腹痛は全くしないのですが、点滴の針が死ぬほど痛いです。
「というわけなんです。わかってくれましたか?」少女はそういうとお茶をズズッと飲んだ。
「いや、言っていることがほとんど理解できないのでありますが。マデューカス中佐が大佐殿が「涼宮ハルヒの憂鬱」とか「わたモテ」とか「キルミーベイベー」というアニメを見ていることが気に入らなかったということまではなんとか理解しましたが」
「全然わかってないじゃないですか」少女が立ち上がって叫んだ。
「いや、しかし確かに「キルミーベイベー」の女子高生が殺し屋という設定は荒唐無稽であると言わざるを得ません。あの現実主義者の中佐殿が怒るのも無理はないかと・・・・・」
「それはそうですけど、そこはアニメなんですから目くじら立ててもしょうがないと思うんですけど」
10歳にしてアフガンゲリラのASパイロットとして名前を馳せ、現在はミスリル戦闘部隊の屈指のASパイロットである17歳の少年と、同じく17歳にして同部隊中隊長の大佐にして、強襲揚陸型大型潜水艦「トゥーハ・デ・ダナン」艦長である少女が言った。
「大佐殿、心なしか何者かの悪意のある視線を感じるのでありますが」
「奇遇ですね。私も肌に視線が突き刺さっているような気がします」
「それはともかくとして、アニメが原因で基地を出てきたということでありますか?」
「だから違います!!むぅ~相良さん、もしかしてわざとトボけています?」
少女がジト目で宗介を睨んだ。そもそも何で自分が休暇に日本を選んだのかこの少年は本当にわかっていないのか。やり場のない怒りが湧いてきた少女は、テーブルの下の少年の足を蹴った。
「痛っ、どうしたんでありますか大佐殿」
「ごめんなさい。足伸ばしたら当たっちゃいました」少女がツンっと横を向いて言った。
「申し訳ありません、大佐殿。軍曹殿は女性の心の機微に疎いものですから」少女の胸の携帯から男性の無機質な声がした。
「えっ、この声はアル?何で私の携帯から・・・・・」
少女が携帯を胸ポケットから取り出すと、そこには「アーバレスト」の画像が写っていた。
「・・・・・相良さん、これ何ですか?」
「もっ申し訳ありません、大佐殿。アルお前また勝手な真似を・・・・・」
「スマホ端末AIアプリの「モバイル・アル」です。以後お見知り置きを大佐殿」無機質な声が響いた。
「いつの間に・・・・・」
「はい、大佐殿が昨夜部屋に忍び込んで来た時に、遠隔操作で大佐殿の携帯にダウンロードしておきました」
「それはハッキングではないか。すぐに削除しろ」宗介が怒鳴った。
「申し訳ありません。端末側からは削除できない仕様になっております。それにしばらく日本にいらっしゃるのであれば、私がいれば色々と便利だと思いますが」
「はぁ、まあ別に害がないのならいいんですけど、具体的にどう便利なんですか、アル?」
「「モバイル・アル」です、お間違えのないように。では、まず私の有用性を証明するために現在のお二人の間の誤解を解いてみせましょう」
「誤解とは何だ」宗介が言った。
「大佐殿が休暇を日本で過ごすことについて、乙女心に全く理解のない軍曹殿が抱いている誤解です」
「・・・・・AIに乙女心を解説してもらう思春期の少年というのも、いろいろ問題があると思うんですけど」少女が首を傾げながら言った。
「つまり、中佐殿は別にアニメの内容を問題にしていたのではないのです、軍曹殿」
「では、何が問題なのだ」
「大佐殿が日本に行きたいと言ったことを問題視していたのです」
「中佐殿は日本が嫌いなのか?」
「いえ、日本そのものよりも軍曹が日本にいることが問題なのです」
「なっ、なんだと」
宗介はショックを受けた。中佐には嫌われているのは自覚していたが、戦士としてはそれなりの結果を出していた自負はある。しかしながらそこまで嫌われていたとは。
「中佐殿はそこまで俺を嫌っていたのか」
「嫌いというか・・・・・」
「ちょっとちょっとアル。何を言い出すの」何やら不穏な方向に話が進みそうな気配を感じて少女が言った。
「モバイル・アルです、大佐殿」
「ああ、そうだったわね。モバイル・アル、あまり余計なことは・・・・・」
「だが、仕事はしっかりやって来たつもりだ」宗介が食い下がる。
「この際、仕事は関係ないのです」
「・・・・・お前は何を言っているのだ?仕事以外で中佐殿が俺を嫌う理由はないではないか」
「大有りです」
「モバイル・アル、ちょっと待って・・・・・」
「じゃ、問題は何なのだ」
「問題は、大佐殿が軍曹殿を好・・・・」
「きゃあああああああ~」
少女の叫び声が部屋中に響き渡った。