バカとテストとフルメタパニック   作:らじさ

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第12話

「とにかくっ!!この3人を生徒会に引き込んで何させようってんですか?」

「ふむ、千鳥くんは三国志に『二虎競食』という言葉があるのを知っているかね」

「いえ、あれ長すぎるんであたしはどちらかと言えば水滸伝の方が好きで」

「別に横山光輝の漫画の話をしているんじゃない。献帝を許都に迎えた曹操に、軍師の荀彧が「遷都の後、都の整備に莫大な資金をつぎ込んだ今、戦をおこすのは下策であり、しばらくは戦を起こさず相手の弱体化を図るべきである。徐州を制した劉備も、その体制は万全ではなく、むしろ小沛の呂布と劉備を戦わせて、彼らを自滅させる策をとるのが賢明である」と献策した。

つまり、劉備に詔勅を下して呂布を殺害させるということだ。たとえ呂布殺害が失敗に終わっても両者の親善関係は崩れるというわけだね」

「どんだけ壮大に話を広げてるんですか」

「相良君は都会で生きていくには、余りにも猛々し過ぎる虎だ。だからこそ問題も起きる」

「そんないいもんじゃないような気がするんですがね。単に戦争ボケの非常識男っていうだけで」

「そこにガウルン君という存在が現れた。彼の経歴を拝見したが相良君に勝るとも劣らない華々しい経歴の持ち主だ」

「はあ、まあそうかも知れませんね。いろいろと」

「そこで『二虎競食』だよ。虎同士を競わせて力を削ぐ。まさに荀彧の策通りだとは思わないかな?」林水はそこで扇子を広げた。

「えーと、で結局、ガウルンには何をやらせるつもりなんですか?」

「うむ、彼には『生徒会安全保障担当代理』をやってもらおうかと思っている」

 

「ふふふ」宗介がここで笑い声をもらした。

「何がおかしいんだ、カシム」

「つまり、お前は生徒会安全保障担当補佐の俺の部下になるということか。ブートキャンプのようにしごいてやるぞ」

「くっくっく、会長の言葉をよく聞いてなかったのか、カシム」

「何?」

「お前は『生徒会安全保障担当補佐』、俺は『生徒会安全保障担当代理』だ。命令系統が違うんだよ」

「まあ、そういうことだ。二人とも対等な立場として職務を全うして欲しい」林水が二人に声をかけた。

「それでこのチビっ子双子は、何なんですか?」

「「私たちは『生徒会安全保障代理心得』アルね」」

「そういうことだ」

「「そういうことだじゃ」ないですよ、先輩。大体、肝心の生徒会安全保障担当者がいないのに、なんで「補佐」だの「代理」だの「代理心得」ばっかりいるんですか」

「おや、君はかの野中英次先生の名作「課長バカ一代」を知らないのかね?」

「知ってる人はほとんどいないでしょ。そんなマイナー漫画」

「あの主人公の肩書きは「課長補佐代理心得」だよ。あの課には課長がいないのに」

「知ったこっちゃねーですよ、そんなこと。だいたいニューヨークのハーレムの高校にだって、こんなに安全保障担当者はいないですよ。どんだけ治安が悪いんですか、うちの学校は?」

「千鳥、その考えは間違っている。安全というのは日頃の地道な活動によって守られるもので事件が起きてからでは遅いの・・・・・ウグッ」宗介が正論を言った。

「うちの学校での事件の98%を引き起こしている人間が、エラそうに言ってんじゃねーわよ」宗介の腹にアッパーをぶち込みながら、かなめが言った。

 

「どうだね。名案だとは思わないかね」林水がかなめに尋ねた。

「はあ、えーっと『二虎給食』でしたっけ?」

「『二虎競食』だ」

「まあ、何でもいいんですが、睨み合っててくれれば問題はないですけど、この二人の性格考えると・・・・・」

「考えると何だね」

「いや、本当に競って食い合いしだしそうな気がするんですよね。大食い選手権みたいに」

「つまり?」

「その場合の餌が何なのか、考えてますよね?」

「はっはっは、もちろんじゃないか」林水の額から汗が浮かんだ。

「考えてりゃいいんですけどね。修繕費が倍にならないことを祈ってます」疑わしそうにかなめが林水をじーと睨んだ。

「C会計で何とかなるだろう」

「それを食いつぶして、部費にまで手をだしたら暴動が起きますよ」かなめが冷たい目で言った。

 

「お嬢ちゃん、俺はカシムと違って酸いも甘いも噛み分けた大人だ。そうそうバカなマネはしないさ」

「同級生っていう設定を忘れている時点で、十分にバカだと思うけど。高校2年生がどんな人生を生きてきたら酸いも甘いも噛み分けられるってーのよ」

「くっくっく、こんな平和ボケした国に生まれたお嬢ちゃんには、想像もつかない人生さ」

「ついでに日本人っていう設定まで忘れてくれているのね、あんたは」

 

「とにかくだ」林水が扇子をパチリと閉じて言った。

「明日からは、この四人で学園の治安・安全を全力で守ってくれたまえ」

「了解であります、会長閣下」宗介が踵を鳴らして直立不動の姿勢で答えた。

「くっくっく、まあガキの遊びに付き合うのも暇つぶしにはいいだろう」ガウルンが言った。

「了解したネ。会長」飛鴻が言った。

「深訓での戦闘に比べたら児戯に等しいアル」飛鷲も答えた。

「戦闘?」林水が不審げに尋ねた。

「ああ、何でもありません。気にしないで下さい」要が飛鷲を蹴飛ばしながら言った。

 

「で、一番の問題なんだが・・・・・・」林水がかなめを見ながら言った。

「あ、あたしピアノのお稽古の時間です。これで失礼します」かなめが慌てたように言った。

「千鳥、いつからピアノなどを始めたのだ?」宗介が尋ねた。

「うるさいわね。こっちにも色々事情ってものがあるのよ」出口に向かったかなめに向かって林水が声をかけた。

「この四人の監督は千鳥くんにお願いしようと思う」

「こうなりそうだから早く逃げたかったのよ。何であたしなんですか。あたしは単なる副会長。安全保障担当でも何でもありません!!」

「ふむ。そうなると哀れこの四人は・・・・・・」

「はいはい、退学になって路頭に迷ってホームレスになるって言うんでしょう」

「察しが良くて助かるよ」

「なんか四人ともとっととホームレスにした方が、あたしは楽な気がしているんですけど」かなめがため息をついて言った。

 

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