4時間目あたりはみんなもお腹が減って騒がしかったけど、相良君のおかげで静かに授業が・・・・・先生も気絶していたから授業にはならなかったのだが、静かであったことには変わりない。
昼休みもすんでお腹が満ちた今はおとなしく静かにしているだろう。
「ぐ~~~」
まあ、僕はお腹が一杯というよりは、水でお腹がタポタポなんだけど、さすがに相良君の好意の干し肉を食べる勇気はない。それにしても静かな午後のひと時だ・・・・・
「ぐ~~が~~」
天気もいいし、こういう時には教室で授業をするよりも外で体を動かしたいよね。こう静かだと眠気が・・・・・
「ぐ~が~ご~」
ええい、うるさい。これじゃ眠るどころじゃない、誰だこんな大いびきをかいているのはと、音のする方を見ると千鳥さんがちゃぶ台につっぷしていびきをかきながら豪快に熟睡していた。ほれぼれするような寝方だ。先生の存在などまるで眼中にないかのように眠りを貪っている。
「ぐ~が~ご~・・・ムニャムニャア・・・・・そんなこと急に言われても困っちゃう」
なぜ、あれほどゴージャスないびきをかきながら、そんなに乙女チックな夢が見れるんだろう?
「ねえ、アキ。かなめを起こした方がいいんじゃないの?先生睨んでいるわよ」美波が僕の袖を引いて小声で言った。
「そんなこと言ったって、千鳥さんの寝起きが悪かったらハリセン連打を食らうじゃないか」僕は固辞した。毒には毒を持って制するのが一番だ。千鳥さんのハリセン担当は相良君と相場が決まっているのだ。僕は相良君に声をかけた。
「ねぇ、相良君」
「・・・・・・」
「相良君ってば」
「・・・・・・」
相良君は黒板を見つめたまま微動だにしない。右手でかざしたままのナイフが不気味だが、その姿勢のまま固まっているようだ。
「あの、相良君さあ」
「・・・・・・・クークー」
「ねえ、美波。なんか変な音しない?」
「が~ご~」
「かなめのいびきの音しか聞こえないけど」
「・・・・・・・クークー」
「いや、ほら。小さい音だけど聞こえるよ。鼻息みたいだ」
「あんたの気のせいじゃ・・・・・」
「・・・・・・・クークー」
「ほら、ほら」
「確かに聞こえたわね。何かしら?」
どうもこの音は相良君の方から聞こえてきているような気がする。
「ねぇ、美波。この音って相良君の方からしてこない?」
「あんたねぇ、この音はどう聞いたって寝息でしょうが。相良はさっきからずっと黒板見ているじゃないの」
そう言われればそうなのだ。相良君はさっきから10分以上も身じろぎもせずに黒板を見て・・・・・身じろぎもせずに?そういえば黒板を見ているだけで、ナイフを上げた姿勢で教科書をめくるでもなくずっと同じ姿勢を続けている。ナイフの意味がよくわからないけど。
僕は相良君の前ににじりよって目の前で手を振ってみた・・・・・反応がない。
「・・・・・・・クークー」
「パンッ!!」目の前で軽く手を叩いてみる。
「・・・・・・・クークー」
やはり反応がない。もう間違いない、相良君は目をあけながら寝ているのだ。一体どういう意味があるのかはわからないが、相良君は傭兵歴10年ということだからきっと戦場で必要なテクニックなのだろう。ぜひ僕も習得して爪の垢よりも役にも立たない鉄人で爆睡したいものだ。
「ねぇ、美波。相良君、目を開けながら寝てるみたいだよ」
「アキ、あんた何バカなこと言ってるの。目を開けたまま寝れる人間がいるわけないじゃない」
「いや、本当なんだって」
「うーん、何よ。うるさいわねぇ・・・・・」僕と美波が争っている声で千鳥さんが目覚めてしまった。なにやらクトゥールの邪神を召還してしまったような気分だ。
「あ、ソースケ。あんたまた授業中に居眠りなんかして。人をFクラスにまで引き込んでおいて勉強する気あるの・・・・・クヌクヌクヌ」もはやお馴染みとなったハリセン乱打を相良君に喰らわせていた。どうやら授業中ということすら眼中にないようである。
どうでもいいがこの人は自分が今の今まで、居眠りどころか爆睡していたことを全く棚に上げているなあ。
相良君にお仕置きをするならば、せめて口元のヨダレは拭いてからにした方がいいと思うんだ。