グリモア~守護者~   作:エウラス

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いやはや二話目です。
あまり楽しい話が書けないですが、見ていただけたら幸いです。
なおリクエストなどがあれば出来る限りは対応させていただきます。


第2話

第二話:学園での生活その1

 

夏海「ああ、君が転校生? 中に入って入って!」

紫陽花「お、おう……」

 

学園に入ってから1週間が経ったある日。

俺は報道部からの頼みを聞いてお昼の放送のゲストに招待されていた。

最初は変に目立つのもと渋っていたが、恒例行事らしい。

こうして名前やらを知ってもらって、親睦を深めてもらえたら……。

そういう意図も少なからずあるんだとか。

ネタのためってのが多いかもしれないですけど、とは南の談。

招待されて入った報道部の部室は思ったより広く、通常の教室の半分ほどはあった。

1~20人くらいなら余裕では入れそうだ。

 

夏海「座って座って! まあくつろいでいってよ」

紫陽花「茶菓子まで出るのか……」

夏海「お客様への配慮も必要だからね!」

鳴子「そういうことだ、気にせず摘んでくれたまえ」

紫陽花「そういうことなら……」

鳴子「後、僕たちはこういうものだ」

夏海「目を通しておいてもらえると有り難いかな」

 

俺は手近にあったどら焼きを口に運んだ。

……あ、思ったよりうまい……後でどこで買ったか聞こう。

差し出された紙は……名刺か。

学生の身分で名刺とは、これまた本格的な部活だな。

ぱっとみた感じ、部員二人しか居ないみたいだけど。

 

鳴子「さて、それではそろそろ校内放送の時間だ」

鳴子「準備はいいかい?」

紫陽花「ええ、まあ」

 

口に入れていたどら焼きを咀嚼して飲み込んでから頷く。

それを合図に、遊佐と岸田が目配せ。

そして、俺に向かって手のひらを突き出し、一本ずつ指を折る。

事前に言ってた、カウントダウンってやつか。

その指が全て折られ、握りこぶしを造ったところで軽快な音楽が鳴る。

 

夏海「さあ、今日も待ちに待った昼放送の時間だよ!」

紫陽花(おお、すげえな……)

 

躊躇のない踊りだしで音楽にあわせた軽快なしゃべり。

まるでトーク番組の一面を見ているような気分だ。

 

鳴子「今日は皆も知っての通り、ある一人の生徒を紹介しよう」

鳴子「この度我が学園に入学した、柊紫陽花くんだ!」

紫陽花「ど、どうも。柊紫陽花だ」

夏海「柊はどのクラスに配属されたの?」

紫陽花「えっと、リリィクラスだったかな」

夏海「おおっと、それじゃあ智花と同じクラスかー」

夏海「何か食べさせられたりとかはしてないかな!?」

紫陽花「? いや、さすがに入学して1週間だし、そういうのは特に」

夏海「そっかー、じゃあ忠告しとく。気をつけろ!」

紫陽花「一体何に!?」

 

俺にとって南ってなんだろう、普通に女の子ってイメージだ。

でも、食べ物関係で気をつけろってどういう意味だ?

まさか……未知の食材の毒味を!?

いや……まさかね。

 

鳴子「さあ、それは置いておいて次の質問に移るとしよう」

紫陽花「置いとかれるんだ……まあどうぞ」

 

放送はこんなかんじで二人のペースで進んだ。

程よく緊張をほぐす絶妙な合いの手などもあり、後半になると普通に喋れていた。

こういうところを引き出すのも彼女たちの手腕によるものなんだろうな。

トークが5分程続いたところで、遊佐は本題を切り出してきた。

 

鳴子「さて、それでは最後に……君の特異体質についてだ」

鳴子「正直、この質問に対して興味がある人も多いだろう」

夏海「嫌でなければ聞かせて欲しいの、君の能力について」

紫陽花「嫌でもないし、隠してるわけでもないから良いよ」

紫陽花「とは言え、リリィの皆が言うには結構とんでもないものみたいで」

夏海「ふむふむ」

紫陽花「俺の魔法は主に支援タイプで、身体強化と治癒……」

紫陽花「おまけで阻害魔法を使えるってところだな」

鳴子「攻撃魔法は使えないのかい?」

紫陽花「ああ、諸事情でそれは無理なんだ」

紫陽花「代わりに、俺は自分の魔力を他人に渡せる」

夏海「! じゃあ、噂は本当だったの!?」

 

