「あのねぇ、霧島さん」かなめは呆れたように言った。
「坂本雄二だか加山雄三だか知らないけど、あたしはこれっぽっちも興味はないから」
「いや、今朝自己紹介したから君も知っているはずだ、千鳥。君が代表を押し付けた坂本だ」宗介が言った。
「あんたは黙ってなさい。そういう意味じゃねーのよ」
「・・・・・知っているのに知らないと嘘をつくところが怪しい」
「だから嘘じゃなくて、日本語の言い回しでしょうが」
「・・・・・あなたが言い訳しようが、Fクラスに移ったのは事実。とすれば雄二を狙う以外に理由はないはず」
「そっ、そうだったのか」宗介がショックを受けた様子で言った。
「何というか、いろいろとスゴい断言だわね」
「こちらウルズ7だ。うむ、了解した。すぐそちらに向かう」宗介が鳴りもしない携帯を取り出して会話をしている。
「千鳥、俺は至急の任務が入ったこれで失礼する」と生徒会室を出て行こうとした。
「鳴りもしない電話で一人芝居して何逃げようとしてんのよ。というか、なんであんた脂汗かいて動揺してんの?」かなめが宗介の襟首を捕まえて引き止めた。
「いっ、いや。君と坂本がそういう関係だとは知らずに今まですまなかった」宗介が目を泳がせながらかなめに言った。
「だぁ~。アンタ達二人とも人の話をちゃんと聞きなさい。あたしは坂本雄二なんかにこれっぽっちも興味はないし、ちっともカッコイイとは思っちゃいないの」かなめが叫んだ。
「・・・・・雄二をバカにする人は許さない」
「一体何て言えば敵認定解除してくれるの」かなめはへなへなと力尽きてつぶやいた。
「あのね、霧島さん。もう一度最初から説明するからよ~く聞いてね。あたしは、1年末のクラス別け試験でAクラス6席の成績を取りました。そして今朝は、革張りリクライニングシート、冷暖房完備、絶品フリードリンクの素晴らしい環境で1年間素晴らしい青春が送れるとルンルンで登校してきたわけ」
「・・・・・あなたがAクラス6席だったのは、知っている」
「そうしたら校門で西村先生から封筒を渡されたのよ。何だろうと思って開けてみると、どこかの腹黒生徒会長とマッドサイエンティスト学園長の連名で「Fクラス移籍命令書」が入っていたのよ」
「はて?この学校には生徒会長がもう一人いたとは初耳だ」林水が言った。
「先輩のことを言っているんです」かなめが怒鳴り返した。
「「何ですか、これ?」と尋ねたら、「問題児がFクラスに入ったから監視頼むぞ」と言いやがったのよ」
「ふむ、そんな奴がFクラスに。それにしても随分はた迷惑な奴だな」宗介がしみじみと言った。
「あんたのことよ」かなめがハリセンの一撃を見舞った。
「まっ、待て。千鳥。別に俺がお願いした訳ではないぞ」顔面にハリセンの一撃を受けながら宗介が言った。
「あんたがお願いしなくたって、半年で校舎破壊3回、靴箱爆破4回、校舎内での銃乱射46回、他校生徒の訪問者脅迫16回も事件起こされりゃ、学校側が自発的に監視つけるわよ。返してよ、あたしの絶品フリードリンク。濃厚なカプチーノ、芳醇な香りのダージリン、爽やかな風味のレモンスカッシュ。返しなさいよ・・・・・クヌクヌ」激昂した千鳥のハリセン乱打が始まった。
「どうもさっきから聞いていると君の青春というのは、ドリンクバー一色のようだね」林水が言った。
「先輩は黙ってて下さい」かなめが威嚇するように言った。
「・・・・・話はわかった。でも雄二は渡さない。しょうゆとこしょうのためにも」
「全然分かってないじゃないのよ。あんた本当に人の話聞いてたの?というかしょうゆってなに?」
「・・・・・分かっている。警告しただけ」
「そんな警告いらねーってんでしょう」かなめが疲れたように言った。
