バカとテストとフルメタパニック   作:らじさ

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第10話

食事を終えた頃、教室の入り口の方から「先生《シンサン》」という声がした。みんながそちらの方を向くと見知らぬ下級生らしき男女の生徒が二人立っていた。顔立ちが似ているところを双子なのだろう。

「誰だ、あれ」雄二が言った。

「二年生では見ない顔じゃのう。ネクタイの色からすると一年生だと思うのじゃが」秀吉が言った。

「シンサンって何かしら?」美波が不思議そうに言った。

「ああ、二人ともこっちに来い。ちょうどいいからみんなに紹介しておこう。俺の妹と弟だ」

「あんた、いいかげんにしなさいよ。どう見てもあんたの子供の年齢じゃない」千鳥さんが実も蓋もないツッコみを入れた。

「くっくっく、バカを言ってもらっちゃ困るな、千鳥。高校2年生に高1の子供がいる訳がないだろう」

「何がどうあっても、その設定を引張るつもりなのね」

「女の方が姉の飛鷲《フェイジュウ》で、男の方が弟の飛鴻《フェイホン》だ。お前たち、俺のクラスメイトに挨拶しろ」

二人が僕たちのところに来て挨拶をした。

「先生の妹の鈴木飛鷲アル」

「弟の川崎飛鴻ネ」

「ガウルン、あんたいい加減にしなさいよ。兄弟って設定で何で姓が違うのよ」

「ちょっと手違いがあったようだな。ちょっと待っててくれ」

そういうとガウルン君は二人を教室の隅に連れて行った。

 

「(バカやろう、お前たち。名前はともかく姓は日本人らしく「本田」にするって言ったろうが)」

「(スズキのGSは名車ね。そこは譲れないアル)」

「(伝説のZ1を作った川崎以外に考えられないネ、シンサン)」

「(そういう問題じゃねぇんだ・・・・・)」

三人が喧々諤々と論争を始めた。

 

「なにやら揉めてるようだが」相良君が言った。

「打ち合わせミスがあったんでしょう。大体名前が中国名なのに姓だけ日本人にすりゃ日本人に見えるだろうという設定が甘すぎるわよ」千鳥さんが言った。

「いや、その設定というのがよくわからんのだが」雄二が千鳥さんに尋ねた。

「ああ、気にしなくていいわ。あたしも頭が痛くなってきたから、あまり考えないようにしているから」千鳥さんが答えた。

そこへ3人が戻ってきた。

 

「すまなかった。ちょっとした連絡ミスがあったようだ」ガウルン君がすまなそうに言った。

「連絡ミスで自分たちの姓を間違えてるんじゃねーわよ」千鳥さんがツッコんだ。

「改めて自己紹介しよう。俺が長男の前田ガウルンだ」

「先生の妹の大島飛鷲アル」

「末っ子の指原飛鴻ネ、よろしく」

「すまん、もうちょっと待っててくれ」再び三人が教室の隅に戻った。

「(AKBのトップと言ったら前田に決まっているだろうが)」

「(絶対的センターは大島アルヨ)」

「(この前の総選挙では、指原が1位だったからトップは指原ネ)」

 

「ああ、もう!!」千鳥さんが苛立ったように席を立つと、マジックを片手に三人に近づいていった。

「あんた達、手を出しなさい」

「いや、今打ち合わせ中なんだ、千鳥」

「つべこべ抜かさず手を出せつーの」

三人が大人しく手を出すと、千鳥さんは3人の手に「山田」という文字を書いた。

「いい?これがあなた達の姓。ガウルンがそれで自己紹介したんだから、それで統一しなさい」

「面白みのない姓ネ」飛鷲さんが言った。

「面白い面白くないでフリーダムに姓を決めてるんじゃねーわよ。兄弟って設定なんだから、とにかくそれで統一しなさい」

「ところで先生、この女は誰アルか?」飛鴻君が言った。

「この女か?いつも話していたろう。これが千鳥かなめだ」

「この女が千鳥《チンニウ》アルカ」飛鴻君はそういうと一歩後方に飛び下がり、背中からナイフを出して構えた。

「ちょっと、あんた。何してるのよ。危ないじゃないの」

「先生が言ったネ。千鳥をできるだけ惨たらしく殺せと」飛鴻君が腰を落として構える。

「ガウルン、あんた一体何言ったのよ」千鳥さんがガウルン君に詰め寄った。

「いや、俺は別に何も言ってないんだが、どうやら別の世界線の俺がそういう命令を出したようでな。飛鴻は別の世界線の記憶を持つリーディング・シュタイナーの能力の持ち主で・・・・・オゴワ」解説をしていたガウルン君が千鳥さんのハリセンに打ち倒された。

「人事みたいに解説してんじゃないわよ。とっととその命令を解きなさい」

「いや、何度も説明したんだが、こいつらは一度命令されると終了するまで止まらない・・・・・グワ」再びハリセンが炸裂した。

「そんな物騒な連中、一緒に転校させてくるんじゃねーわよ。ソースケだけでも手を焼いているのに、こんな連中まで相手にできないつーの」

 

あまりの急展開に僕たちがついていけない中、相良君はのんびりとお茶を飲んでいた。

「ねぇ、相良君。千鳥さんナイフで狙われているみたいだけど護衛しなくていいの」僕が尋ねた。

「問題ない。あの程度の相手なら千鳥一人で十分だ」

「いや、万が一ということもあるし・・・・・」

「俺はプロフェッショナルだ。相手の力量を計る目は持っている。あの飛鴻という男、なかなかの腕前だが、あの程度では千鳥の相手にはならん」

その瞬間、飛鴻君が飛びかかった。千鳥さんがハリセンを振りかざし二人が交錯した。

というか二人の動きが速すぎて何が起きたのかさっぱり分からない。

 

「クッ・・・・・・」飛鴻君が床に崩れ落ちた。どうやら千鳥さんのハリセンの一撃の方が速かったようだ。

「なかなかやるけど、その程度じゃあたしは倒せないわね」千鳥さんが正義のヒーローのような決めセリフを言った。

「だいたい初対面なのにいきなりナイフで人を襲ってんじゃねーわよ・・・・・クヌクヌクヌ」前言撤回。倒れている飛鴻君をケタグリ回し始めた、ド汚さは相良君と良い勝負だと思う。

というか、顔見知りだったらナイフで襲ってもいいという問題ではないような気がするんだが。

 

その時に昼休み終了のチャイムがなった。

「ゼェゼェゼェ・・・・・そこの女、飛鷲とか言ったかしら。さっさとこのバカ連れて教室に戻りなさい。今度、襲ってきたらこんなもんじゃ済まないわよ」

いや、飛鴻君は気絶した上にケタグリ回されて息も絶え絶えなんだけど、これ以上となると想像もつかない。

飛鷲さんが気絶している飛鴻君に肩を貸して教室から出て行った。

「くっくっく、しょうがない奴らだ」ガウルン君が言った。

「あんたがあんな物騒な連中連れてきたんでしょうが、他人面してるんじゃねーわよ」ガウルン君に今日一番のハリセンの一撃が決まった。

 

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