バカとテストとフルメタパニック   作:らじさ

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第12話

「ふぅ~」部隊への報告書を描き上げた宗介は、コンピュータの前で伸びをした。

「さてっ、あとはこれをメールで送信するだけか・・・・・ムッ」彼の兵士としての本能が危険を訴えてきた(大概は盛大な自爆を招くハメになるのだが)。

宗介はベランダ側の窓に影が映らないように注意深く近づくと、そっとカーテンの隙間から外を見た。ベランダは通りに面しており、道向かいがかなめのマンションで、宗介の部屋から見える位置にベランダがある。

「あれは・・・・・?」黒服の男が二人かなめの部屋のベランダに侵入しようとしている。一人は地上からロープを使ってよじ登ろうとしているが、アタフタした動きからすると新兵だろう。問題は屋上からラベリング降下でベランダに降りてくる男だ。

「かなりのベテランだな。一般兵ではない。特殊部隊・・・・・それもトップクラスの腕前だ」宗介はテーブルにあった携帯を取るとかなめの番号を押した。

「トゥルルルルル~」呼び出し音が続くばかりだ。シャワーでも浴びているのだろう。

「くっ、間に合わない」宗介は携帯を投げ捨てると、壁に立てかけてあったリューポルド製 Vari-Xミルドット光学スコープを装備したSR-25狙撃銃を手に取り、窓をそっと開けて侵入者に狙いを定めた。

屋上と地上から挟撃した二人はベランダで合流し、窓際に屈んだ。

「来い!少しでも変な真似をすれば頭を吹き飛ばしてやる」宗介は狙撃銃のスコープを除きながらツブやいた。

・・・・・5分・・・・・10分。二人が部屋に侵入する気配はない。

「・・・・・おかしいな。何をやっているのだ、あの二人は」

 

「ねぇ、土屋君。本当にここまでやる必要があるのかな?」不安そうな声で風間が言った。

「・・・・・真実の姿を撮るのがジャーナリストの使命」

「いや、僕たち別にジャーナリストじゃなくて、単なるアルバム編集委員なんだけど」

「・・・・・俺の目はごまかされない」

「千鳥さんくらい裏表なくてわかりやすい人はいないと思うんだけどなぁ・・・・・」

「・・・・・隠しても無駄だ。あれは確実にFカップはある。ウっ」ムッツリーニはそう言うと鼻血を吹き出した。

「だっ、大丈夫?土屋君」

「大丈夫だ。ちょっと気温が高いのでノボせてしまっただけだ」

「千鳥さんがFカップあるって、去年の学園祭でミスコンで水着になったから、学園中の生徒が知っていると思うんだけど」

「・・・・・そうなのか?」

「ミスコン見なかったの?」

「・・・・・会場に入ると同時に鼻血を大量出血して保健室に運ばれてしまった」

「あの可愛さの上にFカップのナイスバディ、あれで性格さえなければって評判なんだよ。一部では脳をAIに入れ替えろという強硬派もいるくらいで」

「・・・・・人格を完全否定されているな」

「だから学校で普通にモデルになってくれってお願いすればいいんじゃないかな」

「・・・・・それではFカップが真実の撮れん」

「いや、それじゃ単なる盗撮で、とてもアルバムに載せられないよ」

「・・・・・心配するな。載せられない写真はムッツリ商会で引き取る」

「ひょっとしてそっちがメインじゃないの?」風間がジト目でムッツリーニを睨んだ。

 

「何をしているのだ、一体」スコープを覗いたまま宗介は苛立っていた。15分も立つというのに侵入した2人に全く動きが見られないのだ。

「もしかすると強襲要員ではなくて偵察要員か。捕獲して背後関係を吐かさねば」宗介は狙撃銃を投げ捨てると、玄関に向かいそこにあったロープを掴むと、外へ飛び出した。

数分後、宗介の姿はかなめのマンションの屋上にあった。持っていたロープの端を手すりに結びつけるとラベリングで壁を蹴りながら降下していった。侵入者の後ろに静かに降り立つと胸のホルスターから愛用のグロッグ17を抜いて、侵入者の頭に突きつけた。

