バカとテストとフルメタパニック   作:らじさ

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ちょっと箸休めのつもりで書いてみました。
よろしければ別連載の「これが土屋家の日常」の方も
どうぞよろしくお願いいたします。


バカとボケと新学期
第1話


相良宗介は2年Fクラスという表示(ちなみにボロボロの紙にマジックで書かれていた)のあるクラスのドアの前で立ち尽くしていた。

今日から新学期。1年の時の担任から渡された封筒に入っていた紙には「F」と一文字だけ書かれていた。

「確かにここで間違いないはずだが・・・・・」彼は、そうつぶやくと周囲を見渡した。廊下にはゴミが散乱し、ゴミ箱が転がっている。彼はこの殺伐とした風景に見覚えがあった。かつて仕事で訪れたことのある東南アジアの貧民窟と同じ雰囲気なのだ。

「日本にもこんな場所があったとは。平和で豊かな国だと聞いていたのだが・・・・・」きっとこの教室の中には学校にも通えない貧民の子供たちがいるのだろう。だが、なぜ自分がこんなクラスに配属されたのだろうかと彼は顎に手を当てて考え込んだ。

「ふむ、そうか。つまり生徒会安全保障担当補佐として、治安の悪いこのクラスを制圧せよという指令なのだな」。「F」とだけ書かれた紙を渡されただけというのは、極秘指令に違いない。つまりはそれだけこのクラスが危険な連中の集まりだということに違いない。

宗介は懐のホルスターから愛用のオーストラリア製グロッグ17を引きぬくと、足音を立てないようにそっとドアに忍び寄った。

「おい、相良。何やってんだ」背後からいきなり声をかけられた。宗介は反射的にそちらに銃口を向けた。

「わっ、バカ。そんなもの人に向けるな」声の主が慌てて叫んだ。

「何だ、坂本ではないか。こんな危険なところで何をしているのだ?」後ろには坂本雄二が立っていた。

「何をも何も、クラス別けだろ。お前もFクラスなのか?」

「うむ、生徒会安全保障担当補佐としてこのクラスに派遣されたのだ」それにしても雄二がスラム出身だとは知らなかった。人は見かけによらないものだ。

「それよりそんな玩具振り回してるのバレたら、補習室行きだぞ。さっさとしまえ」

「むっ、補習室とは何だ?」

「二度とは行きたくない地獄のような部屋だよ」

「つまり、拷問室のことか。なぜ学校にそのような部屋が必要なのだ?」

「何でそんな勘違いができるのか想像もつかんが、とにかくさっさと教室にはいろうぜ」雄二はそういうと無造作に教室のドアを開けた。

 

教室の中はほぼ満員だった。

「ゴザとちゃぶ台とは、ずいぶんと和風な教室だな」宗介が言った。

「あのな、相良。こういうのは和風じゃなくて粗末と言うんだ」雄二が教えてくれた。

「おい、相良だぜ」

「なんであいつがここに」

「というか、よく考えりゃここしかないのかも」

「学校もAクラスの設備を吹っ飛ばされたくないだろうしな」

生徒達のヒソヒソ声があちこちから聞こえる。大半は知らない顔だが、彼らは宗介のことを知っているようだ。

もっとも彼が引き起こした数々の騒動のお陰で、この学校で宗介のことを知らない人間は一人もいないのだが。

宗介が注意深く教室を見渡してみると、当初の予想とはだいぶ違った印象だった。普通スラムの子供というのは痩せて目がギラギラと抜け目なく光っているものだが、

ここの連中はどちらかというとスラムの子のいいカモになりそうな呆けた顔つきをしている。

「男生徒が25人に、女生徒が2人か。随分性別が偏ったクラスだな」宗介がツブやいた。

「堅物の相良にしちゃ珍しい視点だな」

「いや、男の世界は素晴らしい」周囲の生徒が2mほど後ずさった。

「念のため聞くが、他意のない発言だよな」

「何のことだ?俺はこれまで男の集団の中で暮らして来たから、男の方が気が楽なのだ」

「さっきのような発言は、よそのクラスでするなよ」

 

「ところでさっきから不思議に思っていたのだが、このクラスにはなぜ男子の制服を着た女生徒と女子の制服を着た男生徒がいるのだ?」宗介は2人を指さして言った。心なしかクラスの中の空気が凍った気がした。

「ああ、紹介しよう。女子の制服の方が「女生徒」の島田美波。男子の制服の方が「男生徒」の木下秀吉だ」雄二が慌てて取り繕うように言った。

「島田美波よ。よろしく」女生徒がトゲのある声で言った。

「木下秀吉じゃ。言っておくが、ワシは男じゃ」男生徒が叫ぶように言った。

「ははは、みんなで俺を騙そうとして、随分手のこんだマネをしたな。だが、戦場でゲリラを見分けてきた俺を騙せるわけがないだろう」宗介はそう言うと、美波に近づいて胸をポンポンと叩いた。

「なっ・・・・・」美波が声をあげた。

続いて秀吉に近づいて胸をポンポンと叩いた。

「ほら、どう考えても木下の方が胸が大きいぃぃぃ~~」美波が見事な腕ひしぎ十字固めを宗介に決めていた。

「いきなり乙女の胸触っただけじゃなく、どんだけ失礼なこと言ってんのよ、あんたは」

「胸って・・・・・君ので触ったのは大胸筋んんんん~~~」

「肘の可動域の限界の彼方に旅立たせてあげるわ」

「おい、相良を痛めつけてるぞ」

「傭兵歴10年を自称している相良をか」

「やるとは聞いてたけど、さすが島田だな」

 

Fクラスの顔見世はこのようにして開けた。

 

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