バカとテストとフルメタパニック   作:らじさ

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第9話

やっと授業が終わった。と言ってもほとんどガウルン君と相良君の独壇場ではあったのだが。気のせいか彼らがこのクラスに来てから授業を受けているだけなのに、倍くらい疲れるようになった気がする。

いつものように僕の机の周りに仲間が集まってくる。

「ああ、やっと昼飯だ」雄二が言った。

「雄二の生姜焼きは旨そうじゃのう」秀吉が言った。

「そういうお前の厚焼き玉子だって旨そうじゃねぇか」雄二が言う。

「さてと、水をコップに移してっと」僕が周囲に聞こえるように言った。

「瑞樹の弁当も相変わらず美味しそうね」美波が尋ねた。

「いえ、これはお母さんが」

「母上がこんなに料理が上手いのじゃ、姫路の料理もさぞ美味かろうなあ」秀吉が言った。今考えれば知らないということは幸せなことなんだと思わせるセリフだ。

「美波ちゃんは自分で作ってるんですか?」姫路さんが尋ねた。

「うん、ちょっと早起きしてね・・・・・(将来のためにも)」最後の方は聞き取れなかった。

「ねぇ、あたし達も一緒になって食べていい?」千鳥さんが尋ねた。

「ああ、構わねぇ・・・・・ていうか、今日はヤキソバパンじゃないのか、千鳥?」雄二が尋ねた。

「そう毎日毎日ヤキソバパンばっかりじゃ栄養偏るからね。たまにはお弁当にしたのよ。ほら、宗介。あんたもさっさと座りなさい」千鳥さんが世話女房のように言った。普通だったら冷やかされるところだろうが、この二人の場合には保護者と児童と言うか、犬とか飼い主みたいなものとみんなに見なされているので、誰も冷やかす奴はいない。

「うむ、それでは邪魔するぞ」相良君が言った。

 

「秀吉、その厚焼き卵少し分けてくれ」

「ムッツリーニ、その肉じゃがと卵焼きを交換してくれんかのう」

「えーっと、包みはどこに言ったかな」

「かなめ、ウチのハンバーグとウインナー交換しない」

「それならあたしはベーコン巻きの方がいいわね」

「だーっ、何でみんな僕を無視するのさ」たまりかねて僕は言った。

「というか明久よ、そう毎日毎日塩と水ばかりでは栄養が偏るぞい」秀吉が言った。

「バカにしないでよ。毎回塩ばかりなわけないじゃないか」僕が言った。

「じゃ、その包みはなんなのよ、アキ」美波が尋ねた。

「今日は砂糖だよ」僕が答えた。

「それでは塩と全く変わらんぞい」秀吉が言った。

「それでおかずと交換しろなんて、どんだけ図々しいんだ、お前は」

相変わらずおかずの一つも分けてくれないなんて、どれだけ冷たい連中なんだろう。

「ああ、吉井。よければ俺のおかずを・・・・・」

「さあ、砂糖水を飲もうかな。糖分は脳にいいんだよね」僕は、相良君が何かを言いかけたのを強引に遮った。ネズミの干し肉を食べされられてはたまったものではない。

 

ふと目をやるとガウルン君が一人で食事をしようとしているのが見えた。よし、この連中に見切りをつけて新しい仲間を増やそうと僕は考えた。

「ねえ、ガウルン君。一人で食べてないで、ここでみんなと一緒に食べようよ」と声をかけた。

「うん?ああ、そうだな。おれも高校生なんだから、仲間との青春の一コマとやらを作るのも悪くないな」ガウルン君が言った。

「いちいち言うことがオジさん臭いのよね」千鳥さんが言った。

ガウルン君が弁当を持ってやってきた。

「何、ガウルン。あんた弁当なんか持ってきてるの?奥さんが作ってくれたの?」千鳥さんが尋ねた。

「ふっ、高校生に女房がいるわけがないだろう。それに俺は玄人しか相手にしない」

「それが既に高校生のセリフじゃないってーの。玄人って何よ玄人って。じゃ、お弁当をどうしたのよ」

「もちろん自分で作ったのさ」

「へぇーあんた料理なんかできたの」

「傭兵としちゃ当たり前の技能だ。レーションばっかり喰ってると飽きるんでな」

「当たり前って、どこかの戦争ボケは干し肉しか作れないけど」千鳥さんが言った。

干し肉を噛みながら相良君が横目で見ている。

「で、どんな弁当作ってきたのよ。見せてよ」

「ごく普通の伝統的な日本の弁当さ」ガウルン君が弁当箱を開けた。

 

「「「「「「「「・・・・・・こっこれは」」」」」」」」

 

「ごく普通って、あんたこれどこで習ってきたのよ」

「うん、これくらい普通だろ」

そういってガウルン君が見せたのは「ハローケティ」のキャラ弁だった。

「(・・・・・日本人の設定決めてから、日本の弁当をネットで調べたのね)」

「(キャラ弁が大流行だから、検索すると上位に出てくるからな。あいつはそれを日本の普通の弁当だと思ったわけか)」

「また、器用に作ってきたな」雄二が関心して言った。

「ウインナーがちゃんとタコさんウインナーになってます」姫路さんが感心して言った。

「これを自分で作ったのかの?」秀吉が尋ねた。

「ああ、朝5時起きで作ったぜ。まったく伝統的な弁当作るのも楽じゃねえな」ガウルン君が心なしか胸を張って言った。

「まあ、これで俺が日本の普通の高校生ということがわかってもらえたと思う」

「しかし、ハローケティのキャラ弁って幼稚園の娘の弁当と一緒に作ったんじゃないか?」雄二が尋ねた。

「高校生に幼稚園の娘がいるわけないだろうが」ガウルン君も言った。

 

それを言うなら朝5時起きしてキャラ弁を作る男子高校生もいないだろと、みんな心の中でツッコンだ。

 

 

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