バカとテストとフルメタパニック   作:らじさ

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更新が約1年ぶりなんですねぇ。
本当に申し訳ありませんでした。


第4話

宗介は朝っぱらから疲れ果てて無線機の前に突っ伏した。

 

「ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン」突然インターホンが乱暴に鳴らされた。

 

朝からこの部屋を訪ねてくるような人間はいない。かなめが夕食を作りすぎたと差し入れに訪問してくることはあったが、それ以外では外部との接触がある生活ではないのだ。とすると朝っぱらからの訪問者として考えられるのは・・・・・

 

「相良さん・・・・・」テッサが不安げに言った。どうやら彼女も同じことを思ったらしい。

「大丈夫です、大佐殿。自分が追い返してみせます」宗介は胸のホルスターから愛用のグロッグを引き抜いて玄関へ向かった。

「いえ、あの・・・・相良さん。ここは日本ですからできるだけ穏便に。私たちはミスリルなんですから」テッサが更に不安げな様子で言った。

「了解であります、大佐殿。可能な限り「穏便」に処理致します」

「そもそも処理っていうのが穏便じゃないんです」テッサが懇願するように叫んだ。

 

彼女は何をそう不安がっているのだろう。慣れない外国で頼れる人間が自分だけなのだから不安になるのも無理はない。ここは自分が身を挺しても守ってやらねばならない。上官ではあるが彼女は何よりも大切な仲間なのだから。

 

「ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン」インターホンが苛ついた様子で鳴り響く。

 

「今行く。誰だ」宗介がドアに拳銃の照準を合わせて怒鳴った。

「誰だじゃねーわよ。さっさとここ開けなさいよ」ドアの向こう側からかなめの怒鳴り声が聞こえた。

 

「たっ、大佐殿ぉ~、こっコンディションレッド。緊急事態であります。至急奥の部屋のクローゼットの中に隠れて下さい」宗介は奥のリビングに向けて怒鳴った。

 

よりにもよってこの状況で一番会ってはならない人間がわざわざ向こうから襲来したきたのだ。

 

「えっ、でもかなめさんですよね?」テッサがキョトンとした表情で言った。

「だからなのです。この状況では一番遭遇してはいけない存在が・・・・」

「早く開けろつーの。ガンガンガン」シビレを切らしたらしい少女がドアを蹴りだした。

「おっ、落ち着け千鳥。もう準備はできている。今出るから」宗介は自分でもわかるほど上ずった声で答えた。

「はぁ、なに言ってんの。テッサがそこにいるんでしょ。いいかげんに開けろつーの」

 

宗介の頭は混乱していた。なぜかなめがテッサがここにいることを知っているのかとかテッサと二人きりであったことが知られた自分の運命などに思いをはせた。

 

「あの~相良さん。ご近所迷惑になると思うので、ドアを開けてかなめさんを入れてあげたらどうですか?」テッサが恐る恐る言った。

 

どうやらこの上官は状況が全く理解出来ていない様子だ。自分とこの少女が同じ部屋で一夜を過ごしたことをなぜかかなめが知っている。さらにそのかなめがドアを開けろと外で大騒ぎしているのだ。これまで幾度となく死線を超えて来たが今ほど死を身近に感じたことはなかった。

 

「・・・・・それは命令でしょうか」

「いえ、命令とかそういうのではなくかなめさんですから別に問題はないでしょうし、何よりご近所さんにご迷惑ですから」

 

ガンガンガンガンンガンガンガン・・・・・・・シビれを切らして怒り狂ったかなめがドアを蹴りまくる音が鳴り響いた。

 

「わかりました・・・・つきましては大佐殿、少々お願いがあります」死を覚悟した宗介は静かにテッサに言った。

「えっ?今ですか」

「はい、恐らくドアを開けたら自分の命はないと思いますので今のうちに・・・・・」

「何だかよくわかりませんけど私にできることでしたら何でも」

「ありがとうございます。自分に万一のことがあった場合には、時々で結構ですからメリダ島の下士官宿舎の裏庭にあるアルジャーノンの墓に花束を供えていただきたいと・・・・・・」

「知ってる人しかわからないネタですよね、それ」

「では、相良軍曹逝きま・・・もとい行きます」

 

宗介はそう叫ぶとドアの鍵を開けた・・・と同時にハリセンで頭部を殴られて床に叩きつけられた。

 

「一体、玄関開けるのにどんだけ人を待たしてんのよ、あんたは」ハリセンを振り下ろした姿勢のままかなめが怒鳴りつけた。

 

