になる先生が先に俺の入学をクラスの皆に話してくれてるようだ。

あー……こういうのって結構緊張するもんなんだな。

転校とかって初めてだから慣れない……。

そもそも、しばらくまともな学生生活も送ってなかったしな。

 

担任「……というわけで、それでは入ってきてください」

 

ついに出番か……俺は小さく息を吸ってはき、ドアをあけて教室に入った。

 

中に入りまず感じるのは二つのこと。

やっぱり物珍しいのか、視線が痛い。

そして、女の子が多いってことだ。

男女比にして8:2とかいってたけどこれ、俺しか居ないじゃん。

なにこれ、大丈夫なのか?

教卓の後ろに立つと先生が頷く。

 

担任「彼がこの度、このクラスに編入された柊紫陽花くんです」

担任「さ、軽い自己紹介をお願いね?」

紫陽花「あ、はい」

紫陽花「えっと、さっき紹介されたけど柊紫陽花って言います」

 

言いながら黒板に名前を書く。

名前が珍しいから、これを見せておくと結構覚えてもらえたりする。

 

紫陽花「得意なことは料理、趣味は本を読んだりゲームしたりかな」

紫陽花「魔法の方は……」

姫「あ、貴方はあの時のっ!?」

紫陽花「んっ?」

 

いきなり声を荒げながら席を立つ金髪の女の子。

髪に薔薇を模したアクセサリを付けて……って!

 

紫陽花「君はあの時の!」

紫陽花「……もう大丈夫?」

姫「だ、大丈夫ですわ……ご心配痛み入ります」

自由「ありゃ、転入生だったんすね」

自由「通りで見慣れないなあと思いましたよ」

紫陽花「あ、君もいたのか。じゃあもしかして……」

刀子「ああ、拙者もいるぞ」

紫陽花「おお、奇遇だな!」

 

まさか顔見知りが一人も居ないと思ってたところに知り合いがいるとは。

まあ、いっても単に助け合った仲なんだが。

ふと気が付くと、周りが少し騒がしい。

ああ、そりゃいきなり転校生が溶けこんでたら戸惑うわな。

 

智花「は、はいっ! 質問です!」

紫陽花「ん? ああ、どうぞ?」

智花「事情がよくわからないのですけど、転校生さんは野薔薇さんたちとお知り合いなんですか?」

紫陽花「あ、ああ……そのことか」

紫陽花「えっと?」

姫「そういえば、助けていただいたというのに自己紹介もまだでしたわね」

姫「私は野薔薇姫、由緒正しき野薔薇家の娘ですわ」

紫陽花「へえ、やっぱりお嬢様だったのか……すごいな」

紫陽花「と、あの時のことを話しても……?」

姫「問題無いですわ」

姫「というか、智花さん。この方がこの間お話していた人ですよ」

智花「ええっ!? それじゃあ貴方が野薔薇さんたちを助けた人なんですかっ?」

 

智花と呼ばれた女の子の言葉に教室がざわつく。

……? なんか妙に驚いてるようだけど、なんかあったのか?

 

紫陽花「助けたとはいっても、魔物を倒したのはそっちの二人だよ?」

自由「あ、自分は小鳥遊自由っす」

刀子「拙者は支倉刀子だ」

紫陽花「あ、よろしく」

 

なんかせわしないなあ、とか思いながらも楽しんでるのもまた事実。

先生も苦笑いしながら続けていいよというジェスチャーを送ってくれた。

まあ、ここまで騒ぎになってたらもう授業って雰囲気じゃないわな。

それを皮切りに、クラスメイトの大半が興味深げに近づいてきた。

う、うわ……さすがに女の子ばっかに寄られるのは緊張するな。

なんかいい匂いするし……。

 