「静かにしろ。少しでも変な真似をしたら頭を撃ちぬく」2人の男は固まった。

「よし、手に持っている銃をゆっくりと床に置け」2人がカメラを床に置いた。

「ふん、こんな物騒な・・・・・カメラ?貴様ら何者だ」宗介が言った。

「その声は相良君?僕、風間だよ」風間が振り向いた。

「風間、一体こんなところで何をしているのだ?そっちは誰だ」

「・・・・・俺だ、相良」ムッツリーニが言った。

「土屋か。何がなんだかわからん。とにかく座れ」3人はベランダで車座になって座った。

 

「で、何のためにこんなところにいるのだ?」

「僕たちアルバム委員でね。卒業アルバムのためにみんなの写真を撮っているんだ」

「・・・・・千鳥かなめには隠された胸、いや秘密があると睨んだ。だからそれを撮りに来たのだ」

「(・・・・・まさか土屋は千鳥がウィスパードであることに気づいているというのか。もしかして俺がミスリルの兵士であることも。これはまずい状況だ。誤魔化さねば)」宗介は決意した。

「ははは、なっ何を言うんだ土屋。千鳥がウィスパードだなんて根も葉もない噂だ。それを護衛するために俺がミスリルから派遣されたという話に至っては笑い話にもならん」

「・・・・・?」

「・・・・・?」盛大な墓穴を掘ったことに宗介は気づいてはいなかった。

「俺も千鳥も、ごく真面目な100均で売られていてもおかしくない普通の高校生じゃないか」

「いや、二人とも普通の範疇からは随分と外れていると思うんだけど」風間が言った。

「・・・・・日本中探しても校舎爆破する高校生はいない」ムッツリーニも言った。

その時、上の方からヒラヒラと布が落ちてきた。思わず受け止めるとそれで汗を吹きながら宗介が続けた。

「まあ、あんまりここには近づかんことだ。あやうく狙撃するところだった」

「だけど千鳥さんの写真を撮らないと。性格はともかく一応美少女だし」

「・・・・・Fカップは外せない」

 

「千鳥には明日俺からモデルになってくれるように頼んでやろう」宗介が言った時、ベランダの窓がガラっと開いて、シャワー上がりの身体をバスタオルに包んだかなめが顔を出した。

「ちっ、千鳥」

「・・・・・えっと、ソースケ?」どうやら頭の回転が追いついてないらしい。

「いや、今アルバム委員の会議を風間や土屋としていたところだ」宗介が振り返った時には、ムッツリーニは3階のベランダから飛び降り、風間は2人から死角になる鉢植えの影に隠れていた。

「どこにいるのよ、風間君や土屋は?」

「いや、さっきまで確かにここにいたのだ」宗介は汗が噴き出してくるのを実感していた。この流れはまずい。非常にまずい。

「宗介、手に何持ってんの?」かなめの頭の回転が徐々に回復してきたようだ。

「いや、さっき落ちてきたのを拾ったんだが」そういって布を開くと三角形のショーツが現れた。

「あんた、それって」かなめの顔が真っ赤になった。

「変わったハンカチだな。三角形で縞模様をしている」

「あんたちょっと、そこ動くんじゃないわよ。絶対よ」かなめの姿が奥に消えたかと思うとすぐに戻ってきた。

「ちょっと待て、千鳥。手になにを持っている」

「あぁ、これ?世間じゃ金属バットって読んでいるけど、押収された光画部の連中は「粉砕バット」って呼んでいたわ。今、その理由がわかったところなの」

「そうか。それは何よりだ。どころで時間も遅いことだし、俺もそろそろ失礼しよう」

「させるかぁ~、この変態下着泥棒ぉ~」かなめは粉砕バットを振りかざし、宗介の脳天めがけて振り下ろした。

スレスレでバットの一撃をかわした宗介は、考えることなくベランダを乗り越えて3階下へと飛び降りた。街路樹の上に落ちた宗介はかろうじて大怪我は免れた。

「やれやれ何とか助かったか。それにしても土屋の動きは尋常じゃないな。情報部門に依頼して背後関係を洗う必要があるかもしれん」少しビッコを引きながら部屋へと戻る宗介であった。

 

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