がたん、と机を揺らしながら身を乗り出すちみっこに頷く。

ツインテールを忙しく揺らしながらメモを取る。

なんでも、この会話の内容を記事にしたいんだとか。

さすが報道部というだけはあるね。

 

鳴子「具体的にはどうやって?」

紫陽花「そうだな……基本的には念じるだけで渡せる」

紫陽花「距離は目視出来る範囲で、別に体に触れる必要はない」

夏海「あ、それじゃあもうひとつ!」

夏海「柊て魔力容量も桁外れっていってたわよね、その辺は!?」

紫陽花「あ~……それね」

紫陽花「自分じゃよく分からないけど、多いらしいな」

鳴子「ほう?」

紫陽花「具体的にはよく分からない」

紫陽花「エミリアが大魔法を7発打った分くらいなら10分くらいで回復しちゃうくらいかな」

夏海「だ、大魔法7発分が10分で?」

紫陽花「うん、正直それくらいなら自分が小魔法うつより低燃費だぞ?」

 

そう、実際にその通りなんだ。

実は俺、魔力の扱いはかなりうまいらしい。

こと魔力譲渡に関しては一級品で、自分で魔法使うよりも少ない量で渡せる。

しかも、相手に渡す際には量を数倍にしてだ。

だから自分で魔法使うよりも他人に渡したほうが燃費はいい。

とはいえ、自分で魔法を使ってもそうそうなくならないけどね。

その辺りを話し終えると、遊佐も岸田も目を丸くしていた。

 

鳴子「なるほど……噂に違わぬとんでもない能力だね」

夏海「こりゃどこの勢力も欲しがるのわけだわー」

紫陽花「はあ……」

夏海「とと、そろそろ時間だね!」

夏海「気になる質問は聞けたかな!?」

鳴子「残りは柊くんの負担にならない程度に、各自聞いてみてくれたまえ」

鳴子「それでは、また次回に会おう」

夏海「……ふう、これはとんでもないネタよ!」

夏海「柊には感謝だわー」

紫陽花「おおう、すごい変わるな」

夏海「まあね、気に障った?」

紫陽花「いや、全然」

紫陽花「そんだけ熱心なんだろ? いいことだよ」

 

何かに打ち込めるってことはいいことだ。

まあ、内容にもよるし限度もあるだろうけど。

それに関して岸田が逸脱してるようには見えない。

……今のところは。

おっと、もうこんな時間か。

 

紫陽花「すまん、クラスメイトに飯に誘われててさ」

紫陽花「いって大丈夫か?」

鳴子「ああ、問題ないよ」

夏海「また個人的に話聞かせてね!」

紫陽花「ああ、きちんと事前にこえかけてくれたら調整するよ」

 

 

紫陽花「時間は……あと20分か」

 

報道部を後にして、俺はスマホで時間を確認してから競歩で教室へ。

走ると風紀委員が結構騒がしいみたいだからね。

それにしても、いつのまにやら噂になってるんだな……びっくりだ。

と、そんな感じで物思いにふけっていたせいだろう。

 

紫陽花「わっ!?」

ノエル「わぷっ!?」

 

廊下の曲がり角で女の子とぶつかってしまった。

とはいえ、相手のほうが勢いが強かったため押し飛ばす形にはならなかった。

慌ててその子が倒れないように支えて上げる。

うわ、小さいなこの子。俺の胸くらいの位置に頭があるぞ。

 

紫陽花「ごめん、考え事してて……大丈夫?」

ノエル「あ……えっ、うん! 大丈夫大丈夫!」

ノエル「私もちょっと急いでて、ごめんねお兄さん」

紫陽花「じゃあお互い様ってことで」

ノエル「ふふ~、了解」

ノエル「それじゃあ、急いでるからごめんねー!」

 

気さくな子だな。

天真爛漫を体全体で表しながら、その子は手を振って廊下を走っていった。

……大丈夫かな、あの子。

 

紫陽花「おっと、早く教室に戻らないと!」

 