智花「でも、私は転校生さん……あ、失礼しました」

智花「柊さんが皆さんを守ってくれたとも聞きましたよ?」

紫陽花「そういう意味ならあってるのかな……?」

紫陽花「俺がやったのは敵の行動阻害と障壁による防御くらいで……」

刀子「何を言う、魔力をくれたではないか」

全員『魔力をっ!?』

紫陽花「……やっぱおかしい?」

エミリア「お、おかしいというより……そんな方がいらっしゃるとは思いませんでした」

焔「どうせホラだろ?」

姫「私の恩人にそのような口の聞き方は許しませんよ!」

焔「ちっ……面倒臭えな……悪かったよ」

 

野薔薇に睨まれ、フードをかぶった女の子が舌打ちしながらそっぽを向く。

なんとも口の悪い子だな……まあ、そう言われても仕方ないのかもしれんけど。

しかしどうなってんだ、このクラス。

よくよく見れば明らかに高校生とも思えない子がいるが。

 

紫陽花「信じられないかもしれないけど本当だよ」

紫陽花「支倉と小鳥遊はわかると思うけど」

あやせ「ど、どんなかんじでした?」

自由「いやー……ありゃ形容しがたい感覚でしたね」

自由「例えるなら、常にMP全開の魔法打ちたい放題って感じっす」

葵「まあまあっ、それはすごいですねっ!」

刀子「ああ、あれは本当にすごい力だった」

刀子「立つのも難しい状況から形勢逆転出来るほどにはな!」

智花「普通はそれだけの魔力を渡したら柊さんが危ないと思うんですけど……」

姫「っ!?」

姫「だ、大丈夫なんですの?」

紫陽花「ん? 全然」

紫陽花「あれくらいなら小魔法うつのと変わんないよ」

一同「……」

紫陽花「あ、あれ?」

 

急に皆黙り込んじゃったんだけど……変なコトいったかな?

 

エミリア「先生、少し頼みがあるんですけど」

担任「何かしら?」

エミリア「今から全力の大魔法を打ちたいんですが……」

担任「あらら……柊くんの底を知りたいということですね」

担任「……ということだそうですけど、大丈夫ですか?」

紫陽花「いや、別に俺は構わないんですけど」

 

授業はいいのか、とか思ったけど今更だよな。

そんな俺の返答に満足したのか、エミリアは笑顔で告げた。

 

エミリア「では、訓練所にいきましょうっ!」

 

 

エミリアに連れられて、俺は訓練所とやらに訪れていた。

殺風景な部屋にホログラムで魔物の姿が投影されている。

南……南智花いわく、魔法で周囲を覆っているため被害はでないとか。

なるほど、訓練所っていうだけはあるか。

しかしまあ、気づけばクラスにいた全員が来ている。

道中にさっくりと自己紹介はうけたけど覚えれるかな……。

そんな中、エミリアの魔法使いとしての服なのかマーチング部がしてそうな服装をしていた。

手にはレイピア……服装も相まってイギリス紳士……いや、淑女?に見える。

 

エミリア「私は大魔法を2発が限界で、それ以上は撃てません」

エミリア「なので2発打つとかなり疲労が出ると思います」

紫陽花「魔力は生命力だからそうなるだろうね」

エミリア「ええ、ですが命に危険を伴うほどの疲労ではありません」

エミリア「……では、行きます!」

 

そう宣言したかと思うと、彼女はレイピアを構える。

ああ、それなりの魔力をレイピアに集中させてるな。

ってことは強化系をつかった魔法かな?

しばらく見守っていると、全てが最高潮になったところで――。

 

エミリア「セェイッ!!」

 

渾身の踏み込みとともに細く、素早い突きが繰り出される。

その一撃は鋭い風をまといながら訓練所の壁に軽く穴を開けていた。

……あれ? 防壁張ってるんじゃないの?

明らかによろしくないレベルの穴が空いてるのがみえるんだけど……。

そんな俺をさておき、幾らかの疲労を見せつつ、彼女は再び同じ構えをとる。

そして――。

 

エミリア「セェ、イッ!!」

 

先程より若干、勢いが落ちたもののほぼ同威力。

そう見える突きが再び訓練所の壁に穴を開けた。

……防壁、張ってるんだよね?