「かっ、かなめさんいきなり何を」テッサが驚いたように言った。

「なによテッサ。まだ着替えてないじゃない。さっさと着替えてきなさいよ。このままじゃ遅刻しちゃうわ」

「ちっ、千鳥落ち着け。これには事情があってだ・・・・」宗介が取り繕うように言った。

「あんたもカバンすら持ってないじゃない。さっさと支度して出てきなさい。本当に遅刻するわよ」

「「はぁ?」」宗介とテッサが同時に叫んだ。

 

 

5分後、宗介、かなめ。テッサの3人は学校への道を並んで歩いていた。

 

「全く、初日から遅れるんじゃないかと思って迎えに行ってやったら案の定じゃない」かなめが行った。

「えっと、かなめさんは私がいることを知ってたんですか?」テッサが尋ねた。

「(大佐殿、家出して来たのではなかったのですか?)」宗介がテッサに囁いた。

「(ええ、誰にも行き先は告げずに来たんですけど・・・・)」テッサが答えた。

「そりゃ、号令係のおじさんから連絡が「テッサをよろしく頼む」ってメールきたもの」かなめがにべもなく答えた。

「号令係とは中佐殿のことではないか?」どうやらかなめは未だにマデューカス中佐を号令係だと思い込んでいるようだ。

「あ、そうそう。そのマデューカスさんから昨日メールが来てね。「テッサがまた短期留学で文月学園に行くからよろしく」って」

「はぁ、そうですかって、なんでマデューカスさんがかなめさんにメールを?」テッサが驚いたように言った。

「何でって、あたしあの人とメル友だもの」かなめが平然と言った。

 

「「めっメル友ぉ~??」」宗介とテッサが同時に叫んだ。

 

「なっ何よ。あたしにメル友がいたらおかしいわけ?」かなめが不機嫌そうに言った。

「いや、むしろおかしいのは中佐殿の方で・・・・」宗介が口ごもった。

「いつの間にそんな関係になったんですか?」テッサも驚きを隠し切れないように尋ねた。

「この間、あんたのとこの基地に遊びに行った時に頼まれたのでメルアド交換したのよ。そしたら朝晩と毎日メールがくるんだけど、よっぽど友達いないのかしらね、あのオジさん」

「(中佐殿が携帯メールを使えたというのが不思議なのでありますが・・・・・)」宗介が囁いた。

「(それよりもマデューカスさんがメル友って・・・・・)」

 

「で、中佐殿からテッサがこっちにくるというメールがあったというのか」

「そうよ。テッサはドンくさいから面倒みてくれってメールでさ、こっちはいい迷惑よ」かなめが面倒くさそうに言った。

「ちなみにどんなメールだったか見せてもらっていいですか?」そもそもマデューカスとメールというイメージが結びつかないテッサが好奇心を抑えきれずに言った。

「別にいいけど・・・・ほら、これよ」かなめが携帯を取り出してメールを立ち上げて宗介とテッサに突きつけるように差し出した。

 

 

「やっほー、カナちゃん、お久\(^o^)/。今度テッサたんがそっちに行くからよろしく頼むお(・ω<)。あ。ソーくんが変なマネしたら撃ち殺してもオケwww。 From マー君」

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・」」

 

「どうしたのよ二人とも」かなめが不思議そうに言った。

「・・・・・いや、ちょっと軽い目眩がしてな」

「・・・・・これ本当にマデューカスさんからのメールなんですか?」

「そうよ」かなめがあっけらかんと答えた。

 

「なんかマデューカスさんのイメージとは全然違うんですけど・・・・・マー君って」テッサが首を捻りながら言った。

「いや最初にもらったメールが「謹啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申します。 千鳥様におかれましては・・・・」なんてメールだったから「オジさん、堅すぎるよ。メールなんだからもっと柔らかく普通にでいいから」って返信したら「そういうもんですかな?では、メールの作法を勉強して出なおして参ります」って言ってさ。次のメールからこの調子なわけ」

 

普通と言えば最初のメールの方がマデューカスとしては普通なのだがと二人は思った。

 

「・・・・・ああ、だからなんですね」テッサが得心言ったという表情で呟いた。

「何よテッサ。何かあったの?」かなめが尋ねた。

「いえ、一時マデューカスさんが2ちゃんとかを一生懸命に読みだした時期があって「大佐殿、wktkとかprgrはどういう意味ですかな?」とかしょっちゅう質問してきたことがあったものですから」

 

ネットスラングの勉強を一生懸命に真面目にするところが中佐らしいと宗介は考えたが、一体どんな顔でこのメールを打っていたのだろうかが全く想像がつかなかった。きっといつものように苦虫を噛み潰したような顔で表情も変えずにこのメールを入力していたのだろう。

 

その時に兵の誰かが偶然メールの内容を見てしまっていたら重営倉送りは間違いないところだろう。宗介は自分が現在メリダ島勤務でないことを感謝した。

 

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