そう思って教室へ向かっていたら『廊下をはしらないでくださいっ』という声が。

多分あれ、風紀委員のだれかだろうな……合掌。

 

 

あれからなんとか皆とご飯を食べ、今は魔法学の授業中だ。

ちなみに座学なんだが、これがまた興味深い。

俺の阻害魔法は素人なりに調べて扱ってるもんで術式が甘い。

その甘い部分をあら捜しできるいい方法が分かった。

これをもうちょっと突き詰めれば、もっと多くの相手に通じるようになるはず。

ノートのところどころに考えついたことを記載する。

こうしておけば、思考は無駄にならない。

 

姫「う~……」

紫陽花(うん?)

 

一区切りついたところで、俺は唸り声に反応して思わず視線を向けた。

その先には金髪をロールにした典型的なお嬢様キャラの野薔薇が。

どうも、今解いている術式の解体方法の問題が分からないらしい。

小さく『これだから魔法学は……』とか、『私は感覚派ですのよ』とか聞こえる。

なんでも出来そうな感じに見えたけど、意外と魔法学は苦手なのか。

仕方ないな。

 

紫陽花(ほっ!)

姫「ひゃっ?」

姫「??」

 

急に紙クズ見たいのが飛んできたから驚いたか。

幸い、その声に誰も気づくことはなかった。

当たりを見回していた野薔薇の目が俺を捉える。

俺はジェスチャーで紙くずを開くように指示。

頭上に『?』を浮かべながら言われたとおりにしていたが……。

 

姫「!」

 

少し目を丸くした後、俺と紙くずに書かれた内容を見比べる。

それを見て、少し笑いそうになるのをこらえながらノートを指差す。

言いたいことがわかったのか、恥ずかしそうにしながらもノートに向き合った。

察しはつくだろうが俺が投げた紙くずには問題についてのことが書かれている。

とはいえ、答えだけを書くなんてことはしない。

それじゃあ意味が無いからね。

俺なりに、わかりやすく答えへたどり着けるようにヒントをかいただけだ。

こっちはもう解き終えているので彼女の様子を見守ることにしよう。

 

担任「さあ、これくらいでいいかしら? 野薔薇」

姫「は、はいっ!」

担任「問題は解けたかしら?」

姫「……はい」

 

少し自信なさ気だが、野薔薇は少しずつ解答を黒板に記す。

それを見ていた俺は小さく頷いていた。

 

担任「……正解です! よく解けましたね」

姫「は、はいっ!」

担任「それでは、次の問題ですが……」

姫「……」

紫陽花(よくやったな)

 

アイコンタクトを送ってくる野薔薇に笑いながらサムズアップ。

それをみた彼女は少しだけ頬を赤くしながらも小さく会釈を返してくれた。

それからの授業はつつがなく進み、程なくして放課後となった。

 

 

紫陽花「さてと……」

 

HRも終え、本格的な放課後。

帰り支度をしていると不意に机に影が出来た。

なんだろう、と反射的に見上げると金色のドリル……もといロールが。

よく見れば後ろに小鳥遊と支倉もいる。

というか、基本的に野薔薇がいるとこにはこの二人がいるよな。

 

姫「柊さん、ちょっとよろしいですか?」

紫陽花「えっとまあ、特に予定はないよ」

姫「先程はどうもありがとうございました」

姫「正直、その……詰まっていたものですから」

自由「ありゃ、お嬢が素直なのは珍しいですね」

姫「うぐっ」

自由「どうも~、先輩」

紫陽花「おっす、元気そうだな」

自由「そうでもないっすよ~……」

 

聞いてくだせえ、と俺の机にだらけながらの愚痴が始まる。

どうにもこの子、女の子らしさがやや足りないな。

とはいえ、女の子らしい女の子ばっかなこの中じゃ話しやすいから助かってるけど。

気分は男友達だ。

 

紫陽花「ところで、先輩って?」

自由「おおう、知らないんすか?」

自由「この学園じゃ転入してきた男子は先輩って呼ばれるんすよ」

紫陽花「えっ、何それ」

自由「まあ、そういうもんだと思って欲しいっす」

自由「今後もそう呼ぶ人が出てくると思うっすから」

紫陽花「ふむ、そういうことなら……」

 