だんだん不安になってきたんだけど。

とと、そんなこと考えてる場合じゃない。

レイピアを地面に突き立てて苦しそうにしているエミリアに駆け寄る。

 

紫陽花「大丈夫かっ?」

エミリア「え、ええ……死にそうなくらい疲れてます、が……」

紫陽花「じゃあとりあえず持続的に魔力を渡すよ」

エミリア「そ、そんな簡単に――」

エミリア「……っ!?」

 

淡い光を受けて、エミリアの表情が驚愕に染まる。

まあ……さっきまで疲れきってたのに一気に絶好調だろうからなあ。

そりゃあ慣れない感覚に驚くのも仕方ないかもしれない。

エミリアは自身の体の調子をくまなく調べているようだ。

ひと通り調べた後、彼女は再びあの構え取る。

その姿に皆ざわついているようだ。

なんせ、すでに2発打った後だしね。

とか他人ごとに考えていると――。

 

エミリア「セェイイッ!!」

 

さっきの技を、連続で『5発』放つと、その上で元気をアピール。

それを見たクラスメイトが皆驚きの声をあげていた。

 

エミリア「も、もう大丈夫ですよ? さすがに貴方の魔力が……」

紫陽花「えっ? もういいの?」

紫陽花「そんな使ってないけど」

エミリア「え”っ?」

紫陽花「?」

姫「……本当になんともないんですの?」

紫陽花「? うん、まったくもって元気だけど」

焔「ならなんでもいいから魔法打ってみろよ」

紫陽花「いいけど、俺って攻撃魔法撃てないんだよね……」

紫陽花「全員の身体強化と治癒、それに障壁展開でいい?」

焔「……はっ?」

紫陽花「……オールマイティー・ゾーン!!」

 

そう唱えると、俺を除くクラスメイト全員に支援をかける。

持続的な回復を行いながらも障壁で護り、なおかつ身体能力の底上げ。

これは俺を中心に一定範囲の人間を対象にしている。

俺に出来る最大の支援だが、正直これだけやってもそんなに疲れない。

……よくよく考えたら、俺の魔力総量って確かに多いのかも。

 

智花「だ、だだ、大丈夫なんですかっ?」

紫陽花「えっ? 別に……」

焔「う、嘘だろ……? これかなり魔力使ってるだろっ?」

萌木「あわわ、なんだか体が軽いですっ」

刀子「ほお、あの時も思ったがやはりこの感覚はいいな」

自由「チート全開でゲームプレイしてる気分すね」

 

その例えはいかがなものだろうか。

別に俺の障壁は万能じゃないし、身体強化だってまだまだ未熟。

治癒能力に関してだけは自慢できるが。

 

シャルロット「なんと神々しい御力でしょう……神の御業でしょうか?」

秋穂「すごくほんわかしますう~……」

浅梨「本当、すごく安心しますね」

ゆかり「う~……回復魔法には自信あったけど、自信無くしちゃうかも……」

紫陽花「まあ……なんだ、この程度の魔法じゃあまり証明にならないかな」

千佳「いやいやいや、あんたどんだけ謙虚なのっ!?」

千佳「双美ほどじゃないけど」

心「く、比べられてすいませんっ!」

紫陽花「いや、なんで謝られるのっ!?」

 

むしろ、謝るのは間宮の方だと思うんだけどっ!

何故か土下座する双美を必死になだめながら心中で叫ぶ。

 

聖奈「これはまた……ずいぶんと規格外だな」

香ノ葉「でも、これだけの魔力もってるのに攻撃でけへんの?」

紫陽花「……ああ、悪いけど過去に色々あって、攻撃魔法だけは拒絶がな」

葵「……そうだったのですか」

 

それきり、周囲は何も聞こうとはしなかった。

正直、助かったと内心ほっとしている面も多い。

あの時のことはあまりにもつらすぎて話したくないからな。

色々と個性的な子が多いんだろうけど、気は遣えるみたいで嬉しい。

 

