やっと6時間目が終わった。いろいろな意味で長かった1日もこれで終了だ。
「ほら~、ソースケさっさとしなさい。生徒会室に行くわよ」千鳥さんが相良君に言っている。
「むっ、今日は特に会議はないはずだが」
「会議なんかどうでもいいわよ。林水先輩に一言文句言ってやらなきゃ気がすまないのよ」そうだ千鳥さんは、ただの親父じゃなくて生徒会副会長もやっている親父だったのだ。相良君も役員だというし、うちの学校の生徒会は大丈夫なんだろうか?
「君が会長閣下に苦言を言うのに、なぜ俺まで行かねばならんのだ」
「あんたのことで文句言いに行くからに決まってるでしょ」見事なハリセンの一打が決まった。不思議なものだ今日一日ハリセンが飛びまくっていたお陰ですっかり違和感がなくなってしまっている。
「ほら、ボサボサしてんじゃないわよ」千鳥さんが相良君の首根っこを捕まえて引きずって行った。
「ドガっ」生徒会室のドアを蹴破らんばかりの勢いでかなめがドアを蹴って部屋に入ってきた。
「やれやれ、騒々しい娘だね、君は。ドアは手で開けるものとご両親から教わらなかったのかな、千鳥かなめ君」会長席に座っていた生徒会長の林水敦信が驚いた様子もなく言った。
「そんなこたぁどうでもいいんです、先輩。これは一体どういうことなんですか」
「はて?いきなりこれと言われても何のことやら」
「とぼけないで下さい。あたしを無理やりAクラスからFクラスへ移籍させた件です」
「ははは、そのことかね。礼はいらないよ」
「あたしは文句を言ってるんです」かなめが怒鳴った。
「君は相良君と同じクラスになりたいものだとばかり思っていたのだが」
「何でAクラスの快適な環境、特に絶品ドリンクバーを捨ててまで、スラムのようなFクラスでこんな戦争ボケと一緒になりたがると思うんですか」
「美樹原君」会長は側に静かに立っていた女子生徒、生徒会書記の美樹原蓮に声をかけた。
「はい、会長。相良君が昨年度半年で起こした事件は、校舎破壊3回、靴箱爆破4回、校舎内での銃乱射46回、他校生徒の訪問者脅迫16回です。このうち、千鳥かなめさんが側にいなかった場合に限定致しますと、校舎破壊3回、靴箱爆破3回、校舎内での銃乱射40
回、他校生徒の訪問者脅迫16回となり、千鳥さんが側にいた場合には、かなりの確率でこれらの事件の発生は防げたものと推察されます」
「どうだね、千鳥くん。この統計からどのような結論が導きだされるかね」
「結論って言われても。あたしの前でそんなことしようとしたらハリ倒しているからってだけじゃないんですか」
「そう、つまり事件の発生は未然に防げたということだ」林水は扇子をバッと広げると勝ち誇ったかのように微笑む口元を覆った。
「ちょっと待って下さいよ。じゃ、あたしにこの戦争ボケの尻拭いのために二度と帰ってこない17歳の青春を犠牲にしろっていうんですか」
「正直言って」会長はかなめの声を遮るように大きめな声で言った。
「生徒会諜報室による事件の隠蔽工作も限界に達している」
「いや、別に全然隠蔽できてなくて、生徒も先生も全員知ってますよ」かなめが呆れたように言った。というか生徒会にそんな部門があるというのも初耳だ。
「去年のペースで事件を起こされては僕もかばえなくなる。そうなると相良君は退学だ」
「ぐぬぬ・・・・・」
「リーマンショック以後のこの不況では、中卒ではロクな仕事もあるまい。犯罪に走るかホームレスになるか・・・・・」
「それを君はドリンクバーのために見捨てるというのか。やれやれ、僕が知っている千鳥かなめという少女はそんな娘ではなかったのだが・・・・・」
「ぐぬぬぬぬ・・・・・この卑怯者」
「返答がないということは了承してもらったと理解していいのかな」林水が勝ち誇ったように言った。
「・・・・・ちょっと待って」別の方向から女生徒の声がした。
「えっ?」かなめがそちらの方を見ると寡黙そうな女生徒が立っていた。
「紹介が遅れてしまった。こちらは今年度から会計をやってくれる2年Aクラスの霧島翔子君だ」霧島翔子の名前くらいは、かなめも知っていた。なにしろ学園始まって以来の才媛として有名なのだ。
「・・・・・あなたの魂胆はわかっている。林水会長を色仕掛けでたぶらかしてAクラスからFクラスに移って、雄二を狙うつもり」
「全然わかってないじゃないのよ。先輩この人なんなんですか」
「霧島君は優秀なんだが、若干人の話を聞かないところがあって・・・・・」珍しく林水が慌てた様子で言った。
「若干どころじゃないですよ。あたし達の会話をマルっと聞いてないじゃないですか」
「・・・・・あなたは敵」
「なんで、ほぼ初対面のあなたに敵認定されなきゃならないのよ」
「・・・・・雄二は渡さない」
「というか雄二って誰なの?」
「坂本のことだ」宗介がかなめに耳打ちした。