あ、言われてみれば廊下でぶつかった子もお兄さんとか言ってたな。

あの子は明らかに小さいから違和感なかったけど、そういうかんじなのかもしれない。

無理矢理納得しておくことにしよう。

 

姫「ほら、自由? あまり話しかけすぎては柊さんに失礼ですよ」

刀子「そうだぞ、自由。それにこれから部活があるだろう」

自由「うへえ……この時期のバラ園は色々虫が出るからやなんすよねえ」

紫陽花「バラ園?」

姫「ええ、私達3人は園芸部に入っておりますの」

紫陽花「園芸部……へえ」

 

お嬢様にしては珍しいチョイスだ。

とは思ったけど、バラ園と言ってたしそうでもないのかな?

個人的に園芸と聞くとやはり、土臭いイメージが強い。

ひたすら土いじりをし、植物の具合を見て植え替えをしたりとか。

素人目にはそんなイメージ。

 

刀子「拙者も虫は苦手だが……手入れせねば枯れてしまうだろう」

自由「そっすね~……ロールプレイしながら頑張りますかね」

刀子「相変わらずそのろーるぷれい? とか言うのをするのか」

刀子「傍から見たらブツブツと不気味なんだぞ?」

姫「そうですわね、急に草に向かって……」

姫「『モンスター発見』とか言うんですもの」

自由「ロールプレイってのはそういうもんなんですよ」

自由「先輩なら分かるっすよね?」

紫陽花「まあ、男の子だからな」

 

いわゆる、ごっこ遊びみたいなもんだ。

~~を~~する~~の役、みたいな感じで自分を仕立てあげる。

その上でそのキャラを演じるのがロールプレイだ……と思う。

ようは役作りをしてるわけだが、これがまた意外と楽しいんだよな。

つまんないことをする時にやると多少は気が紛れるくらいには。

 

自由「やっぱ先輩なら分かってくれると思ってたっすよ!」

 

仲間を見つけて嬉しいのか、手をとってぶんぶん振り回す。

小鳥遊の手……意外と細くて柔らかいな。

こういうのとは無縁の生活送ってたからどうにも慣れない……。

 

紫陽花「いや、まあ……むしろそういうことしてるってことはゲーム好き?」

自由「大好きっす! 三度の飯よりネトゲっす!」

紫陽花「ああ、ネトゲ方面か」

紫陽花「俺、どっちかというとコンシューマ系が多いな」

自由「コンシューマっすか、狩りゲーとか?」

紫陽花「ああ、やってるやってる。新作出るとつい買っちゃうんだよな」

自由「分かります、何なんでしょうね、あれ」

 

意気投合というのはこういうことを言うんだろう。

次から次へと話題が出てくる。

小鳥遊と話してると男友達と話す感覚になっちまうな。

一方、置いてけぼり状態の野薔薇たちが不思議そうにしていた。

 

姫「一体何のお話をしているのでしょうか……」

刀子「多分、自由がよくやっている『げえむ』かと」

姫「殿方はそういうのを好むとお父様から聞いてはおりましたけど……」

紫陽花「悪い悪い、男ならゲームはほぼやってるもんだからさ」

紫陽花「でも、このクラスでここまで盛り上がれるとは思わなかったよ」

自由「まあ、うちはほぼ女子っすからねえ」

自由「不登校のひきこもりっすけど、このクラスにもう一人ゲーマーが居ますよ。別のクラスには格ゲーずきのもいますし。」

紫陽花「ひ、ひきこもり?」

刀子「ああ、楯野のことか」

紫陽花「楯野……聞き覚えがないな」

刀子「ほら、あの席だ」

 

言われて指差された場所を見る。

なるほど、言われてみればあの席が埋まっているのを見た覚えがない。

単なる空席なのかと思っていたが、不登校生のものだったか。

 

刀子「たった一度だけ出席したきり、ずっと部屋から出てこないらしい」

紫陽花「ず、ずっと?」

姫「私もあの日以来、寮以外で彼女を見た覚えがないですわね」

紫陽花「筋金入りだな……」

 

引きこもりでゲーマーとか廃人街道まっしぐらじゃないか。

よくそれで退学とかにならないな。

その辺は魔法使いとしての素質云々が絡んでるのか。

 