姫「と、ところで……いい加減魔法を止めなくても?」

紫陽花「もう満足してもらえた?」

焔「……あんなのを見せられた上にこんな魔法つかわれちゃあな」

智花「いいなあ……エミリアさん」

エミリア「ふふ、なんだか病みつきになりそうですね」

エミリア「全力で動き続けても疲れないというのは」

紫陽花「お気に召したようで何よりだよ」

エミリア「ただ、ちょっとくすぐったいですね」

紫陽花「……そうなの?」

刀子「ああ、そう言えばそのような感覚はあるな」

自由「あの時はそういうの気にしてる状況じゃなかったっすけどね」

紫陽花「まあな」

 

そう笑って、俺は魔法を解除した。

……うん、そんな長時間使ってないし疲れはないな。

しかし、くすぐったいのか……まあ違和感みたいなもんなんだろう。

 

紫陽花「数分あれば戻る程度、かな」

聖奈「待て、それはまさか……さっき消費した分の魔力がということか?」

紫陽花「うん、俺は魔力が貯まるのも早いみたいでな」

紫陽花「さっきくらいのなら10分もいらん」

秋穂「ふわぁ……すごいですね!」

浅梨「羨ましい限りです~」

聖奈「……それにしてもだ、エミリア」

聖奈「いくらなんでもあれはまずいのではないか?」

エミリア「あ、あはは……ちょっとやり過ぎました?」

 

最初の2発くらいまでなら良かったかもしれない。

だけど、エミリアが最後にやった5連発はまずかった。

ちょっと穴があいちゃってるなっていうレベルが風穴開いてるな、になってるもん。

見れば先生も青い顔をして『減給!?』とかつぶやいてるし。

大丈夫、なんかあったら俺も弁護手伝います……。

 

紫陽花「でも、俺は一人だと弱いからなあ」

紫陽花「討伐系のクエストには基本、誰かについていく感じになるんだろうか」

智香「柊さんはたぶん、討伐隊に組まれると思いますよ」

紫陽花「うそん」

姫「ご謙遜を」

姫「それほどの力を持っているのですから当然ですわ」

紫陽花「うーん……まあ、前線に立てるなら願ってもないことだけど」

自由「意外っすね、なんか戦いには進んで行かないように思ったっす」

紫陽花「前線って言ったら激戦区だろ?」

紫陽花「……少しでも多くの人を守れるかもしれないからな」

 

そうつぶやいて、室内でもあるにも関わらず視線を上げる。

……あんなこと、二度とあっちゃいけない。

決して。

と、過去を思い出してると皆が困ったような表情を浮かべていた。

しまった、すぐこれだ。

 

紫陽花「すまん、ちょっと考え事してた」

姫「そ、そうですの? 無理は……」

紫陽花「うん、してないから大丈夫」

紫陽花「皆、もしやばそうなクエストが来たら言ってくれ……絶対に守るから」

姫「っ……!」

姫「よ、喜んで……」

 

うん? なんか野薔薇の顔が赤いな。

ここの所気温の上下激しかったし、それか。

いや、それ以前にこの前は大変だったんだ。

体調を崩していてもおかしくはない。

 

紫陽花「体調悪かったら言ってくれよ?」

紫陽花「治癒魔法は得意だから」

ゆかり「あ、あのですね。柊くん」

紫陽花「うん?」

ゆかり「実は、今回のような場合は特例ですが……」

ゆかり「クエスト以外での魔法の使用は基本的には禁止なの」

紫陽花「えっ、そうなの?」

エミリア「ええ、最大の理由は私闘を防ぐためのようです」

聖奈「まだ精神的に未熟な生徒が多いこともある」

聖奈「当然の処置ではあると思ってくれ」

紫陽花「……なるほど」

 

言われてみれば、この学園には年齢の制限というものがないようだ。

大抵は20歳以下っぽいが、特に下の範囲は広い。

噂によると2歳の頃に入学した生徒もいるんだとか。

……2歳はやりすぎじゃないだろうか、事実だとしたらだが。

 