「・・・・・あなたがFクラスに移籍したのが相良の監視のためなら、私にもできる」
「あんたにこの戦争ボケの管理ができるって言うわけ?」かなめが不審そうに言った。
「・・・・・証拠を見せる」翔子はそういうと宗介の前に立った。
「なっ、何だ」宗介が微かに怯む。
「・・・・・相良、ハウス」翔子をそういうと部屋の隅を指さした。
「え?」
「・・・・・相良、ハウス」翔子は一歩ズイっと宗介に近づくと再び言った。
「千鳥、彼女は何を言っているのだ?」宗介が脂汗を額に浮かべながら、かなめに尋ねた。
「いや、ちょっとあたしにも・・・・・」
「・・・・・相良、ハウス」翔子はさらに一歩ズイっと宗介に近づくと再び言った。もはや顔が近づくほどの距離だ。
宗介が彼女の指差す方を見るとダンボール箱が置いてあった。
「よくわからんが、これに入ればいいのか?」宗介はダンボルに入ってチョコンと座った。
「・・・・・ほら、ちゃんと入った」翔子がどこか誇らしげに言った。
「あっ、あんたねぇ」かなめは文句を言おうとして思い留まった。これは千歳一遇のチャンスではなかろうか。あの戦争ボケをこの女に押し付ければ自分はAクラスに戻れる。
「さすがね、霧島さん。ソースケの管理は完璧だわ。ソースケはあなたに任せるから、あなたがFクラスに行ってちょうだい。あたしはAクラスで我慢するわ」かなめが翔子の手を握りながら言った。
「・・・・・友達になれると思っていた」翔子がかなめの手を握り返しながら言った。
「あんた、さっきあたしのこといきなり敵認定してなかったっけ?」
「・・・・・そんな昔のことは覚えていない」
「ということで林水先輩。ソースケは霧島さんに任せるということで、あたしはAクラスに戻っていいですよね」かなめが林水に言った。
「霧島君、我が校の試召戦争のことを知っているね」黙って成り行きを見守っていた林水が、かなめに構わずに言った。
「・・・・・はい、クラス別で設備をかけた召喚獣同士の闘いです」
「私が聞き及んでいるところによると、坂本君は内に秘めた闘志はなかなかのものらしい」
「・・・・・雄二は昔から男らしい。」
「そういう男だったら当然Aクラスに試召戦争を挑むことだろう」
「・・・・・だから私も雄二の傍で力になってあげたい」
「うむ、そういう方法もあるだろうな。ここからは独り言なのだが、試召戦争では代表同士が個人的に賭けをすることがあるそうだ」
「・・・・・?」
「例えば、ある女の子は「私が勝ったら恋人になって」という約束を賭けて、見事に勝利して恋人になったそうだ」
「・・・・・そんな手が」
「だが、同じクラスでは賭けはできないねぇ。残念なことだ」
「・・・・・かなめ」翔子が振り向いて言った。
「なっ、なによ」
「・・・・・私はAクラス代表としてAクラスを見捨てることはできない。だから相良はあなたに任せる」
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ。あんたまさか林水先輩の話真に受けてるんじゃないでしょうね」
「・・・・・雄二と同じクラスじゃないのは残念だけど、代表の責任は放棄できない」
「じゃ、あたしのAクラス復帰はどうなるのよ」
「ご破算ということだね」林水が言った。
「先輩が余計な入れ知恵するから・・・・・あたしのドリンクバ~~」かなめが絶叫した。
「・・・・・代わりにこれあげる」
「何よこれ?」
「・・・・・ゴストのドリンクバー割引券」
「あんた、本気であたしに喧嘩売ってるわね」
「まあ、これで千鳥君がFクラスでいることの障害はなくなったわけだ。ハッハッハ」林水が扇子をバッと広げて振りかざした。