「まったくもう先輩も先輩だけど、霧島翔子も霧島翔子だわ。先輩の口車に簡単に乗せられちゃって・・・・・」かなめは下校の道をブツクサいいながら歩いていた。
「案外君も執念深いのだな」宗介が呆れたように言った。
「当たり前でしょう。カプチーノ、ダージリン、カフェラテ、レモネード・・・・・ああ、あたしの青春のドリンクバーが・・・・・」
「よく分からんが、会長閣下が言った通りに君の青春とやらは、ドリンクバー一色なのだな」
「うるさいわね。あたしからドリンクバーを奪った張本人が他人面してんじゃないわよ」かなめが怒鳴った。
「それではお詫びという訳ではないが、そこのファミレスでドリンクバーを奢ってやろう」宗介が近くのファミレスを指さして言った。
「はぁ、あんたが?どういう風の吹きまわしよ」
「いや、さっき霧島が割引券をくれたのだ。使わないともったいない」実はこう見えて宗介は割引券とかクーポン券に目がなく、あれば必ず利用するのだ。もちろん律儀に各種メンバーズカードの会員にもなってポイントを貯めるのを密かな趣味にもしたりしている。
「あんた意外と抜け目ないわね」かなめが呆れたように言った。
二人は揃ってファミレスに入って行った。
「あっ、相良君と千鳥さんだ。おーい、こっちこっち」明久が店内に入ってきた二人を目ざとく見つけて声をかけた。
「何だ、吉井たちも着ていたのか」そこには、明久の他に雄二、ムッツリーニ、秀吉、姫路、美波が揃っていた。
「あんた達ねぇ、下校時の寄り道は禁止なのよ」かなめが言った。
「自分のことをどんだけ棚に上げりゃ、そんな発言が出てくるんだ」雄二が言った。
「あたし達は生徒会役員だからいいのよ」かねめが平然と言い切った。
「生徒会役員が率先して校則を破ってはマズいのではないかのう」
「・・・・・権力を持たしてはいけないタイプ」
「いいから、そっちツメなさい、ほら」かなめが無理やり席に割り込んだ。
「そういえば相良ってウチと同じ帰国子女だったわよね。どこにいたの?」美波が尋ねた。
「ん、俺か?世界中を転々としていたな。アルジェリア、アフガン、チェチェン、ニカラグア、カチン。まあ、色々だ」
「ろくでもないところにしかいなかったんだな」雄二が言った。
「にっ、日本に来る前はどこにいたんですか」姫路さんが場を取り繕うように尋ねた。
「日本に来る直前はアフガンで傭へ・・・・・」
「さあて、なににしようかな」千鳥さんが叫んだ。
「奢ると言ったのはドリンクバーだぞ、千鳥」
「そうね。さっさと飲み物取りに行きましょう」二人が飲み物を取って戻ってきた。
「で、何で日本に戻ってきたのじゃ」秀吉が尋ねた。
「うむ、ミスリルから命じられてこの千鳥かなめの護衛のた・・・・・」
「ぷーっ」千鳥さんが飲み物を吹き出した。
「汚いぞ、千鳥」
「ほほほ、ごめんなさい(あんたねぇ、ミスリルは秘密軍事組織じゃなかったの?)」
「(いや、すまん。つい成り行きで・・・・・)」相良君が汗をかきながら、何やら千鳥さんに良い訳している。
「そっ、そうか」雄二が言った。
「アフガンの学校ってどんな感じなんですか?」姫路さんが尋ねた。
「アフガンの学校?いや、学校には通っていなかったが・・・・・」
「じゃ、なにをしておったのじゃ?」
「うむ、ゲリラ組織に属していてソ連軍と戦と・・・・・グワッ」千鳥さんのパンチが相良君の頬に炸裂した。
「あら、ごめんなさい。大きな蚊が・・・・・(あんた本気で情報を隠蔽するつもりあるの?いい加減にしないとテッサに言いつけるわよ)」
「(彼らの情報の聞き出し方がウマすぎるのだ)」
「(普通の会話よ、普通の。あんたが勝手に喋ってるだけじゃないの)」
「・・・・・何だか聞いてはいけない話がいろいろあるようだ」ムッツリーニがツブやいた。
「やっ、やあねぇ。あたし達は普通に日本の高校生活をエンジョイしているただのセブンティーンよ、ほほほほ」
「うむ、そうだぞ土屋。傭兵として世界中を回っていたとか現在アマルガムという組織と敵対しているとかそういうことは全くない、ごく普通の高校生だ」
「あんたは黙ってなさい」千鳥さんが相良君をどなりつけた。何だか二人の間ではいろいろと世界規模の陰謀に関わる設定が出来上がっているようだ。これを中二病とかいうのだろうか。まさか、傭兵をやっていた兵士が、ある秘密を持った日本の女子高生を守るために、秘密組織から派遣されてきて護衛しているなんてどこぞのライトノベルのようなことが現実にあるわけがない。
「まあ、相良が千鳥の護衛っていうんだったら、学校であれだけ騒ぎを起こしている時点で失格だよな、ハハハ」雄二が言った。
「そうよね、そんなバカな秘密任務なんてあるわけないわよね」美波が笑う。
「面白い設定じゃのう」秀吉も言った。
「・・・・オースチン・パワーズ並み」
「坂本君ったら、面白い冗談です」
「いやあ、本当だったら僕でも入れそうだね、その秘密組織」
「・・・・・」
「・・・・・」なぜ二人は笑わずに引きつった顔をしていたのだろう?