紫陽花「命にかかわる怪我の場合はいいんだよな?」

ゆかり「さすがにそのような状況での禁止はないと思うわ」

紫陽花「なら問題ない。俺自身、そんなに魔法使うことってないし」

聖奈「それは助かる。少々、血の気の多い奴も多いからな」

焔「なんでこっちを見るんだよ」

聖奈「心当たりが無ければ反応もしないはずだが?」

焔「ちっ……誘導尋問かよ」

聖名「まったく……」

紫陽花「あ、あはは……」

紫陽花「それよりさ、俺は今日からクラスの一員になるんだよな」

智花「? そうですよ?」

紫陽花「じゃあさ、分かんないこと多いと思うから色々教えて欲しい」

紫陽花「特に、魔法学ってのは初めてだからさ」

姫「う”っ!?」

紫陽花「……ん?」

 

なんか今、すごい声が聞こえた気がするけど……誰だったんだろ。

ともあれそう、魔法学だ。

ほぼ間違いなく、こういう魔法学園に入学しなければ受けることもない授業。

一体どんなことをするのか、予備知識も一切ないから不安で仕方がない。

 

聖奈「真面目でいいことだな」

紫陽花「大事なことだろうしね」

聖奈「そうだな、ちょうど先生も居るのだ」

聖奈「ここで軽い魔法学の授業を始めてもらっても?」

担任「あらあら、こういう流れで授業に入るのは斬新ね」

 

すっかり傍観モードに入っていたのか、缶コーヒーを片手に輪に入る。

……いやいや、いくらなんでも飲食はやめようよ。

俺の視線を感じてか、『あらやだ』とごまかし笑いを浮かべて空き缶をしまう。

ポイ捨てしないのはいいことだけど、それとこれとは別な気がする。

 

担任「それでは、魔法学についてですね?」

紫陽花「はい、おおまかにどんなことをするのかだけでも教えて貰いたいです」

担任「そうねえ、基本的には座学と実技の二つよ」

紫陽花「予想はしてたけど実技もあるんですね」

担任「ええ、実技はそれぞれの得意分野に沿ったものを修練してもらうわ」

担任「柊くんの場合は支援関係になるのかしら」

紫陽花「なるほど……座学の方は?」

担任「魔法の理論を学ぶ感じね」

担任「流れ的には、座学で理論を学び、実技で実証という感じかしら」

紫陽花「えっと、俺とかもそうですけど……自然と使えているのはどうなんでしょう?」

担任「そうね、貴方たちは基本的に自然に魔法を使いこなしています」

担任「ですが、それも完璧に使いこなせているとは限らないというわけ」

紫陽花「使ってはいるけど、それは感覚的にだけってことですか?」

担任「当たり! 柊くんは優秀ね」

 

成績は基本的には良くないんですけどね。

特に英語と科学……。

そんな心中のつぶやきは置いてけぼりで先生の話しは続く。

 

担任「この魔法はどういう力の流れで使っているのか」

担任「そして、その力の根源は何なのか……それを座学で学ぶの」

智花「でも、私たちも未だにちんぷんかんぷんなんですけどね」

担任「ふふ、感覚的に使えている子は多いもの」

担任「とはいえ、正しい使い方をすればその力は何倍にも膨れ上がるわ」

刀子「ふむ、確かに師範殿にご教授されたいくつかの技だが……」

刀子「下手をすれば、上位の技を超える力が出ていたように感じるな」

紫陽花「基礎を疎かにしてはいけないってことか……なるほど」

ゆかり「でも、柊くんは治癒魔法に関してはほぼ修練の必要がないように感じるわね」

担任「あら、椎名さんの目から見てもそうですか?」

ゆかり「ええ、あの練りこまれた魔力もそうですが……」

ゆかり「どんな些細な傷でさえも癒やす執念のようなものを感じました」

紫陽花「まあ、治癒魔法は死ぬ気で練習したからね」

刀子「ふむ……あの障壁も見事なものだったが、それもか?」

紫陽花「基本、守ることに関しては全部だな」

紫陽花「それで、敵を少しでも足止めできればって思って阻害魔法も覚え始めた」

 