刀子「そういえば、柊は部活動には参加せぬのか?」

紫陽花「部活動かー……」

刀子「何か問題が?」

紫陽花「別に問題があるってわけじゃないんだ」

紫陽花「ただ、部活動する暇がなくてさ」

姫「暇がない、ですか……?」

紫陽花「うん、バイト入れないとだし」

自由「ば、バイトっすか?」

自由「でもここ、全寮制で学費とかもろもろは税金から出るはずっすよね?」

刀子「小遣い稼ぎというやつか?」

紫陽花「あー……まあ、そんなところかな」

 

はぐらかすように笑い、頷く。

確かにこの学園に入ればこの中にいる間の生活費なんかはタダ同然だ。

だけど、それだけでは賄えない部分もあるのもまた事実。

支倉が言ってた小遣い稼ぎってのも間違いではないから嘘は言っていない。

 

刀子「柊の動きは鋭いものがあった」

刀子「何か運動系の活動にはいっていたのではないか?」

紫陽花「いや、特に入ってないよ」

紫陽花「強いて言うなら、それは身体強化によるものかな」

刀子「なるほどな、その力であれば頷ける」

姫「それほどにすごかったんですの?」

刀子「体捌きだけであれば、武道を嗜んでいる人間と変わらないレベルでした」

自由「そういえば、あれだけの数の魔物の合間を掻い潜ったんですよね」

紫陽花「いや、あれはそっちに気を取られてたからだって」

姫「ですが、あの時のことを思い出すと今でも怖気が致します」

姫「柊さんが居なかったら、どうなっていたことか……」

 

ほんのりと頬を染めて視線をそらされた。

あちゃー、そういえば俺、あの時彼女を抱き起こしてたもんな。

野薔薇って名前の通りに薔薇の香りがしてたな、そういや……。

それにやっぱり柔らかかった、体全体が。

女の子ってどこ触っても柔らかいよね。

って、煩悩退散っ!

 

紫陽花「た、たまたまだよ」

紫陽花「……それに、俺は戦えないから」

姫「本当にまったく、ですの?」

紫陽花「ああ、実技で何度も試してみた」

紫陽花「でも、どの難易度・属性でもまったく発動しなかったんだ」

刀子「今まで聞いたことがない性質だな、お主のは」

自由「でも、それはやばくないっすか?」

自由「仮にですけど、一人の時に襲われでもしたら……」

紫陽花「そこは心配ないよ」

紫陽花「救援要請はいつでも送れるようにしてるし、防御はそれなりに自信あるからね」

 

これだけが自慢といっても過言じゃない。

籠城作戦はだれよりも得意だ。

膨大な魔力がある分、耐え忍ぶのには適しているからな。

多少の『リスク』はあるが、基本的に障壁張ってればいい。

 

刀子「とはいえ、万が一もある」

刀子「あまり一人にはなるなよ?」

紫陽花「……支倉って男前だよな、性格が」

刀子「ぶ、武士道精神といってくれないかっ!?」

姫「刀子は初対面のころからこうでしたの」

姫「『姫様の御身は拙者がお守りいたします!』と言われた時はびっくりしましたわ」

自由「しかも、片膝ついてのおまけつきっすよ」

刀子「主君に対する当然の行動であろう!?」

紫陽花「う、うーん……支倉のイメージには合ってるな」

紫陽花「でも、それを実際にする奴を見たのは初めてだ」

刀子「うぐっ……」

 

思い当たる節はあるんだろうな、うめいてるってことは。

 

紫陽花「でもいいんじゃないか? それも個性だろ」

刀子「そ、そうか?」

姫「そうですわね、今更変えられても違和感が有りますもの」

自由「『私ぃ、お嬢様をお守りしちゃうぞ☆』とか言ったら気絶もんっすね」

刀子「だ、誰がそんなことを言うか馬鹿者!!」

 

支倉がそのセリフを言って、ウィンクまでかます姿を想像。

それと同時にぶわぁ、と全身の毛が逆立つ。

ああ、ないない! それをやっちまったら狂っちゃう奴でるぞ!?

