バカとテストとフルメタパニック   作:らじさ

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第5話

色々とドタバタやっているうちに先生が教室に入って来た。美波が清水さんを廊下に蹴りだし、男生徒がまだ失神している椿君を廊下に放りなげた。

 

「クククッ、カシムこれから色々とよろしく頼むぜ」ガウルン君が相良君を挑発するように言った。

「貴様が何を企んでいるのかは知らんが、常にこれがお前を狙っていることを忘れるな」相良君が制服の襟を開けてホルスターに入っている拳銃を見せた。

「疑り深い奴だ。俺はただの高校生の山田ガウルンだと言っているだろうに」

「うるさい、お前の言うことなど信用できるか」相良君が怒鳴り返した。

「さてっと」相良君の言葉など聞こえないかのように、ガウルン君が内ポケットから分厚いメガネを取り出してかけた。

「ガウルン、貴様メガネだったのか。AS乗りの視力が悪いのは致命的だな。兵士としてのお前は終わったということだ」相良君が言った。

「ああ、長年ASのパネルを眺めていたせいか、最近本の細かい字が読みづらいんだ」ガウルン君が答える。

「あんたねぇ、それは単なる老眼。17歳の高校生じゃ絶対にあり得ない年寄りの目の衰えなの」千鳥さんが呆れたように言った。

「ほう、日本にはそういう風土病があるのか」

「日本だけじゃなくて世界中でそうなの。いいかげんに高校生という設定は諦めて、せめて先生として赴任して来なさいよ。というか日本人って設定どこ行ったのよ」この2人は何の話をしているんだろうか?

 

「では、教科書の4頁目を開いて・・・・・」先生が言った。今日の1時間目は古文だ。

「『少年老い易く學成り難し。一寸の光陰輕んず不可ず』。相良、これの意味を言ってみろ」先生が無謀なことを言った。

「はい、『老いた少年は安いが、学という名前は珍しいので高く売れる。ちょっとの光は軽くて測れない』という意味であります」相良君が自信満々に答えた。

「一体、どうやったらそんな脳が腸捻転起こしたような解釈ができるんだ?」先生は怒りを通り越して感心しているようだ。

「フフフ」ガウルン君が失笑する。

「何がおかしい、ガウルン」

「静かにしてくれないかね、相良君。先生のお声が聞こえないんだが」ガウルン君が言った。

「「ハアッ?」」千鳥さんと相良君が同時に叫んだ。

「ちょっ、ちょっとどうしたのよ、あんた」千鳥さんが尋ねた。

「ん?僕が何かおかしいことを言ったかな、千鳥かなめ君?相良君が少し騒がしいようだったから注意をしただけなのだが」ガウルン君がメガネの真ん中を持ち上げながら言った。

「おかしいもおかしくないも、全然キャラ変わっているじゃないの。あんた本当にガウルンなの?」というか、メガネをかける前は野獣のような風貌だったのが、今や知性まで感じさせる顔に変わっているんだけど。人間の進化というのを目の当たりに見た気がする。

「ガウルン、しっかりしろ。俺が誰だかわかるか」相良君が言った。

「同じクラスの相良宗介君じゃないか。僕の記憶に何か間違いがあるのかな?」

「いや、それは間違いではないんだが・・・・・何かが間違っている」相良君が言葉に詰まりながら答えた。

「あんた、本当にガウルンなの?」千鳥さんが疑り深そうな目で尋ねた。

「ハハハ、おかしな事を言う子だね、君は。僕はちゃんと本田ガウルンだよ」

「山田、山田。いいかげんに設定固めなさいよ」千鳥さんが小さな声で注意した。

「そうそう、その山田ガウルンだ。どこも変わったところはない」

「いやいや、ビリー・ミリガン並に人格が変わってるわよ。ソースケ、これあんた達が使う何かの技なの?」

「いや、奴のこんな態度は見たことがない。俺を油断させるつもりだろうか?」

 

「ああ、お前たちうるさいぞ。転校生の山田、今のところの意味を言ってみろ」先生が言った。

「はい、『少年老い易く學成り難し。一寸の光陰輕んず不可ず』とは、『若いうちはまだ先があると思って勉強に必死になれないが、すぐに年月が過ぎて年をとり、何も学べないで終わってしまう、だから若いうちから勉学に励まなければならない』という意味です。ちなみにこの言葉は長らく朱蒙の『偶成』という漢詩が出典だとされていましたが、近年の研究によって観中中諦の『青嶂集』が出典であるとする説が主流となっております」うん、ガウルン君が何を言っているのか全く理解できない。

「ほう、よくそこまで知っていたね」先生が感動の面持ちで言った。

「いや、聞きかじりの知識をお披露してしまいお恥ずかしい限りです。昔、中国の古典に興味があって、いろいろと読みあさっていたものですから」

「いや、素晴らしい。みんなも山田君を見習うように」

「過分なお褒めの言葉を頂き恐縮です」ガウルン君が頭を下げた。

「ねぇ、誰なのこの人」

「いや、ガウルンなはずなんだが・・・・・」

「なんでこうも変わるのよ。全然別人じゃないの」

「いや、俺に聞かれても困るんだが。さっきと奴が変わったところと言えば・・・・・」相良君が答え終わって正座で座ったガウルン君のメガネを外した。

「いきなり何をしやがる、カシム」獣の顔に戻ったガウルン君が言った。

「普通だわね」

「普通だな」再び、相良君がカシム君にメガネをかけた。

「全く、いきなり人のメガネを取るなんて、無礼だとは思わないのかね。どんな躾を受けてきたんだね、君は」メガネを直しながらガウルン君が言った。うん、Aクラスにいてもおかしくない理知的な顔つきになっている。

「なんかメガネかけると変なスイッチが入るみたいね」

「奴にこんな一面があったとは・・・・・」

「君たち、授業中の私語は慎み給え。他の人達の勉学の邪魔だよ。まさに先生が仰った『少年老い易く學成り難し。一寸の光陰輕んず不可ず』そのままじゃないか」ガウルン君がメガネを光らせながら、千鳥さんと相良君に注意をした。

「言われていることは正論なんだけど、何でこんなに腹が立つのかしら」千鳥さんが拳を震わせながら言った。

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