実際、何度か戦場居合わせた時はこの阻害魔法が結構役に立った。

魔法少女にせよ軍にせよ、来るまでに時間がかかる場合もそう少なくない。

そんな時、攻撃できない俺に出来るのは時間稼ぎだ。

それに、応援が来た時にも相手の動きを阻害することで連携も取れる。

ある意味、覚えることになったのは必然のようなものだった。

とある人には、攻撃もできるようにならないとと言われたけどね。

 

担任「そうね、柊くんの場合はもし教えることがあっても阻害魔法に関してになるわ」

担任「それにしても……独学でよくそこまで扱えるようになったわね」

紫陽花「難しいものですか?」

担任「普通なら、ですけどね」

担任「きっと、柊くんの潜在魔力の多さも関係しているのでしょう」

紫陽花「潜在魔力か……」

自由「今まで魔力切れになったことはないんすか?」

紫陽花「最初の頃は少しだけあったかな」

紫陽花「限界とか知らなくて、訓練してたから」

 

周りに魔法使いがいなかったこともあって、と付け加える。

とある事件をきっかけに覚醒したが、当時は全く使い方がわからなかった。

ただ、自分が使えるのは攻撃魔法ではなく支援系統だということくらいしか。

 

紫陽花「それでしばらく練習してたら初めて魔法使いに会ってさ」

ゆかり「……襲われたの?」

紫陽花「いや、魔物はすでに退治された後だったよ」

紫陽花「ただ、その人は一人で……すごく疲れてるてみたいだったんだ」

智花「一人で、ですか……珍しいですね」

紫陽花「言われてみればそうだな」

 

魔法使いの力はとても強力だ。

しかし、その分欠点もあり、その一つが魔力容量。

一人ひとりの使える魔法の量はけして多くはない。

だからこそ、魔法使いは少なくても4人以上の小隊を組む。

役割を決めて魔法を使うことで無駄な消費を抑えるためだ。

だけど、その人は真っ向勝負の一匹狼タイプだったらしい。

現に、心配して近寄った俺に対してもほぼ突っぱねられた。

 

紫陽花「で、まあ……その時初めて、魔力の譲渡に気づいたんだ」

紫陽花「無意識にやってたみたいで、治癒魔法とごっちゃになってたけどね」

姫「と、申されますと?」

紫陽花「んー、治療してるつもりが一緒に魔力も渡してたって感じかな」

紫陽花「それを感じたのか、その人はすごい顔で詰め寄ってきたっけ……」

 

今でもあのどすの利いた声と切れ目は忘れない。

ある意味トラウマレベルである。

 

紫陽花「それでまあ、一度正確なデータを取ってもらったほうがいいと言われて……」

ゆかり「ここの編入を勧められたのですか?」

紫陽花「ああ、いや……最初はその人経由で魔法機関に連れてかれた」

紫陽花「そこでいくつかの計測装置を壊しちゃってね……大丈夫だったかな」

担任「そういえば、職員室でそんなことを言っていたわね」

焔「どんだけでたらめなんだよ、お前」

紫陽花「そう言われてもなあ」

智花「でもでも、柊さんが入学してくれて良かったです」

智花「ぐっと危険は減ると思いますし」

紫陽花「そうなれるように頑張るよ」

 

せめて目の届く範囲、ての届く範囲だけでも助けたい。

だからこそ、そういう機会の多いこの学園の入学を決めたんだ。

俺は改めてクラスメイト達の顔を見る。

それぞれに表情を浮かべているけど、概ね受け入れてくれてるようだ。

俺は一度息を吸うと、軽く頭を下げた。

 

紫陽花「改めて、これからよろしく」

 

そう告げた俺に、ほんの少しの喧噪。

そして――。

 

一同『よろしく!』

 

彼女たちの歓迎の声を聞いて、俺はようやくこの学園の一員になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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