もちろん彼女が女の子だってのは分かってるし、可愛いとも思う。

が、あまりにもイメージとかけ離れすぎだ。

せいぜいが南レベルまでの言動が限界だな、うん。

そこで時計が目に入り、それなりの時間が経っていることに気づいた。

あちゃ、そろそろ動かないとバイト探しに行けないな。

 

紫陽花「悪い、結構話し込んじまったな」

紫陽花「俺もそろそろ行かないと」

姫「あら、そうでしたの……引き止めてしまって申し訳ありませんでした」

紫陽花「いやいや、楽しかったから大丈夫」

紫陽花「そっちこそ大丈夫か?」

自由「へーきっすよ、所詮は雑草刈りプレイですから」

刀子「大事なことだぞ?」

刀子「不要な草は処分しなくては花へ養分がいかんからな」

姫「ええ、それでは行きましょう」

姫「柊さんもその……ごきげんよう」

紫陽花「ああ、気をつけてな」

自由「うっす、先輩も気をつけてくだせえよ」

刀子「最近は街中も物騒だからな」

紫陽花「? ああ、分かった」

紫陽花「……さて、と」

 

野薔薇たちが出て行った後、俺は求人雑誌を片手にバックを背負う。

特に忘れ物がないかを確認して、改めて教室を出た。

しかし、街中も危険っていうのは一体……?

去り際に言われたそんな言葉が気になりつつも、教室を出た。

 

 

一口にアルバイトと言っても色々ある。

肉体労働もあれば、接客仕事だったり事務仕事だったり。

大抵の多いのは前二つだが、今回はそのどれでもない。

俺の場合は一つの特異性を活かしたバイトだ。

そして、その面接場所というべき建物の前に立つ。

 

『◯◯病院』

 

そう、病院だ。

こんなところで何をするのか、それは簡単だ。

俺の治癒魔法を使っての回復促進とかを行う。

実は、治癒魔法を扱える人間ってのはかなり少ない。

基本的にはそれぞれの個性にあった属性の攻撃魔法が主だ。

それに対して、治癒魔法というのは適正がものを言う。

だから、存在自体もかなり希少だし、それが熟練者ともなると一握り。

そういった能力を活かせるのが病院なのである。

もちろん学園側にも許可はとってあるし、病院側も乗り気だった。

一応、病院での治癒魔法の使用のみに関してだけは制限が掛けられてないらしい。

バイトをするということを告げると不思議そうに首を傾げられはしたが。

などと思い出しながらも意を決して、病院の中へと入っていった。

 

 

紫陽花「ありがとうございました」

 

30分ほどの面接を終えて、俺は病院を後にした。

現状、重症を負うような大事件が発生しているわけではない。

だから今後もし、そういう事態になれば連絡をくれるそうだ。

すっかり夕日で赤く染まった家路に着きながら歩く。

ただ、魔法による治療はかなりの報酬を得られるらしい。

それを考えれば割の良い短期バイトと思うしかないか。

 

打算を胸にしながら、俺は寮へと戻った。

 

 

突然だが、学生寮は学園外に存在する。

男女比がとんでもないこの学園だが、寮はちゃんと分けられていた。

分かれてなかったらどうしようかと本気で悩んだのが懐かしい。

郵便受けから幾らか来ていた手紙をまとめて掴んで部屋に戻る。

 

紫陽花「学園で生活する上での注意事項……直近の行事予定……ん?」

 

学園関係の情報が書かれたチラシを見ていた時だった。

一つだけ雰囲気の違う物が目に入って思わず手に取る。

……これは。

 

紫陽花「手紙?」

 

そう、手紙だ。

上から見たり、下から見たりしながら見てみるが宛名は俺だ。

ついでに言うと、差出人が白藤香ノ葉になっていた。

白藤……って、確かクラスメイトだったよな?

何かなと思って中身を開けて読んでみる。

 

『もし良かったら、明日の放課後に茶道部にお茶しに来ぉへん? 待っとるえ』

紫陽花「……茶道部?」

 

はて、唐突過ぎる気もするが……。

これはクラスメイトとしての親睦を図ろうとしてくれてるのだろうか。

とは言え俺、部活動する余裕はないんだよなあ……。

でも、折角誘ってくれたんだし……断るのも悪いか。

 

紫陽花「……折角だし行ってみよう」

 

そう決めて綺麗に手紙を封筒に戻し、机の中に入れた。

 

 

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